オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
半生体ガイノイド、源内轟雷はゾイドの一種である。
が、ここで言うゾイドというのは本来の意味でのゾイドではなく、俺の中にあるテオスの力を、小規模テオスとも言うべき神崎優衣の行いの足跡を辿る事で制御し、機械という依代に魂を固着させた、半機械化ミラーモンスター、或いは半機械化マラークの様なものだ。
本来は量産の容易いヘキサギアの指揮官、統率用戦闘ユニットとして、彼らと同じ機械でもって四足獣や恐竜、昆虫や架空の怪物などを模した姿を与えられるところを、人に似た形を与えた。
見た目が明らかに尋常な生き物でないミラーモンスターやマラークを作る方法で人間の姿を真似る事ができるか、という問題点は、本来の神崎優衣が無意識の内に作り出した鏡の中の自分というミラーモンスター、今や鏡の中の向こう側、神崎士郎の使うミラーワールド式ライダーシステムでもたどり着けない合わせ鏡の世界で生活している神崎優衣を参考にする事で乗り越えている。
無論、それは人間の構造をミラーモンスターを作る方法で真似る、というだけであって、顔貌、身体特徴までを参考にしている訳ではない。
神崎優衣は整った顔立ちをしていない訳ではないと思うが……、作っていて楽しいと俺は思えなかった為、俺の思う標準的な美少女顔で作らせて貰っている。
好みでない人間を丸々一人作るより、自分基準で美少女と思える人間を一人作る方がモチベーションは上がるものだ。
仮にも喫茶店でウェイトレスとして働いてもらう以上、可愛いに越したことはない。
そう、あざといは作れる。
いや、作るからあざといのかもしれない。
だが、その点で言えば、人間社会潜伏型半機械生命体試作モデル轟雷は、絶妙にあざといのラインを躱しながら可愛いを保っている、半ばデータ取り用の試作機、試験機でありながら優秀なバランスに仕上がっていると言っていい。
この機体は試験的にダイナミック・インテリジェンス・アーキテクチャを採用している。
これは普通のAIとは異なり、人間の頭脳と似せた構造の演算器を用意し、人間の赤ん坊にものを教えるようにして成長させる事で、従来のAIではできない柔軟な思考、発想の飛躍などが可能になった、少なくともこの世界にはまだ存在していない筈の画期的なシステムだ。
これは今の俺の技術では完全に科学技術のみで製造する事ができないものだが、基本的にはアギトの力でどうにかしている。
未熟な演算装置に天使としての知性を組み合わせたハイブリッドモデルだ。
逆に、この天使の、アギトの力を奪われると正常に動作しなくなるのだが、喫茶店勤務でそんな事態になるはずも無いのでこれは気にすることも無いだろう。
それはともかく、本来は実稼働させる機体に搭載する前にある程度の教育を施すべきなのだが、この機体にはバイト先の戦力とする為に最低限の知識を刷り込み済みで、殆ど教育を施さずに店に放り込んでいる。
見た目こそJKかそこらに見えるだろうが、実際の所は赤ん坊か、良くて幼児くらいの精神年齢だろう。
物分りだけはめっちゃ良いが、それは基本、ゾイドとして俺に使役される為に作られたが故のものだ。
故に、店の仕事は教えれば教えるほど、スポンジが水を吸い込むように覚えるだろうが、見た目から想像できる数倍、十数倍無垢で、危うくすら見える。
例えばあの店の店員の誰かが悪意を持ってこれを騙そうとすれば、毒牙に掛かるのはとても簡単な事だ。
或いは客が悪戯心から臀部を撫でても首をかしげるばかりで何の危機感も忌避感も抱かない筈だ。
『おい交路、お前ほんとにバイト来れないのか?』
電話越しに聞こえてくるいにゅいの声がやや苛立たしげで、しかし、どちらかと言えば怒りよりも弱りを感じる。
その生い立ちから学校にもあまり通えずバイト生活を続けていると考えると中々に厳しい生活を送っているのだろう。
だが、あの店なら繁忙期だろうと大して客も入らず賄いで飯も食えるから、そこまで疲労する事は無いと思うのだが。
「受験に向けての合宿もあるのに、週二でシフト入ってるだけでも俺は偉いと思うよ」
『合宿って、どこ行ってるんだよ。遠くないならもう少しでいいから』
「青森の八甲田山。因みに集中できるように車とかバイクでは来れない様な奥深くに来てる。地元民に聞けば分かるけどトレッキングコースからも外れてる、知る人ぞ知るって感じのスポットかなぁ」
因みにバイクや車では来れないがロードインパルスなら東京まで道なりに行っても一時間掛からないし、転移なら一瞬だが。
本堂がメカニカルに展開する射出カタパルトの建造計画が通ればもっと速く到着できるのだが、プレゼンの為のわかりやすい図解を義経師範が一目見た瞬間に手刀でビリビリにしながら却下してしまった為に現状は移動方法はこの二種程度か。
今はそんな話をしている訳ではないし、実時間がどうあれ遠いか近いかで言えば遠いので何も嘘は言っていないのだ。
『受験の為の合宿ってそういうのじゃ無いだろ! …………無いよな?』
「いやいや、最近は受験に向けてこれくらいするもんだよ」
俺の様に赤心寺に来る受験生はそう居ないにしても、寺に籠もって勉強に専念する、という合宿は実在する。
実際、俺の自宅ではないのと、不特定多数のむくつけき修行僧、そして割と男女交際のあれこれに厳しい義経師範が居るため、普段よりも(難波さんの)勉強が捗っている。
俺も集中して受験勉強と研究開発、雑念を振り払う為の滝行、鬼の鎧の構造解明、雑念を振り払う為の百人組手、ディスクアニマルシステムの技術解析、雑念を振り払う為の滝割り、音角音笛音錠の再現実験、雑念を見抜かれての義経師範からのしごき……。
また、ミラーワールド側の猛士の支部から拝借させて貰った諸々の資料の写しの解読とそこに記されている断片的な呪術的システムの学習など、静かな山奥の寺、及びその地下に事後承諾で建設した研究施設という優れた環境での学習が大変捗っている。
捗ってはいるのだが。
やることが、やることが多い……!
この世界で幸せに安全に生き抜こうと思うのであれば、これだけやることが山積みなのだ。
「正直、かなり整った環境だとは思うけど、この先の事を考えると時間が倍あっても全然足りない、ってくらいでさ」
何度タイムベントを使ってしまおうかと思った程だ。
たっぷりと時間を使えたライダーバトルの時期を懐かしく思ってしまう。
『なんか大変なのはわかったけどな、こっちも大変なんだよ』
「えー? 轟雷がなんかした? 前見た時は結構仕事出来てた気がするけど」
『危なっかしいんだよ。なんか……』
「お客さんに尻触られそうになったり?」
『はっきり言うな。……前にもそういう事あったのか?』
「いや?」
だって今の器に載せ替える前はゾイドボディだったし……。
ケツ触ってもごつい装甲か火砲の付け根か排気管しか……。
ヘキサギアでもFAGでもない戦闘ユニットとしてFAの轟雷ボディも作ったけど、それにしてもただの装甲だったからなぁ。
「無かったから、なんかあるならそういうのかな、と」
『じゃあ前もって教えとけ!』
「いにゅいが守ってくれるだろなって思うて」
『なんだそりゃ!?』
「たぶん無防備な感じになるだろうから、いにゅいか俺が居る時のシフトに入れてくださいって店長には伝えてあるんだよ」
『何勝手な事してんだお前』
「あー、じゃあほら、なんか危なくなっても助けなければいいんじゃない? そこは自由よ実際、どう?」
『…………』
ほら黙る。
因みにこれは、そんな事出来るわけ無いだろ、という無言の抗議だ。
「いにゅいはそういうとこホント最高にいにゅいだと思うよ」
『うるせ』
見てお父さん、いにゅいがツンデレ指摘されて照れてるよ!
かわいいねぇ!
かわいいねぇ!
「一応、追加でギリギリ仕事まともにできそうなの送り出せないでも無いけど」
『どんなやつだ』
「客に何かされたら反射的に手が出る上に言葉遣いは荒っぽい
仕事はできる筈だ。結果として何が起きるかは知らないが。
なお、轟雷の反省点を生かしてこれらは全て今言った通りの人格になるようアギトの力を入れれば直ぐ稼動できる程度に演算装置の方だけで教育を施してあるので何時でも出荷できる。
将来的には人類の安全に配慮する形でロボットレンタル株式会社的な感じのお店を開くのもありかなと思うので、AIの個性も大事にしていく所存である。
デトろ! 開けロイド市警だ!
『………………………………いや、いい。でも、合宿明けたらシフト増やしてくれ』
熟考だったなぁ。
そして英断だと思う。
商品化するなら轟雷型かアーキテクト型が安パイだな。
「もちろん、そうさせて貰うつもりだよ。ま、客入り自体は相変わらず少ないだろうから、頑張って」
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空を見上げる。
黒い黒い雲。
絶え間なく落ち続ける透明な水の粒。
ざあざあと雨が降り頻り、黒雲は時折輝きながら獣の唸り声にも似た音を響かせる。
ちり、と、脳を掠める予兆。
来る。
視線を空に。
雷光。
天から地へ、ジグザグに、しかし真っ直ぐ落ちてくる。
気を指先に。
揃えた指先は刀に。
天を切る様に振り上げる。
音もなく降り注ぐ光。
手刀がそれを縦に切り裂き、指先から左右に落ちる。
降り注ぎ体温を奪っていた雨が止む。
空を見上げれば、黒雲は僅かに切り裂かれ、その向こうに太陽が見えた。
この様なものだろう。
ダグバの一撃に比べれば鈍いが、感覚は戻ってきた気がする。
「仕上がったか?」
「一先ずは」
少し離れて見守ってくれていた義経師範の問に答える。
今の所、強敵と戦う予定は入っていない。
その予定が入っていない、という事は。
その間に現れた強敵は全て俺の想定の外にある敵という事になる。
何をしてくるかわからないし、何ができるかもわからない。
神の癖に部下の天使を囮に人間一人を直接出向いて封印しようとしてくるかもしれない。
ただの占い師が無数の未来の経験と期待を背負って、サバイブのカードを全部乗せして決死の一撃を放ってくるかもしれない。
そうなった場合、出来ることは真っ向勝負。
ならば、最高のパフォーマンスを発揮できるように、心身共に整った状態を保たなければ迎え撃つのは難しいだろう。
「……前々から聞こうと思っていたが」
切り裂いた側から晴れていく雨雲。
空から降り注ぐ、風に煽られて来た雨と、真上から降りてくる陽光に照らされながら、義経師範は切り裂かれた空を見上げながらぽつりと呟く。
「お前の倒すべき敵とは何だ」
「倒すべき、敵、ですか」
「そうだ。赤心少林拳黒沼流は殺しの武術。本流とも呼べる玄海流とは異なり、これは明確に何者かを殺すための術だ」
思想的な話ではなく、黒沼流は明確に殺人拳として再構成されている。
何処かで丸くなるタイミングがあったのか、生存率を上げるための守りの技術も組み直されてはいるが、多くのオリジナルと思しき技は攻めに特化している。
師範の知識や文献を頼りに難波さんには限りなく玄海流に近い形で習得して貰っているが、俺が学んだ、学んでいる赤心少林拳は完全なる黒沼流だ。
それを学ぶ、という事は、強くなりたい、とか、何かを守りたい、とか、そういうふんわりとした理由であるよりも、何者かを殺したい、という場合の方が多い。
それは、例えばヘキサギアをループ外で初めてお披露目した時に眼を輝かせてくれていた兄弟子達も例外ではない。
求道、という一面こそあれ、皆、何かしらを殺す為に技術を学んでいる、筈だ。
実際、その本懐を成し遂げた後なのか前なのか、それは物理的に殺せるものなのかはわからないが。
だが。
当然の話ながら、俺の事情はとてもシンプルだ。
「俺の倒すべき敵は、俺の倒すべき敵です」
「…………? ……………………?」
首を傾げられている。
ちょっとガジガジの牙が見え隠れしている辺り、誂われているとでも思い始めているのかもしれない。
だが違う、そうではないのだ。
「恨むべき敵も、憎むべき敵も居ない……とは言いませんが、それに限って力を振るいたい、という訳ではないのです」
一部例外を除けば、妥協に妥協を重ねれば共存できない相手というのは限られてくるだろう。
多くは現状倒すべき敵ではあるが、場合によっては手を取り合う未来もあるかもしれない。
故に、確定した敵、殺すべき敵というのは限られる。
理屈の上では。
「でも、敵に回ってしまうものはどうしても出てしまいます。殺さねばならぬ相手です。殺されたく無いのであれば」
だが、最初から手を取り合える相手など居ないのだ。
故に、殺す。
まず、相対した時点では間違いなく敵だ。
「敵として相対したもの、敵を殺した結果敵になったもの、敵になるかもしれないもの、それらを殺し尽くさねばなりません」
疑っている間は敵を見抜けるが、信じてみなければ仲間は見つからないという。
敵が多く居る間は、安心して平穏を感じる事は難しい。
仲間が多く居れば、安心する時間を増やす事ができる。
なら簡単だ。
敵となるものを尽く殺して殺して殺し尽くして。
最後に残ったものはきっと信用できるものだ。
立ちはだかる事無く、利害がぶつかり合う事も無い相手こそが残るだろう。
それを仲間、と呼べるかは別としても。
敵でない、害し合う仲ではないだけで充分だ。
敵が無く、信用できる相手が多く居る。
それはきっと幸せだろう。
死の恐怖、喪失の恐怖を感じずに済む世界だ。
平和で楽しく生きていく事ができそうだ。
何者かに命や自由を脅かされる心配の無い世界でもあるだろう。
その世界を作り出す為に、邪魔になるものが敵なのだから……。
「立ちはだかるもの、その全てが俺の敵なのです」
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さて、研究開発、アルバイト、受験勉強、結構結構。
だが、やはり始末しなければならない部分は依然として存在している。
平和は既に無料配布される時代でなく、人類社会の存続すら危ぶまれる時期に差し掛かっているのを忘れてはならない。
一番近い危機として、オルフェノクを纏める一派としては今一番大規模な組織であるスマートブレインだろうか。
社会的立場がある、人類を積極的に殺して回る組織、というだけでも危険かつ厄介だが、この会社で後に社長に上り詰めるローズオルフェノクが危険極まりない。
多くのオルフェノクは自ら生成する武器や体液、触手などを用いて人を殺し、その一部をオルフェノクへと転生させる。
が、これらは基本的に本人がその場に居て直接人間を害する事で行われる。
故に、基本的には人がある程度居る場所で犯行を行う。
しかし、取り逃しを少なくするためか人が多すぎるのも不味いようだ。
オルフェノクは突出した個体の能力こそ高いものの、平均的な能力で見れば旧グロンギのムセギジャジャ、強めに見積もってもメ階級程度のものである為、例えば軍隊などを投入されて駆除が始まれば、被害を出しつつも殲滅されてしまう可能性が高い。
故にちまちまと、行方不明者の増減として不自然でない程度にしか殺せていないのだが……。
ローズオルフェノクは、人間をオルフェノク化する為のバラを、各家庭に郵送して起動させる事ができる。
それこそ、俺の監視下以外で今この瞬間にそれが実行されても可笑しくないのだ。
それでも見逃していたのは、偏に俺が罪もない一般人を殺したくない為だ。
監視の目は充分に用意できていた、という言い訳もできるが、結局は責任を負いたくなかったとしか言いようがない。
ローズオルフェノクの指示で動いたオルフェノクが放火などを起こし、事故、災害で親を亡くし九死に一生を得た子供を増やし、オルフェノクの王の器を見つけ出そうとしているのを知りながら、それを放置していた。
知っていたのを放置した、程度の話なら、まだ言い逃れができるからだ。
浅ましい自己保身から来る怠惰と言えるだろう。
だが仕方があるまい。
オルフェノクの王を殺すためと言えど、罪もない人間を殺してしまえば正義の戦士たちの討伐対象になりかねない。
それだけは避けなければならなかったのだが……。
そうも行かなくなった。
どうも、付け火などを担当していたオルフェノクが、最近では普通の人間狩りしか行っていないのを確認してしまったからだ。
去年の秋頃からぱったりと、スマートブレインは王を探す事を放棄している。
少なくとも、現時点でスマートブレイン全体は王の必然性をそれほど理解していない。
居ればオルフェノクは完全な生命体になる、というのは理解できているようだが、何故完全なオルフェノクにならなければならないか……。
オルフェノクが短命であるという事実を、今のスマートブレインも警察内部のオルフェノクを研究する一派も、ごく一部を除いて把握できていない。
故に、何か別の理由があって先送りにしても不思議ではないと思うが……。
仮に、探さなくとも問題ないだろう、という結論に至ってしまったのなら、俺が手を下すしか無い。
幸いにして王の器が誰か、というのは把握しているので、出先でビルごと燃やす必要は無く、家で家族が揃っている状態で親だけが死ぬ形で火を着ければ被害は最小限にできる。
ミラーワールドからヘキサギアのカメラで家の内部を把握すれば、不自然無く事故に見せかけて、という真似もできる。
そしてそうなると、だ。
スマートブレインに所属しているオルフェノクを生き残らせておく理由がなくなる。
いや無論、限り有る資源を次の脅威に備える為にも大事にしないといけないので可能な限り命は残して回収する所存だし、不可思議な能力を持つ個体は実験体として回収するつもりだが。
それ以外の……ただただ人間を殺して仲間を増やそうと考えるオルフェノクは、さっさと始末した方が安全だ。
だが、やはり気になる点はある。
王の捜索を止めた理由だ。
他に優先するべき事が見つかったのだとすれば、それは何か。
或いは、王を見つけずともオルフェノクを繁栄させる手段を見つけ出したのだとすればそれは何か。
その手段は今スマートブレインの手の中にあるのか、それとも探している最中なのか。
スマートブレインを滅ぼすのは簡単だ。
だが、滅ぼした後、遺留品を隅から隅まで、関連施設を隅から隅まで探して回るのは得策ではない。
情報漏えいを恐れてスタッフ間のみで情報がやり取りされるだけ、という可能性は少なくない。
接触しなければならない。
ただただ安全な位置から覗き見に徹する時間は終わったのだ。
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スマートブレイン、社長室。
一人の男がこの部屋に入る。
表向きの大企業としての職務に加え、オルフェノクへの各種支援、研究への指揮などを行うこの男にとって、この一室は職務中一人になれる数少ない場所だ。
無論、秘書や面会者が訪れる場合もあるが、事前に必ず電話にて一報届く手筈になっている。
監視カメラの類も無い。
ここに繋がる通路にはそれらも存在しているが、少なくとも、この一室にそれを仕込む理由は無い。
実のところを言えば警備体制もしっかりしているとは言い難い。
最低限、体裁を整える為に警備員の類は存在しているが。
事実上、社内にて最高戦力でもある社長は、自分を守る為に弱者が犠牲になることを望むことはない。
故に、それに気付いた時、彼が行ったのは警備員を呼ぶ事でも、秘書に面会者が居るかどうかを確認する事でもなかった。
「何者かな」
泰然とした態度で、低い、渋みのある声で、侵入者へと呼びかけを行う事。
オルフェノクとして、超感覚に類する能力こそ持たないものの、長年の経験から何者かが潜んでいる気配を感じる程度の事は容易い。
自分しか居ない筈の社長室に居る何者か。
それが何であれ、その男は問題なく対応できる、と、確信していた。
「名乗るほどの名は無い」
男以外に誰も居ない様に見える社長室の中、男以外の声が響く。
年若い、少年とも青年ともつかぬ声。
くるり、と、誰も座っていない無人の椅子が回る。
いや、無人ではない。
暗闇の中から姿を表す様に、水中に絵の具が落とされ滲む様に、ゆっくりとその姿が顕になっていく。
「逆に聞きたいが」
王冠にも似た六本角、人を惑わす黄金の如く輝くクリスタルの瞳。
背に負うマントにも孔雀の羽にも見える装飾。
純白の装甲を、高圧のエネルギーの循環により揺らめくラインで縁取る体表。
「──君たちにとって、俺は何者かな?」
頬杖を付き、感情の読めぬ瞳で見つめる異形に対し、落ち着き払っていた男の顔に、ゆっくりと、喜色が浮かぶ。
異形の問に、男はその場で片膝をつく。
「お待ちしておりました、我らが王よ」
男──スマートブレイン社長、花形は、厳かな口調でそう告げて、頭を垂れた。
見て!主人公がバイト先の先輩や新たに得た技術で遊んでいるよ
かわいいね
☆みんながオルフェノクの王を探す為の付け火などを止めてイレギュラーばかり起こすので、ン人公は遊ぶのを止めて本格的な戦いに備えてしまいました
視野狭窄……いえ、
あ~あ
なお遊び続けた場合突如として表の世界にジェノブレイカーの群れが現れてオルフェノクやファンガイアを無慈悲に駆除しまくる展開もあり得たのでまぁこれはこれで……
とりあえずタイトルに平成ライダーを振り返るって付けた以上は振り返るべきタイミングでは適当なイベントを突っ込んで振り返ってもらう事になると思います
アギトの年、龍騎の年で二度も存在しない筈のラスボス戦が発生した為、鈍っていた強敵との戦いの勘を取り戻す為に生身滝行ならぬ生身雷行を敢行
変身形態で自己強化の為にただ雷に身を任せていた最初の年からの成長を師匠に見せつける
☆久しぶりに来たと思ったら、何時になく雑念に塗れているな(何時もより人間らしいな)……何、雑念を払う為に打たれてくる?そうか、滝の場所は……滝じゃなく雷に?……雷に?………………わかった、見届けよう
最近の若いのの修行は行き過ぎるとこうなるのか……我々も負けては居られないな!
と、いい加減感覚が麻痺した状態で純粋にこれだけ鍛えて何と戦うか尋ねただけの師匠
後々、あの返答は不味い兆候では、と気付くも、そんな主人公に無邪気に戯れつくジルグジルやなんか悶々としている難波を思い返し、気にかけるだけ馬鹿らしい、と、匙を投げる
雷を桜花で斬る……そういうのもあるのか! と、武人としての閃きを得る
原作版の何でも弾く魔法の防御みたいな梅花の型を思うに赤心少林拳の技術的には多分無改造の生身でも可能だと思われるが、再生能力も肉体強度も担保されていない生身でやるのは止めようね!
でもこの閃きは師範の中でだけ発生して誰に打ち明けたものでも無いので多分誰に止められる事も無い
☆いにゅいと轟雷の今の関係性
轟雷がいにゅいとは比べ物にならない速度と正確さでウェイトレスとしての仕事をこなす傍ら、お客から住所や電話番号メルアドなどを聞かれるナンパに素直に対応しかける轟雷と、それにインターセプトをかました上でなぜ答えてはいけないか、というのを悪態混じりに説明して、それにしゅんとなりつつ謝る轟雷
ナンパや個人情報の聞き出しなどにはきっちりノーを言える様になったかと思えば、スカートの中の盗撮やお客からのボディタッチに首をかしげるばかりで無反応な轟雷を見かねて客にキツめに注意しに行くいにゅい
なぜ嫌がらなければならないのか、という問いに口ごもるいにゅいに、何か説明しにくい理由があるのだろうと思い、わかりました、ああいうのは嫌がればいいんですね!と、勝手に納得する轟雷
しかし嫌がる素振りをみせつつも別に手で払い除けたりはしない轟雷に、やむなくまたいにゅいが割って入り……
みたいな事を繰り返すので、今のいにゅいは実質ウェイターというよりバウンサーだし、店はぶっちゃけ店長が居なくても轟雷一人で回るぞ!
じんわりと轟雷目当ての客が増えていたりするので結果的にいにゅいの仕事量も増えるし、それにテキパキと一人で対応してしまうので店長は自分のこの店における存在意義とかも疑ってしまうのだ
因みに轟雷の事があぶなっかしすぎていにゅいは家までバイクで送ってくれたりする
やさしみ
☆社長室でニヤニヤしながら二十二号の映像を眺めていた謎の社長
タイミング的にまだ初代社長である花形は失踪していなかったなぁと思い出してしまったのでこういう形になった
オルフェノクの保護とかを進めてはいたが、村上社長の発言などを鑑みるにこの人が社長やってた時は人を襲わないオルフェノクという生き方も許容されていたと推測できる
が、逆に人を襲って仲間を増やす、というオルフェノクも自由にさせていたので別段人間と共存しよう、みたいなタイプでも無い筈
そもそもこの人が社長をやってた時点でラッキークローバーの本編メンバーが普通に活動していたしね
ちなこのヤギさんもバラさんも流星塾襲撃には一切関わっていないので
なんやかや幕間で起きたりしたけど、次回からはとうとう555編に突入なのです
突入(まだ原作イベントの一つも起きていない時期)
何なら夏休み明けたとも言ってないので原作開始まで三ヶ月くらいあるんだけど
555編は王捜索をスマブレが止めた時点で原作の開始を待つ理由が一つも無いんじゃ!
まぁ結果的に主人公が罪もないオルフェノクの王の器となる人間の子供の両親を事故に見せかけて殺さなければならなくなったりするんだけど……
そこはなんとかしよう
それをやってしまうといざ年上のきれいなお姉さんが再登場してきても顔を合わせられないからな
明日以降のぐにょりが何か思いつく筈だ
何しろ明日以降のぐにょりには、今日までのぐにょりが蓄えたノウハウを全部ぶち込まれているので、順当に行けば今日までのぐにょりを越えるぐにょりになるはず!
という理屈が通るなら人間は今よりもっと進歩しているのではないだろうか
ドリルの様に一回転すれば少しでも前に進む訳ではないのが人間の悲しいところなのだ
それでもきっと明日は今日より素敵にな日になるって信じられる人や辛くても悲しくても明日はやってくるって人も、次回を気長にお待ち下さい