オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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24 変身、新たなる戦士

ベルトの実体化は基本的に精神的なスイッチによって行われる為に、身体での動作にこれといった決まりはない。

頭一つで日常の自分と戦場の自分を切り替えることができるのであれば、身体を動かす必要すら無い。

では、変身に際しての動きには如何なる由来があるのか。

それは、戦いに対する心構えが基本となる。

 

少女が、眼前で拳を握った腕をXの字に交差させ、深く息を吸い込む。

顔を覆い隠す、目の前の敵を腕越しに隠し、しかし、目は逸らさない。

戦うための精神的な準備を察知し、その腹部にアークルに似た小型のバックルが現れる。

 

自分はこれから戦わなければならない。

しかし、戦うのはこの自分ではない。

 

腕越しに敵を睨みつける少女の真横に、緑色の装甲に身を包んだ戦士の(ヴィジョン)が浮かび上がる。

進化、あるいは先祖返りにより発現した、彼女のもう一つの姿。

忌まわしき異形の躰。

戦いに臨む自分、戦いに挑む自分。

 

斜め十字に交差させた腕を、勢いよく左右に下ろす。

それは平和に生きる少女の皮を破り捨てる動き。

素顔を隠す、恐怖に震える自分を隠す面を被る動き。

人の殻を破り捨て、生きる為獲物に食らいつく戦士が生まれる動きだ。

 

「ぅぅう、あああああッ!」

 

絶叫。

原始的な、言葉ですらないそれは天を突く産声であった。

緑の異形、ギルスの像が少女、難波祝(なんばはじめ)の姿に重なり、その姿を、存在を塗りつぶす。

後に残るのは、火のエルと人間の混血児。

驚異的な力を、混血特有の多くの代償と共に備える異形の戦士だ。

脳は闘争本能に熱され、天使の力を思うままに振るう代価として人としての残り時間を擦り減らす宿命の戦士。

だが、その運命は捻じ曲げられる。

 

賢者の石を内蔵するメタファクター。

ギルスの力の源に隠れる様に埋め込まれたベルトが、電光を走らせながら無尽蔵に溢れる力を押さえつける。

全身に寄生し、装甲にも武器にもなる寄生生物達に指令を下し、その構造をより強固に、安定した形に作り変え、ベルトに搭載された宿主の意識のバックアップ兼制御AIが、本人の意思に同調し、興奮状態を抑制。

 

常のギルスを知る者が居れば、その外見に驚くだろう。

生物の外骨格、亀の甲羅、虫の外殻、爬虫類の鱗にも例えられる生体装甲はまるで卸したての鎧の様に滑らかに、ハードスキンですらレザースーツのような美しい光沢を放っている。

格納され、今は伸長していないクロウもまた、切れ味の良い刀剣の如き鋭さを備えていた。

 

「ふぅぅぅぅ……」

 

緊張を解すための深呼吸。

しかし、呼気と共に漏れた声から恐怖の色を感じる事はない。

天使の力が齎す高揚感は、ベルト搭載のAIにより完全に制御されている。

戦闘に対する恐怖心が過剰な場合、恐怖を戦闘行動が可能な程度に抑えるため、やや強めに高揚感が残される。

力がある、戦える。

高揚感と打ち消しあった恐怖による肉体の緊張すら、精神的な緊張から来るものであると誤認させているのだ。

 

一歩踏み出す。

二歩、三歩と歩く速度は加速していく。

最早躊躇いはない。

ベルトの機能だけではない。

ベルトの精神安定はそれ単体では意味をなさない。

戦わない、逃げる、という選択を取るのであれば、ベルトは逃走の為の最適解を頭に浮かび上がらせ、的確に逃げるための動作のみを補助し、立ち向かう為の勇気を錯覚させる事はない。

 

戦士として機能を宿主に与える為には、宿主の心に覚悟が必ず必要となる。

覚悟無きままでは戦えない。

戦おうと思う心があればこそ、ベルトは戦う為の道を整えるのだ。

 

「あぁぁぁぁぁっ!」

 

自らを奮い立たせる為の雄叫び。

恐怖に打ち勝つ為ではない。

眼の前の化物を。

()を。

倒す。

 

いや、

()()のだ。

 

はっきりと目的を意識する。

身体が熱を帯びるのを自覚できているだろうか。

攻撃的思考に引っ張られるように装甲の深緑が塗り替わる。

どくどくと脈打つ鼓動、ごうごうと流れる血流。

装甲を染めるのは自らの血にも似た赤。

烈火の如き炎の色。

走り出したその時から姿を見続けていたのなら、ハードスキンに覆われた筋肉が僅かに膨張している事に気がつくだろう。

元から赤い複眼はより鮮やかな赤光を帯び、獲物を睨めつける。

 

「っゃあっ!」

 

気の抜けるような甲高い叫び。

しかし、それに付随する拳が空を裂く音は重い。

効率的に相手を殴り、破壊する方法など一切しらない、走るフォームから連続した、全身を振り回す様な大ぶりのパンチ。

ぼっ、と、空気の壁を抜く様な鈍い音と共に、拳は変形途中のジャッカルロードへと迫る。

 

直撃すれば、人間を遥かに超える強靭な肉の器を持つマラークでも唯では済まない一撃。

それに反応したのはジャッカルロードか、消えかけのオルフェノクの闘争本能か。

ざっ、と、足を揃え、跳躍。

ギルスの上を飛び越えるうちにも変形は続き、着地と同時に頭上に光輪を浮かび上がらせ、自身の獲物である断罪の大鎌を引き抜き、振り返る事もなく斬りつける。

見るまでもない、という事か、それは戦士の力を持ちながら戦士の動きができていないギルスへの侮りであった。

 

それは正しい選択だった。

ギルスの持つ超身体能力と言えど限度があり、全力で拳を振り抜いた後では、背後からの奇襲に対応できない。

通常のギルスであれば、仮に腕で防ごうとも斬り飛ばされ、振り抜いた大鎌に腸を抉られていただろう。

だが、ここにあるのはかつて世界に多く居た野生のギルスとは訳が違う。

それを、ジャッカルロードは大鎌越しに感じる硬質な金属の感触と共に思い知る。

 

とっさに大鎌を受けたギルスの前腕。

赤く染まった全身の装甲の中で、大鎌を受けている腕だけが、鈍い銀に染まっていた。

 

「このぉっ!」

 

ぶん、と、銀の腕を振り大鎌を払い退け、振り返りながら一歩下がるギルス。

距離を取ると同時、銀の装甲の大鎌を受けた部分がぼろぼろと剥離し、内部から赤い装甲を覗かせる。

完全に防いだ訳ではないのだろう、刃の形に凹んだ赤い装甲に包まれた腕をぶんぶんと振って痛みを表している。

そして、手首上部から鞭状の寄生生物、ギルスフィーラーを僅かに引き出し、

 

「こっちだって」

 

もう片方の手でそれを掴み、ぶぢ、と、引き千切る。

体液すら溢れないギルスフィーラーは、ベルトによって制御された時点で毟られる事を前提とした作りに変異させられているのだ。

手の中に収まったギルスフィーラーの断片にモーフィングパワーが流し込まれ、ギチギチと音を立てて成長。

ゴ階級のグロンギやクウガのそれとは異なる形での武器の生成は、ギルスの武装が寄生生物である事を想定しての特殊なものであり、アクセサリを武装に変換するというよりも、人間態から怪人態への変異に近い。

触手状寄生体の橙を柄に、爪状寄生体であるギルスクロウの金を刃に。

手の中に収まるのは大振りな薙刀、いや、柄と同じほどもある刃から考えれば長巻か。

 

ギルスが長柄の刃を持ち出したのを見て、ジャッカルロードもまた、様子を見るように距離を保ち、数秒の対峙の後に持ち手を滑らせ大鎌を短く持ち、距離を詰める。

明らかに使い慣れていない武器、自らの大鎌に合わせるように選んだであろう長巻を見て、ギルスの武器の適正距離ではないインファイトを選んだのはやはり正しい判断だ。

古来より大鎌を愛用してきたジャッカルロードにしてみれば、大鎌の本来の間合いの内側での戦い方にも一日の長が有る。

柄で受けられたとして、本来の攻撃部位である刃が届かないというのであれば意味がない。

 

だが、ジャッカルロードの取った戦法は、慣れない人間が長柄の武器を使った場合の対処に過ぎない。

今、長巻を手にしているのは、戦い慣れていないとはいえ、ギルスなのだ。

 

「せぇ……のっ!」

 

迫るジャッカルロード目掛けて、ギルスが躊躇いなく長巻を振りかぶり、叩きつける。

大太刀を使った大上段に近い動きか?

いや違う。

そもギルスである少女に長柄の刃物を用いての戦闘経験は無い。

それは或いはバレーのスパイクであったかもしれないし、野球のバットのスイングであったかもしれない。

刃を立てる、という基礎すら知らぬ少女の、破れかぶれに棒切を振り回すも同然の一撃。

しかし、その膂力は、魔石により制御、強化されたギルスの膂力に他ならない。

 

無意識の内、ベルトからの補助によりしっかりと振り下ろす方向に刃を立て、物を殴れば十トン、いや、十五トンは堅い腕力により、身の丈ほどもある長物が振り下ろされる。

その威力は如何程か、そして、その振り下ろされる速度たるや。

本人であるギルスの少女も、そして、ギルスとして平均的な動きを想定して走り出したジャッカルロードも、知りはしなかった。

まるで狙って振るわれたかの様に、ジャッカルロードの上半身を、短く構えられた大鎌ごと袈裟懸けに、ギルスクロウを元に作られた長大な刃が切り裂く。

鎖骨、肩甲骨、肋骨を叩き割り、肉を、臓腑を斬り裂き、刃が止まる。

 

長巻からギルスの手が離れる。

手に残る感触に、生き物の肉体を切り裂く感触に怯えて、という事ではない。

戦闘時、余分であるとベルト内蔵の補助知能によって判断された感情は極端に抑制され、常に戦闘に適した精神状態が維持される。

故に、次に取る動きは決まっている。

 

「はぁぁぁぁぁぁ……」

 

得物を破壊され、上半身を半ばまで切り裂かれ半死半生のジャッカルロードの眼前で、ギルスは再び一歩だけ距離を取り、右半身を前に。

地面を踏みしめる左足に、そして、腿を大きく持ち上げ、膝を折り畳んだ右足に、電光が纏わりつく。

筋密度が、骨密度が極端に向上し、一瞬の瞬発力が引き上げられる。

そして、右足の踵、ギルスヒールクロウが、まるでハイヒールの如く踵の下へと伸びていく様が見えるだろうか。

 

「せいやあっ!」

 

劈くような炸裂音。

重なるように放たれたその音は三度。

地面を、アスファルトを砕きながら踏みしめた左足から。

鋭角な、文字通りに刃と化した踵を持つ右足がジャッカルロードへと伸び、その身体を激しく蹴り穿ち。

体内に、心臓付近に潜り込んだギルスヒールクロウが、体内で強力な爆薬と化し、脚が引き戻されると同時に根本から折れて点火。

 

そして。

右の蹴り足が地面に降りる。

身体を守るように、敵の復活に備えるように、ギルスが残心を取る眼の前で。

上半身に蹴り穿たれた跡を大穴として残す白いジャッカルロードが、光輪すら浮かばせる事無く、灰すら残さず、焼滅した。

 

―――――――――――――――――――

 

その光景を見ながら、由来不明の精神的衝撃に惚ける事無く、周囲の視線とカメラの有無を確認できたのは、間違いなく経験が生きたのだろう。

周辺に監視カメラ無し、命がけのマスコミも野次馬も無し。

野次馬、通行人が無かったのは、十中八九、ジャッカルロードに乗っ取られたオルフェノクのお陰だろう。

怪人態でこちらに近付いてきていたから間違いなくスマブレ関係のオルフェノクだということはわかったが、運良く周辺の人間を使って繁殖活動を行っていたところだったのか。

念の為、この公園を写している可能性のあるレンズと記録媒体を念動力で残らず破壊し、難波さんに近づく。

 

赤い装甲を持つギルスから人間の姿へと戻りながら、振り向く。

笑う。

 

「……わたしも、戦えるから」

 

無理矢理に笑っている。

無意識に笑えているのは顔ではなく膝だ。

かくかくと震えているのがこの距離でもはっきりと解かる。

なんなら声すら震えているのが解かるだろう。

 

新式のベルトに、平時の思考を極端に誘導する効果は無い。

戦闘時の感情の制御、記憶のバックアップを元にしたAIとの一部意識同調による適切な戦闘手順への誘導など、脳に作用する機能は多く盛り込んでいるが、根底にある装着者の意識は大事にするようにしている。

そのため、戦いが終われば、トラウマにならない程度に戦闘中には抑制していた恐怖や不快を感じることができる。

 

「だから」

 

言葉の途中、かくん、と、膝が折れて倒れそうになるのを抱きとめる。

抱き止めた身体は、小刻みに震えていた。

ぎゅう、と、力を込めて抱きしめる。

恐る恐ると抱き返してくる腕。

暫くすると、震えは止まっていた。

 

「だから?」

 

「……ん、今は、いいや」

 

「そっか」

 

「そうだよ」

 

肩に乗る難波さんの頭が傾き、後頭部側面に顔を埋められているのがわかる。

同じ様に俺の顔も難波さんの後頭部に寄せられる形になり、編み込まれた後ろ髪から心地よい香りが。

どことなく、どこかで嗅いだような香りだな、と。

そんな事を考えた。

 

―――――――――――――――――――

 

結局、あの後はホテルに戻り少ない手荷物を纏め、地元へととんぼ返りすることと相成った。

俺は元は適当に人目のない場所から自宅の自室へと転移するつもりだったのだが、自分以外を一緒に安全に転移させられるのかわからなかった為、難波さんと共に新幹線での帰宅。

一人で帰すのも何か違うと思い、家に送るために一緒に帰る事にしたのだが、難波さんの挙動がおかしい。

 

手元の回収した映画のパンフレットに視線を落としつつ、ちらちらとこちらの顔を脇目で確認。

ちらちら見ている、かと思えば、俺が気付かないふりをし続けていると、じぃ、と露骨に見つめ始める。

で、顔面の筋肉が弛緩した様な、緩い笑みを浮かべる。

視線を向けると、スンッ、と、すまし顔になり、パンフに視線を戻すか明後日の方角を向く。

 

不審だ。

一瞬だけ、ベルトの人格・AI相互同期システムが深刻なバグを抱えていたのか、とも思ったが、バグで起こるような挙動ではない為その可能性は省く。

 

「どうかしたの? 怪我でもした? さっきのとこ?」

 

「それは大丈夫、もう全然痛くないから」

 

「そっか……初めてで結構派手にやったから、今になって痛みがぶり返してきたのかなって」

 

此方の言葉にしばし考え、ジト目を向けてきた。

心なしか頬が赤い。

戦闘の興奮を引きずっているのだろうか。

戦闘終了後に戦闘時の精神高揚を除去する機能はないので、そのせいかもしれない。

 

「なんか、言い方っていうか、表現おかしくない?」

 

「? どこかおかしかった?」

 

「う、ううん、たぶん、わたしの勘違い」

 

ぶんぶんと頭を振る難波さん。

言語機能に問題が発生している様にも見えるが……。

ベルトの脳に働きかける機能には、言語に関わる部分に影響を与えるようなものは存在しない。

ベルトは負傷を回復はさせてくれるが、疲労に関しては普通に蓄積される。

勿論、あの短い戦闘でそこまで疲れが溜まるとは思わないが……。

何しろ、初めて、意図して人型の生命体と戦い、自分の意志で殺したのだ。

精神的な疲労が蓄積していたとしても不思議ではない。

 

「駅に到着したら起こすから、それまで眠っていていいよ。疲れたでしょ?」

 

「うー、もうちょっと、お話もしたいんだけど」

 

「お話は、帰ってからでもできるよ。話す機会も前より増えるし。……話さないといけない事も、沢山あるから」

 

「………………寝顔、まじまじと見ないでね?」

 

「まじまじとで無ければ見ていいの?」

 

「……おやすみ」

 

ぷい、と、そっぽを向かれてしまった。

気難しい人だ。

でも、彼女がとても優しくて、強い人だという事を、俺は知ることができた。

それはきっと、とても素晴らしい事だ。

窓に映る、少し頬を膨らませた難波さんの寝顔を見ながら、彼女のような人が友人で居てくれる事を、この世界には実在しない善性の神に感謝した。

 

―――――――――――――――――――

 

そして、その優しくて強い人が、俺の正体を知った上で、自分も戦える、戦うことが罪ならその罪も背負う、なんて事を言ってくれたのだ。

浮かれない筈がない。

つまり、だ。

 

「新たなムセギジャジャが登録されたと見てよろしいですね」

 

家に着くなりただいまも言わずにそんな事を言いながら自室に入ると、クッションに座って漫画を読んでいたジルが半笑いで口を開いた。

 

『おいおい』

 

いや、まぁ、うん。

確かに、だ。

難波さんが自分から戦いの場に出てきて、命を賭けて戦うようになってしまった事に、一抹の寂しさと不安はあるのだ。

できれば、死んで欲しくない相手には戦いの場に出て欲しくはない。

これはまず本心としてある。

何しろ、戦いは基本的に負けたら死ぬのが当たり前なのだ。

変身アイテムだけ砕かれて終わり、なんてのは、一部の特殊な場所でのみ適用されるルールに過ぎない。

そんな場所に、そんな行いの中に、何故友に居てほしいなどと思えるだろう。

 

だが、不幸な話ではあるのだが。

難波さんはギルスなのだ。

あの被検体さん、葦原涼と同じギルスなのだ。

それはつまり不幸の星の下に居るのと同義ではないだろうか。

いや、そこまでは言わないにしても、ギルスである、アギトと同種の、火のエルの力を持つ存在である、という時点で、どう言い訳しても逃れられない程に不幸を背負っていると言っていい。

老化現象をベルトで克服できたとはいえ、ギルスである、というだけで、今年を乗り越えることができるかは完全に運任せになってしまう。

運任せになる上に、水のエルや地のエルがアギト狩りに参加する以上、ある程度の力量がないと運任せにまでたどり着く事もできずに死ぬ可能性すらある。

 

「改めて思ったよ、俺が甘かった。変な夢見てた、と言い換えても良いな」

 

『うえ?』

 

首を傾げるジルにうなずく。

関わらなければある程度安全、なんて、そんな訳がないのだ。

彼女が、難波さん自身が狙われる理由がある以上、俺に関わろうが関わるまいが、常に常人よりも遥かに死の危険に多く直面することになる。

それはエルロードを相手にする場合に限った話ではない。

 

例えば、街を歩いていてオルフェノクの繁殖現場に出くわす可能性も無いではないし、魔化魍が暴れているのを目撃する可能性もある。

東京に行かなければマラークとは出会わなくても、この地方都市ですら、うっかり巻き込まれてしまう様な戦いは存在する。

そして、そんな場面で、難波さんがちゃんと我が身可愛さにさっさとしっぽを巻いて逃げてくれるかはわからないのだ。

そして、最終的に肉の器を得たエルロードは三体この地上に現界する。

彼等の活動範囲が何処までの広さになるのかが計り知れない以上、この町も決して安全ではない。

明確に、アギトになる可能性を持つ人間を殺す事を使命としたエルすら居る。

はっきりと言及されていないだけで、奴が地方都市に出向いて、平和に暮らしていた覚醒済みのアギトやギルスを片端から殺していた、なんて可能性は、決して0ではない。

 

「戦って生き残れるかはわからない。でも、戦わなければ死ぬだけだ」

 

戦っても生き残れない、なんていうのは、ただの弱音だ。

なら、戦わなければよかったとでも言うのか?

戦う力を行使しなかったからと言って、脅威は見逃してくれるのか?

違う、そうじゃない。

結局、戦って生き残れないのは力が足りないからだ。

戦って、戦って、確実に敵を屠ることができるだけの力を得れば、敵の全てを取り除くことができたのなら。

そこに、生き残る目が出てくるのである。

 

「彼女をムセギジャジャに、強い戦士に、折れない剣にする。俺が鍛える」

 

最低限死なないように、なんて、日和った言葉を言うつもりもない。

俺が守る、なんて、出来もしない事を言うつもりもない。

彼女に戦う術を教え込む。

技を教え、実戦を積ませ、ズやメなどを通り越し、ゴと戦っても勝てる強さを持ってもらう。

 

『うああえうあお』

 

「負けて死ぬよりずっといい」

 

とはいえ、実戦を積むという一点を除けば、鍛錬自体はそれほど難しくない。

俺は習慣として鍛錬を続けているが、ベルトを巻いた時点で高い学習能力と記憶力が保証される。

殴り方を教える。

蹴り方を教える。

斬り方を教える。

撃ち方を教える

動き方を教える。

運が良い事に、一通り教えるだけならそう時間は掛からない。

 

「それよりちゃんとお礼は言ったの?」

 

「……そういえば忘れてた」

 

電話しなくちゃ、とは思うのだけど。

母さん、いきなり幻獣ドラゴン拳の人みたいな距離で話しかけるの止めて。

心臓止まったかと思ったわ。

言っても止めなさそうだし、自室の入り口で立ったまま話してた俺も悪いから言わないけど。

 

―――――――――――――――――――

 

「そんな訳で改めて、今日は色々とありがとう」

 

『いいよ、だって、わたしがしたかったからそうしたんだし』

 

なんやかや夜も遅くになってしまい、家に押しかけるような時間でもなく、明日に回すのも悪いかな、と思い、電話で感謝を告げる。

直接顔を合わせずに、というのは不誠実かな、とも思うが……。

直接顔を突き合わせて感謝の言葉を改めて告げるのは、少しだけ照れくさい。

だから、今回はこれで勘弁して貰う事にしよう。

 

「でも……なんで、ここまでしてくれたの?」

 

『え?』

 

「すごく嬉しかったけど、難波さんがそこまでする理由があるかなって」

 

それこそ、わざわざ東京に居る俺に会いに来る、なんて手間を掛けなくても、放課後に家に訪ねてきてくれればできる話だったのではないだろうか。

いや、手間だけの話ではなくて。

こう、なんと言えばいいのか。

俺との縁は、戦う決意だなんてものをしてまで、結び直さなければならないものなのだろうか。

いや、これも違うか。

説明が難しい。

 

『そ、それを聞くの? 今更?』

 

「ごめん。察しが良い方じゃないんだ。だから、なんでかなって、理由があるなら教えてほしい。今後の参考にするから」

 

『ええぇっ……? う、うぅんとね?』

 

「うん」

 

強い困惑に揺れ、心なしか上擦った声の難波さんに先を促す。

世間で残虐な儀式殺人を未確認を用いて行う謎の存在として認知されている二十二号を、その正体を相手に『優しい』などと曰い、共に戦おうと思えるほどの理由だ。

気にならないと言えば嘘になる。

是非とも難波さんの口から聞きたい。

 

『うー……』

 

唸り声に付随する、たっぷり数十秒はあったかもしれない沈黙。

 

『と、友達だから、かなぁ?』

 

上擦った声で、更に語尾の音を裏返るほど高くしながらの返答。

 

「友達だから……なるほど」

 

『そ、そうだよー、友達を見捨てるとかできないしぃ……』

 

「流石、難波さん。その友情に応えられるよう、俺も頑張ろう」

 

電話越しにもその身体がぷるぷると震えているのが解かる程に声が震えている。

済まないことをした。

彼女から見て友人である俺に対して、改めて友情を確かめるように友達だから、などという発言をさせるのは些かデリカシーに欠ける行いだった、猛省せねばなるまい。

 

しかし、視界の端でジルがアメリカを感じる程のオーバーリアクションで肩を竦めて呆れ顔を見せているのは一体なんなのか。

知識量が増え、はっきりとした感情表現が増えたことは喜ばしい事だけど、そのリアクションは何処で学んだんだ?

何に対して呆れているかもわからないし。

やはり、年頃の女性というのは、誰も彼も気難しいものなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 





色々と人間関係が拗れたエピソードでしたが
最期はヒロインの呆れ顔を中心にアイリスアウトして万事解決
これでややこしい人間関係は処理できたぞ!
次回からは残虐だ!

☆戦闘力極振り女心理解度初期値マン
でも友達が恐怖とかで震えていたら抱きしめたりするぞ
( ゚д゚)、ペッ
今回見てるだけだったけど、周辺の映像記録媒体は全て破壊しておいたので被害額はかなりのもの
周辺に居たかもしれないマスコミはオルフェノクくんが始末してくれていたのでそこだけは感謝している
クラスメイトである難波さんの覚悟と友情に感動
ン人公「こんな友達思いの素晴らしい人を死なせる訳にはいかない」
ラ人公「死なせない為に鍛え上げて一流の戦士にしなきゃ……」
友情に報いるために心をンからラにして特訓のメニューを作り上げる
まぁ特訓言うても学校終わった後に何時間かいっしょにとれーにんぐ!(グロンギ式)するだけだからへーきへーき
心のつかえが取れた
友の友情が明確な心の支えになった
たぶん食いしばり回数とかが増えた

☆ちょっとした恋心のため、日常から戦いの日々、ライダーの日々にずるずると落ちていく転落系クウガ型グロンギ式ギルスメイトヒロイン難波祝(キルマーク1つ目)
祝、殺人処女喪失
普通の処女より先に殺しの処女を失ってしまうとか可愛そうと思うかもしれないけど、それが彼女が選んだ道やでな……
戦いの中で痛みに慣れれば膜ぶちされる時も辛くないかもだし
最終的にエルに狙われるからという理由で戦いのいろはを叩き込まれる事になるのをこの時はまだ知らない
知らないので、「あんな抱きしめたりしてくれたのに察して無いの?! え、今ここで改めて言わないといけないの?!」みたいな葛藤の末に赤面自己嫌悪の中で告白先延ばしをしたりもできる
人間関係的な問題は解決したので元の準レギュラーに戻るよ、この人が居るとラブコメになっちゃうからね
敵との対等な勝負とかの時は出張るよ
戦闘形式としては、魔石の力で出力が増したギルスの膂力を使って大雑把に戦うパワーファイターだよ
当たるとでかい攻撃力にスーパーアーマーがついてる系の戦闘スタイルだよ
基本的に高い膂力を恐怖心を誤魔化す精神的高揚に任せて全力で振るうので、割りと技巧派なASHRの兄貴とは異なる戦闘スタイルになるよ
ASHRの兄貴が青メインで高速撹乱で戦うのに対し、赤メインで勢いに任せて戦うよ
この説明文は全てラッキービーストの声で読み上げている感じだよ
恐怖に打ち勝ち恋心と勇気を胸に戦うフレンズなんだね
電話越しにでもヘタレず告白してればフレンズじゃなくなれたのにね
悲しいね
そんな悲しい戦士の変身後の姿がこちらだよ

☆魔石搭載型ギルス
魔石搭載という点よりも制御装置である後付のベルトがキモになるよ
超変身による明確なフォームチェンジ機能は廃止されたよ
敵を眼の前にして殴りかかると装甲が生えていく一話の五代さんの如く、戦闘時に必要に応じて必要なパーツが順次変化していくんだ
防ごう、という意思に応じて、対応部位が順次タイタンフォームに変わるから、全身に銃撃を浴びる、相手の攻撃がまんべんなく絶え間なく全身に加わる、みたいな状況でもないと全身鎧にはならないよ
逆に、殴り合う為のマイティ、跳躍の為のドラゴンは全身の構造がキモになる場合があるからなりやすいよ
一瞬、一撃だけ攻撃を受けたい、という場合、装甲表面が瞬時にタイタン化するけど、その場合の装甲厚はそれほどでもないので下にダメージが通る事もあるよ
ベルトにバックアップされた記憶を元にしたAIが防御するかしないかを判断するから、攻撃が見えていれば大体対処できるよ
逆に、知覚できていない攻撃に対しては無力だよ
バイクタイタン戦法でも無い限りは防御エフェクトみたいな形に落ち着いちゃったね
また、バックルは基本的に変身の意思に応じて実体化するけど、弱点である為にアギト、或いはギルスである場合はオルタリングかメタファクターの下に格納されるよ
また、フォームチェンジの廃止により、フォームごとの武器固定制度は無くなったよ
ペガサスフォームに関しては登場してから説明するよ
改良型なだけあって全体的に性能は高いけど、勿論アークルやゲドルードとは異なる欠点が存在するよ
でも、普通に戦う分には問題ない欠点だから安心してね

☆ヒロインちゃん
やれやれ系ヒロイン、まさか主人公なのでは
いい加減表情も豊かになってきた
ちょっと間をおいてからメインエピを消化する予定

☆ママン
癖になってんだ、足音消して歩くの
みたいな事ではないが、偶に気配無く突然現れたりする
ODEシステムだ、みたいに入り口にもたれかかって説明したりするのにうってつけ
逆に本気を出すと足音に威圧感が出たりしませんか?
カシャン、カシャン、みたいな足音は不味いですよ!

☆一般通過犬系オルフェノクくん
お、なんやあの公園、カップル居るやん殺したろ!
みたいな感じで行きがけの人々に使徒再生を施しながら近寄ってきたのが運の尽き
みたいな感じだったんじゃないですかね
そうでないと怪人態でいた事の理由がないっていうか
怪人態で居るオルフェノクとか大体スマブレの手先でしかないよね
人間として生きたいならなにもない時に怪人態になるわけ無いし
だから、一目見てオルフェノクだなって思ったらみんなもちゃんと殺しておこうね
頭の良い個体は言い訳をしてきたりもするから話を聞く必要はあんまり無いからね

☆ジャッカルロード
走力よし、鎖を使った拘束よし、鎌部分が大きすぎない長柄武器の大鎌よし
戦闘を書きやすい敵をないがしろにしてはいけない(戒め)
でも悪いなのび太、この戦闘、新ライダーのお披露目回なんだ
悪いな、そのポッド、一人乗りだから、お前だけでも……
かならず、この、くそったれな未来を……変えてくれ……!
みたいに、イッヌの群れの結びつきは強いから仲間と共闘してたらどっちかがどっちかを庇って死ぬ、みたいな展開もあるかもしれない
なおギルスから逃れても超広範囲の探知能力を持つエルロード相当(推定)のアギトが居るらしい
アギトやギルスな人類からすると今年は糞ゲもいいところだが、アギトやギルスの候補者を殺すよう言いつけられたマラークにとっては無リゲであった

☆いただきもの!
またしてもまたしても、ナナス様よりイラストをいただきました!


【挿絵表示】


スーパーヒーロー着地だ!
デップーにはできないスーパーヒーロー着地!
そして


【挿絵表示】


タイタン変形前
もう硬そう
で、銃弾とかが降り注いで


【挿絵表示】


装甲が寄生獣みたいにぐにぐに伸びてこう
瞬間的な攻撃への対処じゃなくて連続した弾幕に対する変位だから、装甲厚は元のクウガタイタンから据え置きです
堅い(確信)

ギルスファンには嬉しい多量のイラストでした
これらのイラストのお蔭で戦い慣れていない難波さんも気兼ねなく戦場に叩き落とせます!




龍と兎でベストマッチがありえない?
どうせ、カップリング成功!
ナイスカップリング!
とか言わせたいんやろ? ん?
そんなのはなぁ
ダメです!
結局戦いをともにした相棒こそが一番ヒロインに見えるってそれ一番言われてるから
そしてビルドの世界で影で暗躍していたブラッド属は……ナオキです

そんな男の世界なビルドももう終わりですね……
次は平成最期のライダーだけど、見た目の批判は毎年あるから気にすんな
エグゼイドも正直初見では「あー平成ライダーもこれで終わりかー」みたいに思ってただろうし
始まればきっと良い方に転がるって!
つまり始まってみないと全ては謎なのだ
このSSの次の話もそう
書き溜めは一切無し
予定は未定で未来のことは誰にもわからない
テオス相手にどう決着を付けるか、くらいしか考えてない
どうする次回、どうなる次回
それでもよければ、次回も気長にお待ち下さい
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