オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
もう梅雨も終わり、季節はそろそろ夏。
7月ともなればもうホットコーヒーよりもアイスコーヒーの方が良く出る(気の所為程度だ。母数自体がそもそも少ないからデータとして不十分過ぎる)ようになったり、数少ないデザートメニューもアイスを絡めたものが好評であったり。
新しく始めた不定期なコーヒーショップ、喫茶店で感じられる変化などその程度のものだ。
お店に来る人達の服装が本格的な夏に備えたものに代わりつつ有るかな、というのは、それこそここでバイトしなくても人波を少し見回せば感じられるもので。
大きな変化は無い、平穏な日々が続いている。
「もう少し人手が欲しいな」
皿洗いをしていると、店長がそんな事を言いだした。
「え、人手、そんなに必要ですか?」
割と手隙というか、暇なくらいなんだけど。
コーヒーは店長が居れば淹れられるし、なんなら俺だってここのコーヒーの味は完全再現できてしまう。
他の、いにゅい以外の数少ないアルバイト店員だって完全ではないにしろ淹れられる。
少なくともお客さんはそこに拘っているようには見えないし、バイトが淹れたコーヒーでもクレームの類は無い。
軽食にしても半ば出来合いのレトルトの組み合わせみたいなものだし……。
そもそも店もそれほど大きくないから客もそんなに入らない(満員になるところも見たことないが)から、店長にプラス店員二人も居れば十分回ると思うんだけど。
「そろそろ夏休みが近いだろう?」
「学生客とか来るとこならお客さん増えますね!」
この店、学生客とかあんま来ないから関係ないけども。
「そう。それに、結月も来月までだしなぁ」
皮肉が通じないのか客層をガチで把握していないのか、腕を組み悩む店長。
バイト仲間の結月くんは俺と同学年で今年受験なので、この時期までバイトを止めずに居てくれたのは奇跡とも言える。
脳味噌が未開発でベルトと繋がってない受験生は辛いなサム……。
脳味噌魔石直結してる難波さんは勉強時間を大体保健体育の実技に回しているにも関わらず志望校の模試A判定だというのに……。
でもこれが格差社会だから。
だが、バイトが一人減るというのは割と致命的だ。
俺は平日学校だし毎日放課後にバイト入れる気にもならない。
そうすると平日はほぼいにゅいともう一人で回す事になるのだが、それだと流石にこの店が閑古鳥の格好の棲家であったとしても、なかなか回らなくなるだろう。
「おい、何くっちゃべってんだ。注文だぞ」
と、いにゅいがカウンター越しにタブレットを渡してきた。
慣例に従いたっくん呼びをしようとも思ったのだが、未だそれほど友好関係を築けている気配が感じられないので妥協していにゅい呼びにしている。
彼が差し出してきたタブレットは俺のお手製だ。
元々構造は把握していたし、スマブレで似たようなものがすでに開発済みという事もあり、少しばかり時代を先取りさせてもらった。
と、言っても、Wi-Fiもクソも無いこの時代なのでインターネットへの接続機能なぞ無い、繰り返しメモができる程度のゴミみたいな代物だ。
頑張っている機能はせいぜい音声認識機能で、これを注文を取るメモの如く構えてお客さんに向けておく事で注文をリストアップ、復唱の為に注文されたメニューを画面に大写しにしてくれる程度のものに過ぎない。
いにゅいの店員としての作業をサポートしてくれる、程度の代物だ。
更に、飛行ユニットを作った後のサバトの端材を使用しているので、軽量にして頑強。
そこらの怪人ではこれを貫く事もできないだろう。
その強度は必要か、と言われると必要ないのだけど……。
「白玉餡蜜に、抹茶ババロア、番茶にアイスコーヒー」
「うち、コーヒーショップなんだけどな……」
「アイスコーヒーが売れてますよ。新メニューもコーヒーにまぁまぁ合う」
コストとか考えると、そんなに数の出ないコーヒー豆はもう少し仕入れ量とグレード下げていいんじゃないかなとは思うが、ここは店長のお店だからな、仕方なし。
白玉あんみつは冷凍白玉解凍してあんこやら何やら組み合わせるだけだから手間もかからんし、ババロアに至っては朝とか前日の内に作ったもの。
さっとお出しできて客は文句を言わない、これって重要なとこじゃないですかね?
新メニュー増やしてから多少なり客も増えてるし。
「交路、来月多めに出れるか?」
「俺だって受験生ですよ?」
受験生らしく、赤心寺で毎年恒例のヤマモモリン……山籠りをするから、バイトには出られない。
センチメンタル・ジャーニーとかもしたい。
北海道とか行って、手伝いとか必要なさそうな牧場に行って死んだ目で『バイト募集してませんか』みたいな自分探しの旅とかしてそうな迷惑な大学生ごっことかした後に北海道の幸を心ゆくまで堪能して登別のクマ牧場とか見に行くんだから、寂れたコーヒーショップになんてそんなに関わっている暇はないのだ。
前半は青森赤心寺に籠もって、登校日を挟んで北海道に旅行に行くから、スケジュールはギチギチだ。
……夕張とかもチェックしに行かないといけないしな……。
「ただ、人手に関してはなんとかなるかと」
「誰か紹介してくれる?」
「ちょうど良いのが」
占い師さんのとこに送ったアーキテクトから、結構データが取れたからな。
人間社会に紛れ込ます為のブラッシュアップ版を作って、今度は情動面の学習をさせていこうと思っていたところだ。
人間の多様性を学ぶ、というのであれば、様々な人種が訪れる喫茶店というのは悪くない。
人気店ではないから、動きや働きが辿々しくても問題にならないだろうしな。
―――――――――――――――――――
「お前、ここのバイト辞めるのか?」
閉店後、バイクを止めている駐車場までの移動中、いにゅいにそんな事を問われた。
「いや? 夏休みの間はそうそう来れないだろうから、代打入れるって話」
「ふうん……まぁ、人手が増えるなら良いけどよ」
「あんまり世間の事を知らない子だから、キツく当たったりしないであげてね。箱入りだから」
まだ人間風の肉体すらないゾイドコアに過ぎないからな……。
文字通りの箱入りだ。
箱入りというかゾイド入りというか。
「お嬢様とかそういうのか? 面倒は嫌だぜ」
「素直な子だから大丈夫だよ。家柄がどうこうとかあるわけでも無いし」
言ってしまった以上、素直じゃない疑似人格は出せなくなった。
選択肢の自由を失ったな。閉店しろ。
実質轟雷一択、いや、赤迅雷なら?
でも赤はなぁ。
モデルが無いからAI組む時結構遊んじゃったからなぁ……。
赤迅雷と言えば、これ! ってイメージを詰め込んじゃったし……。
黒じゃなくて赤が最初なんだぞ、という思いを込めて、戦闘用ルーチンはカリカリに仕上げちゃってるし。
……もつれる人間関係ができるほど人数も居ないし、刃傷沙汰にはなるまい。
なっても、まぁ、どうせ潰れる店だから、いいかな!
その時は履歴書の類は全て始末させてもらおう。
最悪店ごと焼く事になるが……。
どうせ、来年に閉店を決意するまで店が残ってると、店長さん死んじゃう確率高いし。
いいよね!
「まぁ言うほど心配はしてないんだけどね、いにゅいは優しいから」
「おまえ、その呼び方ほんとにやめろ」
「定着したら止めるよ」
「させんな」
「まぁまぁ、ジュース奢るから」
「それでごまかせると思ってんのか、こらっ、おい」
追いかけるいにゅいを軽く躱しながら自販機に寄る。
結局炭酸一本で渋々後輩の面倒を見てくれる約束を取り付ける事に成功した。
呼び名に関しては有耶無耶にして流したぞ。
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「そういう訳で、新人ちゃんです、仲良くしてあげて下さい」
そう言って、新しく用意した労働力の背を叩く。
薄い茶髪を短く揃えた、真面目そうな顔つきの少女。
「源内轟雷です。わからない事ばかりですが、なにとぞよろしくお願いします」
少女……の皮を被った、半機械生命体だ。
実際、FAGという分類こそしてはいるが、実際はジェスターの亜種というか……。
系統としてはヘキサギアの進化系として据えたゾイドの亜種に近い。
人間らしく振る舞わせる為に、態々水子霊ベースのアギトの力を利用して制作しているからコスト面では問題があるが、これはAIを作動させるための演算装置をより高効率化して行ければ解消できる。
将来的には魂未実装でも人間同様に動くものを作れるようになるのが理想だ。
まぁ、戦力として見れば指揮官機の指示に従いつつ動物的動作を熟し射撃まで可能な現状のヘキサギアのAIで十分とも言えるのだけれど……。
「うん、よろしく。じゃあ指導は」
「はい、いにゅ……乾君が良いと思います」
「んなっ、お前!」
「お、できるのか巧」
「新人連れてきたら指導してくれるってこないだ言ってましたよ店長」
「そっか……お前も後輩を指導する立場になったんだな」
店長が腕組みをしてしみじみと頷く。
「そこのそいつも後輩だろ! お前が指導しろよ!」
「いや、それでも良いけど」
ちら、と、轟雷の方を見る。
不安げな視線がかち合う。
「ドク、私は嫌われてしまっているのでしょうか……」
心なしかうるうると瞳を潤ませている轟雷。
これは眼球、カメラレンズのクリーニング機能を応用した心理戦用の機能だ。
いにゅいに対して泣き落としをさせるために搭載した、アーキテクトから轟雷に至るまでに追加された新機能である。
なお、ここで態とらしいといにゅいが気付く恐れがあるため、轟雷自身には泣き落とし機能ではなく、人間らしい擬態の一種であるとふんわりとした説明に留めている。
「安心して良いぞ轟雷、あれで根は良い人だから、ちゃんと頼めば教えてくれる。さ、きちんとお願いしてみようか」
「はいっ!」
元気の良い返事と共に、轟雷がぺこりと、一昔前のサラリーマンでもしない様な深々としたお辞儀をする。
「いにゅいさん、よろしくお願いします!」
「おま……おい!」
「俺からもよろしく頼む!」
バシッと下げられた轟雷の後頭部と俺を交互に見ながら何やら文句を言おうとしてきたので、サムズアップを向けてもう一度ゴリ押しておく。
何やかや命を掛けて人を助けてしまう様な男だ。
そして、初期の何かしらの精神障害にかかっているとしか思えない奇妙な振る舞いしかしないメンバーと一年付き合いを続ける事のできたいにゅいの懐はとても広く、そして、誠実に頼み込んでくる相手を無碍にできるほど無情になれないのがこの男の良いところだ。
「あぁ、もう。…………わかんねーとこがあったら、ちゃんと聞けよ」
「っ! ありがとうございます!」
バリバリと頭を掻いた後、ぶっきらぼうに了承と取れる言葉を取るいにゅいと、ぱっと顔を上げて嬉しそうに感謝を述べる轟雷。
イケメンで強くて優しいのね……嫌いじゃないわ!
強さは愛なので当然と言えば当然か。
握った拳を誰かの幸せと夢を守る為に振るえるだけの事はある。
やはり仮面ライダーにもなれる男は違うなあ。
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そんな訳で、人手の問題は解決したのだ。
因みに、当然ながら提出した履歴書は真っ赤な偽物。
ただ一つだけ、記載してある住所は俺の登録してあるニセ住所の隣の部屋であり、これだけは本物だ。
金に任せて借りている物件だが、何かに使うかもしれないのでもう一部屋借りて住まわせている。
インフィニティー・パワーユニット搭載の充電くんとの共同生活を送らせ、この店でのバイトとしての仕事と合わせて人間社会に紛れ込む為のデータ収集をして貰う。
……占い師さんのとこだと、あんまりそのへんが育ちにくいからな……。
やっぱ未来見れるやつは違うわ。
最悪適当に馬券なりくじなり買えばじゃかじゃか金増やせるとか、俺もたまにやってるから人のこと言えないけど、社会性薄くなるのも当然だ。
因みに充電くんはあの見た目で紛れ込むもクソも無いので、自室待機中はひたすら内職をして貰っている。
あの店、来年潰れると考えたら何時までまともに給料出るか怪しいし、フルでシフト入るのも怪しまれるからな。
諸々の些細な問題を解決した上で、夏休みである。
世間様では受験に向けた高校3年生ともなればこの時期は夏期講習と洒落込み受験への追い込みをかける時期だが、未来と共に今も見つめなければいけない以上、そうも言っていられない。
まずスマートブレインは可能な限り速く潰さなければ危険ではあるが、倫理的な問題から、今暫く存続させる必要がある。
そう、オルフェノクの王問題だ。
オルフェノクの王は所謂、親を失って残された子供から生まれてくる。
これは、条件を満たした子供の中からランダムで生まれるものなのならそれほど問題はないのだが、恐らく、そうではない。
勿論、他に条件を満たす個体があればそちらが王の器となる可能性もあるが、知る限りで王の器、卵が存在している以上、それが完全に条件を満たすのを待たなければならない。
無論、確実に事を成そうと思うのであれば、さっさとスマートブレイン壊滅させた上で王の条件を満たしてやればいいのだが……。
流石に、何の罪もない一般人を殺すのは問題が有る。
勿論、悪の組織が罪もない一般人を殺すのを見逃すのもまた問題ではあるのだが。
全てはオルフェノクの蔓延を阻止する為。
相変わらず、安全装置は問題なく作動している。
スマートブレイン内部で俺の目の届かない場所は存在しない。
ミラーワールド側のスマートブレイン関連施設には、無数のヘキサギアとそれを統率するゾイドが犇めき、ジェスターベースの疑似ライダーも無数に配置している。
無論、全て自爆装置付きだ。
何事か起きたなら、関係者を全員ミラーワールドに引きずり込む。
それで解けて消えなければ袋叩きにして殺す。
それで死ななければ物量で物理的に押しつぶした上で自爆させる。
それで死ななければ俺が直接出向き、全能力を駆使して一人残らず焼き殺す。
現状、問題は発生していない。
無論、出来ることはまだあるが、それにばかり掛り切りにもできない。
言ってしまえばオルフェノク、ひいてはスマートブレインに関する問題は、些事、と言っても過言ではない。
諸々の問題を無視すれば、今、オルフェノクを率いて悪事を働く連中を、少なくとも日本で統率している連中を根絶するのは容易い。
が、増える、という一点において、オルフェノクとは比べ物にならない連中が存在する。
それは、地球外生命体であるワーム及びネイティブ……では、当然無い。
レジェンドルガ。
この、ファンガイアの上位種族であると自称する残存個体数が片手で数えられる程しか居ない絶滅危惧種が何故危険か。
彼らは、人間に自分たちの細胞を移植し、月の魔力を浴びせる事で同種、レジェンドルガに変貌させる事ができるのだ。
それだけならオルフェノクと変わらないと思われるだろうが、レジェンドルガの細胞を埋め込まれた者は例外なくレジェンドルガになる。
そしてその数に制限は無く、レジェンドルガ化した人間もまた、同じ様にレジェンドルガを作る事が可能になっている。
それこそ、この種族が一切慢心せずにひっそりと人間社会の裏で仲間を増やしていたのなら、人類の勝ち目は薄いだろう。
彼らが登場した話は本編パラレルという事だが、この世界がどちらに繋がるか不明である以上、基本的には存在しているものと考えて行動するべきだろう。
また、残り少ない個体の中には人間に擬態して社会に紛れ込んでいるものも存在する。
他の個体の場所は、これを捕獲して脳味噌を少しばかり弄って吐かせるというのもありだろう。
まだ覚醒していないマミーレジェンドルガに関しては、どこで発掘されたか不明な為に暫くは放置しなければならないが……。
実はこの種族、早期対応が可能になっている。
そもそも先述のマミーレジェンドルガの目覚めは、彼らの王であるロードの覚醒の予兆という一面がある。
つまり逆説的に、彼らのロードが目覚めなければ、このマミーレジェンドルガは活性化しない。
そして、これから数年後に覚醒の兆しを見せる可能性のあるレジェンドルガのロードもまた、珍しくはっきりと居場所が確定しているのだ。
これを、目覚める前に確保、抹消してしまえば、レジェンドルガを事実上無力化できる、という寸法だ。
無論、これが成功したとしても残党が何をするかはわからないので捜索は続けるし一体でも確保したならいかなる手段を用いても情報を絞り出す次第ではあるが。
そして、最後。
これを、先ずはやっておかなければならない。
思えば先延ばし先延ばしにしていて、とうとうこんな時期にまでなってしまったが……。
やるとやらないでは大きく違う。
夏休み、色々と動き出す前に、先ずはこれを済ませてしまう事にしよう。
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奈良県吉野山に本部を置く、NPO団体TAKESHI。
TAKESHIブランドでアウトドアグッズなども販売している、オリエンテーリングの普及を目的とする団体だ。
だが、それはあくまでも世を忍ぶ仮の姿。
江戸時代から、或いは更に古く平安時代から続くと言われている、鬼と呼ばれる異形の戦士を擁する秘密組織『猛士』は、魔化魍への対処を目的として行動している。
魔化魍……自然界に存在する悪気、穢などを取り込み、超自然的エネルギーの作用により土塊などから発生する、人を襲い喰らう怪異。
山林の開発を始めとする自然破壊で近年はその数を減らしつつあるものの、その脅威は決して消える事も無い。
住処を奪われ発生率の下がった魔化魍も存在すれば、発生条件が人里で揃いやすい魔化魍は増加を続けている。
故に、魔化魍は表沙汰になった案件こそ少ないものの、毎年決して少なくない死者を出し続けている。
そして、それは多少の差こそあれ、全国何処に居ても変わりはしない。
故に、いかなる場所で魔化魍が発生したとしても即座に対応できるよう、全国には猛士の支部がそれなりの数存在している。
東北のとある一画。
自然も多く残る静かな地方都市であったとしても、それは変わらない。
比較的賑やかな都市部に位置する和風喫茶を表向きの隠れ蓑とした支部の一つ。
営業時間内にも関わらず、表には準備中の看板が掛けられているその店内で、異変が起きていた。
「先日は家の者が大変失礼を致しまして……。こちら、お詫びの品です。お納め下さい」
す、と、テーブルの上に差し出される箱。
とらやの贈答用羊羹詰め合わせだ。
「これはこれはご丁寧に。申し訳ないねぇ、態々訪ねて頂いて、留守だなんて」
「いえ、こちらの都合による急な訪問にこの様な丁寧な対応、痛み入ります」
物腰穏やかに対応するのはこの支部の
それにこれまた腰を低く応え、椅子に座りながらも小さく頭を下げる、頭部に黄金の六本角と金眼を頂く、白い装甲に身を包んだ異形の戦士。
未確認生命体二十二号だ。
開店前の店の前に突如として現れた、両手に有名菓子店の紙袋を下げた二十二号の姿に、この支部は急遽として対応を求められたのである。
無論、それが普通の一般的な喫茶店であれば対応に困るどころか対応する人間が全員卒倒する様な状況だが、この店は違う。
常から魔化魍を退治するために広くアンテナを広げ、その起源に朝廷によって組織されたという経緯を持ち、政界にも顔の効く猛士の、その一支部とはいえ長を務める男は、心を乱す事すら無く、突然の来客への対応をこなしていた。
無論、それはこの店に務める他の構成員や猛士に所属せずとも事情を知るバイト店員にまで適用される訳ではないが……。
「仕降鬼……ああ、君の妹さんが助けた鬼なんだけど、お礼を言いたいって言ってたよ」
「いえいえそんな……常から魔化魍の始末をして頂いている此方こそお礼を述べねばならないところを」
「それが僕らの仕事だもの、気にすることは無いさ」
こうして鬼が通りすがりの戦士に助力される、という件は珍しくこそあるものの、決して無い事例ではない。
近年では装甲服部隊やアギト部隊などと共闘した事もある。
無論、こうして後々に挨拶に来る律儀な相手はそう居ないが……。
実のところを言えば、猛士には未確認生命体二十二号に関する情報が警察を経由して回されてきていた。
人となりを見るための情報こそ少ないものの、警察の特殊装甲服試験チームと共闘した記録も残されており、また、未確認生命体への残虐行為を除けば一般市民に危害を加える様子も見られない為、それほど危険視はされていない。
無論、それで二十二号の持つ力の危険性が低くなる、という訳でもないが……。
それは猛士とて同じことだ。
二十二号と支部長の会話は謝罪とそれに対する礼で始まり、世間話に終始した。
二十二号が鬼に関してある程度の知識がある、という事は会話内容から伺えたが、それを探る事もしない。
無論、二十二号の方から猛士の情報を引き出そうという事も無い。
探られて痛い腹が無い、という訳ではないが、どちらともなく、なぁなぁで済ませようという雰囲気を出し続けている。
この世界には、表の世界からは察知できない裏の面があるが、それは後ろ暗いものの世界というわけではなく、言わば業種の違う専門業者が無数に立ち並んでいるようなものだ。
仕事の関係上で共闘することこそあれ、互いに自分の専門分野への対処に専念し、知識のない分野には下手に触れない。
それが、今の今までこの世界が上手い具合に回っている仕組みだ。
そして、支部長はそれが悪いことだとは思っていないし、二十二号もまたその仕組を理解しているものとして話を進めている。
二十二号もまた、それを良しとして話を進めている。
対峙するグロンギの新たなチャンピオンと、鬼を纏める徒人。
いっそ異様な光景ではあるものの、だからといって何かトラブルが起きる訳でもなく、両者の邂逅は穏やかな内に幕を閉じた。
吉野のとある神社に安置されていた鬼の鎧が、突如としてその力を失い唯の鎧と化してしまった事が発覚するのは、しばし、時を置いての事になるだろう。
幕間のワチャワチャとコソコソ
前の話でFAGを導入すると説明はしたけど、いくら何でも早すぎるのでは、とお思いの方も居るかもしれない
また異物感のあるキャラが増えてきたな、という意見がもうぐにょりの心眼には見えつつ有る
☆地元と出先でテンションが違うマン
そういう人居るよね
でも実際二十二号としてじゃなくて小春交路として憧れの戦士の一人と接する事ができる初めての機会なのでウッキウキと言えばウッキウキ
今書いてて気付いたけど憧れの人に振られた後なので無理して明るく振る舞ってる的なあれかもしれない
話し合いをしている間に猛士の支部のミラーワールド側をヘキサギアに探索させて一部技術関係資料ゲット&ミラーワールド側の吉野にヘキサギアを集団で向かわせて神社を片っ端から探索、鬼の鎧の場所確認、分子レベルで同じ形のダミーの鬼の鎧を置いてオリジナル解析開始
無断で借りてるだけだからセーフ理論
解析完了したら三十倍くらいにして返すからセーフセーフ
吉野にある猛士の本部管理の神社全てにギッチギチに大量の鬼の鎧コピーを詰め込んでお返しするから
☆人類社会潜伏用半機械生命FAG試作機『轟雷』
アーキテクトといいこれといい、お前人間そっくりの機械を作る技術とかはまだ手に入れてなかったろって?
その説明をする前に今の習得技術のおさらいする必要がある、少し長くなるぞ
しかし短く説明すると、これは半ミラーモンスターとも言えるもの
そしてそのミラーモンスターのモデルとは人間の写しであるミラーモンスター神崎優衣である
そして人間と遜色ない様に見える疑似人格を動かす為に搭載しているゾイドコアとはつまり、ヘキサギアをゾイド足らしめている神の力の断片、アギトの力
そして本編での説明通り、このアギトの力は水子霊をベースに生まれたアギトの力であり、つまり元をたどれば人間ということになる
完全な人間を再現するには未熟な科学技術をオカルトで補っているのだ
出した理由?
お前にもいずれわかるときが来よう
実はわりとマジでココまで書いた本編とかあとがきの内容を纏めると役目が読める、ハズ
まぁ予定は未定なのでただのバディで終わる可能性もある
が、うまく行けば原作通りのバディを押しのけずに済むルートに突入できるのだ!
その他のFAGはキャラとして出すともういにゅい側の描写が収集つかなくなるので、最悪アーキテクトとかがめちゃくちゃ増えるとかそういう雑な方向性か、その他キャラは全部セリフ無しモノローグのみ描写みたいになる
☆つっけんどんな態度を取らせつつ最終的に頼み倒されるとちっしょうがねぇなってなるのがいにゅいの書き方
だから、無垢っぽくて一生懸命で素直に人に疑問をぶつけたりお願いできる轟雷を充てがう必要があったんですね
テンプレを引き出せる相方キャラを添える事で書きやすくする手抜きの手法
地味に原作ではたっくんの周りに居なかったタイプかもしれないけど実際どうかは知らん
いにゅいがそれくらい自分でやれって言って
それに轟雷が拙いながらも一生懸命トライして
見ててじれったくなったいにゅいが自発的に手を貸す……みたいな流れを作って絆レベルを上げさせたい
絆礼装も用意してるよ……たのしみにしててないにゅい……(敏鬼感)
レジェンドルガ関連をこの幕間で始末するのはかんたんなのですが
それをやると本当に詰め込み過ぎになってしまい後半で使うネタがなくなるのでこの幕間は奪取した鬼関連技術と鬼の鎧の解析といつもの赤心寺修行に回して、そろそろ本編に移りましょう
……流星塾襲撃って何月何日でしたっけ
11月くらい?
まぁ最悪細かい日付は誤魔化せばいいかな……
なんやかんや言いつつ555編も見切り発車なのだ
どうなるかという答えは風に舞ってるって言うので、次回も気長にお待ち下さい