オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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79 楽しいデェト

翻る黒髪。

野暮ったくすら見える長いスカートにエプロン。

肩から羽織った白いジャケット。

それが、私が初めて見た、ヒーローの背中だった。

 

『悪いけど貴方』

 

《レ・ジ・イ》

 

『三手で積みよ』

 

《フィ・ス・ト・オ・ン》

 

映画の様な、ドラマの様な演出なんて何もない戦い。

力強く、駆け引きも無く。

ただ、強いから、強い。

 

砲弾の如きショートタックル。

武器を持つ手を弾く様な受け流し。

がら空きになったボディへと比喩抜きで突き刺さる鋭い拳。

 

白い鎧に身を包んだ女騎士は、宣言通り、たった3つの動きだけで、人食いの恐ろしい怪物を叩き潰した。

私の弟を目の前で喰らった怪物は、たったのそれだけで、ガラス細工の様に砕け散って死んだ。

思う所は、その時の私にもあったかもしれない。

もっと早くに来てくれれば。

そんな気持ちもあったかもしれない。

或いは、助けてくれてありがとうございます、か。

 

でも。

私はその時、初めて自分がとんでもない馬鹿だと気がついた。

弟の敵を討ってくれたあの白い背中に、私は。

恨むでも、感謝するでもなく。

どうしようもなく、憧れてしまったのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

基本的に、素晴らしき青空の会は会社ではない。

ここでファンガイアを倒す為の戦士として戦っているメンバーであっても、基本的には表の顔……生活する上での賃金を得るための仕事をしている。

が、全くお金が出ない訳でもないし、イクサの装着者として活動しているのであれば、少しばかり贅沢に生活できる程度にはお金が出る。

優れた戦士を組織に留めておくため、という理由もあるが、これはイクサの実戦データを収集する仕事をこなした上での正当な給料だ。

職業欄に記載するのであれば、パワードスーツのテスター。

 

そのデータを集めるための戦いは総じて命がけ、更に言えば、現状のイクサシステムは試行錯誤を繰り返している段階と言っていい。

本来の性能を発揮したまま戦闘時間を十数分に限定するか、更に出力を絞って長時間の装着と戦闘をこなせる様にするか。

去年の二度の東京襲撃での反省を活かし、現状では長時間戦闘を主眼とした構築を目指しているが、将来的には現場判断で全力戦闘を可能にする可変機能を搭載する予定だ。

 

だからだろうか、少なくとも、現装着者である『渚沙なごみ』にとって、イクサは非常に扱い難い装備である、という印象がある。

定期メンテナンスに送り出し、戻ってきた時には、以前とまるで着心地が異なるのだ。

動きがやや重く、しかしパワーがある時もあれば、ジャージでも着ているかの様に滑らかに動き、しかしパワーは無い時もある。

事前に今回はどういう調整をしたか、という説明があるから実戦で混乱する事こそ無いが、慣れる事はそうない。

無論これは、セーフモードとバーストモードの二種を切り替える為の稼働試験であるのだが、だからといって、本当の実戦で、まるで違う使い心地の装備を使いこなせ、というのはどうなのだろうか。

警視庁の装甲服部隊では随分と豪勢に強化外骨格を量産しているようだし、何種類か作って別々の人間にテストさせれば良いものを、と、上司である嶋護に相談してみれば、

 

『では渚沙くん、君の言うイクサのテストを任せられる人員を連れてきてくれ。その人員がテストに合格すれば、イクサのテスト機を増産しよう』

 

と返されてしまった。

なごみとしては一瞬、おどりゃクソ嶋、という具合に一発顔面にかましてやろうか、という気持ちが沸かなかった訳でもない。

が、なごみとて嶋がなにもケチやパワハラの為にイクサを増産しないのではない、という事を理解している。

実際、嶋の持つ謎の人脈とコネ、そして莫大と言っていい資産があれば、イクサシステムを増やす事自体は不可能ではないだろう。

如何に軍用機ベースと言えど、現在から数えて十六年も前にロールアウトした機体だ。

なんなら、整備用に製造してある予備のパーツを組み合わせるだけでも余裕で二つ三つと似たようなイクサを組み上げる事もできるはずだ。

 

だが、依然としてイクサはテスト機なのだ。

嶋が言った言葉も皮肉でもなければ挑発でもなく切実な願いでしかない。

イクサシステムは軍用機ベースという事もあり、鍛え抜かれた人間、或いは、極端にパワードスーツなどを動かす才能に長けた人間でなければ運用する事ができない。

将来的にはOSを見直す事で改善していく問題ではあるのだが、現段階は未だにその改善途中。

更にイクサシステムを運用するのであれば素晴らしき青空の会のメンバーとしても相応しい人物でなければならない。

この相応しい、というのは、結局嶋の好き嫌いではないか、という疑問もある。

しかし要は、人類を守ろう、という気持ちで死地に飛び込める精神性の人材だ。

過去には単純な腕っぷしだけで嶋を唸らせて黙らせたイクサ装着者も居たが……。

 

『大丈夫ですか』

 

ふと思い出すのは、夜の公園で出くわした、少しばかり年の離れた知り合いの少年。

イクサとは似ても似つかない黒い鎧の背と、しかし、憧れの人の見せた容赦の無さを思い起こさせる戦い方。

流石親子という事か。

違いがあるとすれば、親の方、スバルさんが素っ気なかったのに対し、子供である交路は奇妙に自分に懐いてきているという事だろう。

正直、嫌な気分はしない。

そうでなければデートの誘いに応じたりはしないし、家に上げたりもしない。

 

やはりというか、当然のようにというか、彼もまた、母親と同じように戦士だった。

アルバイトでイクサを運用していた母親とは異なり、彼のスーツは自前であるらしいが。

戦い方を何処で学んだか、という答えは母親と同様だったのは少し面白い。

護身の為であり、必要に迫られて覚えた教養の一種でもある。

やはりスバルさんが教えたのか?

旦那さんが警察官をしているというからそっちかもしれない。

なるほど、サラブレッドという訳だ。

 

ふと、なごみの脳裏に過るのは、彼ならばイクサの装着者として相応しいのではないか、という可能性。

ファンガイアスレイヤーにも似た武器を自在に操り、格闘戦でも容赦なくファンガイアを圧倒していた。

そもそも、変身前の状態ですら、ファンガイアの吸命牙を素手で払い除けて叩き割っていた。

少なくともフィジカル面では一切問題は無い。

精神面では、少なくとも、通りすがりに知り合いである自分を助けに入ってくれる程度には善良だ。

一緒に遊んでいてもそれほどおかしな言動は見られない。

何より、可愛らしい後輩ができる、というのは魅力的なことであるようにも思える。

来年、志望する大学に受かれば東京に引っ越すとも言っていた。

考えれば考えるほど、現実味のある話だ。

 

が。

渚沙なごみは、基本的には思慮深い人間だと自負している。

それが常にという訳では無いにしても、ただの自己申告でないのは、未だ完成形を目指す段階のイクサで戦場に出ながら生き残っていることから見ても明らかだ。

だからこそ、考える。

 

彼は明らかに戦い慣れている。

常から訓練は欠かしていないというけれど、明らかに実戦経験を重ねた動きだ。

つまり、普段から戦う相手が居るという訳で。

そんな彼を、新たな敵との戦いに引きずり込むのは、正しい事なのだろうか。

 

『なごみさん!』

 

待ち合わせ場所に訪れた時の、あの嬉しそうな、人懐っこい笑顔。

弟が今居たら、あんな風になっていたのか。

できれば、平和に生きて欲しい。

でも、彼は既に戦いの中に居て……。

 

「ああ、もうっ」

 

がしがしと頭を掻く。

本人が居ないところで一人で勝手に考えても仕方がない。

渚沙なごみは思慮深い。

思慮深いからこそ、無用な思慮を早い段階で投げ捨てる決断力も持ち合わせていた。

 

―――――――――――――――――――

 

 

梅雨まっさかり、東京、ファンガイア食べ比べツアー!

 

を、ロードインパルスを伴い実施しようと思っていたのだ。

ファンガイアの所在は基本的に知れないが、実のところを言えばその後の調査で俺の知る知識で数年後にしている仕事と人間としての仮の身分を現時点で使い始めている個体がちょくちょく存在する。

例えば、大きな夢を抱く少年少女を援助すると嘯いて金を巻き上げた上で食らう、満場一致で餌にしても問題ないだろう個体とかがそれに当たる。

更に言えば、ファンガイアは普通に人間と同じ生殖方法で増える事がわかっている。

なんなら人間との交雑種が生まれているくらいだ。

故に、理論上は『ファンガイアハーフでアギトで魔石の戦士で鬼で特異点』という、ダメージを受けると何故か服が脱げる特盛女忍者もびっくりな特盛戦士が生まれる可能性もある。

だから、殺しても心の傷まない悪質ファンガイアをオス・メス揃えて捕獲し、脳味噌をほじほじした上で交配させ、ファンガイアを増やす、という計画も考えていた。

所謂、半生体ヘキサギアの素材にするためのファンガイア牧場だ。

所謂ファンガイアという種族の拡張性の高さはヘキサギアの素材として見てもとても好ましい。

流石に、生まれた子に罪はないのに解体してマシンの材料にするのは少しばかり忍びないので取りやめにしたが。

それにファンガイアは肉体的に死んでも魂がどうこうで復活したりするので脳味噌をほじり出しても安心できないのが宜しくない。

 

それ以前の問題として、ファンガイアの生態調査も行っておきたい。

何しろ俺が実際に接触した事のあるファンガイアは、イクサの人を襲っていた公園の雑魚ファンガイア一匹のみ。

しかもこれも即座に倒してしまったので研究もクソも無い。

 

ファンガイアは、人間を喰らう。

それは生存の為というわけではなく、どちらかと言えば嗜好品に近いようにも思える。

我慢すれば我慢でき、人間として生きていこうとする個体も存在するのは面白いところだ。

ところが、これが完全に本能に根ざした食べ物の好き嫌い程度の習性なのかと言えばそうでもない。

短期間であれば(それでも数十年単位だ)人間を喰らわなくとも問題は発生しないが、あまりに人間を食べずに過ごすと徐々にファンガイアとしての力が弱っていくらしい。

無論、それで最終的にファンガイアとしての力を全て失って人間になるなどという甘っちょろい話にはならない。

単純に弱体化、衰弱していくだけで、人間を喰らいたいという本能が消えるわけでもなければ、吸命牙が劣化して出せなくなるなんて事も無い。

 

難儀な生き物だ。

だが、彼らの生態、いや、成り立ち、()()()()に関しては幾つか仮説が立てられる。

キーとなるのは、食人。

彼らは長く無補給で活動する事ができる一方、人間を食べなければ弱体化する。

つまり、彼らの力の源は人間、という事になる。

 

ファンガイア含むその他滅んだ魔族、或いは人間に至るまで、実は他者のライフエナジーを食らって生きているという点では変わらない、などという説明もあるのだが……。

人間が他の生き物を殺して食べて生きる糧とするのに対し、ファンガイアは生命活動に食事というものを殆ど必要としない。

食べても嗜好品が殆どで、食べるのが嫌い、と言い切る個体すら存在している。

そう、人間がおおよそあらゆる生き物のライフエナジーを糧とできるのに対し、ファンガイアは力の維持に人間のライフエナジーしか利用できないのである。

 

恐らく、その不死性に至るまで人間のライフエナジーが根本にあるのは間違いない。

本能的に喰らう人間から得るライフエナジーで力の維持や向上を行う傍ら、その不死性の維持にも人間のライフエナジーが関係しているのだ。

何しろそれ以外に関係しそうなものがない。

逆に、不死性にライフエナジーが関係しないというのであれば、人間のライフエナジーを摂取せずとも弱体化などしない筈だからだ。

 

人間を定期的に喰らうだけで、それほどの力を得ることができるのだろうか。

無論、それは彼らがそうあれかしと設計された生命であるからこそなのだが。

人類側にも、一部の文化圏においては、飢饉などとは関係なく同種である人間を喰らう文化が存在する。

例えば、優れた戦士の肉を喰らう事でその強さを取り込もう、という思想の元に行われる食人がそれにあたるだろうか。

実際にそんなやり方で強くなれるなら俺だって殺したグロンギの戦士を全部お持ち帰りしていただろうが……。

 

だが。

考え方自体はそれほど間違ってはいない。

ファンガイアは実際、相手の肉を取り込む事で強さを取り込む、というのが機能として搭載されているのだろう。

それは何か。

 

それは、アギトの力、アギトの因子とでも言うべきものなのではないだろうか。

或いは、俺やガミオの操る霧によって人間の体内に凝結する魔石の元となる()()()()()()()の因子。

これらを本能的に収集して回る為の生物だったのではないだろうか。

 

恐らく、本来ならば人間を、或いは人間の中にある闇や光のテオスの因子を回収し続ける事で無限に進化を続け、いずれテオスをも討ち果たす無敵の戦士を作ろうとしたのだろう。

それはグロンギの始祖、仕掛け人となったエルと同一個体なのか、別個体なのかはわからないが、容赦なく配下であるエルを滅ぼす姿に危機感を覚えたのか、或いは何かしらの野心があって下剋上を目指したのか。

それはわからないが、その異様とも言える生態は明らかに何者かによってデザインされたものであると見て間違いない。

ロードインパルスがファンガイアを美味しいと思う訳だ。

長期的に人間を、潜在的なアギトの力を収集し続けていた生命となれば、そこいらの異形の魂とは比べ物にならない栄養価があるに違いない。

 

が、ここまでの話は全て仮説に過ぎない。

人間のライフエナジーを喰らう事でアギトの力を回収し続けている、というのは半ば確定だとは思うのだが、実際の所は捕まえてバラして見なければ始まらない。

故に、ロードインパルスを伴い、繁殖して増やせば食べ放題だぞと唆して生け捕りを敢行しようと思ったのだが。

 

イクサの人から呼び出しだ。

わぁい。

何の要件か知らんがホイホイ呼び出しに応じるぜ。

そしてイクサの人のおかげで幼気な人類に偽りの希望を与えてから喰らう悪趣味な魔族の寿命が少し伸びてしまったな……。

要件が終わり次第食われていった人たちの無念を晴らすためにもファンガイアの人は惨たらしく殺そう。

 

―――――――――――――――――――

 

渚沙なごみは思慮深い方の人間であると自認している。

が、しかし。

常に深く深く物事を考えて生きるのは難しいし辛いものだろうとも思っている。

故に、考えるだけ無駄だ、考えればドツボに嵌る、と思った時、考える事を捨てる。

頭の中身を一度空に、リセットするため、思い切り遊んで回ってストレスを発散する。

だから、映画を見るならスカッとする娯楽作を見るし、遊園地に行けば絶叫マシンに乗る。

ご飯を食べるとなればお上品に食べるものよりガッツリ系、と、選択肢が選ばれていく。

見た目の可憐さとのギャップで、彼女を好くものと離れるものははっきりと分かれるだろう。

 

学校に通っていた時は友人や後輩などを連れて行けば良かったが、今のなごみは社会人。

しかもファンガイアやその他敵性種族を相手にイクサの運用テストを行う関係上休みは不定期で、その休みに付き合う事のできる後輩や友人を見繕うのは難しい。

そもそも、いざとなればファンガイア相手に大立ち回りを演じなければならない関係上、下手な相手と一緒に行動するのは危険。

特に、未確認生命体が活動を始めてから明らかにその手の出現率は増えている。

結果的になごみの方からかつての友人知人に連絡を取ることは少なくなりつつあり、だからこそ、自分を慕う弟の様な少年を誘う、という選択が浮かぶようになった。

 

「良かったですね、少林サッカー」

 

「ぶっ飛んでたわねー。嫌いじゃ無いわ、ああいうの」

 

……というのが、結局の所言い訳に過ぎないことは自覚できていた。

軽食を取る為にふらりと立ち寄った喫茶店にて。

先に見た映画の感想など語りながら、ふと、向かいに座る少年の顔を見る。

短めに刈り上げた黒髪の、整った顔つきの少年。

何処にでも居るような、と言い切れないのは、彼の体つきが明らかに鍛えたものであり、動きにも武術を習った人間らしさが見て取れるからだろう。

身だしなみは整っているが、オシャレという訳でも無ければダサいという訳でもない。

同年代の平均的なファッション。

それこそ売れてるオシャレに関する雑誌からサンプルを適当に抜いてきた、と言われれば納得するような。

人混みの中に紛れれば早い内に見失いそうな格好をしている。

国内ならば何処に居ても馴染める様な雰囲気。

ふと見るだけでは、或いは、少し話しただけでは何の変哲もない少年。

 

だが、なごみが少年──小春交路に対して抱く感情は少し複雑なものだ。

初めは、行きつけのカフェ、マル・ダムールで自分をジロジロと見てきた少年。

それだけなら稀に居るが、その少年が、彼女が幼い頃に憧れたヒーローの子供だった、というのだから、縁は異なもので。

そこから、憧れのヒーロー、小春統の思い出を語る相手として話をするようになった。

自分の母親に関する話なんて、普通の子供は嫌がるものだけれど、彼は自分の語る思い出話を興味深そうに聞いてくれて。

なおかつ、彼の語る今の、私の知らない、イクサの装着員ではない母親として、妻としての姿を聞けるのも嬉しかった。

 

統に関する話がメインではなく、共通の話題の一つになり、それ以外の話が混ざり始めるのにそれほど時間はかからなかった。

映画の趣味も合う、ファッションだのなんだの、オシャレに関する話もまぁまぁ知っているし、世間話として最近ニュースで見たような話を出してもしっかりとした返答が返ってくる。

格闘技や武術に関する話まで噛み合ったのは驚いたが、彼が戦士である事を知った今では納得だった。

 

話が合う、此方が何か愚痴りたい時にもしっかり聞いてくれて話しやすい。

なごみとて最初は年下の男の子に愚痴を吐くつもりは無かったのだが、少し調子が悪そうなのを察されて、そこからするすると聞き出されてしまった。

仕事の関係上の話なので、機密になっている部分はぼかしぼかしになるが、それでも聞いていて気分の良いものではない話も嫌がらずに聞いてくれる。

 

……という話を、イクサの調整をしてくれている同僚に言えば、たしなめる様に、

『未成年との淫行は不味いですよ? いや、たぶん嶋さんがもみ消しますけど……コンプライアンスを考えて頂かないと』

とのありがたいお言葉を頂いてしまった。

自分が学生の時から成長していなければ淫行と口にした時点で黙ってもらうところだったが、と、とりあえず最後まで聞いてから黙らせた自分の成長を実感するなごみだったが、外から見れば確かにそう見えなくも無いのだろうと納得もしていた。

 

今、私生活の中で誰と一番長い時間居るかと言われれば、この年下の少年、交路という事になるだろう。

いかがわしい事は一切していない、健全な友人関係ではあるのだが。

どうしても、距離が近くなってしまうのだ。

そしてそれが、彼が付き合いやすい人間だからなのか、それとも、かつての憧れの人の子供だからなのか、彼の中に憧れの人の影を求めているのかは、なごみ自身にも理解ができずにいる。

或いは、それらを完全に区別して考えるのは難しいのかもしれないが……。

 

「えい」

 

むに、と、身体を少し乗り出した交路に鼻をつままれた。

 

「あにするのよ」

 

「いえ、何か難しい事を考えていそうな顔をしていたので」

 

「む……」

 

図星だ。

悩みの種の一つと言っていい相手を前にしてしまえば、すこしばかり考え込んでしまうのは仕方がないが。

相手を抜きにして考えても仕方がないから、態々休みの日に突き合わせているのに、難しい顔では失礼だったか。

 

「そんなに隙だらけだと次は何するか知れませんよ?」

 

「このくらいなら隙にも何もならないわ」

 

「鼻をつまめるって事は……」

 

「目も潰せる?」

 

「いえ、どうなるかはまた次にでも」

 

と、言いながら腰を下ろす交路。

なんでそこで引っ張るのか、と、疑問に思うなごみの目に、交路が手の中に何かを持っているのが写った。

小さい粒、BB弾だろうか。

それを親指の爪に乗せて、弾く。

すると、カウンターの向こうで仕事をしていたと思しき店員の少年が、イテッ、と小さく声を上げ、ぱさりと何かが床に落ちる。

少年の声を聞きつけたらしい店長らしき中年の男が近づき、何事か話しながら店の奥に消えていく。

それを横目で見送った交路が、小さくフフンと笑う。

 

「今日はちょっとついてますね」

 

「良い事ができたから?」

 

「いえ、良い店を見つけられたので。コーヒーの味、少しだけ分かってきた気がするんですよ」

 

「角砂糖4つも入れて?」

 

「5つです。4は縁起が悪いですから」

 

若いから糖尿とかは大丈夫なのかしら、と、そんな事を思うなごみの前で、交路が伝票を手に腰を上げる。

交路の方はすっかりとコーヒーを飲みきってしまっていたらしい。

なごみもすっかり冷めてしまっていた残りのコーヒーを飲み干し、立ち上がる。

 

「奢りますよ。今日はちょっと気分が良いので」

 

「私が誘ったんだから私が持つのはスジってもんでしょ」

 

悪くは無かったけど、コーヒーの味はマル・ダムールの方が上かな。

分かってきたって言うけど、やはりまだまだ子供舌なのかもしれない。

交路を押しのけ財布を鞄から取り出しながら、なごみはこの可愛らしい少年のちょっとした正義感に、少しだけ笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 




唐突にイクサの人の弟さんが居た設定が出て即座に死んでた事になった、肉付けも何も無かったイクサさんに設定という肉をべたべた貼り付けていく回
正直自分でもイクサの人の設定どどんな感じで書いたかあんまり覚えていないのだ……
一人っ子で弟ほしかったのよねとか書いた話があったらぜひとも報告して欲しいです
その時はぐにょりがタイムジャッカーやイマジンの如く過去を改変するので
これも葦名(含む全国全世界に無数に居るであろう年上お姉さんに弟の如く思われた上で少し誂われた事を切っ掛けに半ば押し倒す様な形で性的関係を結びたがる年上好きの皆様)の為……

☆クウガの頃に比べると年上お姉さんにデートに誘われるだけでファンガイア捕獲計画を諦めてしまう辺りで人間性が回復してガンギマリ(ちから)が低下している天運すら味方につけ始めた男
少年から青年から中年であっても、いまだもってきれいなお姉さんに夢中で
アギトの力も輝いてる方がそうかっこいいのでこのデートを切っ掛けにナイスチャレンジしたりする
デートに誘われなければ、とか、いっそ直接的にパワードスーツのモニターのバイトしない?とか誘われるとしゃーない諦めるかーってなった可能性もある
が、実際にそれなりの時間なんの監視も無い状態で備わったあらゆる技能や異能を尽くしてベルトを解析したいという思いも年上お姉さんは魅力的だよなという思いもあるので
結局はお姉さんを狙うんじゃないですかね
あとなんかコーヒーのお店で店員が金をガメるのを阻止したりする
このなんか店オルフェノクくせぇよなぁ!(歓喜)
実際自分の人生を資金的余裕を持ってやり直せるとしたら、子供の頃劇場で見れなかったとかそもそも生まれる前に上映してた面白い映画見るのって結構楽しいと思うんですよね……
最近近所の映画館でブルース・ブラザーズを爆音上映で見れたのが嬉しかったのでそういう要素も入れた
白蛇伝もやるらしいけど、こっちはどうすっかなぁ……
次回、主人公の主人公、大地に立つ

☆知り合いの男の子を新たな戦いに巻き込んでしまうかもしれない選択肢を思い浮かべてしまう事に罪悪感を覚えてストレスなのでその男の子と一緒に楽しく遊んで気分を回復しようと目論んだだけの親切なお姉さん
なんやかや初めてイクサを見た時のエピソードが追加されたりした
実は明確に過去エピソードを回想で挟んだのはこの人が初めて
まるでヒロインみたいだあ
……白状すると年上の黒髪ロングのお姉さんキャラが好きなんですよ(隙自語)
全てを受け入れる系のお姉さんだと逆にヒロインとして使い難いぞというデータが何故か脳内に保存されていたのでここでは全肯定お姉さんにはならない
ならない予定
でも白状すると無理やりからやや受け入れ気味に変更されていたりする
無理やり関係を作るのはね!
コンプライアンス的に問題があるからね!
あと単純な無理矢理は描写してて辛い
都合のいい話だとしても、一線を越える段階ではハートマークを飛ばしていて欲しいのだ

☆狩りにも行けず乗り物にもなれなかったロードインパルスくん
大型バイクの免許を取ったらダミーのただの凄いバイクで車検を通らせてそのプレートをロードインパルス君に取り付けたりする予定
戦闘時はナンバープレートを体内に格納するぞ!
でもお留守番ではなく、バイクで走る主人公を追いかける形で東京まで随伴してくれているし、なんならデート中も変な邪魔が入らない様に見張ってくれている良い子
後で遊んで貰えるのが分かっているのだ

☆後でロードインパルス君の遊び相手にされるファンガイア
見てて、あ、この種族醜悪な生き物だなーって心の底から思わせてくれる満場一致のドクズ
繁殖実験は倫理面から中止されたが、この後死ぬより酷い目には合うし死体を砕け散らせない為の実験にも使われる
が、その話を描写するかは話は別
そんなものよりも書くべき話はたくさんある

具体的には次回
次回は5000字くらいとかなり短め
なぜなら勢いよく書く為にこの話と合わせて長めに書いた上で切りのよいところで切断したからなのだ
本編自体は書けてるのでこの次の話は直ぐに投稿します
あとがき書いてからね!
そんな訳で次回は短めだけど気長に待たなくても読めます
待つ時間も大事なのよという方もそうでない方も、気軽に次回をお待ち下さい

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