オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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96 給餌と旧友とオバケ

オルフェノクの王は、未だ産まれていない時期から、既に成長の為の食事を求める。

この食事というのは基本的にオルフェノクがそれにあたり、人間を捕食するという事はない。

では何故オルフェノクを捕食するのか。

 

目の前で円筒形に改造された王育成用オルフェノクをばりばりと捕食する様子を見るに、王としての優れた肉体を形成する為に、他のオルフェノクから必要な要素を取り込んでいるのだろう。

栄養補給というよりも、融合捕食寄りなのかもしれない。

いっそ生体濃縮という方が近いというか……。

核となる王としての記号に、取り込んだオルフェノクの記号やその他構成物質を纏わせて、王としての肉体が完成するのだろう。

 

ラッキークローバーの強いエビがお付きに選ばれた理由が何か、と言えば、恐らく、あの時点で記号を除くその他の構成物質の中に、王の身体を作るのに必要な素材が殆ど見られなかったからだと思われる。

マラーク同士がセックスで繁殖する訳ではない以上、純化したオルフェノクもまた同種で盛る事も無い筈なので、少なくともエビが美人だったから選んだとかいうアホなオチでも無い筈だ。

 

お付きを強さで選んだとすればエビよりもバラやドラゴンを選ぶのが普通だ。

逆に、ドラゴンやバラが餌に選ばれたのは、その肉体の中に王の身体にも使用できるほどに優れた素材、パーツが含まれていたからではないだろうか。

彼等は正しく、王が産まれる糧になるという栄誉を賜っていたのである。

まぁこの世界ではそんな役目には付かずに実験体とアギトの元に還元されたわけだけれども。

 

何種類か持ってきた餌を全て食べずに帰っていったのは、一度に食べる事のできる量に限度がある、というよりも、取り込んだ素材を王の記号になじませるのに時間を置く必要があるのだろう。

次回に食べるオルフェノクの種類によって、仮説が正しいかどうかがわかる気もする。

なるべく違う種類のオルフェノクを用意しておこう。

何種類かのオルフェノクを家畜として改造しておいたのは先見の明があったのかもしれない。

どれだけの捕食を行えば器を破って実体化するか。

知る限りではそれほど大量のオルフェノクを食べていた訳ではない筈だが、画面に映っていなかっただけで、実際はかなりの数を食べていたという可能性もある。

やもすれば、家畜オルフェノクだけではきちんと孵化できないという可能性もある。

やはり取り出しておいた卵子と精子を体外受精して、新たな食用オルフェノクを用意しておく必要があるかもしれない。

 

ちり、と、脳内にノイズが走る。

感覚としてはマラークが現れた時のそれに近いが、これはむしろアギトのそれに近い。

光学迷彩を起動し、手近な鏡からミラーワールドに潜る。

鏡越しに食事を終えた王の器を見守っていると、王の器もフラフラと細い路地に滑り込んでいき、姿を消した。

傍目には夢遊病の少年くらいにしか見えないだろう。

これは目撃者を出さない為というよりも、単純にやることを終えたから巣に戻る様な本能的な動きだ。

食事が基本的に人気のない場所でしか行われないのは、食事中は無防備になる為か。

或いは、王を孵化させずに始末しようと思ったなら食事中に殺すのが適切かもしれない。

無論、それをすると次の王が何処に何時現れるか分からないのでこの王はひとまず孵化させ、生態の研究に使わせてもらうが。

 

しばし現場を見ていると、何名かの警察官が集まってきた。

周囲を見回して警戒しているが、鏡の中の俺と視線が合う事は無い。

が、近くに何か居る、という感覚は得ているのか、警戒を解こうともしない。

 

なるほど、警察のアギト部隊も、現時点では真面目に仕事を熟しているらしい。

実戦経験を積む機会の少なさから、まだ何らかの方向に進化する気配は無いが……。

給餌の際にはしっかりと周囲を警戒した方が良いだろう。

 

彼等の超越感覚がどこまで成長しているかも不明な以上、余計なちょっかいを掛けるのも危険だ。

転移の瞬間に何かしらの違和感を覚えられても困るし……以前の様に帰宅する場所が遠いという事も無い。

背後に控えていたロードインパルスに跨り、ゾアテックモードのままその場を離れる。

音もなくその場を跳躍するロードインパルス。

俺の意を汲んだのか、周囲に屯していたヘキサギアは軒並みその場に身を潜め、余計な気配を出さないように、警戒の為の一体を残してスリープモードに入った。

 

さて。

アギトが増えつつあるこの時代、何時までミラーワールドを独占できるか。

何かしら、ミラーワールドへの入場制限をかける手段を考える必要も出てくるのかもしれない。

 

―――――――――――――――――――

 

今更の話ではあるが。

悪の秘密結社、スマートブレインは滅びた。

少なくとも国内において、人間からオルフェノクへと変化した者を無理矢理に悪の道に引きずり込む様な組織は現時点で存在しないわけだ。

或いは世界の破壊者が大暴れした後の時代であれば財団Xなどがその役目を引き継ぐ事もあるかもしれないが、ケツモチができる程度の規模の組織としては存在しないだろう。

 

だが、それはオルフェノクの存在が無くなるという訳でもなければ、オルフェノクによる人間への襲撃が無くなる事を意味している訳ではない。

なんとなれば、スマートブレインですら身体能力や変身能力の確認、或いは体内のオルフェノクの記号などを外科的に確認でもしない限り、人間態のオルフェノクが人間かオルフェノクかをはっきりと識別できていた訳ではない。

依然として、この星には人間に擬態したまま生活するオルフェノクが無数に存在しているし、それらが自らの力を悪用する事を防ぐシステムもまた存在していないのだ。

 

武器を持てば人は変わる。

それが例えナイフ一本ですらそうなのだから、身体そのものが怪物に変化し、常人を遥かに超える身体能力を発揮できるとなれば、その力に心が振り回されるというのも道理だ。

オルフェノクの比較として見れば、グロンギはゲゲルというシステムが存在した分、理性的ですらあったかもしれない。

産まれてきた時からゲゲルというシステムが身近にあり、ベルトを付けるというイニシエーションを経て力を得て、そして、ンという遥かな高みに存在する別次元とも言える力の持ち主を知るからこそか。

 

対して、オルフェノクはどうか。

彼等は例外なく死という区切りを経て力を得るが、それが如何なるシステムによって成り立っているかも知らず、明確な目標すら与えられない。

それは使徒再生にしろオリジナルにしろ変わる事はない。

殺される、或いは死ぬ直前までは何の変哲もない人間だったというのに、突然に、力を得てしまったのだ。

 

この点ではアギトも似たようなものではあるのだが、アギトの場合はそれなりにアギト化する前兆というものが存在する。

超能力の発現、体内でアギトの力が活性化する事による発熱と力が膨れ上がる自覚。

また、自然にアギトになった人間は、何故か自殺を試みるパターンが多く見られる。

もしかすれば人間は、テオスをモデルとして作られた生き物であるが故に、アギトの力に対して生理的な嫌悪感を持つ様にできているのかもしれない。

 

が、オルフェノクは違う。

むしろ、一度死を経由している為か、自らを死から遠ざける為に、いざという時の選択で、自らの死よりも他者の殺害により状況を乗り越える事を良しとする傾向すら垣間見える。

それこそ、普段はいじめや虐待を受けて育ち、失意の内に転落死してオルフェノクになった様な個体すら、自らへの害意に対して反射的に行う行動が逃走でも防御でもなく攻撃であったりするのだ。

人を殺した事に嫌悪感などを示す事もあるが……。

それで自首をしよう、なんて殊勝な考えに至ったオルフェノクはついぞ見たことがない。

或いはオルフェノクに成った時点で、その手の思考形態にも変化が出るのかもしれない。

以前に立てた仮説、オルフェノクは生前の人間とは別個体であり、器であった人間の記憶をさも自分のもののように運用しているだけ、という説を前提として見れば、善良なオルフェノクというものの少なさにも説明が付く。

 

人を殺めるという一線を超えたオルフェノクは総じて悪堕ちしやすい。

逆に、その一線を超えないように慎重に力を使わないように生きていれば、生前の人間的価値観、道徳心を損なわずに済むのかもしれないが……。

何度も言うように、大体のオルフェノクは、何の前提知識すら与えられず、ただ力のみを持たされた一般人だ。

脅威に対し、抵抗するつもりで手を振り払うとして。

その腕力がちょっとした重機に匹敵する力を持っていたならどうだろうか。

振り払うその腕の硬さは鉄の如く、或いは、反射的に変身してしまうかもしれない。

振り払われた側が怪物の類であればまだ良いが……。

無数の敵性種族の存在するこの地球ではあるが、あいも変わらず、人間を一番殺しているのは蚊であり、次に人間を殺しているのは人間で、人間社会で生きていく中で、人間に危害を加えるのはやはり大体が人間の犯罪者という事になる。

 

最初に覚えるのは戸惑い、恐怖、或いは嫌悪か。

だが、次は?

自らの力を自覚したとして、次に覚える感情はなんだろうか。

その感情は、容易く一般的な倫理観というものを破壊しかねない。

 

そして、この世界では一般人すら知る、超人の前例がある。

未確認生命体。

彼等は警察の妨害など物ともせず、無数の一般人を虐殺してみせるだけの力を持っていた。

考察サイトすら存在し、メやゴのルールのあるゲゲルも内容を考察されていたりするのだ。

何らかの縛りのあるルールの中ですら、未確認生命体は多くの人を殺してみせた。

なら、人に知られないように、姿を隠し、犯行が露見しないように力を振るえば?

そこで、使徒再生の仕組みなどを知ってしまえば最悪だ。

本来はオルフェノクを増やすための能力ではあるが……。

適合し、オルフェノクにならなければ、死体すら残さず灰にする事ができる。

 

人間の欲望を暴走させるには十分すぎるだろう。

前提と成る知識を多くの人が未確認……旧グロンギのゲゲルで得てしまっているというのもたちが悪い。

今、この星には力を隠し持つ犯罪者予備軍や犯罪者が無数に潜んでいるのだ。

いや、勿論、力を秘める者総てが犯罪者予備軍であるなどという暴論を振るうつもりは無いのだが……。

もしもオルフェノクが、復讐などの理由なく、我欲を満たすためだけに、罪もない人間を手に掛けたというのなら、それは人間ではなく、人を襲う怪物でしかないだろう。

 

携帯に寄越されていたメール、二通。

 

『U-S01起動確認』

『話がしたい』

 

当然の話ではあるのだが。

日本でオルフェノクを纏める組織を潰した程度で平和になるほど、この世界は安全ではない。

 

―――――――――――――――――――

 

からん、と、入り口に取り付けた鈴が鳴る。

 

「いらっしゃいませー!」

 

笑顔で応対するのはFAG番外個体として製造した源内あお。

武装無し、固有の戦闘形態無しという特殊な個体ではあるが、こうして喫茶店の様な場所で給仕をさせる程度ならば何の問題も無い。

売上の問題から店が潰れ、店長は田舎に帰り、元いたバイトの人は散り散りになってしまったが、残された店舗はこうして維持が続けられている。

 

「人を待たせているのですが……」

 

「こっちこっち」

 

生真面目そうにそう告げる男に手を振り存在を示す。

 

「久しぶり、って言ってもまだ一ヶ月くらいかな」

 

「ああ、まぁ、なんとは無しに予感はあったが……」

 

ちら、と、向かいの席に着いた男──元クラスメイトの仲村が周囲を見回す。

ああ。

 

「ここの店員はそういう話に詳しいし、客のしてる話を広めたりしないから安心していいよ」

 

「いや、だが……いいのか?」

 

「いいのいいの。それで、お話ってのはどのへんの話?」

 

促すも、しばし唸り、意を決したようにテーブルの上に、ごと、と、重い音をたてて置かれたのは、平べったい銀の三角錐。

一番低い頂点に緑色の透ける様な石が嵌め込まれたそれは、卒業式に俺が渡した記念品だ。

 

「わぁ、意外にも持っててくれたんだ。嬉しいなぁ」

 

ちなみに、テーブルに置く時に重い音がしたが、これは極めて高い質量からなるものだ。

実際にアクセサリーとして装着する分には、内蔵されたとあるエネルギーを利用して重量を相殺している為に羽より軽い(比喩)ので肩こりに悩まされる心配もない。

 

「デザインは良いし、友からの贈り物を粗雑には扱わん。だが……これはなんだ?」

 

こつ、と、頂点の石に指先を当てながら俺に向ける視線は真剣な……やもすれば、高校時代にはついぞ向けられる事のなかった警戒の感情すら浮かんでいた。

店を手に入れてから味を改善したコーヒー(マル・ダムールで勉強して味を寄せた)を一口呷り、答える。

 

「卒業式に言わなかったっけ? お守りだよ、お守り。パワーストーンとか、知らない?」

 

別段パワーストーンを使っている訳ではないが、色合いとしてはグリーントルマリンに似せておいた。

聡明で落ち着きのある仲村に相応しい石だろう。

無論、強度面の問題で色が似ているだけの特殊合金でしかないが。

俺が落ち着き払っているからか、視線の中の警戒は困惑に代わりつつ有る。

頭の中にあるのは、何も知らないのか、という疑問だろうか。

 

「お前が用意したものだろう?」

 

「そりゃあね」

 

「じゃあ、これが何なのかは」

 

「お守りだよ、お守り。実際──それがあって助かったろう?」

 

「む……」

 

黙り込む仲村。

お守りとは言うが、俺は未だ神社仏閣などで買えるお守りの具体的な効果に関して検証できていない。

だが、大切な友人に持たせるお守りが効果不明とあっては意味がない。

俺は彼にもまた死んでほしくないのだ。

故に、効果のあるお守りを渡した。

それだけの話だ。

それが例え、所有者の危機に際して強制的に装着されるお手製パワードスーツであったとしても、結果的に所有者の安全を守れているのだからこれはお守りなのだ。

 

「では、あの免責事項やら、プライバシーポリシーやらという長々とした文言は?」

 

「あれ、全部読んだの? 緊急時は読み飛ばす様にナビゲーションされる筈だけども」

 

「飛ばしてしまったからこうして聞いているのだ馬鹿者」

 

むむむ。

学力マウントの取れない相手では馬鹿じゃないと言い返せないのが辛いところだ。

 

「いや、正直に言うとさ、元からあれは仲村に渡すつもりだったし、他の人に譲渡しても使えない仕組みにしてたから、あそこにはまともな文章は書いてなかったんだよね」

 

緊急時に態々長々とした文章を読ませる理由は無いが、一応一般的な契約文の類を使って、縦読みでおちゃっぴぃなジョークを仕込んではいたのだけれど。

基本的に、画面脇のスクロールバーを一番下までがーっと引っ張ってチェックボックスをクリックしてオーケーを押させるためだけのギミックでしかない。

 

「では、あれにチェックを付けてオーケーボタンを押しても?」

 

「不都合は起きないよ。お飾りの文章だからね。説明書という訳でもないし」

 

そも、使用者の脳内に投影されるだけの文章なので、外部に出力して契約の根拠にする事もできない。

 

「なぜ、俺なんだ?」

 

「物騒な世の中だもの。卒業を機に離れ離れになる友達に死んでほしくないと思うのは悪い事ではないと思うんだけど」

 

「なら、クラス全員に配る……のは、難しいか」

 

「いや?」

 

構造として、ミラーワールドライダーのテクノロジーとライダーズギアのテクノロジーのミックスだ。

そして、ファイズギアGと異なり大規模なブラッドサーバーを搭載していない為、生産コストはせいぜいがゾイド一体分。

それにしても、フリーエネルギーの応用にてアギトの力の量産が進んでいる為、替えは効く。

加えて、オルフェノクを利用した脳に働きかける実験により、簡易ではあるが初回起動時に戦闘方法を脳にインストールする事が可能になった。

先の免責事項やプライバシーポリシーやらに関する文章もここで始めに出てくる。

 

「仲村が同性では一番の友人であった、というのもあるけれど……ああいうものって、動けない人間に渡しても意味がないんだよね。使う前に死ぬから」

 

「俺より動ける人間など」

 

「あのクラスの中だと、俺くらいしか居なかったんじゃないかな。あとは難波さんとか?」

 

後は、お守りの話をしているにも関わらずいきなり死ぬという単語が出てきた事に驚きもしない精神性とかがあるのも嬉しい。

家業か何かで慣れているのだろうか。

 

「命の危機に合う可能性が高く、自衛の能力はそれほど無い。そんな友人に渡すというのは、悪い思いつきではないと思うんだよね」

 

「思いつきで渡していいものでは無いだろう」

 

少し声を荒げて身を乗り出す仲村に、俺は努めて落ち着いた素振りで、指差すようにコーヒーカップを突き出して、断言する。

 

「だとしても、既にその強化スーツ『GREAT』は君の力だ。仲村 七王(なかむら なお)

 

この名前の仲村に、Ver.7.1でなく、ベーシックな形のものを渡したのは理性的な判断だと思う。

意外と、生き物を刃物で叩き切るのには慣れが必要だったりするからな。

 

「名前は……やめい」

 

フルネームを呼ばれると、脱力する様にすとんと腰を下ろす。

良い名前だと思うのだけどもね。

七つの王。

王、金、銀、角、飛車、歩、と。

それらを統べる事ができるように、というのは、なんとも野心的な話ではないか。

親しい相手であっても名前呼びをさせていなかった辺り、この名前に何かしらの負い目があるのだろう。

少なくともスーツの力を使いこなせれば飛車どころか角の役目も代行できるし、実績を積もうと思えば積める筈だ。

まぁ、王……支部長になる為の条件なんかは興味ないから調べていないので、実績が必要なのかは知らないけれど。

 

「少なくとも、それはもうこっちに戻されてもしようのないものだし、仲村くんが長生きしたり、出世したりするのに使ってみてくれればいいよ。プレゼントを返せだなんて、ダサい事は言いたくないんだ、俺も」

 

「はぁ……お前はなぁ……」

 

でん、と、仲村が疲れたよう表情の顔をテーブルに突っ伏した。

僅かな沈黙。

店内に流れる有線を聞きながら、カウンターで暇そうにしているあおの尻を眺める。

基本、厚手のロングスカートではあるのだが、長さによる重みで下に引っ張られる為、カウンターに上半身をのせて携帯をいじっていたりすると尻のラインが強調されるのである。

これは真面目な轟雷や見せるべき時を自覚するシロクロでは中々見れないレアショット。

良い時間だ。

 

「なあ、結局、お前はどこまで知ってるんだ?」

 

実はギリギリまでなんも知らなかったのだけれども。

だが、鬼や猛士の技術を探る過程で仲村君が関わっている事に気付けたのは僥倖だろう。

まぁ、関わっている、というだけで、鬼の弟子などではないらしいという程度の事しかわからないのだが……。

腕を組んで、空を仰ぐ。

 

「地球が、そんなに平和じゃない、ってくらい、かな」

 

―――――――――――――――――――

 

そんな訳で、地球は平和ではないので日本も勿論平和ではない。

そんな事はグロンギが来た時点どころかその十年も前に、あるいはそのもっと前に多くの人が実感していることだろうけれども。

同じく東京に来ながらも別々の大学に通う友人ですら、市街に発生する魔化魍かオルフェノクに遭遇し、護身用として渡しておいた強化スーツを装備して戦う羽目になったりするのが恐ろしいところ。

 

だが、街は何事もなく人々を内包し、何事もなかったかのように何時もと変わらない日常を垂れ流している。

戦いの痕跡は基本的に消え去り、建築物の傷跡ですらあっという間に修繕されてしまう。

死体などはそう時間をかけずに然るべき場所に運び込まれるし、怪人に至っては大体跡形もなく消えるのが主流である。

 

怪人と人間が死闘を繰り広げたとして、そんな出来事はなかったと言わんばかりに街は沈黙を貫く。

しかし、それは表向きの話。

一般人が慣れてスルーしてしまっても。

警察が装甲服部隊やアギト部隊に任せて半ば一般的な事件と同じくくりになったとしても。

戦いが起きたという事実。

結果としてどちらかが死んだという事実が消え去る訳ではない。

 

こうして、夜の街を彷徨いているとそれがよくわかる。

夜のない街、という表現が相応しい大都会とは思えない程の静寂に包まれた一帯。

一見してオフィスビルの立ち並ぶビジネス街ではあるが……。

ここも、去年にはテオスとマラークどもの襲撃により、多くの被害者が出た区域である。

この一帯にも無数に会社が存在するのだけれども、大体が定時には仕事を終えて帰宅してしまうのだという。

健全で良い話だ。

パソナルーム等が話題になってからまだ何年も経っていないが、未だブラック企業が大手を振って人間を使い潰していた時代である事を考えれば珍しい話ではあるのだが、それには理由がある。

 

「おっと」

 

手に下げていたカンテラ──外装をそれらしく整えた携帯型キルリアン振動機が震える。

周囲に目を凝らせば……、居る。

暗がりからこちらを、無機質な瞳で見つめる、黄金の瞳。

輪郭すらあやふやな、下手をすれば人魂と見分けの付かないようなエネルギー体。

溢れ出すテオスの力の断片、アギトの力を浴びながら起き上がる事のできなかった、肉体の破損が激しく、新たな生を受ける事のできなかった者たちの残滓。

元は警官隊か? はたまたマラークに無慈悲にも殺された一般人か。

こうして、探知機代わりにしたキルリアン振動機である程度まで近づいて、なおかつしっかりと目を凝らしてもはっきりと見えない辺り、俺の霊的視覚能力もまだまだ未熟。

 

だが、どれだけぼやけていようと、俺はこの浮遊霊……地縛霊? と視線を合わせる事に成功した。

最早、自分の人間としての姿すら思い出せない、浴びせられたアギトの力にしがみつくようにしてしか現世に留まって居られない様な状態ではあるが……。

エネルギー体が大きく形を崩し、ゆっくりと膨れ上がる。

自分を認識できる存在に対し、助けてくれ、気付いてくれ、なんとかしてくれ、と、すがりつこうとしているのだ。

所謂霊障と呼ばれるものを引き起こすような状態であり、霊の類に下手に反応をしてしまう霊感持ちなどはこれで大体酷い目に合うのだが。

 

「まだまだ元気そうじゃないか」

 

カンテラを掲げ、スイッチを探索から捕縛に切り替える。

人間の耳では聞き取れない特殊な周波数の振動波により、エネルギー体が拘束され、内蔵されたブラッドサーバーに吸い込まれていく。

内部に押し込められたエネルギー体が、鬼火のように静かに揺らめく。

 

「共に行こう」

 

未だ、アギトの力で存在感を増幅されたエネルギー体しか視認できないが。

あの戦いで死んだまま忘れられたものは多くある。

彼等は生前にどんな人間だったのだろうか。

それはきっと、このエネルギー体をFAGなどに突っ込んでも再生できるような残滓すら無い。

残っているのは霊ではあっても魂とは呼べず、人格ではなく未練としか呼べないような有様ではあるが。

その場を立ち去る寸前に、サーバーの中に押し込められたエネルギー体は僅かに揺らめく。

電柱の根本、控えめに供えられた花束と菓子類。

 

「また来れるよ。きっとね」

 

しばし続いた揺らめきは、俺の言葉を理解したのかどうなのか、緩やかに安定していった。

東京は激戦区。

ここで回収したものの幾らかは、やはりここを守るために配備する事になるだろう。

いずれ、アギト由来でないエネルギー体も回収できるようになれば良いのだが……。

道程は果てしない。

地道に、続けていく事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 





王以外ほぼオリキャラ祭り
タイミングとしては大学入学直後の話
でも黒活(黒幕活動)しながらの大学生活ってどんなもんなんやろなぁ
これ、555と銘打っては居るけど、実際555アフターというか、半ば幕間だよね……

☆栄養満点の餌を食べてもりもり育つオルフェノクの王
和牛の王様とかそういう称号に近いものがある
人間態で彷徨いてオルフェノクを襲ったりする段階だが、活動が主に夜である事、監視を付けられている事などから、食事は大体与えられる改造オルフェノクのみ
実際問題としてこの王様がちゃんと原作の様に強キャラムーブできるかと言われると首を横に振らざるを得ない
でも見せ場はあるから安心して欲しい(曖昧な予定)
殺されたスマブレオルフェノクの無念を一身に背負って、王は羽ばたく
かもしれない

☆登場を特に期待されてはいなかったであろう高校時代のクラスメイトの仲村くん
たぶん実家が猛士関連の家だったのではないか
産まれた時点では誰からも尊敬されるような立派な猛士の一員になれよ的な意味合いで付けられた名前だったのだけれど
主人公と同い年という事は、幼少期にゴルゴムとかクライシスが日本中で大暴れした時期でもあるので
きっと両親が心配して猛士の仕事からは遠ざけていたんではないかな
なので鬼に成れる名前とか付けられていたけど、猛士としての仕事は振られずに一般高校に通わされていた
普段から一般人としての振る舞いしかしていなかったので怪しまれる事もなかった
将来どうするかは自由だけど、大学くらいは出ておきなさいと送り出されるも、本人はひっそりと身体を鍛えていたりしたのだけど……

☆ULTRAスーツ・タイプ『GREAT』
ミラーワールド製デッキシステムの携帯性と、スマブレ製ライダーズギアのエネルギー循環技術を併せ持つハイブリッド変身システム
小型化されたブラッドサーバーはオリジナルのライダーズギアと異なりアギト一体分の力だけが込められており、変身中常に稼働している訳ではなく、アイドリング状態で待機
必殺技を撃つ際にのみ出力を上げてフォトンブラッドを精製する
魔化魍は超自然的な力なら倒せるという解釈がある為、必殺技を直撃させれば理論上は魔化魍をも打倒できる……筈
生存性を上げる事を優先している為、兎にも角にも強力な、Ver.7スーツを渡したかった未練を込めた三カプセル一ボールのモンスターをユナイトベントの応用で一体に融合させたキメラタイプが契約モンスターになっている
三体の微妙モンスターと一体の強豪モンスターに分離する事も可能だが、分離には専用のカードが必要かつ、このスーツにはカードもカードリーダーも存在しない為事実上分離不可
なお、ロードインパルスなどと同じく新生エルロード相当のモンスターである為、基本的に給餌は必要なし

☆野良アギトの力
アギトのオバケめ!
単体では何ができるわけでもない為基本的に無害だが、自分の気配を感じた、視認した人間にすり寄ってきて霊障を撒き散らす為とても迷惑
相性が良ければ憑依合体してアギトの力を託せるかもしれないが、この世界観だと霊能力者はそれっぽい組織に囲われているのが大半であろう事から、都会のビジネス街で遭遇する事は稀

☆喫茶店『壽』
和洋折衷純喫茶
ただし開店時期は不定期かつ従業員はメイド服か執事服を装着している
カフェ・マル・ダムールの常連が最近開いたお店だが、商売っ気は無く、主にオーナーの密談やFAGの表向きの就業先として利用されている
不定期な開店日の不定期な時間にだが、イケメン占い師が臨時で占いを開催しているともっぱらの噂
茶髪ポニテの店員が居る時のみ、コーヒーと紅茶が間違って出てきても交換非対応、コーヒーゼリーと豆かんが間違って出てきてもクレーム非対応など、特殊なルールが発動する

☆FAG番外機『あお』
アニメ原作の源内あおと見た目は瓜二つだが、性格などはその実似ても似つかない
別け隔てなく物事を判断するおおらかな性格……という訳ではなく、いろいろなものの区別をつけない、自己と他者、他者と他者の境界が曖昧な個体
クソみたいな掲示板でコラ画像にされた挙げ句に住人にあおっ!(パシーンッ!)と頬を引っ叩かれる方のあおに性質は近い
ガンプラも30MMもFAもFAGもゾイドもいっしょいっしょと言える程に区別をしない
SDもHGもMGもPGもいっしょ
わたしもあなたもいっしょいっしょ
あなたもあのこもいっしょいっしょ
内蔵するアギトの力は自他の境界を緩めるという方向で進化しており
あお本人は戦闘力を持たず戦闘技術を持たないが
戦いに際しては戦えるのも戦えないのもいっしょ
戦えるあなたと戦えないわたしもいっしょ
という理屈で近場の相手と戦闘技能を共有するという唯一無二の力を持つ
同様の理屈で特定の人間しか使用できない装備も自由に使用できる
戦うのも戦わないのも抗うのも抗わないのもいっしょ
なので好んで戦いには出向かないけれど指令を出されれば普通に戦う
痛いのも痛くないのもいっしょいっしょ
死ぬのも生きるのもいっしょいっしょ
たぶん戦いに負けて殺されそうになってもへらへらしてて、勝って相手を殺すときもへらへらしてる
アギトの力が進化した場合、生と死、存在と無が入り混じったあやふやな状態になるか、全ての境界が曖昧になった結果として何かしらの種族と自己を同一化して能力を失う
だいたいこういう万能に近いけど破滅も近い個体は人間らしいヒーローユニットと出会う事でヒロイン化して助かったり滅んだりするのだ

今回戦闘シーンを書かなかったので次回には戦闘シーンを書こう
それと今育ててる王も次回には孵化させるか
原作だと餌食えてない事多かったけど、このSSだと栄養満点の餌を毎度与えられてるし孵化が早まってもええやろ
原作キャラももっと出したいよね……
たぶん流星塾の面々は出せないし出しても……ってなってるけど
クリーニング屋の息子はランダムエンカしていいし、それ以外の原作キャラを絡めても良い
スネークオルフェノク化の予定が無くなった怪我した元天才音楽家?
そこに最終決戦不参加で生き残った天才闇外科医がおるじゃろ?
きっと今年の暮れにはオリコンとかに名前が上がってるよ
だから安心して野良オルフェノクや野良魔化魍や野良ファンガイアや野良ワームの居る東京生活を満喫してくれ
そんな訳で次回
『奇妙な共闘』
を、気長にお待ち下さい
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