オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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50 突撃、ライダーバトル! (準備号)

ライダーバトルである。

今年に起きる諸々の戦闘行為、一般人を巻き込む怪物の被害、その根本にあるのは、実はミラーワールドではなく、ライダーバトルなる一連の殺人儀式にある。

十二名からなるミラーワールド対応型の一般参加仮面ライダーを殺し合わせ、最後に生き残ったライダーを主催側のライダーが殺害。

最後の一名になったライダー、いや、ライダーの契約するモンスターにはそれまでに殺害したモンスターの生命エネルギーが蓄積されている。

この最後のライダーを殺害しモンスターを回収、ミラーワールドの自分と融合し、半ミラーモンスターとも呼べる存在になっている神崎優衣なる女性に組み込み、延命を図る。

 

幼い時分に親からのネグレクトにより死亡、ミラーワールド側の神崎優衣と融合する事で一時的に甦った神崎優衣の境遇には同情するしかない。

ミラーワールドに住まうミラーモンスターは、自分を守ってくれる、怖いものを消してくれる守護者として彼女に作り出されたものだ。

これが彼女の持つ超能力だとして、あれらのモンスターが攻撃的な性質を強く持つのは何故だろうか。

実の両親すら恐れさせる異能、異常を見せた彼女が受けた仕打ちは、育児放棄などという迂遠なものばかりでは無かった事は想像に難くない。

 

鏡の世界の中に、神崎優衣の映し身があったのもそこに深く関わってくるのだろう。

後の世で明かされる事だが、城戸真司のミラーワールドの映し身であるリュウガもまた、城戸真司の負の感情から生み出されたペルソナやシャドウのようなもの。

虐待やそれに類する扱いで産まれたストレスに対抗する為、この行為を受けているのは自分ではない、と思い込む為に別人格を生み出すのは異能を持たない人間にも起こり得る症状でもある。

それに、ミラーモンスターを生み出す程の神崎優衣の異能が加わった結果産まれた、言わば精神の逃げ道だ。

 

一度命を失った彼女がそれにまつわる記憶を持たないのはそれも関係しているのだろう。

彼女はミラーワールドや自分の寿命に関する知識を持たない、通常次元側の神崎優衣であるというが、脳内で起きた事は複雑怪奇極まる。

ミラーワールドやミラーモンスターの事情を知らないにも関わらず、彼女の主観はミラーワールド側の彼女のものだ。

鏡ごしに緩慢に死んでいく自分を見ていたが覚えてはいない、虐待を受けていなかった自分という主観を併せ持つ。

鏡を見て写る、今にも死にそうな自分は、鏡の向こうに居る自分に似た誰かである。

往々にして、多重人格の中には分裂する前の自分の大凡を自覚する人格が紛れていたりするものなのだが、ミラーワールドの神崎優衣はこれに当てはまったのではないだろうか。

全てを知るが故に、自らの親とも言えるコピー元に命を明け渡すと共に、死や虐待という辛い記憶を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()として、引き受けて消えたのだ。

 

が、しかし。

この仮説が正しかった場合、鏡の世界の神崎優衣は、神崎優衣が自らの異能で作り上げたミラーモンスターの一体に過ぎない。

自らの変わり身として作り上げる関係上他のミラーモンスターとは異なる可能性もあるが……。

虐待を受けている自分、或いはそれを見る自分として作り上げる以上、そこを自力で抜けられる程の力は持たないだろう。

少なくとも対等ではない。

力関係としても、良くてテオスとエル達程度の差はある。

そんな両者が命を、生と死を入れ替えたとして、生き残った方は元と同じ程の生命力を残しているものだろうか。

 

翻って、ライダーバトルである。

ミラーモンスターが神崎優衣の異能により作り上げられたのだとして、何故それらは虐待から彼女を救わなかったのか。

恐らく、一度死に至るまで、彼女はそこまでの力を持たなかったのだ。

虐待による精神の変質、死からの逃避の為の自らのコピーの創造。

そして、自ら作り上げた人ではない自分との融合。

これらがキーになり、内在していた異能が増幅され、自らを守るミラーモンスターを生み出すに至った。

 

似た現象を最近見ている。

東京で戦ったテオスだ。

内側から囲いを破った時、テオスから溢れた力の奔流。

それこそが、神崎優衣の生み出したミラーモンスターの正体。

通常の寿命を持つ潜在能力の高い異能者から、二十歳で死亡する事が確定した、新たにミラーモンスターを生み出す力を持たない異能者。

この差分、溢れた力が彼女の望んだ守護者達であるミラーモンスターなのだ。

 

となれば、ライダーバトルのミラーモンスターを狩る必要があるシステムもより順当なものになる。

失った力を取り戻す事での延命なのだ。

最後の一体になるまで殺し合わなければいけないライダー達は、生き残る為に自らの契約モンスターに他の野良モンスターを食らわせる。

野良のミラーモンスター達が独自の食物連鎖を殆どしないのも、元が同じものだからこそ。

では、人間を襲い食らう為にミラーワールドから飛び出す行為は何を指すのか。

それこそ、ミラーワールドの中にしか、幻の中にしか平穏を見出す事のできなかった生前の神崎優衣の未練なのかもしれない。

或いは、無限とも取れる力を持つテオスの創造物と異なり、人間の異能者が作った為に天使の如く飲食不要では無かった、というだけか。

 

では何故、神崎士郎は十三体のライダーによるバトルロイヤルなどという面倒な形式を取ったのか。

十三人の浮浪者に十三個のオーディンデッキを渡してミラモン狩りを行い、操るままに殺し合いをさせて一つに集約すれば良いのではないか。

何故、個性豊かな十二人の一般参加ライダーを選別せねばならなかったのか。

その状態を整えるまでに、何らかの不慮の事故で肉体を失い、現実側に残った自らの創造物とある程度制御が可能なモンスターでできる最善がこの形式なのか。

それとも実は、俺が理解できないだけで十三人のライダーによるバトルロイヤルという形式にこそ意味があるのか。

実際、鬼が存在する以上この世界には妖術の類が存在する事になるため、何らかの呪術的な要素が含まれている可能性も決して否定はできないのだが……。

少なくとも、最終的な目的とその手段としてミラーモンスター、或いはついでにライダー達人間の命を集約して神崎優衣の延命に使うというのは間違いないので、これは一先ず考えないでおく。

 

ともかく、今年の一連の騒動の中で重要なのはミラーワールドという空間ではなくライダーバトルという儀式にあり、そのライダーバトルの目的は一人の女性の延命にある。

明確な最終到達点があるのだ。

グロンギのゲゲルにも一応の最終到達点があったが、それは直ぐに条件を満たせるようなものでも無かった。

マラークのアギト狩りは、野菜スープの中に融けたカレールウを掬い出す様な終わりのない作業だった。

だが、今年はそうではない。

神崎優衣の延命が可能であれば、別にライダーバトルに拘る必要も無い。

或いは、神崎優衣がこれ以上の犠牲を望まず、真実を知った上で全てを終わりにすると決め、神崎士郎を説得できれば解決する。

 

解決はするのだが……。

それだと、単純にライダーバトルなんて開催もされなかったのだ、で終わってしまう。

この時期だけなのだ。

ただ一人の人間が、モンスターの力を借りてとはいえ時間を操り、何度と無く歴史改変を繰り返す。

挙げ句、繰り返す本人自身は繰り返す前、つまり改変前の情報を引き継いでいる。

時間関係の能力への対抗策を、極めて限定された空間と小さく纏まった、まっとうに戦えば命の危機もなく乗り切れる規模の戦いの中で得られる機会は。

 

後に時間を行き来する精神力平成最強の戦士が現れるが、彼らの戦いに入り込んで彼らが使用していない時を行き来する列車を手に入れるにはまず特異点である必要がある。

他の地区と違い、壊滅したまま何故か復興作業が行われていない渋谷の一画の地下に閉じ込められた不幸な少年を懐柔してワームを使用した実験を行ったとして、完全に全てのワームの生体を解明したとしても、時間停止や逆行、改変への対策は難しい。

 

この年がベストかはわからないが、間違いなくベターではある。

 

そして、いくつかの、俺にとって有利な解決方法が存在する。

一つ。

疑似デッキの研究を重ねながらライダーバトルに乱入しデッキを強奪。

神崎士郎に怪しまれない程度にバトルを繰り返しながらデッキの研究を行い、あわよくばオーディンのデッキ、或いは契約モンスターを手に入れて解析する。

二つ。

素性を隠した上で全ての事情を知っていると明かし、神崎優衣の延命を手助けするのと引き換えに穏便に関連技術の開示を求める。

三つ。

三つ目は……奇策だ。

場合によっては、一切の犠牲者を出さず、俺の正体も明かさず、上手いこと全てを手に入れた上で終える事ができる可能性がある。

 

正直、エルロードをテオスが作るようにして神崎優衣に新しい命を与える二つ目の案が安パイだとは思うのだが。

殆ど歴史から姿を消すと言っても良いとはいえ、信用のおけない神崎士郎に俺の素性、二十二号の正体を明かすようなものなので、後々の時間旅行者達の暗躍を考えれば避けたいところではある。

だからこそ、神崎優衣の延命を行わず、なおかつ神崎士郎と神崎優衣をある程度納得させられそうな手段として考案したのだが……。

難しい話だ。

 

色々考えてはいる。

いろいろ考えてはいるのだが。

所詮は頭の中にのみ存在するプランにはそれほど意味も価値もない。

画面越しに得た情報と、ドローン越しに入手した資料しか知らない状態で出した策がどれほど有効かなど測りようもない。

 

油断はせず。

しかし、気負わずに行こう。

まずは、軽く当たってあとは流れで、だ。

今ある材料だけでどこまでやれるかを試してみればいい。

神崎士郎が何をもってタイムベントを行うかは知れているのだ。

何かの拍子でライダーバトルが終わりそうになったり。

神崎優衣が絶望からリストカットして死んだりしそうになったり。

そういった不味い状況になったら、無理矢理に条件を整えて神崎士郎にタイムベントを使わせてしまえば良い。

 

まずは、プラン1から。

実物を解析するという目的が果たせれば、タイムベントを防いだ上で一発で時間対策が可能になる。

時間は掛かるが、無事に進める事ができれば必要なものは全て手に入る。

遠回りこそが最短の道になるらしい。

それに倣おう。

行こう、行こう。

 

―――――――――――――――――――

 

無人の大都市東京。

とあるビジネス街の一画で、黒い大槍を振り回し、巨大な怪物相手に大立ち回りを行う戦士が居た。

騎士に似た装いの外装の戦士は、大槍──ウイングランサーを振り回し、大蟹に似た赤いモンスターの繰り出す攻撃を弾き続けている。

振り下ろされる長い脚先をステップで回避し、横薙ぎに自分を捕らえに来るハサミを大槍で殴りつけるように逸らす。

慣れている動きだ。

しかし、それは武術を嗜む人間の動きではない。

 

瞳の見えぬ仮面に覆われた顔の動き、視線に迷いはない。

何処か特定の部位を見るのでなく、巨大な怪物の総身を全て視界に収めている。

そして、自らの遥か頭上からの攻撃に対する迎撃に迷いがない。

人間同士の武術でなく、明らかに人型から逸脱した形状のものと戦う事に慣れた動き。

 

中身の詰まった金属塊を叩く様な硬質な音を立てながら、戦士が片手で振るうウイングランサーで振り下ろされる爪を逸らす。

ガリガリと音を立てながらウイングランサーの表面を削り火花を散らしながら爪が地面に突き刺さる。

大爪の半ばまでがアスファルトの地面に食い込む。

並の生物の膂力では引き抜く事ができない様な有様だが、ちょっとした一軒家ほどもある大蟹からすれば一息で引き抜く事ができてしまう。

 

その一息の間にウイングランサーを地面に突き刺し、戦士がベルトのバックルに手を伸ばし、そこに収められたカードを引き抜く。

流れるように腰に下げていた剣──翼召剣(よくしょうけん)ダークバイザーを引き抜き、コウモリの翼状の装飾を開き、カードを収める。

 

『ナスティベント』

 

ダークバイザーから鳴るその合成音に応えるように、巨大なコウモリに似た怪物が舞い降り、大蟹に似た怪物へと超音波を放つ。

びりびりと震える大蟹の甲殻。

苦痛を感じているのかただ煩わしいだけなのか、しかし、ほぼ絶え間なく繰り出していた攻撃が途絶えた事だけは間違いない。

 

すかさず、戦士は大蟹から距離を取りながらベルトのバックル──デッキからもう一枚カードをドロー、ダークバイザーのカードスロットに挿入。

 

『ファイナルベント』

 

地面に突き立てたウイングランサーを引き抜き、跳躍。

戦士の背には超音波を撒き散らしたコウモリ型の怪物──契約モンスターであるダークウィングがマント状に変形して接続。

足元へ切っ先を向けたウイングランサーを軸に、マントと化したダークウィングがその身を捩り錐の様に捻れていく。

十数メートルにも及ぶ跳躍から、自由落下とは比べ物にならない速度で、落ちる、いや──

大蟹目掛けて、突撃(チャージ)

 

その切っ先は超音波の拘束から逃れた大蟹が、空に飛び上がった戦士を見上げるようにして露出した甲羅の隙間へと突き刺さり──爆散!

 

大蟹の怪物が居た場所で、ランスを構え残心を行う戦士──仮面ライダーナイト。

その頭上では、実体を失った怪物──ミラーモンスターから放出された生命エネルギーを喰らおうと今か今かと待ち構える様にダークウィングが滞空している。

 

仮面ライダー……。

裏の世界とも呼べる界隈で囁かれる都市伝説のそれではない。

願いを叶える為、最後の一人になるまで殺し合う事を宿命付けられた、鏡の世界で戦う戦士達。

 

だが、その殺し合いは単純に個人個人の腕力や技量が物を言う訳ではない。

契約したミラーモンスターに生命エネルギーを注ぎ込む事でモンスターや自分自身の強化を行う彼らにとって、この様なライダーに関わりのない、野良のミラーモンスターとの戦いは必要不可欠と言っても良い。

少なくとも、自らの願いを叶えたいが為に殺し合いに、ライダーバトルに参加したライダーにとっては、最早日常の一部と言えるだろう。

 

仮面ライダーナイト──秋山蓮もまた、自らの契約モンスターを強化する為の戦闘行為を終え、付近の鏡面へと入り込み、この無人の街、ミラーワールドから元の世界へと帰還を果たす。

縁の錆びたカーブミラーから飛び出た先は、お誂え向きに目撃者となりえる通行人が少ない人気のない路地。

ライダーバトルを知る人間は少ない方が良い。

それは競争相手を増やさない為でもあり、ライダーバトルを知られてはならないと考えている者による口封じを防ぐ為でもある。

人が居ない場所に出る事は、ミラーワールドから表の世界を見ることが出来る為にそう難しい事ではない。

 

いつものように、人が居ない事を確認してミラーワールドから帰還した蓮もまた、その注意を怠った、などという事は決して無かった。

目的のため、願いのために勝ち抜く、力を蓄える為に戦いを続ける彼にとってそれは慣れた行いであり、しっかりと習慣づけが行われていたものだ。

が、しかし。

仮面ライダー同士の殺し合いという()()でありながら、未だまともにライダーとの戦いを経験していない蓮にとって、()()()()()()()()()()()()()()()()()というのは、未だ想定し得ないものだったのだろう。

 

「動くな」

 

鏡から脱出し、変身を解いた蓮の首筋に、冷たく、鋭い切っ先が触れる。

日常的に、生身の状態で突きつけられる事などそうそうない事ではあるが、少なからず命を掛けた戦いに身を投じた蓮からすれば、それは既に慣れ親しみつつある感触。

殺意、害意。

そして首筋に触れるか触れないかという位置からは、戦いの中で度々感じる死の予感。

 

「両手を上げて、其の場に伏せろ」

 

くぐもった声は、男とも女ともつかない。

しかし、その声の響きはとても冗談を言っているようには感じられない。

ゆっくりと手を上げながら、視線を巡らせる。

鏡になるようなものは無く、今刃物らしきものを突きつけている犯人の姿を確認する事はできない。

膝を付き、頭を下げた辺りで、再び声が掛かる。

 

()()()から手を離せ」

 

その言葉を受け、蓮は咄嗟に前に跳んだ。

切っ先が突きつけられた首筋が切れ、血が噴出するのもお構いなしの決死の逃走。

何者かという疑惑は蓮が手にしたものを()()()と呼んだ時点で確信に変わった。

自分以外の仮面ライダーが来たのだ。

なるほど、ライダー同士の殺し合い、というのであれば、何も殺し難いライダーに変身している最中である必要はない。

少なくとも、そう考える参加者が一人は居た、という事だろう。

 

ちらと見えたその姿は、見覚えこそ無くとも確かにライダーだろう。

自分もまた全てのライダーを知る訳ではない。

相手に一方的に知られているのか、或いは偶然鏡の中での戦いを目撃されてしまったのか。

どちらにせよこのままでは戦いにならない。

相手は既に変身しており、武器すら構えている。

デッキを鏡にかざして変身する余裕はとても無い。

そして変身せずに対抗できるほどライダーの力は生易しいものではない。

まずは逃げの一手だ。

 

そこまで考え、走り出そうとした蓮の膝からがくりと力が抜けた。

当然蓮の意思ではない。

いや、それを疑問に思う蓮の意識すら朦朧としつつある。

膝から崩れ落ちる様に路地裏に倒れ込んだ蓮が最後に見たのは、捻れた槍の様な物を構えた、見知らぬライダーの姿だった。

 

―――――――――――――――――――

 

ライダーバトルに参加するとしよう。

では第一問。

一部過剰かつ二十二号と俺を繋ぐ可能性のあるものを除く、持てる力を尽くして戦う、とは、いったいどの様な戦いでしょう。

俺の眼の前に転がっている一時脱落者の姿こそがその答えと言っていいだろう。

 

不意を打てる相手に真正面から戦いを挑むなんてのは、何らかの特殊な事情でも無い限り考慮する必要すらない。

例えば明確なルールのある試合や儀式、現在の自分の性能試験、更に強い相手と戦うためのたたき台にするだとか。

そうでなければ位置についてのよーいドンなんてのは馬鹿のやることである。

相手にとって悪い条件を揃え、自分にとって都合の良い条件を集めて戦う。

戦いの基本中の基本だ。

 

力が付いてくるとこういう大事な事を忘れがちになるし、実際必要は無くなってくる。

うぬぼれだとか思い上がりだとかではなく、純粋な事実として、俺は別段変身せずとも間合いの中のライダーであれば物理的に破壊できる。

なんなら頭を掴んで壁に融合させてやってもいいし、水のないところで溺死させられるし、中身だけ灰にしてやってもいい。

超能力耐性の無い鎧など濡れた障子紙の様なものだ。

 

だが。

だがしかし、そういう風に余裕ぶってるやつほど、その手の力を失ったときに無力で何もできなくなるものなのだ。

本気を出せば楽勝なので手を抜いて戦います、なんてのは油断でも余裕でもなくただのバカだ。

手の内を見せないために色々な縛りを入れるのであれば、手の内を隠した上での最善手を選ぶべきだ。

 

地面に転がる秋山蓮の手からカードデッキを抜き取り、中身を確認。

……契約証であるアドベントのカード含め、全て揃っている。

少なくとも、俺が鏡から見て死角になる場所から槍を突きつけている間に、デッキ内部のカードを全て偽物にすり替える、なんて真似はできない。

 

秋山蓮の怪我を治して道の端に寄せ、吹き出た血を分解し、周囲に散布していたガスを無力化。

しばし歩いて奥まった場所、行き止まりに辿り着いたのを確認し、周囲のガラス、鏡などを全て曇らせる。

その他生物の視線等を確認。

転移。

 

―――――――――――――――――――

 

勿論、直接自宅に転移するなんていう馬鹿な真似はしない。

神崎士郎だってライダーバトルを完遂させたいのだから、デッキの所在を確認する機能くらいは存在していて当たり前だ。

……まぁ、香川教授が擬似デッキを作る為にタイガのデッキを研究している最中に妨害をしてこなかった辺り、割りとそういうリスク管理はガバガバという可能性も無いではないのだが。

実際、俺の所在や正体がバレる可能性を考慮に入れなくても、自宅に持ち帰る必要はあまり無い。

正直、アークル型ゲドルードを作る時も思ったのだが、本格的な研究開発を行うのであれば、機材の調達はどうにでもなるとして、自室や自宅というのは明らかに手狭だ。

 

が、しかし。

研究用かつセーフハウスとして使えるような物件というのはそうやすやすと借りられるものではない。

身分証が必要なところで借りれば当然契約書をたどれば足がつく。

親類の誰かに頼めば、その親類が巻き込まれる。

適当な山の中に地下構造体を作って秘密基地にしてしまってもいいのだが、そうするとその山の所有者に迷惑がかかる。

 

さて、では如何にして人様に迷惑をかけない場所にセーフハウスを作れるだろうか。

そう、答えは決まりきっている。

青森県は青森市、八甲田山。

トレッキングコースから大きく外れた奥深くに存在する、世捨て人の様なよくわからない武僧達が集まる、すっかりおなじみのスポット、赤心寺。

この赤心寺の地下数十メートルに建造された此処こそが、俺がこの度初めて制作した地下研究所。

ミラーワールド及び時間制御関連技術研究所である。

 

 

 

 

 

 

 




不出来な疑似デッキしか無い状態でライダーバトルに参加するにあたって、まず最初にするべきこと、みんなはわかるかな?
そうだね、参加者の隙を伺ってのデッキ強奪だね

☆そうそう、最初は当然このルートで行ったんだよなぁ……という回想を授業の合間に行う主人公
そしてライダーバトルが無かったことになった今、赤心寺の地下にあの施設は残っているのだろうか、という不安に駆られるのであった
後で義経師範に電話して確認しなきゃ……
という形式であとがきで回想している場面を描写することもあれば、本編でこれまでのループを振り返る合間に振り返っている場面を描写したりするので龍騎編はなんだかんだ原作ルートとオリジナルな日常パートのバランスは良い感じになると思います
まぁいきなり蓮のデッキが奪われましたが、解析が終わったらたぶん返すからへーきへーき

☆恋人を救うための唯一と言っていいカードデッキを奪われてショックで打ちひしがれて路地裏で全ての希望を失った人間のポーズを取るれんちょん
あれがないと、エリちゃんをたすけられないのんな……
どれくらい絶望しているかというと周囲の友人が全て親指が外れたり付いたりする妖怪だという事に気がついた時くらい絶望してる
恋人を助けなければならないので、とほほ、もうライダーバトルはこりごりなのん、というルートには中々入らない
因みに開始時点は全て龍騎編導入と同じタイミングで始まる為、ここから一週間以内にナイトのデッキを返してもらわないと超直接的バタフライエフェクトで城戸真司が契約前に死ぬ
……と思うんだけど、なんか独自の戦闘センスで運良くドラグレッダーと契約できる可能性もあるんじゃないかなって思いませんか?
そうなんなー……
どうでもいいけど餃子パーティーの時の皿を動かして真司の配膳を妨害するれんちょん可愛すぎませんか

☆疑似デッキ
グランメイルを展開してミラーワールドに突入できるそして帰ってこれる
そんだけ
そこにモーフィングパワーでミラーワールド側の物質を変換してアーマーをつけたり、グランメイルをぐねぐねと質量増大させてアーマーっぽく見せたりできる
武器?
ゼロから作れって話ですよ
適当な犯人の心当たりをもたせる為に放っておいても運命的に死にそうなやつをモデルに選んだがそれは別にこの姿が固定という訳ではない

☆デッキは拾った
何故か野生の昏睡ガスを吸って倒れてしまったライダーバトル参加者が目の前に落ちていたので、怪我を直してあげる代わりに少しの間借りただけだから勿論セーフ
ナイトのデッキで変身するとかは無いと思う
そもそも装備を万端にせずにこの主人公が戦うかという話なので、次回ではある程度解析が完了して疑似デッキもまぁまぁイケてる感じになると思う
そんなすぐデッキを作り直せるかって?
そこにモーフィングパワーがあるじゃろ?
……だって不完全疑似デッキで戦うとなるとグランメイルの下で変身して戦闘経験とスペック任せのゴリ押しでこれまでと変わんないんだもん……

☆ミラーワールドのバケガニ
このバケガニでは始末してくれることはできない
名前は知らん、適当に出した
人型の上半身とかないシンプルな巨大メカカニモンスター
バリエーションで片腕だけでかいやつとかハサミがどっちもクソでかいのとか出てくる
たぶんシザースの契約するボルキャンサーよりだいぶ強い
振り下ろされるでっかい足を大型武器で薙ぎ払って迎撃とか絵面が派手でとてもよろしい
龍騎編を書くの楽しみにしてた理由の一つで、クウガアギトまでに居ない大型モンスターを出せてなおかつ普通に戦って撃破できるので描写が楽かつ楽しそうだってとこだと思うんですよ
ライダーの戦闘書きながらモンハン的な戦闘も書けるので、スライディングで股下を潜りながら腹部に銃連射みたいな楽しいアクションをしよう
そういう理由で大型モンスターも増える可能性があるというか増やす
だって大型モンスターっていいじゃないですか
なにが良いかって言えばいいじゃないですか、色々と
面倒になったら小さくなる
響鬼編の予習にもなる
巨大モンスターと契約させてぇけどなぁ俺もなぁ

☆神崎優衣
人間の中から出てきた超能力者の極致みたいなやつ
幼少時のフルパワー状態は未覚醒なのできっとポルターガイストとか描いた絵が動き出すとかやって周囲の恐怖を煽ってしまった
死んでミラワ優衣と融合するタイミングで溢れた力がミラモンとしての形を得た
ミニマムテオスみたいな感じ
テオス関連の力を使いこなす為に実験台にしたいけど本人になんの罪もないので泣く泣くボツ案に

☆ミラモン達
優衣ちゃんをテオスとした場合のマラーク達
ゴルドフェニックスとかはエル相当
優衣ちゃんは現在無自覚超能力者状態なので当然マラークに狙われたけどその時はこいつらと士郎がめっちゃ頑張った
人間を食うのは神崎士郎がそういう風に調整したのか、それとも武装錬金のホムンクルスみたいに人間であった頃の未練で人間食べるみたいな理屈で表の世界で普通に行きていけなかった融合前優衣ちゃんの未練で食ってる、みたいなあれ
明確な答えが出るかも不明

☆赤心寺with義経師範と愉快な兄弟子ブラザーズ
の地下にどういう経緯で施設を作ったかはまだ決めてない
でもきっと義経師範はおこなんじゃないかな
おこるかどうかは次回決まるけど
スーパー1が来ないかなという薄い期待もあってここに建てた可能性はある
地下施設建設に当たって直通の電話とかも勝手に設置されてる可能性がある
おこるかなぁ……
おこるんだろうなぁ……




言い訳をするとナイトのバトルを描写してる時はデッキ強奪なんてさせる気無かったんですよ
地道に研究するとか、事情を知ってる人間として近づいて恋人を治す代わりにデッキの研究に協力させるとか
未だ潜伏中のガードベントの中身を灰にしてデッキだけ奪うとか
でもミラーワールドから出る描写する時、そういえば戦闘後かつ出る場所選んでるなら隙だらけだよなぁ……ってなっちゃって

そういう思いつきとか行き当たりばったりで描いてくので色々あれな話になっていくと思います
一応書いたあとで言い訳を挟んで辻褄はあわせていこうと思いますが
それでも宜しければ、次回の更新も気長にお待ち下さい

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