オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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95 王の胎動

ベルトと共に渡されたバイクに乗り、山道を走る巧。

何処へ行くとも知れない……という事は無く、彼には幾つかの明確な目的地が存在した。

世に言うパワースポット、天然自然のエネルギーが豊富であると言われている場所だ。

 

『理屈の上で言えば、エネルギーが豊富な場所に居ればいいんじゃないですかね』

 

という、彼の友人の曖昧な意見に半ば縋るような形ではあるが、何もせずに日々を過ごす気にもなれず、彼は走っていた。

旅をするに足る蓄えがある……という訳ではないが、巧が旅立つ際、大事なベルトと携帯電話の他に渡された幾つかのサバイバルキットは、路銀を節約するのにそれなりに役に立っていた。

 

ガソリンを補給する必要がないバイク、というのはありがたい話だ。

飲水も、適当な川から組んだ水を濾過して飲める機械を渡された。

電気コンロはバイクに繋げばほぼ無尽蔵に使えるし、冬場はアタッチメントを付ければヒーターとしても使えるという。

そこにコンパクトに仕舞える軽量なテントに、食べられる野草図鑑、野山の獣の法に触れない捕獲方法の解説本(手書き)に、簡単な解体手順の説明書。

そこまでサバイバルをするつもりは無かったが……。

どれほどの長丁場になるかは分からなかった為、全てありがたく受け取っておく事にした。

 

旅立ってから暫く経つが、これらのお陰で手持ちの金は殆ど減っていない。

無一文になり、適当な土地でバイトを探す手間を省けたのもありがたい。

曖昧ながらも目的がある旅で、余計な時間を取られるのを避けたかった、というのもあるが……。

今の巧は、新しい人間関係を構築する事に対して、決して小さくはない恐れを抱いていた。

 

今、巧の携帯に連絡を入れてくるのは、サバイバルキットとベルトを渡してきた友人を除けばかつての職場の仲間くらいのものだ。

その職場の仲間にしても、大体がその友人の関係者で、余程の事が無ければ自分で危険を乗り越えられるタイプの人間で。

しかし、新しい知り合いが、そうであるとは限らない。

 

電話やメールでかつての知り合いとするやり取りが辛い、とは思わない。

だが、一人で居る時間に、ただ携帯とベルトを握りしめて、呆っと過ごす事が多くなった。

その時間を一人の時間と言えるのか、そうでないのかは、意図的に考えずに。

 

しばしバイクを走らせ、急激に車通りが少なくなっていく。

全国のパワースポットを巡る旅の中ではこういう事もしばしばあった。

パワースポット周辺や街道を走る時は違うが、平日の昼間にただの下道を走るのであれば、道路は気が滅入るほどに空いている。

カーブも多く、見渡す限りに山しか見えない、合間にある錆びた看板や田植えの終わった田んぼが辛うじて文明を感じさせる様な、何処にでも有る田舎道とも言えない、舗装された道路しか無い山道。

 

そのど真ん中で、大剣を構えたロボットが待ち構えていた。

驚く巧、しかし、カーブを曲がった先である為かブレーキも間に合わない。

腰元に手を当て、手探りで携帯電話のボタンを押す。

 

『5・5・5』

 

半ば導かれる様に自然に押し間違いも無く指定の番号を入力しエンターを押すと、つけっぱなしにしていたベルトから、内蔵されたアギトの力が装着者である巧の中にあるアギトの力を感知、搭載された無数の使徒再生アギトの力と連動し、変換器を通してアギトの力をフォトンブラッドへと変換。

循環の為にベルトから精製された経路、フォトンストリームを通して全身に循環させ始め、その強大な力の奔流から巧を守るため、アーメタルとソルメタルの複合合金製の複合装甲で作られた強化服が装着される。

 

走るバイクをそのままに、躊躇いなく跳躍。

慣性の法則に従い前方へと投げ出される様に跳ぶ巧の足元を赤熱する大剣──スラッガーブレードが勢いよく通り過ぎていく。

変身し跳躍していなければ巧の身体は真っ二つになっていただろう。

操縦者を失い転倒するかと思われたバイクは、半ば倒れ込む様になりながらも走行を続け、複雑に変形を繰り返しながらそのボディを起こし、巧──ファイズの少し向こうに二本足で立ち上がる。

 

並び立つのは、仮面ライダーファイズに、オートバジン。

スマートブレインで作られた当時とは中身も見目も大きく変化し、単純な戦闘力が強化された二体の戦闘ユニットは、並の怪人を寄せ付けもしない性能を誇る。

だが、それを知ってか知らずか、大剣を見事に空振りしたロボットは、何を恐れるでもなく、堂々と振り返り、剣を突きつける。

 

「そのベルト……渡してもらう」

 

くぐもった電子音声でなされた宣言。

ファイズはそれに言葉による返答を返さず、オートバジンからファイズエッジを引き抜き、腰のファイズフォンを銃型に変形し突きつける。

返答は、真っ赤なエネルギー弾の形で返された。

 

―――――――――――――――――――

 

三二式轟雷派生型FAG専用機動外殻。

つまるところ、半機械半天使であるFAG達の専用装備……の、試作品だ。

FAGは現在のところ、その全てがアギトの力を有した個体ではあるが、基本的にそのアギトの力は、機械人形に生物としての性質を付与する事に使用され、通常のアギトの様に高い戦闘力を備えている訳ではない。

何故機械人形に生物としての特徴を付与するなんて真似をしているのか、という点に関しては、実際は単独ではマラークの様な肉の器を作れない程度の出力しかないアギトの力に依代を与える事で受肉させているので、順序が逆になる。

FAGがデッキのようなものを内臓していたり、フレーム部分が頑丈に作られているからこそ最低限の戦闘力を有しているが、基本的に七千度の熱を操るとかいう迫害されても納得するしかない超能力の類は使えない。

無論、これはFAGの持つアギトの力が成長していけばまた話は変わってくるのだが……。

 

基本的に、アギトに進化した人間が死ぬと、内包していたアギトの力はどっかに行く。

間違っても自然とテオスの中に吸い込まれていくなんて事は無いし、基本的にこれを能動的に回収する事も難しい。

時折、死にかけの父親から抜け出したアギトの力が子供に移動してギルスに進化させてしまうとかいう不幸過ぎる事故も起きるので、消え失せる、とは言えない。

ついでに言えば、目の前でアギトが死んだことは無いにしろ、他のマラークと同じ様に超感覚の眼で見れば抜け出したアギトの力を確認できるかもしれないし、マラークの魂と同じ様に超能力でグリップする事もできるかもしれない。

 

逆説的に、目の前で無い場所、見えない場所、遠い所、知らない場所でアギトが死んだ場合、いよいよもってアギトの力はどこに行くか分からなくなる。

最近増えてきたと噂の野良アギトがそうなるのは仕方がないにせよ、俺が増やしたアギトの力を宿したFAGが破壊され、ボディを構築していたアギトの力がどっかに行方不明になるというのは耐え難い損失だ。

それは人格があって親しみやすい外観にした配下が消えることへの悲しみであったりもするが、やはり、半機械マラークとも呼べる戦力を作り出すのに必要な資源をただ無為に失ってしまう事の惜しさでもある。

 

今回試作した機動外殻は、その辺の事故を防ぐ為に製造した追加装備である。

無論、FAGには最初から戦闘用装備への瞬間換装能力を内蔵デッキという形で与えてあるし、現在稼働中のマテリア姉妹に関しては特製のモンスターとその契約済みアドベントカードを与えているのだが。

デッキシステムにはどうしても限界が存在する。

単純に、モデルがミラーワールドの仮面ライダーである為、俺のようにある程度の火力を備えた相手には装甲が意味を成さない可能性があるということだ。

無論、モデルであるミラーワールドのライダーと異なり、FAGはデッキシステムを体内に内臓している為にデッキ一点狙いで変身を解除させられるという事も無いが……。

 

そこで、この機動外殻である。

見た目としては、FAGのモデルとなったFAの外観そのままの全身鎧。

それこそG3シリーズよりもメカニカルで、一見してただのロボットにしか見えない。

だが、動く殻、という漢字を使っているだけあって、実はこの装備、パワーアシスト機能は最低限のものしか組み込まれていない。

装着者の思考を読み取り各部アクチュエーターが先んじて動く事で、まるで殆ど重さが無い様に振る舞う事ができる、というだけで、これ単体では装着者の素の筋力しか発揮できないのだ。

基本的に、デッキシステムを使用して戦闘形態に変身した状態のFAGが装備するか、元から変身能力を持った人間が変身した上で着込む、くらいしか戦闘力を上げる方法は無いだろう。

 

だが、この外殻、殻という漢字を使うだけあって、非常に頑丈に作られている。

具体的に、ライダーズギアを解析する過程で手に入れた耐衝撃構造をふんだんに取り入れており、理屈の上では核兵器の直撃レベルの衝撃に耐えきる事が可能……な、筈だ。

 

筈というのは、元の戦闘データを守る為の構造が関節部など無い記録媒体を守るだけのものだった為に、複雑に動く関節部分だけはどうしても強度で劣るという欠点があるのだ。

恐らく、核の直撃を受けた場合、全身にサブカメラを仕込んで視界を確保した代わりに可動を最小限にした首周りこそ無事だが、手足などは辛うじてつながっているかな、というレベルで拉げ、最悪外側だけが無事でも中身は衝撃で捻じれ千切れたりもげてしまう可能性がある。

 

だが逆に、そうでない攻撃ならば大体どうにかなる程度には中身のFAGを守ってくれる。

無論、衝撃でも熱量でもない関節技、内部を直接破壊する念動力や発火能力、重力倍化攻撃などには対応しきれないが……。

関節技対策は技量を磨かせれば良いし、装甲内部を直接狙う様な能力を持った怪物は野良では中々現れる事は無いのでそれほど問題にはならないだろう。

 

実際、使用者の保護という観点で見れば、これもまた完璧とは言い難い。

ライダーズギアから回収した耐衝撃機構を完全に使用者の保護の為に使うとなれば、そも人間サイズの鎧の様にする必要が無いのである。

それこそ、関節をそのまま中身の関節に合わせるのでなく、関節の無い箱状のコックピットにFAGを入れ、その外側に腕なり脚なりを入れてしまう方が安全ではある。

が、そうすると中身の動きに外側を追従させる操縦形式の場合、機体が極端に大型化してしまう。

コックピット内部で普通に戦闘に必要な動作を行うとすると……胴体を大きくした極端な形状にしても、5メートルは下らないサイズになる。

操縦者の動きをダイレクトに反映できる形にしようと思えば、コックピットを含むコアブロックを中心として各部関節を組み込まねばならず、軽く10メートル程は必要になるのではないだろうか。

仮にコックピットを小型化した上で操縦方式をセミ・マスター・スレイブ形式にしても大幅な小型化は望めないだろう。

そして、そんな大きな機械が彷徨くと、とても目立つ。

戸籍も用意していない、分解しても科学的に見ればなぜ動いているかもわからない様な謎の存在が運用するには明らかに問題が有る。

 

装着者の安全性は、耐爆性能の面で妥協した代わりに光学迷彩その他機能を追加する事で確保している。

また、今回試作して偶然謎の少女に強奪された外殻、ウェアウルフ・スペクターには、うっかり内部に説明書付きの新型のライダーズギアも搭載してしまっており、これをパイロットスーツとして採用している為、外殻が破壊された場合でも中身の正体が露見しにくい。

 

これら盗難されてしまい運悪く悪用されてしまいそうな気配のする試作機には、ヘキサギアをスマートブレインから回収した各種技術でアップデート、ライダーズギアと紐付けしてアギトの力を共有するゾイドやヘキサギア派生機、アニマギアを追従させてある。

普段は装着者にも知らされていない機能だが、万が一装着者が敗北して正体が露見しそうになった場合、割って入って装着者を回収する任を持たせてある。

 

実際問題、この試作機がどこまで安全か、と言えば……。

例えばの話、改良したファイズギア、ファイズギアGを装備して変身したいにゅいが相手であれば、互いにいい感じの危機感を抱く戦いが可能ながらもその実どちらも決定打を持たない、内実を知れば実に煮え切らない戦いを繰り広げる事が可能な性能となっている。

何度も言うが、攻撃性能は外付け火器準拠でしか無いからね。

しいてこの外殻そのものの攻撃性能を挙げるとすれば……頑丈だから、殴ったり蹴ったり体当たりしたりすると痛いかな……?くらいのものだ。

また、装着者が銃火器の使用方法を習熟していない可能性を考慮し、背に装着していた折りたたみ式のバズーカを一本外し、代わりに大剣を一本持たせている。

が、これもまた本来はミラーワールドで不要な建築物を解体する際に使用されていたものであり、見た目の派手さの通り実用性に富んでいるかと言われると首を傾げる。

重さと熱量で叩き切るので破壊力そのものはかなり有るが、基本的に動く標的に向けて振るうには圧倒的にでかすぎるのだ。

あんなものを振り回すくらいなら適当に殴りに行った方が確実だろう。

 

だから、中身が何者なのかとか、そのへんがバレた時も、いにゅいが怒らないでいてくれると嬉しいなとは思う。

 

ちなみに外付けの武装自体はファイズに変身した状態なら力づくで引き剥がせるし、剥がした下にはコックピットブロックの強制開放スイッチが存在するので、アクセルフォームになってしまえば素早い動きで有無を言わさず中身を取り出せるから、ファイズアクセルが完成する頃には負けるんじゃないかな。

設計図は引かれていたので、これをファイズギアGに合わせて再設計している最中だが、完成はそう遠くないだろう。

できれば加速中に使用者の脳の処理速度をアップして、アクセルフォームの性能を最大限引き出せるようにもしてあげたいのだが……。

……たぶん、繰り返し使う内に、そういう方向性のアギトに進化する可能性があるので、それに期待しておこう。

現状加速した時間の中で戦える、というのはかなりのアドバンテージなので、如何にいにゅいと言えどそう容易くこれを与える訳にはいかない。

 

後は……。

路銀を少し入れておこうか。

充電くんも居ないし、盗電は問題があるから、適当な食事からエネルギーを精製するしかない。

目的を達成する上で他の障害にぶつかっても仕方がないので、日本国の法律に合わせたやってはいけない事リスト……は、サポートユニットにでも入れておけば良し。

 

この世界の未来がどうなるか、というのは未知数ではあるのだが。

この世界が存在するという事実それ自体が、ありえないという事はありえない、という恐るべき現実なのだ。

あと数年した後にやってくるかもしれない世界の破壊者への対策は勿論、世界の破壊者が訪れる世界が組み込まれる可能性を考慮すれば。

やはり、いつかはビルより巨大なロボットも必要になってくる。

大型ゾイドコア……もとい、質の良いアギトの力をコアとして生産したデスザウラー級で対処できない可能性を考えれば、これを叩き台に本格的な巨大ロボを建造する計画も必要になってくるだろう。

 

いつか手に入るかもしれない、電子モヂカラなる素晴らしい技術……。

そして、無数のゾイドを合体させて作る偽アバレンオー(仮)……。

それを夢見ながら、今は手元の技術を磨き上げていく事にしよう。

 

―――――――――――――――――――

 

技術を磨き上げるのが目的ではなく、危機を乗り越えて楽しく生きていくのが目的である事を忘れてはいけない。

いけないが……、技術を磨き上げるのが楽しい、新しいものを作るのが楽しい、という気持ちは必ずしも否定されなければならないものではないだろう。

物事を前向きに捉えるポジティブさというのは生きていく上でとても重要なスキルの一つだ。

死に際に怪人が人間態に戻り悲しそうに譫言を繰り返す姿にストレスを感じるか、それとも生き足掻く生命の健気さを見出して感動するか。

どちらが生きやすいかと言えば当然後者になる。

 

今、一軒の家が燃えている。

それを俺は鏡越しに見ているヘキサギアのカメラ越しに目撃している訳だ。

警察関係者は周囲に居ない、消防への連絡は既になされており、ごうごうと燃え盛る家は、中に誰かが残っているとすれば、既に焼け焦げて死んでいるか、一酸化炭素中毒で動けないか。

偶然にも家の中には男女の夫婦が居て、のんびりと身体を休めていたのだろうか。

家の前では、燃え盛る我が家を目の前に呆然と立ち尽くす少年が一人。

この家に住んでいた夫婦の子供で、端的に言えばこの火災で被害に遭った家の唯一の生き残りだ。

 

例えば、彼がこの火災に巻き込まれていれば、高い確率でやはりこの子供だけが生き残っただろう。

生き残ったというよりも、その場合は一度死んで別の生物として蘇生しただろう、という話なのだが……。

残念な事に彼は一人だけ火に飲まれる事も無く、怪我一つ無く生き残ってしまった。

彼に残されたものはなんだろうか。

命がある、戸籍もある、日本国内であれば、親戚の家に預けられる、施設に放り込まれるなど色々と道はあるだろうが、すぐさま路頭に迷う、という事も無い。

これは何度と無く思う事だが、色々と穴のある法律は見受けられるが、基本的に、日本の法律はそれなりに弱者に優しく作られている。

 

そもそも弱者に優しい法律が存在する、という時点でもう世界基準では優しいのではないだろうか。

某大国などは医療制度などの面で遠回しに貧乏人は何もせず死ねと言っていたりするし。

優しさと甘さを履き違えた愚か者などはそういう環境で捻じくれた思想をせっせと育ててしまったりするのだ。

 

──みんなも、ろくな教育も受けていないストリートチルドレンに、犯罪者から奪った札束をぽんと与えたりするのは止めようね!

彼等はそれを有効に活用する方法も、薬物が肉体も脳味噌も人生も破壊してしまう事も、無計画に銃で強盗をしても大体捕まるし結構な割合で射殺されてしまうという事も知らないからね!

論理的な思考とか順序だった計画性というのは人間が本能的に備える本能じゃなくて、教育によって得られる知識という素晴らしい財産で、人間という生き物が最初から誰しも平等に持っている共有財産ではない事を理解しておこうね!

それを見て人類の性根は悪とか短絡思考をするのは止めようね!

人類が(あく)なんじゃなくてお前の頭が(わる)なだけだからね!

せめて薬打って気持ちよくなって銃という暴力を持って気を大きくした上で死ぬのは、下水道の中で寒さをしのいで半端に長生きするよりも幸せだろうと思える程度には覚悟をキメておこうね!

まぁ覚悟を決めようが決めまいが、考えなしに優しさと甘さを取り違えたせいでストリートチルドレンが買った銃で死んだ人間は恨みを決して忘れないだろうけどな。

 

少し話が逸れた。

繰り返しになるが、家を焼かれた彼に未来はあるだろうか。

実のところを言えば、そんなものは無いのだ。

研ぎ澄ました超越感覚によって見る彼は、ひび割れた人間の器に、新たな生命を宿している。

生命体として見れば彼は未だに人間としての生を継続しているのだが、在り方としては既にオルフェノクに近い。

違いがあるとすれば、オルフェノクが死んだ人間の死ぬまでの記憶を自分のものである様に振る舞うのに対し、未だ生きた人間であるこの少年は、今まで生きてきた自分の人生を遠ざけ始めるだろう、という事だ。

 

単純に、制度として、彼はこれから先も人間としての人生を歩み続ける事ができる。

できるが……。

それは、彼のこれまでの人生とはかけ離れたものになる。

親戚に引き取られる事が悪いとは言わない。

施設に引き取られても幸せになる事はできるだろう。

だが、そこに彼の今まで享受してきた幸せは無い。

同じ様に幸せを感じ、笑顔を浮かべる事ができたとして、それらは全て、失われた幸せを想起させ続ける。

そうして辛い気持ちにさせるこれまでの人生の記憶を、自分という人間を構成する要素を、防御反応として遠ざけ始めるのだ。

 

無論個人差は当然あるし、それを乗り越えて新たな幸せを掴む人間も、精神が捻くれてしまう人間も居るだろう。

だが、不幸な事に彼の中にはオルフェノクの王になるには十分すぎるほどにオルフェノクの因子が存在する。

それなりの数居るだろう、同じ様な境遇の子供に与えられる、乗り越えたり捻くれたりする様な時間は与えられない。

彼が心の傷を癒やし、人間として何らかの形で大きくなるよりも早く、彼という人間はオルフェノクの王の卵として、割れ、破れ、何一つ残すこと無く消え失せるのだ。

 

彼には、これから育ち切るまでの間、監視を付ける事になる。

育つためにオルフェノクの王として動き出す度に、適宜給餌を行う為だ。

また、彼の中で王が育つ様子を観察することで、潜在的にオルフェノクになりやすい人間を見つける事ができるかもしれない。

その観察はこれまでに類似する行為が存在しない為、アギトの力を持って見えないものを見る力を育てる事になるだろう。

 

脅威に対する力は育ってきたし備わってきた。

だが、未だ知識しか存在せず、現実のものとして認識出来ていない脅威というものも存在する。

それに対抗する為の力を得るのにも役立つ。

貴重な一般人が犠牲になってしまったが、現時点で、スマートブレインの手先によって死ぬはずだった人間はかなりの数が助かっている。

無論、正義の戦士の類に知られれば、俺自身が討伐対象にカウントされかねないが……。

プラスマイナスで言えばむしろプラスに働いているのだから、お目溢しいただければな、と、そう思う所存だ。

 

もう少しで、俺も大学生。

一つの節目とも言える時期なので、それまでに何かしらの新しい特技を手に入れられるように頑張らねばなるまい。

 

 

 

 

 

 

 

 




繋ぎ回
おまえ毎回繋ぎ回してんな

☆いにゅいとファイズ改とオートバジン改と謎のロボット
ファイズは中身だけいじってデザインはそのままかなーと考えていたら新SIC見ました?
はぁ~
たまらん
まぁああいうリファインというか新デザインと旧デザインの違いを文章で説明しても伝わらないのでこのSSの中ではどういうデザインかは決めないという方向性で
読んでる人によってTV原作ファイズであったり新ファイズであったりするのだろうと思います
ベルトは原作と比べていにゅいの中で非常に重要度が高くなっているので基本装備しっぱなし
大きめのジャケットとか着てれば隠せるしね
外すのは基本的に風呂に入りに銭湯とかに立ち寄る時だけだし、そういう時は抱き合わせでついてきたオートバジンをロボット形態にして持たせて盗難に備えている
路銀を心配した主人公によってサバイバル装備一式渡されたせいで余計に人との繋がりが薄れつつある
頑張って遭遇してくれクリーニング屋の息子……!
鶴のオルフェノクはスマブレに拾われずに野良になるから、運が良ければ遭遇して保護とかもできるかもしれないから……!
そして現れる謎のロボットとは
まあガチで殺し合っても基本的にどっちも死なない装備だから安心してくれ
ロボの中の人も他人を巻き込まないように人気のない山道を選んだりしたからご安心だ
基本的に彼女は自らの失った記憶を求めてそれの持ち主をぶっころというのも辞さないが、滲み出すオリジナル人格の人の良さが色々と制約をつけるのだ
たぶん実際にぶっ殺せる場面になると元の人格の記憶とかがフラッシュバックして手が泊まったりするし
ファイズギア側もファイズギア側でなんか装着者のいにゅいを守るために覚醒したりするぞ
搭乗ロボット式じゃなくてパワードスーツ式にしたんだから仮面割れと素顔バレはやっておきたい

☆黒幕
せっかく作ったFAG用の新装備は盗まれてしまったしその中に新造したライダーズギアもしまっていたのでそれも連鎖的に盗まれてしまったし
なんなら監視していた一般住宅は子供がでかけている間に何故かコンセントの辺りから出火して家に居た両親諸共こんがりと焼け落ちてしまったぞ
まぁ悪いことしたなぁとは思うけどオルフェノクの王が完全に知らない他所で自然湧きしたらそれはそれで犠牲者が増えるから仕方がない事ではないかなぁ
前向きに生き物がオルフェノクに変わっていく過程を見つめて観察力(瞳力)を養っていきたい
超越感覚とかいう謎スペックがアギトにはあるんだから見えないものも見えるようにならないとね
偶に昭和の戦士に痛い目に合わされろとかそういう感想を見るし正直書いてる方もそう思う事多々あるのだけれど
やってる非道な行為にどれもこれもこいつなりの理屈があるから、仮に全てを奪われてもまた別の道筋で似たようなことやり始める疑惑がある
奪われたらそれに対する復讐とかも目的に加えられたりするだろうしなぁ
モーフィングパワーで資材関係、改造頭脳で知識関係、アギト及びテオスの力で超常関係の事をどうにかパワープレイできる今の状態が実は周囲への被害が一番少ないまである
それらが無い場合?
一人でできない事は、みんなでやる
人間はそういう事ができる生き物なのを、みんなはこれまで滅んできた大組織を見てきたから知ってるよね!
実際、現状のこいつからは魔石を引き抜く事もできないしアギトの力を取り出す事もできないから、やれてもアジトを潰す程度の事なんだけども
ちなみに一度潰された場合、今度のアジトは間違いなく宇宙に居を構える機動要塞になるぞ!
青森の地下だけでなく近場の資源衛星とかが犠牲になる


☆戴き物!☆
ナナス様より頂きました!

【挿絵表示】

赤い上におっぱいのでっかいイクサです
このイラストのお陰でグジルのおっぱいがクソデカ釣鐘型にほぼ確定しました
今後グジルのエロ話を書いた時に別の形のおっぱいとして描写した場合はバシバシご指摘してもろて
クーパー靭帯?
魔石の戦士にそんな心配は必要ないのだ
サイズと形が奇跡の様に調和しつつもそれが劣化する事を恐れずに済む
それが魔石の戦士……
元のイクサも女性変身ありましたが、その時は胸の部分膨らんだりしなかったと思うので、巨乳とされていたグジルの巨乳はイクサの装甲で押しつぶしきれないサイズの巨乳である事がわかりましたね……
サラシ巻くより圧の大きい元軍用装甲服で押しつぶしてもこれくらいのサイズになってしまう……
わかるか?この算数が!エェッ?

【挿絵表示】

ちなみに、表現技法の一つとして、目元を見せる(視線の動きを見せる)や、ものを食べる場面を見せる(人間らしさを見せる)というのは、読者視聴者にそのキャラクターがある程度人間らしさを持った対象であるとして見せる時に使われるのですが
二体並んだ顔がバイザー形態でどこ見てるかわからない、口元も明らかにものを食べる形にないというイクサセーフモードのコンビは、絵面としてわかりやすい敵か味方か感あってとても良いですね……
ナナス様、素敵なイラストありがとうございます!


555の事件要素を全て破壊してしまったのでかなりオリジナルな話しか書けない
オリジナルとは言ったが一応555というかオルフェノク周りの話をしていくつもりなので一応ライダーものではあり続けられると思う
原作のシナリオみたいとか、原作キャラ同士の絡みがみたいというのならそれは難しいのだけれども
いろんな要素を混ぜつつもとりあえずは間違いなくライダーSSとしてやっていくつもりなので
よろしければ次回以降も、気長にお待ちいただけたら幸いです

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