オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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仮面ライダー555 2002~2003年
85 秋の足音、嵐の前に


高校生活最後の夏は、概ね何事も無く終わりを迎えた。

東京の喫茶店でのアルバイト、赤心寺での三度目の修行、短い間ながらプライベートビーチと言っても過言でない人気のないビーチでの海水浴、隙間時間を使っての縁日来訪。

特筆するべきところのない、至って一般的な夏の過ごし方ではないだろうか。

 

しいて言うならジルが突然少し大人びた肉体を形成してみせた事には驚いたが……。

やはり手足の長さが変わりすぎると違和感があるらしく、普段使いはしないとの事だ。

実年齢は間違いなく俺より年上ではあるのでああいう見た目でも間違いではないと思うのだが、やはり俺にとってジルの見た目は普段のものが一番馴染みがある。

まぁ、見た目に引っ張られてお姉さん度が上がっていたので少し名残惜しくもあるが……。

 

そうして夏休みを終えて九月ともなれば、受験生としては本格的に追い込みのシーズンというもの。

模試の判定が幾ら高かろうとも、この世に絶対は無い。

落ちる時は落ちてしまうのが受験の厳しい所だ。

それは限定的な予知能力で受験問題を予め知っていたとして変わることは無い。

が、これ以上受験に関する勉強はどうやっても詰め込みようも無いので、後は精神を落ち着けて受験に臨むくらいしか無い。

 

或いは、受験当日に交通機関が何らかの問題を抱えない様に、天候を操作する準備と線路などへの飛び込みを未然に防ぐ為に各種交通機関にFAGを配備しておくくらいか。

戦力としてはヘキサギアで十二分に足りるのだが、こうして人混みに紛れるタイプの作業が必要な時、人間への擬態が可能な機体は必要不可欠になる。

将来的にこれを広く一般に広める為、FAGの関連技術を使って一芸入試でもしてやろうかとも思ったが、現時点でそれをやると余計な勢力が口を挟んで来る危険性があるため、暫くは秘匿しておくべきだろう。

 

そう、暫くは。

先日、ようやくFAGのAIをアギトの力抜きでまともに動作させられる演算装置にアテが出来た。

現時点では少し高価な品だが、量産前提でラインを作れば一般販売が可能なレベルにできないでもないだろう。

もっとも、その場合は初期状態のアーキテクト程度の情緒しか望めないだろうが、人間の活動をサポートする程度の仕事は可能な筈だ。

現在も人間の情緒、感情など、諸々のデータを収集し続けている轟雷の様な機体には特別に改良した品を使えば済む話だ。

 

「では、ドク、私はお店の前で掃除をしてきますね」

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

ぺこり、と、頭を下げて、ヴィクトリアン式メイド服に身を包んだ轟雷が店の外に出ていく。

無論、店の外は唯の歩道でありテラス席があるわけでもない為、掃除などは最低限で構わないのだが、轟雷には店の前の掃除をする際にはしっかりと微に入り細に入り時間を掛けて掃除する様に伝えてある。

色々と理由はあるが簡単に言えば宣伝の為だ。

無論、露骨に客引きなどをさせれば客は増えるかもしれないが、それで増えるのはメイド服を着た美少女に釣られてくる面倒な客だろう。

まぁ、店の前をメイド服を着た美少女が掃除している、という絵に惹かれてやってくる客も結局は似たようなものなのだが、厄介度は普通に客引きして連れてこれる客よりはだいぶマイルドになる。

そもそも店の前も人通り多いわけではないからそんなに人引っ張って来られないし。

店の方向性を店主のイメージとは異なる方向に捻じ曲げて店主の心を折りこの店舗を乗っ取るという目的からは少し外れるが、そこは最悪マテリア姉妹を同時採用して売上金をぐちゃぐちゃにしてしまえばいい。

 

「なぁ」

 

「ほい」

 

喫茶店でやってみたい動作の筆頭に数えられるアクション、カウンターの中で黙々とグラスを磨くという不毛な遊びで時間を潰していると、いにゅいが不意に問いかけてきた。

 

「前々から聞こうと思ってたんだけど、ドクってなんだ?」

 

「ドクターの略称というか愛称というか……」

 

「お前が?」

 

「博士号とかは持ってる訳ではないけど、マッド・サイエンティストだから」

 

ゾイド製造の為に犠牲にしたスマブレのオルフェノクも結構な数になるし、まっとうな研究者は水子霊やそれが入っていた生まれ損なった肉塊とかを実験に使ったりはしないだろう。

俺は至って正気かつ正常な状況判断に基づいて倫理観よりも効率を求めてこれらの材料を使う決断を下したが、理解力の足りない輩はこれらの実験の詳細を知れば俺に後ろ指を指すに違いあるまい。

まっこと愚かしい話ではあると思うのだが、人間は必ずしも理性的な生き物ではない。

中々秩序的、論理的な思考というのができないものなのである。

 

だが、ループ明けに改めて幾らかの病院を巡って調達した無数のアギトの力と新鮮な魔石は、いずれ必ずや俺の未来を照らす道標となるだろう。

増産したヘキサギア統率用のゾイドのお陰でミラーワールド側からの此方の世界に対する監視網は更に強固なものとなった。

ヘキサギアの戦闘偏重AIでは細やかな確認や自己判断が難しかったところを、ゾイド化した事である程度の判断能力をもたせる事に成功したので柔軟な指示が可能になったのだ。

今までは病院でしか手に入らなかったアギトの力や魔石製造用の母体も、各地のコインロッカーや外から中身がはっきり見えないゴミ箱の中などにも眼を光らせる事が出来るようになったので、少しずつではあるが危険を犯さず調達できるようになってきている。

現在技術再現中のディスクアニマルシステムが完成すれば、山間部などの鏡面の少ない自然地帯でも捜索する事が可能になるだろう。

 

「ふぅん……」

 

自分で聞いておきながら興味なさげだ。

……と、観察力と背後に対する知覚能力の無い輩は思うだろう。

だが、俺は背後の人間が何処に視線を向けているか程度なら既に見るまでも無く第六感と広範囲に向けて放つ微弱な念動力を応用した空間把握能力を用いてはっきりと把握できてしまうのだ。

いにゅいの視線は、店の外で掃除をしている轟雷を案ずるように外に向けられている。

 

「なんであいつはこいつの事をドクターと言っているのか、気になるって顔してるね」

 

「いや」

 

「なるほど」

 

「何がなるほどだよ」

 

「俺の知らぬ間に、いにゅいと轟雷の間に深い絆が結ばれているようで感心したんだよ」

 

「どうしてそうなる」

 

「どうして、と」

 

ううむ。

正直、俺も轟雷から詳しい話を聞いた訳ではない。

だが、轟雷から聞いた学習内容をまとめたレポート(バイト先で何があったかの報告)から推察するに……。

 

「うっかり轟雷の着替えシーンを見てしまった、とか?」

 

「んぐっ」

 

はーん、ラキスケェ!でございますか。

無論、いにゅいはぶっきらぼうながら礼儀をわきまえるべき場所ではわきまえる紳士であるからして、その状態をはっきりと見た訳ではないだろう。

また、常人の眼や皮膚感覚では轟雷の肉体に違和感を覚える事は難しい。

だが、轟雷は人間を模したミラーモンスターであると同時に、半分は機械で出来ている。

口腔から食事を摂取する事で、人間がそうする様に生き物の死体からライフエナジー……ミラーモンスターが生き物から食べるのと同じ活動エネルギーを蓄える事もできるが、緊急時の急速給電するためのソケットが尾てい骨部分にひっそりとカモフラージュされた状態で備えられている。

 

また、専用のアタッチメントを用いる事で逆に轟雷が他の家電製品などに電力を供給する事も可能になっており、災害時などには非常に役立つ作りになっている。

更に機械部分はオートメンテナンス機能(充電くんか轟雷自身が分解してパーツの洗浄と破損箇所の有無のチェックを行う)により一定の動作が常に保証されており、緊急時にはミラーワールドに控えるヘキサギア経由で製造元である俺に連絡が届き、時間が空き次第修理を行ったりもしないでもない。

 

そういう訳で定期的な分解整備を行う都合上、知覚能力に優れたものならば、轟雷の裸体を見ればその肉体が尋常な人間のものではない、と気付くことができてしまうのだ。

いにゅいは現状、一度もオルフェノクの怪人態になったことは無い筈だが、オルフェノクは人間態でも優れた身体能力を発揮できる。

それが怪力ではなく視力なり聴力なりに出てしまったのだろう。

 

「しかし、いにゅいはそれを誰に言うでも無い」

 

「言う必要、ねぇだろ」

 

「んふふ」

 

おっと、思わず下衆い含み笑いが溢れてしまった。

 

「気持ち悪ぃ」

 

辛辣ゥッ!

でも、嫌いじゃないわ。

 

「失敬な。……思わず笑っちゃうくらい、気分が良いのさ」

 

無論、いにゅいは轟雷がどんなものであるかは完全に把握している訳ではないだろう。

だが、何かしらの理由があり、人間から外れた生き物である、くらいには想像できている筈だ。

或いは自分の同類だとでも思っているかもしれない。

だから、自分から深く追求する事は無い。

無いが……。

明らかに轟雷の関係者であり、轟雷から特別な呼称で呼ばれている俺が、何らかの秘密を握っていると考えて、少し探りを入れているのだ。

 

「別段いにゅいが心配するような事は無いよ。俺は轟雷を悪いようにしようとは思っちゃいないし、いにゅいが轟雷とよろしくやってるなら祝福だってしよう」

 

「………………俺は」

 

ああ、ああ。

葛藤があるのだろう。

それこそ、店主が店の売上を着服していた店員たちを解雇していなければ、今頃何かしらの理由を付けてこの店を辞め、何処か別の場所に身を移していた筈だ。

今、この店に居るのだってその延長線上であるし、目を離せない危なっかしい後輩を捨て置け無い優しさからだ。

自分が何者であるか、何であるかをある程度知っているいにゅいは、意識して一つ所に身を置くのを避けているし、人と深く関わりを残す事も避けてきた。

 

「俺の所感だけど、いにゅいは良いやつだよ。轟雷を任せても良いと思えるくらいに。だから、できれば彼女を置いて何処かに行ってしまうような事はしないで欲しい」

 

すごく懐いているのは報告からも良く伝わってくるし、そうなればきっと轟雷は悲しむだろう。

別離を悲しむ、という感情の働きを蓄積できるなら、それは後継機達の性能を底上げするのに役立つだろうけれども。

見なくともどういう顔をしているかわかるが、あえて振り向く。

 

「誰かと共にありたいと思う気持ちは、簡単に否定されるべきじゃあない。いにゅい、例え君が、どんな身の上だったとしてもね」

 

「お前……」

 

眼を見開くいにゅいに、少しだけ意識して笑みを向ける。

しばしの時を置き、いにゅいががしがしと頭を掻きながらため息を吐く。

 

「そういう時くらいは、いにゅいってのを止めろ」

 

「そいつは無理な相談だ」

 

何しろほら、いにゅいはいにゅいだから。

それに。

これから彼の身に起こる事を考えれば、今更下の名前で呼ぼうというのも気が引ける。

倫理観の類は必要になれば捨てるのもやむなしだが、どうしても脳味噌がある分、面の皮をとびきり厚くはできないのだ。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

オルフェノクの王が如何なる存在であるかというのは、実のところ驚くほど情報が揃っていない。

九死に一生を得た子供に宿る、成体になるまでに幾らかのオルフェノクを餌として捕食する必要がある、捕食する為にオルフェノクを石化(?)させてしまう、完全体になった時点で人間態や人間だった頃の記憶や意識を持たない、オルフェノクから人間の姿を除去して不死の存在とする、そして、オルフェノクの王自体は不死ではない。

幾らかの不確定情報もある。

例えば、最終回の後に灰になったいにゅいと同じく、ラッキークローバーの生き残りに回収されたオルフェノクの王もまた死ぬ、という展開が考えられていた、という話。

或いは、オルフェノクの王が死んだ時点で残りのオルフェノクも滅びる、という、ソース不明の話。

 

まず、恐らくだが、オルフェノクの王にしろ、オルフェノクの王に完全なオルフェノクとして覚醒させられたオルフェノクにしろ、これらは完全な不死ではなく、殺そうと思えば殺せる筈だ。

オルフェノク化が一種のマラーク化、天使化の様なものであるとすれば、その生死の概念はオリジナルであるマラークに準じるものであると推測できる。

一般的な生物を基準として見れば不死身と言っていいのかもしれないし、或いは老化や寿命などは無くなっている可能性もあるが……。

魔化魍が通常攻撃では死なないにしろ、強めの紋章キックや気合入れたパイロキネシスで焼き殺せるのと同じ、いや、マラークと同水準の不死身というのであれば、G3を始めとした現代科学技術でも火力さえ足りれば殺害が可能だろう。

故に、オルフェノクの王が与える不死性はそれほど警戒する必要がない。

死に難さで言えば恐らく野生の魔化魍の方が厄介だろうし、戦闘規模や和解のしようの無さでも魔化魍未満だ。

 

だが、それは一定以上の戦闘力を持っているからこそ言える事であり、現状、有る種の装甲服や特殊な体術、呪術や陰陽術、アギトの力や魔石の力を持たない人間に対してはやはり危険である事は間違いない。

警察のアギト部隊が如何なる運用をされるかは知らないが、流石に個々人があちこちを彷徨く形にでもしなければ対応は難しいだろう。

また、G3やその後継機、デチューンしたデッキライダーシステムで倒せるとも言ったが、これらが一定以上の火力を発揮しようとした場合、大体の場合は強力な飛び道具などを使用する形になるだろう。

これを市街地で使用する、というのも厳しい話だ。

そして、オルフェノクはおおよそ元人間であり、人間としての知能を有しているため、警察のその手の事情を利用しない訳がない。

 

また、完全なるオルフェノクに覚醒させる、というのも不味い。

これをされた場合、オルフェノクは強制的にオルフェノクとして生きていかざるを得ない。

穏健派、人間を殺さずに人間として生きるオルフェノクが存在出来ているのは、不完全なオルフェノクには人間の姿が残されているからなのだ。

人間の姿を切り離され、怪人態で過ごすしか無くなったとなれば、本人の気持ちがどうあれ、人間社会に紛れて暮らすのは難しくなる。

また、オルフェノクの怪人態には物を節食する為の口も無ければ性器や肛門の類も見受けられない。

三大欲求の内の二つが消滅……するのか、或いは欲求こそあれそれを解消する手段だけが消えてしまうのか。

ひたすら欲求だけ蓄積されていくなら、正常な、少なくとも、人間的に正常とされる精神状態を何時まで保てるだろうか。

 

恐らく、人類からオルフェノクの因子を除去するのは難しい。

言わばそれは、人類からアギトの力を完全に取り除くのと同じだ。

単純に神としての規模として見れば比肩する者が無いテオスですら、それは不可能だったのだから、成長させる余地こそあれ、現状ではその力の一部を簒奪しただけに過ぎない俺では不可能だろう。

将来的に可能になるにしても、それは間違いなく遠い遠い、気の遠くなる程に遠い未来である事は間違いない。

故に、オルフェノクが発生する、死者が起き上がり異形の力を宿すという現象は消極的にであっても受け入れなければならない。

 

そういう点で見た場合、オルフェノクの王は、人間として生きていこうとするオルフェノクにとっても害悪になる。

オルフェノクになっても人類の為に戦おう、という志を持つ人種が存在できる土壌を荒らす以上、その存在を許す訳にはいかない。

 

しかし一方で、オルフェノクの王を見つけ次第抹殺、消滅させればいいのかと言えば、これも素直に頷く事はできない。

そもそもの話、オルフェノクの王が、これからも暫くは続くであろう世界において、唯一替えの効かない個体であるという保証は何処にもないのだ。

或いは、全世界規模で見れば、既に海外ではオルフェノクの王が人知れず発生していたとしてもおかしい話ではない。

もういっそ海外に関しては日本に影響が無い限り、或いは五代さんのお目々が真っ黒になっていたりしない限りは不干渉で行くつもりではあるのだが。

日本に現れたとなればそうはいかない。

 

繰り返しになるが、オルフェノクの王、アークオルフェノクに関しては情報があまりにも無い。

複数が同時に生まれ落ちる事があるのか、一体死ねば終わるのか、新たな王が生まれるのか。

殺した場合に何が起こるか分からない以上、見つけ次第即座に殺す、という訳には行かない。

仮に、一つの巣に女王蟻や女王蜂が一匹のみしか存在しない様に、一匹の王が存在している限り新たな王が湧かない、というのであれば、ギリギリ死なないラインで生かし続けて封印しておくのが最善と言える。

オルフェノクとして存在できる最小単位は数多くの実験の末、既に解析済みである為、封印しておく事は難しくはないだろう。

既にオルフェノクは大した脅威ではない、というのは、比喩でもなんでも無い、厳然たる事実に過ぎないのだ。

 

大した脅威ではないし、それの発生を此方である程度コントロールできる現状は、モラトリアムな時間である。

可及的速やかに発見し駆除しなければ、という結論にたどり着けない以上、我々は思考を巡らせなければならない。

何しろオルフェノク化は、既に人間という種族に深く根ざして治療が困難な病だ。

それに対し、如何なる姿勢で持って挑むか。

そして、それを考えるのは人間側だけではない。

既にオルフェノクとして覚醒してしまっている元人間は、オルフェノクという種族に対して如何なる姿勢で挑まなければならないのだろう。

 

無論、全てのオルフェノクは意思を統一せよなどという話ではない。

現状、日本においてオルフェノクを統率していると言っても過言ではないスマートブレインにおいても、全てのオルフェノクに特定の思想を押し付けるなどという事はしていないのだ。

スマートブレインに所属しているオルフェノクにしても、ただ社員として働いているものも居れば、積極的にオルフェノクを増やそうと人知れず殺人を繰り返しているものも居る。

比率で言えば断然殺人を繰り返す個体の方が多かったりするのだが……。

少なくとも、オルフェノクを増やそうとしない個体が何かしらの罰則を受けていたりはしないのが今のスマートブレインである。

オルフェノクを統率し人類を滅亡させる、というよりは、人間社会の中にうまく適応できていないオルフェノクを保護し、生活のサポートを行っている、という方が方針としては近いのかもしれない。

 

だが現状、恐らくほぼ全てのオルフェノクが目の当たりにすらしていない問題がある。

急激な進化の為に起きる急激な細胞の劣化。

オルフェノクという種の根本的な問題である短命。

その短命を受け入れるか、或いは、幾らかの王への供物、生贄と、人間としての生を捨てても生きながらえるか。

もしくは端的に。

オルフェノクという種族は続くべきか、滅ぶべきか。

 

―――――――――――――――――――

 

「君も、考えなければならない。いや、君の中では既に半ば決まりかけているのかもしれないが……そうだな」

 

「十二月まで待とう。何、君の命も、今暫くは尽きる事は無い。それだけは保証しよう。その残りの生命を少しばかり、考える時間に充てて欲しいんだ」

 

「君達が生き残るべきか」

 

「滅ぶべきか」

 

「俺が全てを決めるのはフェアじゃあない」

 

「少なくともこの国のオルフェノクは、今の今まで君が保護してきた」

 

「決断するのは、君であるべきだと、俺は思う」

 

「十二月になったなら、答えを聞きに来る」

 

そう言い残し、白い異形は社長室から霞の如く消え失せてしまった。

再び無人となった社長室で、眼下に広がる夜景を見ながら花形は思う。

滅ぶべきか、生き残るべきか。

 

花形は、若かりし日にオルフェノクとして覚醒してから今日まで、無数のオルフェノクを保護してきた。

スマートブレインの財力を持って、オルフェノクとは何なのか、何故なってしまうのか、幾度となく研究を繰り返してきた。

そして、保護したオルフェノクが、ゆっくりとオルフェノクの本能、力、衝動に飲み込まれて人の心を失っていく様を誰よりも近くで見つめてきた。

 

オルフェノクは人から生まれるが、必ずしも人のままで居られる訳ではない。

或いは、全ての人類がオルフェノクとなったなら、今の人間社会のようにはいかなくなるかもしれない。

少なくとも、今のままの社会制度では立ち行かなくなるだろう。

 

だが。

それでも、オルフェノクという種族を見捨てる事ができるか、と言えば、それもまた難しい。

少なくとも、多くのオルフェノクを擁するスマートブレインは、危ういバランスの元でではあるが、一つの組織として成立している。

そしてそれは、王の洗礼を受ける事で、より堅実な物へと変わっていくだろう。

 

オルフェノクは短命という欠点を克服し、超越者たる王の下で新たなる秩序を作り上げる事ができるかもしれない。

それは人類を滅ぼして、という話ではなく、人類と並び立つ一つの種族として。

 

オルフェノクとなってから漠然と追い求めていた未来が、手の届くところまで来ている。

或いは、オルフェノクの事など何一つ知らない、我が子の様に育ててきたあの子達もまた、オルフェノクと手を取り合って生きていく事ができるかもしれない。

花形は脳裏に浮かぶ輝かしい未来を思い、一人、晴れやかな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 






でもこの世界において力なきものの笑顔は曇る為にあるんやで
力があってもめぐり合わせとストレス耐性次第で曇るけどな

☆極論するともっと自分が笑顔に成るために日々元気に色々な試行錯誤を繰り返しているだけの男
もっと笑顔になりてぇけどなぁ俺もなぁ……せや!
脅威が居なくなれば笑顔で居られる時間も増える為戦力を拡充し続けるのは当然の帰結なのだ
憧れのヒーローであり面白い同僚でもあるいにゅいが轟雷と中々良い関係であるのは素直に喜ばしい
でもまぁこの後下手するとあれだからなぁ……
一応同窓会の場所に関しては流星塾の中で唯一確実に住所を参照できる男の家に監視を潜り込ませて確認できるようにしている

☆急に存在感を出してきたいにゅい×轟雷カップリング
この後やりたい展開のためにはまだ少し轟雷側の描写が足りない気がするので、次回頭に轟雷宅を訪れてのドキドキバイト活動報告最近いにゅいさんと居ると胸がぽかぽかするんです編を挟んだりするかもしれない
いにゅいは轟雷の身の上になにかあるのも轟雷が人間ではないのもなんとなく察してるけど自分も人のことを言える立場じゃないから言わないしそうでなくても轟雷に何の毒気もない事を理解しているので言わない
むしろそれを隠すという意識に欠ける轟雷を気にかけてもいるんだけど、距離が近い事と轟雷は自分が人と違うという事を知らないのだと思うといま一歩ふみこめない、みたいな感じ

☆オルフェノク大勝利! 希望の未来にレディー・ゴー!な花形さん
オルフェノクが社会的立ち位置を手に入れる事ができたら、我が子の様にかわいがっている流星塾の生徒たちに今まで明かせなかった自分の秘密とかを明かせるし、王を探す為に集めたのだという事実を教えてちゃんと謝罪して、許して貰えたなら今度こそちゃんとした家族に……
みたいに思っている

☆オルフェノクを束ねる花形社長がオルフェノクの王を探すために孤児たちを集めた孤児院のようなものである流星塾
ところで最近王様見つかったらしいんだけど、ここの塾生達はどうするんですかスマートブレインの急進派の人達
そろそろ同窓会するらしいっすけど


☆犯人たちの事件簿最新刊こないだ発売!
真実はいつもひとつ!
一ちゃんは上半身裸に木の棒みたいなストロングスタイルで推理するけど、おじいちゃんも閃きじゃなくて推理の積み上げで戦うタイプで従軍経験あるけど犯人とヨーイドンで戦うと普通に負けたり勝ったりする程度のパワーしかないので……
逆に孫の代では散弾銃の直撃で生き残ったり雪山で放置されても生き残ったり底なし沼からもなんやかんや生き残ったりとフィジカルの頑丈さが不死身レベルにまでなってる分進化はしているものと思われる
いっそ一ちゃんの孫辺りになったら頑丈さに攻撃力とかもプラスされたりしませんか?
あとスケボーはともかくメガネとかは一ちゃんが持ったら幼馴染の部屋とか風呂とか盗聴したりしそうだし……
あと一冊か二冊くらいで終わりとか寂しすぎる……


☆☆☆スピーシーズドメイン堂々完結!☆☆☆
めでたああああああああああああああああああああああああああああああああうあああああああああああああああああおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!1!!!!!!!!!!!!!!!!!
終わってしまった悲しみよりも、ゴールインしたんだなっていう感動の方が大いに勝る一作傑作
ゴールイン!
ゴールに!
イン!
インフィニティインフィニティインフィニティインフィニティ!!
プリーズ!
ヒースイフードー!ボーザバビュードゴーーン!!
そして数年後インフィニティのイケてるスタイルを刮目して見よ!
そして同時期のメインメンバーの姿を見よ!
あああああみんな立派になってぇぇぇぇぇ!
ぐにょりは美人すぎる〇〇とか超美麗〇〇みたいな過剰広告は嫌いだし、なんならこれを見ないと人生の何割損してるみたいな言葉もいまいちぴんとこないけど
この作品はぜひとも通して読んで欲しい
これほど追い続けて、読み続けて良かったと思える作品はそうそう無い
いやホント、これ以上のハッピーエンドある?ってくらいの気持ちの良いハッピーエンドでした
最終巻らしくハッピーエンドである以上に絵面と展開の派手さもあって、正直この最終巻を読む為にこれまでの十一巻を全て新品で購入して読み始めても決して損は無い名作
電子書籍で勝った優勝した買ったけど、実本も欲しいなぁ
あとゴールインしたんんだなって感動が勝るって言ったけどなぁ!
これで終わりとか寂しいッ!
修学旅行編とかやってほしかったよぉ!
でも先延ばしとかせずに面白いと思う展開をばしばし詰めてく構成は今読み直してもホント最高でしたくっそぉぉぉぉおおおお寂しいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!

★グーグルプレイブックス
うんち!
SDカードにデータ保存できずスマホ内部にしか記録できないのでこれで幾ら買っても最終的にめっちゃ限られた冊数しかスマホに入れておけない
という欠点を気にせずこっちで九巻くらいまでスピーシーズドメイン買っちゃったからそのうちDMMブックスで改めて買い直す
ねこのうんち踏め!




たぶんこの話からが555編
なんでこんな微妙な時期から555編にしているかだって?
本編時間軸に入る前に555編が恐らく終わってしまうからだよ
たぶん主人公が高校卒業するより前に555編は決着する
それじゃ本編を全然振り返ってないだって?
若さは振り向かない事だから別にもう良いじゃろ
タイトルとメインテーマに縛られて次の話が書けないよりは多少軛から解き放たれても次の話を書ける方が健康には良いのだ
そんな訳で次回はたぶん運命の夜
555編は諸事情により短くなると言ったのは嘘になったと言ったな
あれは嘘だ
恐らくそんな長くないであろう555編ですが、それでもよろしけば気長にお待ち下さい

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