IS〜蒼き鬼神ケンプファー〜   作:種電

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第十一話 その瞳、恐怖色。

コウは目を覚ました。

目を覚ますと、街中で周りは火の海、所々にクレーターができていたり、人の四肢や頭、胴体などが無残な死体が数えきれないほど、地面に転がり、アスファルトを血で染めていた。そんな見慣れた惨状を眺めていると曲がり角から、一台の装甲車が凄まじいスピードで現れた。

装甲車はコウの横を過ぎ、先の十字路に出た瞬間、聞き慣れた銃声が鳴り響き、装甲車が宙を舞った。どうやら、撃たれたらしい。

宙を舞った装甲車は地面に叩きつけられ、一度バウンドし、三回転したのち、上下逆さまのままでその動きを止めた。

すると、ズシン、ズシンと地面が鳴る。そして、十字路の方から巨人ーーー否、ザクが現れた。

見慣れたザクだった、当たり前だ、以前自分が乗っていたザクなのだから。

 

「あ、あぁ……う」

 

装甲車の方から小さい呻き声みたいのが聞こえたので、装甲車から血まみれの男が一人這い出てきた。男は体を引き摺りながら、必死に前に前に歩く、生きるために、必死に必死に。

 

 

ーーーだが、現実は残酷だ。

 

 

ザクが血まみれの男に気付き、ゆっくりと近付く。男もさすがにザクに気付かられことを知り、必死に逃げるも。

 

ーーーズドドドッ‼

 

ザクの頭部に搭載されていたバルカンが火を吹き、一瞬で男をバラバラの肉塊にした。

そして、ザクは何事もなかったように歩を進めながら、手に持った120mmザクマシンガンを適当に撃ち、腰につけてあるクラッカーを対MS部隊がいる場所に投げる。

そんなことをしていると、ザクに近付く一台の軍用車。ザクは軍用車に気付き、目線を向けると軍用車から一人の軍人が出てきて、ザクに何やら叫ぶがザクは無視をして、前進を続けた。

 

ーーーあぁ、これはあの時の夢か。

 

コウは今更ながら、これが夢だと気付き、今見ている夢はジオン軍人時代に占拠した街で起こった暴動だ。暴動をやめさせるために、街ごと焼き払ったときの記憶だ。

上からの命令で、見せしめとして、暴動を起こした人達を皆殺し、街を焼き払えと命令された。この暴動を唆したのが、街付近にあった連邦軍基地の生き残り達で、武器や装甲車、戦車などを多数保持していたからだ。だが、何よりも、この時コウに皆殺しにしろ、皆殺しにしろと黒い髪の女が囁きかけていたからだ。

コウはそれに従い、街を焼き払い、皆殺しにした。今、思えば死神に憑かれていたのだろう。

 

ーーーこの後、どうしたっけ?

 

実はこの後をまったく憶えていない、記憶がとんでいるのだ。

地上にいると何度か記憶がとぶことが多く、シャアからは「重力に魂が引かれているじゃないか?」と意味がわらないことを言われたことも思い出した、宇宙にいるときはそんなことは無かった。

 

ーーーだが、今はどうだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朝か」

 

目が覚めた、嫌な目の覚め方だなと自分で自分に呆れる。というか、慣れって怖い、あんな光景が当たり前とか思っていた自分も怖いが、あの光景が今更怖いと感じる自分が何よりも怖い。

 

「外は、雨か……」

 

外を見ると、雨が嫌になるほど降っていた。これで、学校が遠かったり、自転車通学だったら、学校に行きたくないと考えてしまう。

その点、IS学園ってスゲぇよな、学園内に寮があって、さらに屋根付きの廊下で学園まで繋がってんだぜ!……遠回りになるけど。

 

つか、流石にこんだけ雨が降れば、今日の訓練は中止かね?

まぁ、ジオン軍人の訓練兵時代は雨降ってても訓練やらされたけどね!正確には雨が降る日に訓練とかやりましたけどね!コロニーだから、雨が降る日とか調整できるし、イジメだよね!

ムカついたから、シャアを崖から何回か故意に蹴り落としたことがあったな、必ず頭を打って、そして、「私はキャスバル・レム・ダインクンだ!」と叫んでいたけど、気にせへん、気にせへん。

ガルマも気付いてなかったから、大丈夫、代わりに眉なしやドズルさんにバレたけど大丈夫。

 

「今日は中止にするか、一夏」

 

と、いつもなら起きているルームメイトに声をかけるが反応がない。

 

「おーい、一夏?い・ち・かくーん?」

 

だめだ、はんのうがない。

まるでたぬきねいりのようだ。

 

「……はぁ、少し歩いてくる」

 

「……」

 

はぁ、まったく。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーIS学園 大食堂ー

 

あれから、朝食までコウは適当に歩いていた。朝食前に一度部屋に戻ったが、一夏は既に居らず、制服もなかったので、先に食堂に行ったのだろうとコウは思い、気にせず一人で食堂まで来た。

来る途中や適当に歩いている途中で、何人かクラスメイトと出会ったので、挨拶をしても反応が薄かったり、困った顔をしたり、逃げたりと明らかに自分を避けているとコウは気付いているが、気にせず、朝食のカレーライスを食べている。

 

「コウ、隣いいか?」

 

「ん、おう」

 

カレーライスを半分食べ終わった頃に、コウに話しかけてきたのは篠ノ之箒だった。先程、シャワーでも浴びたのか、少しシャンプーのいい香りがコウの鼻を擽る。

コウの了承を得た箒は、コウの隣に座り、朝食の鮭の朝茶漬け定食を起き、「いただきます」と静かに言い、食べ始める。

しばらく、二人は無言で食べていたが、コウが一つ気になったことがあったので聞いてみることにした。

 

「なぁ、箒」

 

「ん?」

 

「一夏と食わないのか?」

 

「ん」

 

箒が指を指した方を見ると、セシリアが居て、一夏がサンドイッチ片手に口から泡を吹いていた。

 

「ん?」

 

口から泡を吹いていた。

 

「んん⁉」

 

口から泡を吹いていた。

 

「「いちかぁぁぁぁぁぁ⁉」」

 

「一夏さあぁぁん⁉」

 

三人の悲鳴が食堂に木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

ー昼 一年一組教室ー

 

セシリア・オルコットの手料理により、口から泡を吹いていた一夏を保健室に送り、さらに混乱するオルコットを宥めたりなどをし、色々と疲れたコウはクラス代表を辞任しようと思い付き、担任の織斑先生に言うが、満面の笑みで「却下」と言われたので諦めた。

そんなことがあったりした三限目が終わったあとのことである。

 

「神楽坂」

 

「はい?」

 

次の授業の準備をしていたコウに織斑先生は分厚いノートを渡した。

 

「喜べ、初のクラス代表の仕事だ。教練棟にある第三資料室からそのノートに書いてある資料を持ってこい」

 

「授業の準備が……」

 

「そうか、それが何か問題か?」

 

「イッテキマス」

 

この人に何を言っても無駄だと思ったコウは諦めて、さっさと済ませようと行こうとしたが、織斑先生に襟首を掴まれ、止められた。

 

「待て、先程の授業を寝ていた馬鹿篠ノ之も連れて行け」

 

「寝ていません!」

 

箒はそういうが、頬には先程まで

枕にされていたであろう腕らしき太いあとと、口にはヨダレ、そのヨダレが服についたのだろう、若干腕の一部分が濡れていた。

織斑先生はそんな箒の言葉を無視して、コウと同じように襟首を掴み、二人を首らへんを持ち上げられた猫のように持ち上げ、廊下に二人は放り投げられ、教室のドアを閉められた。

 

「閉め出されたな」

 

「まったく、私は寝ていないのに」

 

「おもっくそ、寝てたぞ」

 

先程の時間、山田先生が必死に寝ている箒に呼びかけているのをコウを始め、クラスメイト全員が見ていた。その時、箒は爆睡していた。

 

「わざわざ、見たのか……ハッ、私に気があるのか⁉」

 

「頭の構造を作り直してから、出直せ」

 

「それとも、寝ている私を見て、ピーのネタにする気か⁉」

 

「お前、どっかの生徒会長みたいになってんぞ」

 

クネクネと身体を揺らす箒に明らかに呆れたようにため息をつくコウは頭をボリボリと掻いた。

 

「大丈夫だ、中の人が同じだ」

 

「中には誰もいませんよ」

 

いいから、さっさと行こうねーとコウは言いながら、箒の後ろに周り肩を押すように前に進むように箒に催促をしながら、コウは箒に聞いた。

 

「なぁ、箒」

 

「うん?」

 

「お前は俺が怖くないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、全員、席に座れ」

 

生徒達は首を傾げた。確かに休み時間はもうすぐで終わるだが、まだ休み時間だ、早いんじゃないか?と疑問に思ったが、織斑千冬に逆らう猛者は今この教室にいないので、皆疑問に思いながら、自分の席に座り、他のクラスの生徒は空気を読み、時間も時間なので自分の教室に戻った。

織斑先生は全員いるかを目で確認する、休み時間が終わる前だったので、流石に全員教室に帰ってきていた。

 

「全員いるな」

 

「先生、何をやるんですか?」

 

気になった生徒の一人が勇気を出して、質問をする。

 

「なに、簡単な質問だ」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーお前ら、神楽坂のこと、避けているだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー廊下ー

 

教練棟を目指し歩きながら、コウは箒の答えを待った。

他のクラスメイトや一夏が自分を避けているのは知っている……だが、そんな中、箒はいつも通りに接してくれるので、コウは何故だろうと思った。

 

「怖くない」

 

「は?」

 

「だから、怖くない」

 

「マジ?」

 

そう確認されると箒は悩み、思い付いた。

 

「……いや、嘘だ、座学の時のお前は怖い、すぐ殴るから」

 

「寝る貴様が悪い」

 

コウが一夏と箒に座学で色々と教えてる際に箒はだいたい八割の確率で寝ている。

最初は優しく起こしていたコウだが、あまりにも寝るので最近では殴るようになってきた。

 

「むむむ」

 

「何が、むむむだ」

 

「……コウ、先程から顔が暗いぞ?理由は何と無くわかるが、一つだけ、言おう」

 

ーーー私はお前が怖くない。

 

きっぱりと言う箒を見て、こいつ阿保なのか、馬鹿なのか、いい奴なのかがわからなくなってきたコウ。それを見らずに箒は続ける。

 

「それに私は強い男が好きだからな!」

 

「……え、ここでビッチ発言?」

 

その発言に箒はニッコリと笑い、何処から音もなく日本刀を取り出し構え、コウ目掛け一閃。

コウは持ち前の直感で、その一閃をギリギリに避ける。

 

「斬り殺す」

 

「ちょ、真剣はヤバイ、真剣はヤバイって⁉」

 

二人はギャーギャーと騒ぎながら、廊下を走る途中、何度も先生に怒られたが、二人は楽しそうに笑っていた。

 

 

 

 

 

ー同時刻 教室ー

 

「お前達が神楽坂のことを避けているのは知っている。理由も察しがつく……あいつが怖いのだろう?」

 

生徒達は黙っていた。

織斑先生に言われた通り、自分達は神楽坂幸を恐怖心から、避けていた。

自分達と同じ年齢で、自分達と同じような高校生だと思っていた相手は化け物ように、まるで鬼神のような強さを持った人間だった。あり得なかった、彼がISに乗っていた時間などをいくら計算しても、あれほどの強さを持つのは不可能だ。

どんなに努力しても、一年未満であれほどの強さを得ることなど不可能であり得ないことであるのは、誰もが知っており、理解している。そんな化け物のような人間を怖がるなと言う方が難しいだろう。

人は自分より優れている者を妬み恨み尊敬し、恐怖することがある。だが、度が過ぎれば恐怖しかない、そう彼女達がコウに抱いている感情は恐怖だ。度が過ぎている神楽坂幸という人間に対する恐怖だった。

 

「怖がるなとはいない、正直私達教師の間でも、神楽坂を警戒している」

 

「⁉」

 

「奴の強さは異常だ、下手をすれば、現状で国家代表と同等の強さを持っている」

 

織斑先生の発言にクラスがざわめく。そんなざわめきのなか、一夏の顔が曇る、自分とコウとの間にある差に絶望していた。

あまりにもあまりにも、大きな差だ。

 

「だが、それ以前にアイツは私の生徒であり、お前達のクラスメイトだ」

 

「!」

 

「誰だって、避けられれば傷つくし、嫌な思いもする……織斑、お前はどうだ?」

 

「嫌です、避けられるのは」

 

「そうだな……なら、お前は最低だ」

 

「⁉」

 

「お前は神楽坂に何回教わった?何回助けられている?誰のおかげでオルコットに善戦できた?誰のおかげで、素人よりもISが使えるようになった?

どれも、お前が神楽坂から教わったからだ。お前はそんな恩師にそんな態度をするのか?」

 

「……」

 

一夏は黙った。

わかっていた、自分がやっていることの最低さぐらい。

自分が恩知らずなことをやっていることぐらい。

でも、怖いのだ、神楽坂幸という鬼神が、神楽坂幸という人間が。

 

「アイツは大丈夫なフリをしているが、内心は違うだろう……アイツは理解しているんだ、自分がいかに化け物かを」

 

「どうすれば、いいんですか?」

 

「慣れろ、神楽坂幸という人間に、私からはそれしか言えん」

 

「……」

 

クラスの誰もが黙り、俯く。

その後、織斑先生は特に何も言わずにコウ達が戻ってくるのを待ち、コウ達が持ってきた資料を受け取り、授業が始まる、誰もが黙ったままで。

 

「慣れるしかない……か」

 

一夏は小さく呟き、後ろに座っているコウを見た。

 

 

 

 

ー放課後 コウと一夏の部屋ー

 

「ごめん‼」

 

「……はい?」

 

「本当にごめん!」

 

コウは織斑先生に頼まれた仕事を終え、部屋に戻ってくると一夏が謝りながら土下座をしてきたのに驚いた。コウが驚いている間も一夏は頭を床に擦り付け、動こうとはしなかった。

 

「えと、とりあえず、頭あげてくんない?」

 

「ごめん」

 

「つか、さっきから謝りすぎだ」

 

「ごめん」

 

はぁ〜とコウはため息を吐いた。

わかる、何故一夏が先程から謝っているのかはだいたい察しがついているコウは、頭を掻く。

一夏は土下座をやめ、正座したまま、下を向いている。

 

「気にしてないよ」

 

「だけど……」

 

「うっさい、気にしてないからいいだろ」

 

「だけど!」

 

「しゃーしぃ、ええっていっとるやろが」

 

コウは無茶苦茶な言葉使いで、一夏のだけど!だけど!を遮り、コウは一夏に手を差し出した。

 

「許すから、立て」

 

「コウ」

 

一夏はコウの手を取り、立ち上がる……その瞬間、コウは一夏の頭を掴み、頭突きを食らわせる。

 

「いてぇ⁉」

 

「やっぱ、一発殴りたくなった」

 

「ひでぇ⁉」

 

ギャーギャーと騒ぐ二人はいつものように見えた……いや、以前より仲良くも見えたかもしれない。

一夏も先程まで抱いていたコウへの恐怖心が少しだけ小さくなった。

まだまだ、一夏のコウへの恐怖心を完全に取り除くのは、まだ先は長くなるかもしれないが、二人の仲は以前よりもよくなったのだけは案外早かった。

そして、一夏の瞳からコウへの恐怖の色は少しだけ薄くなっていた気がしなくもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一章 可憐な青と純粋な白 了

 

 

 

 

 

 

 

 

次章予告

 

彼らには未だに恐怖がある。

 

鬼神に恐怖を抱く。

 

そんな中、一匹の猫と妖精が現れ、運命が動き出す。

 

そして、運命が鬼神に刃を向ける。

 

 

 

 

IS〜蒼き鬼神ケンプファー〜

 

第二章

再会の猫と再戦の妖精と最悪な運命

 

貴方は運命に逆らえますか?




次回は閑話という名のギャグ回です。
そして、IS界のアイドルが登場⁉

次回は三本だての予定。
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