オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
未だ事件の傷跡残る東京の街は、しかしそれでも人々の営みが戻りつつあった。
ビルが崩れ、アンノウンによって怪死した人々の死体が溢れかえっていたあの日の地獄染みた光景が嘘の様に、とは行かないまでも、生き延びた人々はそれぞれの生活に、仕事に追われている。
一年も経たない内に、二度も怪物の群れに襲われ、慣れが生まれつつあるのか。
戦場となったのが企業ビルの立ち並ぶ中で、住宅地にまではそれほど被害が及んでいなかったのも原因だろうか。
それとも、人間という生き物が元々それくらい頑丈にデザインされているのか。
それは誰にもわからないし、表立って口にするものも少ないだろう。
アンノウンによる超能力者襲撃事件そのものが、未確認による連続殺人事件と比べて一般に知られていなかった事も大きい。
カメラに映らない、頭の中以外に正確な記録を残しておく事が難しいというアンノウンの特性があるため、遭遇して生き残った被害者が居ても、大々的にメディアに取り上げるのが難しいのもあるだろう。
警察、並びに、幾つかの民間組織までが情報統制に手を回している、というのも一因ではある。
だがやはり、最も大きい原因を挙げるとすれば。
人は、理解が及ばない対象に意識を向け続けるのが難しい、という事だろうか。
東京を、いや、やもすれば日本の空を覆い尽くす闇と光。
全容すら把握できない、自然現象に誤認してしまいかねない力と力のぶつかり合い。
それは、今の人間が目撃したとして、正確に認識することも、理解する事も難しい。
禁忌、という程では無いにせよ、あの怪奇現象に関して積極的に口にする者はそう多くない。
死傷者を多く出した事件という事でオカルト番組で茶化される事も無く、ニュースではある種の災害の一種の様に扱われている。
ただ、何が起こったかを正確に理解できている人間が居ない一方、明らかな変化が起きたことを知る者は多い。
あの日を境に、アンノウンが姿を現さなくなったのである。
―――――――――――――――――――
冬が迫り、吐く息も白くなり始めた東京都千代田区。
通勤ラッシュが始まるよりも僅かに早い時間。
皇居付近の道を、ジャージに身を包んだ一条薫が走っていた。
元より警察官として一定以上の体力を備えている一条ではあるが、現在の身体能力は常人のそれを遥かに凌駕している。
皇居の周りのジョギングと言わず、短距離走かと見紛う速度で延々走り続けたとしても息が切れる事はそう無いだろう。
身体を鍛える、という点で言えば、通常のジョギングがどれほど効果的であるかは疑わしい。
だが、一条は身体を鍛える為に走っている訳ではない。
端的に言えば、彼は時間を持て余していた。
未確認生物対策班の主力であるG1システムが先日の事件で酷使され、大破してしまっている為、その専属装着員である一条もまた、しばしの暇を出されたのである。
……実のところを言えば、一条の身体には既に傷一つ無い。
長時間の戦闘による多少の疲労こそあれ、G1を使わない通常の業務であれば問題なく熟せる程度のものでしかない。
が、それは一条が特殊な事情を持った人間であるからで、彼以外の人間の殆どはそうではない。
それなりの数の殉職者が出た装甲服部隊の中で、誰よりも先頭に立ち戦った一条が、怪我一つなく即日で職務に復帰するのは怪しまれるし、その姿を見て、実際に職務に支障を来すほどの怪我や疲労を残している他の装甲服装着員が無理をしかねない。
そういった諸々の判断から、一条は普段の職場に近づく事すらやんわりと禁止され、療養の為の休暇という形で休みを取らされている。
いつまで、と言われて、あと何日、と断言できるほど正確な日取りが決まっている訳ではないが、ほとぼりが冷めるまでは、仕事に復帰する事はできないだろう。
だが、それもそう遠い先の話ではない。
G1の修復(全身に渡る金属疲労とパーツの歪みからほぼ新造される事が決まっている)も、同型とも呼べる先行量産型の製造ラインからパーツを流用可能な為、それほど長くは掛からないという。
通常の医者に相談するわけにも行かない身体に関しても、昔からの友人である椿に見てもらう事で、一応の確認は取れている。
悪化はしていないが、進行はしている。
決して良い傾向ではないが、現状を考えると悪いとも言い切れない。
だが、今後も今の様な事を続けるのであれば、これ以上無い程に万全だ。
そう、複雑な顔で告げる椿と交わした会話を思い出す。
『二十二号は、お前みたいなのを増やしたいのかもしれん』
『俺か?』
『或いは、五代みたいな。……いや、五代じゃ駄目なのか。お前だから、って事なのかもな』
『俺だから、か』
一条が脚を止める。
気がつけば千代田区を横断し、幾つかの区を通り越し、海に出ていた。
東京湾だ。
海を見つめる。
見つめる先は千葉、ではなく、その更に向こうの、それこそ、視線の先ですらない異国の地。
思いを馳せる相手はただ一人。
「五代……」
かつて、二十二号が活動を始めて間もない頃に、五代と交わした会話。
なにより、五代の人柄を知るからこそ、二十二号の行動に、僅かながらも共感を得てしまう。
二十二号もまた、五代の様な男をこれ以上戦わせてはいけない、と、そう思っているのか。
そして、戦う事を選べる、仕事の一つとして受け入れている自分の様な人間をこそ、戦わせようとしている。
それは……奴が、彼が、誰かを頼ろうとしていた、という事なのではないか。
不器用で、はた迷惑な形ではあるが。
自分以外の誰かに、幾つかの戦いを任せようとした結果が、この身体なのだとすれば。
うつむき、握った拳を見る。
足元に落ちていた小石を拾い、海に向けて思い切り投げつけた。
ぽちゃん、と、海に石が落ちる音も、波紋も見えない。
投げた石は、見えない程遠くへと飛んでいった。
常人とはかけ離れた、それこそ、未確認と変わらない力。
しかし。
果ての見えないアンノウンの群れ。
身体を貫く無数の凶器。
幾ら強化されても、物理的に動かせない身体。
二人の、恐らくは元は人間と思しき新たな未確認、二十二号の仲間。
天を衝く光と闇の巨人。
届くものなのか。
そう口にする事こそ、諦めのようで。
不安と、疑念を飲み込む様に口元を引き締め、踵を返し、走り出す。
職場に復帰出来ないとしても、いや、出来ないからこそ、なにか出来ることがあるはずだ。
自分に言い聞かせる様にではなく、先の見えない道の中、一歩でも進むために。
その瞳は不安に揺れる事も無く、ただ、真っ直ぐに前を見据えていた。
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・一条薫/仮面ライダーG1
今年初めの未確認同時多発事件及び、無数のアンノウンの単独撃破、更にはアンノウンの大量発生事件での功績から警察組織内部でも英雄視されている。
旅に出た五代雄介の代わりとばかりに戦いの日々に身を置き、その中で未確認生命体二十二号の手によりアークルと同種の技術を用いて製造された装置を埋め込まれた魔石の戦士。
力不足を感じると共にそれを解決する方法を思いつくも、それを振り払い人としての道を歩む決意を新たにするが……。
彼の肉体がその決意に沿うかは、また別の話となる。
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視界の端、道路を挟んだ通りに見知った顔を見かけ、僅かに視線をやり、戻す。
自分から話し掛ける程に親しいという訳でなく、そも声を掛けるにも距離が遠く、何より自分もバイト中。
職場である小さなバイクショップの、外が見える休憩室の中、僅かに浮きかけた腰を下ろし、コーヒーを口に運ぶ。
言い訳じみている、と、そう考えながら、それが普通なのだと葦原は思い直す。
あの戦い。
無数の怪物に囲まれ、ビルすら崩して戦ったあの時間と、その先に見た巨人の激突。
それに思うところが無い訳ではない。
理解しかねる光景であり、そして、何時か自分たちもまた辿り着きかねない領域。
それを共有できるとすれば、あの時あの場所で共に戦っていた連中だけだろう。
それこそ、直接話題に上げずとも、取り留めのない話をするだけでも気は晴れるだろう。
だが。
そう、勘違いをしてはいけない。
怪物の様な姿に変身し、戦う事もあるだろう。
あるいは、あの二十二号の様に、人の形すら捨てる時も来るのかもしれない。
それでも、今の自分達は人間に過ぎない。
警察だの医者だのから言わせれば人間に分類されるかは怪しいが、少なくとも、葦原涼は未だに自分が人間である事に疑問を懐いてはいなかった。
普通の人間とは違うのだろう。
アギト、いや、ギルス。
そう呼ばれるなにかである事も、何時かその名前すら使えなくなるかもしれない可能性がある事も知っている。
だが、普通に生きていく上で必要のない力があったとしても。
物を食べなければ腹が減るし。
眠らなければ眠くなる。
ギルスとして目覚めてから、葦原涼は多くの物を失ってきた。
平穏な学生としての身分と生活、尊敬する恩師との関係、数少ない肉親、信頼できたかもしれない新たな知人……。
そして、ギルスであるが故に舞い込んでくる戦いの日々。
普通に生きていたなら覚えることも無かっただろう、人間大の生き物をその手で殺める感触。
戦いへの忌避感は、不思議と無い。
だが、だからといって、無理に自分を戦いの中にだけ置く必要は無いのだ。
いつか、そうでなくなるとしても。
今はまだ、力を持っただけの人間なのだから。
バイクのエンジン音とブレーキ音が響く。
見れば、葦原が店番をするバイクショップに一台の赤いバイクが乗り入れて来ていた。
葦原の聴覚はそのエンジン音とブレーキ音から、バイクの大まかな状況を瞬時に把握する。
中々に荒っぽい客が来たらしい。
店主の親父さんの様に客に深入りするつもりは無いが、一言二言言っておいた方がいいだろう。
この店で整備をしたバイクで事故を起こされても困る。
客が減っても商売的に問題があるだろう。
そんな事を考えながら、葦原は椅子から立ち上がり、気難しそうな客の元へと歩き出した。
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・葦原涼/仮面ライダーギルス(調整体)
事故による昏睡状態の最中、あかつき号事件に巻き込まれた父親が死に際に残したアギトの力を受け、ギルスとしての力に目覚めた。
ギルスとしての目覚めを切っ掛けに、恩師に裏切られ、恋人と別れ、父親と死に別れる。
父親の死の真相を探る中で未確認生命体四号を装う未確認生命体二十二号と遭遇し、魔石を用いた変身装置を埋め込まれる。
その後、多くの戦いを経て人間らしい生活の尊さを悟る事になるが……。
戦士としての力が必要とされたなら、躊躇うこと無く戦いの中に飛び込むだろう。
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さて。
戦いの顛末がいかなるものであったか、と言われれば、実のところ、俺自身それほどはっきりと理解できている訳ではない。
なにせ生物的な器官が全て消滅して、文字通りの力の塊となってのぶつかり合いだ。
ぶつかり合いという表現すら適切とは言えないかもしれない。
方向性の違う二つのエネルギーが干渉しあっているというか。
幸いだったとすれば、完全に反発し合う様な状態でなかったという事だろう。
擬似的なビッグバンとも呼べる現象を起こしてテオスを弱体化させたは良いが、仮に俺がそのまま光のテオスとしての属性を素直に得た存在であったなら、闇のテオスの体外で再び同じ様な現象が起きた筈だ。
元から魔石や霊石が闇のテオスと同種の力であった事、正面対決で負けたやつの力を貰っても負けるだろうという判断、何もかも光のテオスの想定の中というのが気に食わないという嫌悪。
これらが上手いこと噛み合ったお蔭で、周辺にそう大きな被害を出さずに済んだのは幸いだった。
ともかく、これまで経験した戦いとはまるで異なるものであった為、しっかりとトドメを刺せたか、というか、殺せたかがわからない。
少なくとも、俺が死んでいないという事は、俺が一方的に負けた訳ではないという事だけは確かなのだが。
だが……、なんとなくだが、もう闇のテオスが脅威として立ちはだかる事がないという一点だけは、奇妙な確信がある。
そして、俺の身体がどうなったかと言えば……。
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とある地方都市の外れ、平日ともなれば登山客すら立ち入らない寂しい山の一画に、ゆっくりと、三つの人影が降り立っていた。
ライダースーツを身に纏ったジルと祝、即席のマントで身体を隠したグジル。
よくよく目を凝らせば、或いは、何らかの霊的な視力を持ってその現場を見れば、輪郭のぼやけた光の巨人の手によって地面に下ろされたのだという事に気がつけるだろう。
「ありがとう」
その姿がはっきりと見えている祝が笑みを浮かべながら感謝を告げれば、見上げている巨人が、徐々にその輪郭を崩していく。
崩れた光は小さく纏まり、見上げる祝の眼の前で人型に収束。
白い装甲に身を包んだ二十二号が祝の目の前で実体を得て、数秒の時間を掛けて変身前の、小春交路の姿を取り戻す。
「お礼を言いたいのは、俺の方だよ」
実際に起きた出来事だけを見れば、祝とジル、グジルの戦いは、交路の復活にも闇のテオスの打倒にも深く関与はしていない様に見えるだろう。
だが、交路が告げた感謝の意は、今回に限った話ではない。
自らの秘密を打ち明けた後、変わらずに受け入れてくれた事。
ギルスの力による副作用を、いや、ギルスの力を取り除けず、ベルトの力で制御する事でしか対処できなかった事。
挙げ句、それが罪だとしても、共に戦い背負うと言ってくれた事。
とても一言で言い表せる感情ではない。
申し訳無さと有り難さとがないまぜになった感情は、交路が祝に対して常に心の何処かで抱えていたものだった。
「……お礼と言ってはなんだけど」
交路が手のひらを上に向ける。
その手の上には一つの光。
光のテオスの欠片、火のエルの断片。
「難波さんのギルスの力を、俺の中に封じておく事もできる」
限定的なものだ。
世界中のアギトの力を一時的にとはいえ身の内に収め、闇のテオスから離れた力の断片すら取り込んだ直後の交路だからこそできる処置。
闇のテオスの様にアギトの力に苦しむ事もなく、人間から取り出した力を取り込んでおける力だ。
もちろん、回収したアギトの力の大半は吐き出され、肥大化した魂の器とでもいうべきものは、時を置かずして小さくなっていくだろう。
だが、一人の人間に宿っていたアギトの力であれば、元の器に戻ったとして、さして負担も無く留めておける。
或いは何時か回収したアギトの力の如く、交路の中のアギトの力と溶け合い完全に祝から切り離す事もできるかもしれない。
無論、長い時間を掛けてギルスとしての力が再発する可能性は高いが……。
「ベルトの制御は完璧だけど、それが破壊されたら、やっぱりギルスの力は難波さんの命を脅かすかもしれない。だから」
言葉を遮る様に難波の手が伸び、交路の手を握る。
両手で包み込む様に握った手から、その手に乗せられていたギルスの力が祝の身体の中に吸い込まれる。
呆気にとられた表情を浮かべる交路に対し、祝は眉を寄せ、僅かに怒りの感情を滲ませた表情で。
「交路くん」
「はい」
祝の普段より低い声に、交路が思わず背筋を正して返事を返す。
「そういう事、勝手に決めちゃダメだよ?」
「でも」
「私は」
すう、と、息を吸う音が響く。
大きな声を出すためではない。
意を決するための深呼吸。
眉を吊り上げたその顔は怒りを顕にしているようで。
潤んだ瞳と、紅潮した頬、震える唇は、怒りとはまた異なる別の感情が込められている事を如実に伝えていた。
「交路くんと……一緒に居るって、ずっといっしょって、決めてるんだから」
交路の手を握る祝の手に力が籠もり、顔を俯かせる。
「だから、そういう事、しないで」
絞り出す様な声は震えている。
「置いてっちゃ、やだよ……」
低い嗚咽と共に、ぽたりぽたりと落ちる水滴の音。
空は雲ひとつ無い満天の星空。
鳥や獣の声すら聞こえない夜の森の中。
自らの手を握る祝の手をほぐすように解き、交路の腕が祝の身体を抱き寄せた。
「ごめん」
謝罪と共に自らを抱き寄せる交路の胸元に、祝は僅かに上げた顔を擦り付ける様に押し付ける。
子供をあやす様に背をぽんぽんと叩く交路の手。
たっぷり数分ほど身を任せた後、顔を上げず、胸元に押し付けている為に僅かにくぐもった声で祝がぽつりと呟く。
「……いいよ」
胸元で折りたたんだまま抱き寄せられていた腕を、交路の背中に回す。
「帰ってきてくれたもん。でも……」
強くは無く、しかし、はっきりと身体を押し付けるように、交路の身体を逆に抱き寄せる様に。
「…………罰として、もうちょっとだけ、このまま」
―――――――――――――――――――
難波さんを泣かせてしまった。
反射的に抱きしめてしまったが、これで間違っていないだろうか。
生き物を殺す術も、壊れた生き物を繕う術も鍛えてきた。
でも、こういう時、人を泣かせてしまった時にどうするべきなのか、思えば今生では禄に学んでいなかった気がする。
なんと声を掛ければいいのかわからず、抱き締めたまま背を軽く叩き続ける。
泣いた子をあやす方法なんて、これくらいしか覚えていないのだ。
嫌がられてはいないだろうか。
背に回った難波さんの腕と、胸元、首元に押し付けられた難波さんの顔、密着する身体。
腕の中の難波さんの感触が、体温が、今、俺が確かに肉体をもってここに存在できているという安心感を与えてもくれているのがわかる。
嫌なら難波さんから離れてくれる、という考えは、難波さんへの甘えではないか。
罰ならば仕方がない、と、そう思い、俺自身が安堵を得る為に彼女を抱き締めるのは、良い友人の在り方として外れていないだろうか。
ちらと視線をジル……と、グジル(何故か分裂している)へ向ける。
助けを求める視線を理解しているのかしていないのか、ジルは満足げな顔で両腕を組んで鷹揚に頷き、グジルは満面の笑顔で卑猥なハンドジェスチャを向けている。
とても現状で役に立ちそうには思えない。
「あぁ」
溜息。
空を見上げる。
月も無く、周囲に街灯も無い山奥であるからか、満点の星空が広がっている。
その空を、未だ埋め尽くす様に流れ続けている闇のテオスから溢れ出た力の残骸が見えるものは、そう居ないだろう。
あの力の全てを取り込む事は出来なかった。
誘導する事すら難しいだろう。
あの力が何処に流れ着くのか。
或いは、何時の時代にたどり着くのか。
どういった形で結実するのか。
それはもう、誰にもわからない。
闇のテオスを打倒したとして、無数の敵性種族を滅ぼしたとして、いずれ来る世界の破壊者を乗り越えたとして。
戦いが終わる事は無いのかもしれない。
文字通り、死ぬまで続く戦いの人生になってしまうかもしれない。
だが。
少なくとも、大事な人を泣かせない程度には。
安心して見送って貰える程度には。
強くあり続けよう。
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・小春交路/未確認生命体二十二号/究極の闇を齎すもの/ΑGITΩ
旧グロンギから正式な形で知識という遺産を継承し、新世代の『ン』となった少年。
意図して完全な形で伝えられていなかった闇のテオスへの反逆というグロンギの使命を果たす。
テオス打倒の為に神の領域へと至るも、再び人としての形を取り戻し、腕の中に大事な友を抱きしめたまま途方に暮れる。
果てしなく続く新たな戦いへの思索は、静かに泣き続ける友を宥めてからになるだろう。
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・難波祝/仮面ライダーギルス(驚愕体)
交通事故のショックとモーフィングパワーによる治療により先祖返りを起こしネフィリム/ギルスとしての力に覚醒した少女。
一人戦い続ける想い人に寄り添う為に、自ら戦士としての道を歩み始める。
が、自分よりも積極的に動く競争相手や、想い人の人間関係への鈍さから、その想いが実を結ぶ日は遠い。
しかし、腕の中で感じるぬくもりを堪能する彼女に既に涙は無く、赤面しつつもだらしなく緩んでいる。
今の関係で暫くは満足し続けてしまうかもしれない。
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・小春ジル/使徒再生アギト(驚愕体)
二十二号の手によって命を奪われ、そして新たな生命を注がれ新生した少女。
引き裂かれた全身の神経や衰弱した筋肉を正常であるとして生まれたが、魔石を搭載した新世代のアークル型ゲドルードを搭載する事により常人並の正常な運動能力を取り戻す。
生まれた時からグロンギの戦士の人格を脳内に宿し、生みの親にして育ての親でもある二十二号の戦いを見続けていた為、戦士への憧れはグジルよりも強い。
人格形成の初期段階から難波祝との付き合いがあり、それなりに世話を焼かれ、祝が交路へ惹かれていく過程を見てきた為、その好意が報われる事を願っている。
・グジル/アギトオルフェノク(調整体)
旧グロンギの戦士の残留思念。
死んだ後の余録の様な生をジルと交路の為に使い切ろうという目論見を、存在しないハートごと撃ち抜かれ粉砕され今に至る。
ジルと交路に対していろいろと手を焼いてくれた難波祝に対して非常に好意的。
全グロンギの宿願を果たし、しかし、それでもまだ戦い続ける運命にある交路、それに付いていくジル、追いかける祝を、何時か消え去るその瞬間まで支え続けると決意している。
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走る、走る、走る。
息を切らせた男が、恐怖に顔を歪ませながら、走る。
何処から聞こえるのだろうか、耳鳴りにも似た共鳴音。
それが聞こえる度、男はせわしなく周囲を見回し、手近な道路反射鏡に向けて一枚のカードを向ける。
そのカードに怯む様に……いや、そのカードを忌々しげに睨む様に、鏡の中で
「はぁ……はぁ……」
息を吐き、項垂れる男。
疲労は限界に来ていた。
肉体的にも、精神的にも。
だから、だろうか。
その男は、耳鳴りの様な音が消えていない事も、足元の橋の下、流れる川の表面が不自然に揺らいでいる事にも気付けず……。
ばぐんっ。
水の中から、いや、川べりを映す水面から飛び出た巨大な顎門に、頭から飲み込まれる。
顎門の持ち主は、蛇か、龍か。
長い胴体を持つ、生物というよりは機械の様な、鎧の様な滑らかな体表のそれは、暫く辺りを見渡すと、ゆるゆると、機嫌よく身をくねらせながら、水面へ、鏡面へと吸い込まれていき……。
後には、一枚のカードだけが残されていた。
ライダーのSSなのでウルトラマンの戦いは描かれないのは当然みんな知っていたね!
現実問題テオスが作中で戦い描写も無いのでただの巨人の殴り合いか捏造の嵐にしかならないという問題があった
言わば原作のふわっと逃げたテオスへのライダーキックが前回の巨人の激突に置き換わっただけなのでこれはある意味原作再現
☆どっこい生きてた殺し方も直し方も知ってるけど女の子を泣き止ませる事も出来ないぶきっちょマン
光のテオスを殺害する形で取り込み不完全ながらも闇のテオスの力も取り込んだよくわからんやつ
もう実質こいつ新たなテオスなんじゃないか疑惑があるが別に神様はンと違って引き継ぎ制ではないので単純に力を奪っただけなので仮面ライダーテオスみたいな名前はつかない
そもそもこいつのライダー名って事になると、最初は『十年掛けて強くなり続けるから、進化するライダーって事でエボルとか、反転でラブだし』みたいな事を薄ら薄らと考えていた時期がある
なお、決めかねている間にビルドの方でエボルトが出てしまいあえなくボツ
闇のテオス殺すルートじゃない場合を想定し、未来を知り多くの運命を背負うという意味でカオスとか、じゃあカオスフレアフォームとダスクフレアフォームだな、黒と白でダグバカラーも使えるで!とか考えていた時期もあるが
ビッグバンで弱体化を思いついた時点で、主人公の頭の中にある主人公の信じる原作主人公の輝きを見て和解、見逃してくれるルートが消滅してこれもボツ
などなど紆余曲折あるので未定なのは仕方がない
実際名前があろうが無かろうが女の子を泣き止ませるのに役立つ訳ではないので重要ではないのだ
ライダー名がずっと付かない→ライダー認定されないのでディケイドとも敵対しないしアナザーライドウォッチも作られない的な抜け道を残しているという理由もある
ライダー名はあれだが、本名の名字は暦の10月、神無月の異称からでいろいろ込めてるけど回収されるかは別
まぁ神を無くしたんだから一部回収はできてるとも言える
今回、テオスとの激突で溢れ出たテオスの残骸が世界各地、日本各地、時間軸も超えてどっかに飛んでったりしているのを見て『二期につながるんじゃないだろうな』という不安を抱く
抱くけど、それより先に大事な友だちを泣き止ませたいと思うし、二期の心配をするのは一期、十年を超えてからだなという事で明日以降の自分に丸投げ
戦闘力的には丸投げしても問題なさそう?
そうねぇ……
☆実はちゃんと復活するとこを見るまで不安でいっぱいだったし、ちゃんと手が触れて戻ってきた事を確認したら緊張の糸が切れてぽろぽろ泣き出しちゃった感情に素直な難波さん
肉体関係で先を越されたから負けヒロインなのか?
いや違う、関係が進む様をじっくり描写される方こそがヒロ
だから面倒なフラグ管理はしないって言ってるでしょ!( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン
フラグ管理はしないけど、徐々に積極的になったり焦って距離を詰め過ぎたりという場面は書いていきたい
今回半ば告白してるようなもんじゃないかって?
前にも半ば以上告白みたいな場面はあったからセーフ
後で思い出して赤面しちゃうし、抱きしめられたり抱きしめ返したりするのを思い出してベットでゴロゴロするノルマ達成
ギルスの衝動で襲え襲えと身体が勝手に動く系の迫り方を残しているので、途中で肉体関係くらい結んでなし崩し的に付き合いだしたりする可能性は充分ある
☆実はどっちも難波さんの事大好きなジルとグジル
難波さんが交路とくっつくのを本当に心から応援している
心から応援しているけれど、それと自分が交路から離れないのは別に両立できない話ではないよね?
家族って言っても血縁は無いし
片方が俺のもの宣言されたならもう片方も同じ様なものだし
私は交路が好きだし難波も好きなので
全員一緒に居られたら凄くハッピーだよね!
ほら、この深夜番組でもやってる!
複数人数でもできるんだって!
これがリントの文化ってやつダルォ!?
難波が交路と結婚して、自分がそこに居候してる妹って形にすれば丸く収まるよね!
ほら、この雑誌の男の子向けのゲーム特集にもそういうエンディングがあるって!
グロンギについていろいろ言うけど、リントの文化もだいぶ罪深いのではないだろうか
☆考え事をしながらランニングしてると普通に都内を横断しちゃえる悩める警察官一条さん
二度の東京襲撃で最前線で戦い人々を救った英雄
というプロパガンダにも使われたりするけど、それで世間と警察組織がうまく回るなら問題ないと割り切れる程度には職業警察官をやれている人
このベルトも不器用ながらも他人を頼っているという事なのか……
みたいな間違った判断をしちゃうくらいに今回の事件は衝撃だった
ベルトのAIが変身能力を封じられたままでの抜け道を今回発見してしまったので、人間のまま戦うという決意は表面上のみ果たされて実質進化し続けてしまうかもしれない
まぁそれでも自分が戦う事で五代は心の傷を癒やす旅が出来ているわけだし
という納得があるも、昭和ライダー勢が未確認の事件が起きても日本に帰ることが叶わない海外に如何程の平穏があるかは知らんのだ
☆今度こそアンノウンに狙われず蠍座ガチャも発生しないので自殺もしない跳ねっ返りの女ライダー(バイクに乗る人という意味)との出会いを果たせるASHR兄貴UC
なんか知り合いでちょっと共に戦ったりもしていた津上翔一が最近おちこみ気味だけど、あいつはコミュ力高いからなんとかなるだろ
そう思いつつ、アンノウンが出ないので少し時間が余っているので同居人であるJKにちょっとお話してみたりもする
元から結構おせっかい焼きだったけれど、自分の生活が安定していたりするので本編よりもかなりいい人になるのではないか
騙されて新ベルトの被検体にされてしまってはいるけれど、結果として原作と比べてかなり良い境遇を手に入れていたりする
ゆくゆくはバイクショップを開いておやっさんと化したりするんじゃないですかねぇ……
このおやっさん強すぎませんか、なにかのバグか
何なら探偵事務所とか開けば二期に突入した後に出番が増えるのではないだろうか
☆北条さんと氷川さん
二人並んで同じ病院で入院していたりするのかもしれない
原作ではアギトは危険だ!という発想からアンノウンの保護を、みたいな迷走をしていたけれど
倒れて生命反応が消えたはずの同僚たちが不思議な光を浴びた再び立ち上がった姿を見て
誰しもがアギトやそれに近い何かに変わる時代が来ているのではないか、という事に気付く
推論としてそれを伝えた北条さんに対し、じゃあ、僕もいずれアギトに……?
みたいな事を言って、北条さんが鼻で笑って
なんで笑うんですか、みたいな感じで……
さては北×氷か?!
ホモはいかんぞホモは、非生産的な
でも初期も初期の嫌味を飛ばし合う北條さんと氷川くんの関係性結構好きです
目が見えなくなった氷川さんを、Gトレーラーに突入してきた北條さんが的確にサポートする終盤の展開も実にエモい……
少なくともこの二人はアギトになるタイプではないなぁと思う
☆大破したG1アーマーを見ながら何事かを思案する天才小沢さん
『……面白いわね』
データとして残されていた、ゴウラムなる飛翔体と融合したトライチェイサーと似た金属疲労を起こしている装甲剤や、明らかに元の形状から変化を起こしている正常な倍力機構に知的好奇心を刺激される
警察職を辞してプロフェッサーになる日は遠のくのか
或いは、噂の天才結城丈二とディスカッションする為に海外に飛ぶかはまだ誰にもわからない
☆生死不明の闇のテオスさん
とある豪邸の一室。
息絶えた沢木哲也──津上翔一の隣に座る黒衣の青年が、窓の外を眺めながら、振り返りもせずに口を開く。
「全て、思うがまま、という事ですか」
それは、人類の勝利を確信しながら息絶えた自らの使徒へと向けた穏やかな口調とは明らかに異なる、感情の、人間的とも思える苛立ちが混じった声だ。
「いいえ、でもね」
黒衣の青年──闇のテオスの背後で、楽しげな笑みを浮かべながら腕を組み、入り口のドアに背を預ける女性が、コロコロと笑う。
「愉快だから、笑いに来てあげたわ」
「貴方達は、何時もそうだ」
「それはそうよ。そうやって、
妙齢の女性は、常の穏やかな笑みとそう変わらない表情のまま、続ける。
「行末を見守る猶予くらいは許してあげる」
「ならば、見せてもらいましょう。彼の言葉が、混沌の子の決断が、貴方の敷く法が正しいか。人間とは何なのか。今度こそ、この目で」
そう告げると共に、闇のテオスの姿が消える。
消滅したのか、姿を隠したのか。
後に残るのは一人の男の死体のみ。
「丁重に弔ってあげなさい」
踵を返し、部屋から出る女性が誰にともなく呟く。
部屋の中、いつの間にか現れていた黒い身体に赤い目の異形が数体。
その言葉に恭しく頷き津上翔一の死体を運び出す。
その光景を見届ける事無く歩き出した女性が数歩歩き、自宅のキッチンへと辿り着く。
先までと姿は変わらずとも、既に女性の雰囲気は一変し、何処にでも居る一介の主婦のそれへと変じていた。
「さぁ、て」
にこり、と、リビングに飾ってある家族写真へと、屈託のない笑みを向ける。
「お腹を空かして戻ってくるでしょうし、何か作っておきましょうか」
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……みたいなあれがそれしてこれじゃよ
なぁに4月2日の深夜ならまだ半分くらいエイプリルフールみたいなもんじゃろへーきへーき
深夜アニメの放送時間の水曜二十六時(木曜午前二時)とかいう混乱する表記はほんとやめてほしいよねって感じのあれだから
許される
許されよ
ごめんちゃい
なんでもしまなめくじ
冗談も済んだところで割と重要なお話があります
今回のアギト編
本編で言うところの、アギトの力をテオスが回収してる辺りで完結した訳ですが
時期的な事を考えると、恐らくは秋口くらいです
……時間があります
城戸真司がカードデッキを拾って戦い始めるのが、番組第一話の放送日辺りであると仮定すれば
このアギト編最終回から時間があく訳です
間に
クリスマスが
大晦日が
初詣が
ちょっと頑張ればバレンタインも……
あります
もしも
もしも許して貰えるなら
そしてぐにょりがそれを書くイメージを持てたのならば
次回
オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)
「オリ主がしばしライダーの事を忘れて堪能する束の間の一時(寄り道編)」
そんな脱線をする可能性もあるSSですが
それでもよろしければ
次回も、そして、龍騎編も
気長にお待ちいただければ幸いです