ーーー僕はエリートなんだよ?
ーーー僕は君より価値がある。
ーーー僕は正しい。
ーーー僕が正義だ。
懐かしくも憎たらしいアイツがいつもの詭弁をペラペラと偉そうに喋る。この世の全てから、愛され、必要とされ、尊敬されたアイツを久々に見てしまった。
夢とはいえ、最悪だ。
すると、アイツはこちらを向くと姿、容姿が変わり、笑いながら。
ーーーねぇ……僕を殺して。
「ーーーッ⁉」
コウはベッドから飛び起きた。その表情は困惑しており、息も乱れ、顔色も青白く、お世辞にも体調がいいとは言えない顔色だった。
コウは乱れる息を整えようと必死に落ち着こうとするが、そんなことを考えていると余計に困惑し、落ち着けなかった。とりあえず、落ち着くために深呼吸をし、フラフラと立ち上がり、洗面台まで行き、顔を洗う。
「ーーーふぅ」
コウはどうやら落ち着いたようで、深くため息を漏らすとゆっくりと洗面台に置かれている椅子に座り、洗面台とシャワールームの間の壁に立てかけているデジタル時計を見る。
5:05
と表示されていた。
いつもなら、動きやすい服に着替えて、朝練をするのだが、今日からは違う。コウは顔をまた洗い、置いてあるタオルで拭き、それを首にかけて、部屋に戻る。
部屋には大型の最新型のTVに玄関近くには最新型の冷蔵庫やオーブンと簡易型だが台所まであり、TVの前にはベッドが二つあり、一つはコウの物で、もう一つが。
「起きろ、一夏。朝練の時間だ」
「んぁ?」
ルームメイトの織斑一夏の物である。
今日からコウは一夏にISに関してできる限り教え、共に訓練をすることとなった。
事の始まりは、昨日のクラス代表を三人で模擬戦をし、勝ち星が多い者がクラス代表になるということになり、その模擬戦が一夏の専用機が一週間後に来る予定なので、それに合わせることになった。あと、一夏とコウは部屋が同じである。
ー昨日 IS学園 生活寮 廊下ー
「で、勝算はあるのか、神楽坂?」
「結構」
コウ、一夏、千冬の三人が生活するための寮、生活寮とわかりやすい名前の寮の廊下を歩いていた。
何故、三人で歩いているのかというと、今日から寮生活で、一夏とコウは千冬に、これから、三年間お世話になる部屋に案内されている途中だった。本来なら、山田麻耶が案内する予定だったが、織斑姉弟が揃いに揃って、授業に必要な教科書等を雑誌や電話帳などに間違えて、持ってきたので、一切教科書がないので、部屋を案内したあと、二人は一度家に帰り、教科書や生活に必要な物を持ってくることになっている。
「随分な自信じゃないか?」
「自信を持ち、過信は持つな。が信条の一つなんで、オルコットに油断はしませんよ」
「頼もしいな」
千冬は横を歩くコウを見ていた。一夏と同じ年齢、同じ性別、同じ日本人、人生経験に何かと差があるかもしれないが、だが自分より年下なのだ。一夏との人生経験に差など無いに等しい、さらに言えば、一夏の方が人生は苦労していると千冬は考えていた。
両親に捨てられ、親戚にも見捨てられ、一夏と二人で生きてきた人生、楽しいことばかりではなかったが辛くはなかった。
いや、辛くはないというのは嘘だ。一夏は同年代の子達は欲しい物を親に買って貰い、親から愛情を貰って育つ……それなのに、一夏にはそれが無い、それが千冬にとっての負い目にもなった。
一夏は誘拐もされたし、殺されそうにもなったことがある。
千冬には見た人間の苦労や辛さなどが漠然とだがわかる、人によるがその人間の人生での苦労などが何と無くわかるのだ。
そう、目の前を歩いているコウの苦労も。
(神楽坂……)
「一夏、同じ部屋だってさ」
(お前はなんで?)
「よろしくな」
(ーーー今まで見てきた誰よりも辛く苦労の絶えない人生を送っているのだ?)
「あぁ、よろしくな」
千冬はコウの人生について、考えようと思ったが、やめておいた。
詮索は無粋だ。
「さて、神楽坂、私と一夏は先に家に戻るから、お前は部屋で休憩してろ」
千冬は胸ポケットから一つの鍵を取り出し、コウに投げた。
コウはそろをうまくキャッチし、番号を確認した。
“1058号室“
と書かれており、すぐ近くにその1058号室があり、ネームプレートさえ付けられていなかった。
コウは特に気にせず、鍵を開け、ドアノブを捻り、開けようとする。その時、隣の1057号室から見知った人物、篠ノ之箒が部屋から顔を出し、コウと一夏を見た。
「二人は何してるんだ?」
「よ、箒、今日からお隣だな?」
「ん、そうなのか?」
「ん、篠ノ之がお隣?」
コウが箒とお隣さんだなというと首を傾げたのは千冬だった。
そして、気付いた千冬はドアを開こうとするコウを止めようと手を伸ばす。
「待て、神楽坂」
「へ?」
だが、遅かった。
コウが部屋を開けた瞬間に襲ってきたのは、部屋のぬくめたりとかいい匂いとかなどではなく、異臭……キツイ臭いだった。
「クサ、なんでだ……よ……」
コウが部屋を見た瞬間、コウと千冬は膠着した。
一夏と箒も気になり、部屋を見た……そこはゴミだらけ、俗に言うゴミ屋敷だった。だが、一夏はこのゴミ屋敷に懐かしさを感じていた、コウは唖然としながら、そのゴミ屋敷の玄関にある靴箱というゴミ箱のような棚の所に板状の白いのが置いてあるのに気付く、手に取る。
それはネームプレートのようだった。
「神楽坂、それは見るな、こっちが鍵だ、それは見るな」
千冬が必死になって、必死の形相で鍵を手に持ち、コウが持っているネームプレートをこっちによこせと手招きをしていた。
だが、この神楽坂幸という人間はやめろと言われたら、やりたくなる、見たくなる人間だ。
以前、シャアがララァを私の妻だと自慢してきたときにムカついて、尻バットin釘バットの刑にしようとしたときに、シャアが号泣しながら、コウにするなと命令したが、コウとその協力者達により、刑は執行されたし、ガトーの嬉し恥かしい青春時代の写真を勝手に見たりする男だ。
そんな男が必死に見るなと言って言われて、見ないはずがない。
……コウはネームプレートを見た。
“1058 織斑千冬“
コウはゆっくりと千冬にネームプレートを手渡し、言った。
「こんなんだから、売れ残るんですよ」
「ぐふっ⁉」
「こんなんだから、婚期も恋愛も逃すんですよ」
「がっはぁ⁉」
コウの容赦無い攻撃に千冬は床に膝をつく、その隙にコウは千冬から自分達の部屋の鍵を奪い取り。
「この万年売れ残り残念駄目女」
「ーーー」
そして、バタリッと千冬は床に倒れた。
「千冬姉ー‼」
「うわぁ、これは女としてないな」
「ねー」
いつの間にか居た同じクラスの布仏本音が千冬の部屋を見て、箒の言葉に同意した。
一夏は床に倒れた千冬を揺らすが、倒れた千冬は無反応だった。
原因のコウはさっさと部屋に向かった。
ー現在 朝 IS学園剣道部ー
「昨日、あの後本当に大変だったんだからな!」
「めんご、めんご、つい、クラリッサと同じ扱いをしてしまった」
「コウがドイツでどういう生活を送っていたのか、想像したくねぇ」
一夏はまったく、謝る気がないコウに呆れながら、誰もいない剣道部の道場に踏み入る。
二人は竹刀を持ち、距離を取る。
「……さて、一週間後にはオルコットとの模擬戦だ」
「あぁ」
「お前のISは専用機で接近戦特化型らしい」
「おう」
「だから、朝は剣道部の道場を使っての剣の使い方を覚え、昼は座学、放課後は夜までISの訓練だ」
「おう……え、休みは?」
簡単に教えられた特訓のスケジュール。だが、そこに休むという文字が一切出ていなかったことに気付いた一夏はコウに聞いた。
すると、コウは満面の笑みで答えた。
「休みなんてねぇよ、馬鹿」
「へ?」
「お前、ISに関しては素人だ。
そんな雑魚が休みありの訓練で、代表候補に勝てると思ってんの?馬鹿なの、死ぬの?死ねよ。
世の中、そんなに甘くないんだよ。
だから、休みなしでやるぞ、訓練」
「ーーー」
一夏は思った。
こいつ、鬼だと。
訓練1 基礎体力を作ろう!
「というわけで、IS学園を二周します」
「え?」
ちなみにだが、IS学園はかなり広い。何せ、島丸々一つが学校なのだから。
訓練2 基礎筋力をつけよう!
「さて、次は腹筋などなど百回」
「……え?」
疲れて、休憩をしていた一夏にコウは満面の笑みで、次の訓練を告げた。一夏の顔は青くなった。
訓練3 頑張って、斬ろう!
「……し、死ぬ」
「次は接近戦だ、故に彼女に来てもらった」
「うむ」
道場で一夏を待っていたのは幼馴染の箒だった。
道着を来て、竹刀を持っていた。
「もしかして」
「ガンバ」
「一夏、来い!」
一夏は少し悩んだ後、よし!と声をあげ、道着に着替えてきたあと、箒と試合をした……一方的にやられたが。
実はこの訓練もコウが相手をするつもりだったが、昨日夕食の際に一夏の特訓メニューを組んでいたときに、箒が仲間になりたそうな目でこちらを見ていたので、仲間にした。
訓練4 座学だよ、馬鹿共!
「さて、休み時間及び昼休みは座学の時間だ」
コウと一夏は席をくっつけ、お互いが正面に見えるようにした。それを見て、誰かが「キース、キース」と何処かの進撃の教官の名前を囁いていたが、コウは無視した。あと、馬鹿コンビの片割れ篠ノ之箒も一緒に勉強することになっている。
「じゃあ、まずはISの基本理論から……」
コウは馬鹿二人に分かりやすいように噛み砕き、ヒントを教えながら、鉄拳制裁を行いながら、教えた。
特訓5 ISの操縦訓練だお!
二人は訓練の締めにIS学園のアリーナを借り、ISの訓練をすることにした。
一夏は打鉄に乗り、コウはラファールに乗っている。ちなみに箒は部活でいない。
「で、ラストはISの操縦訓練だ」
「おう」
「慣れたら、俺と模擬戦ね」
「おう……え?」
一夏の疑問を無視して、コウはISの訓練を始めた。基本操作から基本的な動作、攻撃、回避、防御などを教え、最後は模擬戦をして、Iその日の訓練を終わる。
これを毎日一夏と一緒にやりながら、コウは対戦相手のセシリア・オルコットについて調べたり、一夏の動きや癖を見ていたりなどをしていたら、一週間はすぐに過ぎた。
ークラス代表決定戦 当日ー
そして、当日になり、クラスで対戦表が発表された。
第一試合
織斑一夏VSセシリア・オルコット
第二試合
神楽坂幸VSセシリア・オルコット
第三試合
織斑一夏VS神楽坂幸
「お、初戦は一夏からか」
「な、なんか、緊張する」
コウはお前なら大丈夫だと励ましてくれたが、緊張は拭えないし、不安もある。何故なら、一週間の間、まともにコウにダメージを与えていないからだ。
もちろん、勝ったこともない。
……箒にも。
正直な話、不安だ。
しばらくして、俺は箒と一緒にアリーナの選手控室に行き、俺の専用機を待った。コウは観客席で応援していると言って、さっさと何処かへと言ってしまった。
居てくれないと、何か寂しい。
どうしようかと悩んでいると山田先生が慌ててやって来た。
「来ました!来ましたよ!織斑君の専用機‼」
「ーーー!」
ついに来たんだ、俺の専用機。
……俺も男だ、覚悟を決める!
で、結果。
一夏は負けましたとさ、結構いい試合をしていたが、所詮は素人と代表候補、差があり過ぎる。
「白式ねぇ」
一夏のIS白式。
第三世代の新型IS、一次移行でワン・オフ・アビリティーを使用できる高性能なISで、そのワン・オフ・アビリティーの名は“零落白夜“。ISのシールドなどを無効にする最強の剣……だが、その実態は自身のシールドを犠牲にし、さらに白式の武装はブレード一本……開発者、頭おかしいんじゃね?
いや、絶対頭がおかしい。何だよ、そのデメリット、せめて、火器をつけてやれよ……可哀想に。
「次はさっくんだね」
「そーだな」
俺をさっくんと呼んだのは、布仏本音、通称のほほん。
通称通りにのほほんとした女子で、何かと掴めない子で怪しい子だ……後、隠れ巨乳らしい。箒がそう言ってた、デカいって……お前も充分デカいから、ラウラが羨ましく思うぐらい、デカいから。
「さっくんねー」
「気に入らない?」
「んや、そういや、俺も友人をあだ名で呼んでたなって思い出した」
「そうなの?」
「あぁ、リンリンって」
懐かしいな、リンリン。
今でも連絡は取ってるけど、リンリンと呼ぶたびに「あたしはパンダか⁉」って怒るんだよな〜、リンリン……さて、行きますか。
「じゃ、勝ってくる」
「頑張ってね〜」
のほほんはニコニコと笑いながら、ダボダボな制服のせいで見えない手を振ってくれた。
ーーーさて、勝ちますか。
次回予告。
雫は純白に魅せられた。
雫は純白に想いを寄せる。
鬼は雫に挑む。
雫は知る、鬼に勝てぬと。
純白は知る、己の無力を。
次回、IS〜蒼き鬼神ケンプファー〜
第十話 ブルー・ティアーズ
鬼は雫を飲み込む。