やはり俺たちの防衛生活はどこかおかしい。   作:ハタナシノオグナ

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月4回キープ……出来てませんね、ええ。
今回から、小町を除く比企谷隊の面々に各一話を使い『あの事件』編と題しまして過去話を致します。
長らく説明を避けてきた諸々を明かす第1段階となります。

暗く辛く頭のおかしい文に皆様の困惑する顔が浮かぶようです。
どうぞお付き合いのほどを


『あの事件』編
(1)イカせておくれ!


Akenori's Lament ~大規模侵攻中・三門市~

 

 

 

朧気なままの視界で、理解を試みる。

 

……そう難しくもないな。クイズとしては失格だ。

どうやら俺は死んだらしい。

 

夥しい血(?)と怒号。呆れるほどの焔と肉の焦げ付く匂い。見飽きたようで、見慣れぬ惨状。

 

これは所謂『冥府』ってヤツだろう。

 

彼岸を渡る前か、後か……まぁどっちでもいいか。死後の世界ってあったんだなァ(小並感。…

…それはともかく、景色がまるでモノクロだ。極彩色ってのもイメージじゃないが色が分からないのも不気味なものだ。

 

というか、どうせ地獄へ逝くなら閻〇あいに連れてってもらいたいねぇ。

地獄確定って自分で言い切る所とか、そんな恨み買った覚えねえとか、ツッコミはともかく能登かわいいよ能登。

渡し賃五円チョコで勘弁してくれないかな。財布持ってきてないだろうし。

死神とのご縁なんて縁起でもないが、くたばっちまった後ならそう気にすることもねえでしょ。

 

うーむ、認めたくないものだな…自らの幼いままの幕引きと言うやつを(キリッ

 

……いやいや待て待て? そもそも俺はなぜこうもあっさり死んだ?

 

死因はなんだ? 持病なんて抱えてた覚えはないし、事故ったのか?

 

もちつけ、ここはまずテンプレから入ろう。

 

ココは誰?ワタシは何処?(コレなんぞ!?)

 

……記憶喪失モノってのも最近見ないなぁ…とかやってる場合でもないか。

事故分析だ。

……もとい、自己分析だ。今やってんの就活じゃなくて終活だけど。

 

名前は?  (もり)暁法(あけのり)

 

歳?    13歳

 

身分は?  三門市立第三中学校一年

 

あぁ、そうだ。

 

確かキセキの世代とか呼ばれてバスケやってた記憶が……あー、ないね。

俺の苗字に色入って無かったし、好きなスポーツは野球だったね。

そもそも部活やってないし。

というかこんなどうでもいい事より記憶辿ろう…マジで死に際が気になる。

……ああッ、クソ!フラッシュバンでもくらったってのか!?

鬱陶しい!

目の前にこびりつく白! 白! 白!

瓦礫が見える。死体が見える。盛る焔も何も彼も!

だがその全ては白に塗れ、白に汚れ!!

ああああッ!!! 止めろ! そんな五月蝿く押し寄せるな!

分かるものは見えるものばかり、意識を脳みそに沈める事さえ出来やしない!

……いや、思い出したぞ、思い出したとも!

エド・ウッドみてぇな理不尽が俺の住む街を襲ったのが最期の記憶だ!!

 

ああ! クソッタレめ!!

 

日常に異常が湧いて、後は巷がデス・パレード!

罵声と断末魔。綺麗に華麗に死ぬ悲劇と、醜く惨めに果てる喜劇。

くたばる過程に差はあれど、詰まりは最早土塊にすぎぬ!

 

………待てよ?どうやらテメェの死に様は杜暁法ではなく犠牲者の一人(One of the victims)らしい。

……ではこの俺の家族は? 友人は? そうだ、居たんだろう。居ないはずもない、きっと。

家族…身内…兄妹…妹…妹!?

ああそうだ! どうして忘れていた!

なぜ思いもしなかった!?

どうしたことだ、このシスコンともあろうものが!!

 

琴時(ことき)

 

琴時!

 

父さんとお母さんは!?

 

頼む! 俺は行けないんだ!!

 

琴時を!! 琴時を!!

 

ああ! ああ! ああ! ああ! ああ!

 

死んでいようととも諦められるものか!

 

これだけは!

 

こればかりは!

 

脚よ駆けろ! 息を深く吸え! 灼けた空気でいい、肺を満たせ!!

 

俺はここだ! 無事か!? 危ない! 逃げろ!

 

ええいクソが!! なんだってんだ、この白は!? 方々で流れて溜まってやがる!!

 

…ッ…ああ目が霞む! 身体は藁束か!?

 

俺はどうなってる! どうなっちまったんだ!

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

―――この時の事は『狂っていた』としか形容できない。

ひたすら壊れた調子で《現実》を認めまいと意識が騒いでいると、正面に影が落ちた。

瓦礫でも崩れたのか、死体でも降ってきたのか。

とにかく、役に立たない自分の目にまで理解できる変化がやってきた。

 

それは見たこともない何かで、また見たくはない事実で。

 

火車(かしゃ)土蜘蛛(ツチグモ)? はたまた魔化魍(まかもう)

どれでもないだろうが本質は変わらない。

 

あれは敵だ、紛れもなく。

 

どうしよう(殺す)どうすればいい(殺す)どうしてやろうか(ブッ殺ス)

 

今この場で無力さを弁えているのに、沸沸と煮え滾る激情が、逃亡という理性を食い破る。

いや、この体では逃走など叶わないと納得しようとしている。

 

いっそのこと、飛び込んでしまおうか。理不尽に流されてしまおうか。

 

そんな考えに自惚れそうになる。一矢でも報いるつもりで、華々しく散るつもりで、別段栄誉でも無い英雄的な死を求めようとしてしまう。

 

そんな破滅願望に絡めとられるのは止められた。

いつの間にか現れた人間が、襲い掛かる何かを蹴り上げる光景によって―――

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

―――あっさりと敵を撃退した初老の男性は振り返ってこちらに目をくれると、ポツリと呟きながら声をかけてきた。

 

「よく立っていられるものだ……ぼうず、逃げるぞ」

 

たしか、この時俺は途切れ途切れの意識をどうにか保ち、助けられた礼を言ったつもりだった。実際口にしたのは別の言葉らしいが。

 

「俺より妹を………琴時を…」

 

助けてくれ、と伝えられることはなく俺の意識はついに暗転した。

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

―――俺の大規模侵攻の記憶はここで途切れている。残りはすべて後日談の様なものだ。もっとも、その「後日談」こそが俺にとって―恐らく琴時にとっても―重要なのだが―――

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

目が覚めて、「知らない天井だ………」と言うべきか迷ったが、動けないことに気づいて視線だけを部屋に泳がせる。

 

無機質で、それでいて冷たさを感じさせない不思議な部屋には、包帯で全身をぐるぐる巻きにされた自分と、最低限の調度品だけがあった。

 

これからソーダ水漬け(ミイラ)にでもされるんだろうか。

 

覚束無い思考でつまらない事を考えていると、不意に扉が開かれ、人の来訪を告げる。

その男は自分が寝そべっているベッドに近づくと、落ち着いた物腰で自己紹介を始めた。

その実、内容は余りにせっかちなものだったが。

 

「やぁ、はじめまして。僕は『司』。君を助けたおじいさんの……孫だよ。早速で悪いんだけど君の名前を教えてくれるかい?」

 

初対面からなんですが胡散臭い……………。

 

と、いえども、怪しさ満点ではあるが恩人の弟子と言われれば黙ったままというのも礼を欠く行いだろう。

ひとまず挨拶を返さねば。

 

「はじ……まし…て、杜…暁……法と言い…す。木偏…に土、暁の……法律で【もり……あけ…の……り】。い…お…うと…知……んか? 」

 

喋ることすらままならない口を何度ひっぱたいてやりたいと思ったか分からない。

しかし、それすらもままならないのが自分の現状と言えた。

 

「琴時、和楽器の琴に時間の時で【ことき】です。」

という言葉は伝わったのだろうか? 嫌に舌が重い。

まあせっかちなのはお互い様、だ。

化物なんざどーだっていい。琴時を。琴時を!

とは言え、そんな自分を見て相手が気を悪くした様子もないが。

むしろ、気を重くしただろうか? こころなしか、血の気が引いた気がする。

あんな事の後(なのだろうか?)だ。努めて明るく振る舞おうとするのは当然なのかもしれない。

まして、子供の前ともなれば。

 

「うん、木偏に土、暁の法律でアケノリ君……ああ、まだ無理してはいけないよ。君が動けないのは包帯のせいではないからね。質問については君がもう少し回復してからまとめて答えよう。今は回復に専念だ。御家族については僕が調べておこう」

 

司と名乗った男が言ったことはもっともな事なのだろう。確かに、急激に眠気が―――

 

考える間もなく眠りにつくと、司は安心したように部屋をあとにした。

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

―――とまぁ、これが自分と司の初顔合せだ。胡ッ散臭い大人だろう? 今でもそう思ってる。とはいえ、この時司は本当に身を粉にして働いてくれたらしい。そこは本当に感謝しているよ。おかげで今日も死にたくない――

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

それからというもの、一週を眠って過ごし、一週を体力の回復に努め、一週をリハビリに注ぎ込み、ようやく日常生活に復帰できるまでになると、また司がやってきた。

 

「やぁ……順調だと聞いてね。聞きたいことは山とあるだろうし、そろそろ答えることにするよ」

 

初対面以降、顔さえ見せなかった司からついに事情が聴ける事への何とも言えない緊張感から自然とゴクリと唾を飲み、口を開いた。

 

「……琴時は無事?」

 

「無事だ、市内の病院で特に大きな怪我もなく意識もしっかりしている。ショックによる多少の記憶の混乱はあるようだけど概ね健康と言って差し支えない」

 

吐息が震える。ぞくりとした衝動が全身に起こり、琴時の無事に歓喜した。

 

ああ神サマ!! 善くぞやってくれた!

 

ここで終われば良いものを……男の声は、だが、と続けられた。

 

「御両親はお亡くなりだ。」

 

「………ぁ……………………?」

 

何故と問う声で脳がショートして、感情が呻き声となって零れだす。

 

言葉を忘れたかのように、原始的で起源的な音が鳴り渡る。

 

即ち、慟哭。

 

何故なのか、琴時は父親を喪って、俺は母親を喪って、今また両親を亡くしてしまった。

何を呪うのか、何故嗤うのか。どれほど恨もうと何にはらせば良いものか。

 

「君たちの御両親が亡くなったのは、僕らの―――力不足によるものだ」

 

より深く、より濁った思いに沈むのを遮ったのは司の声だった。

それはまるで絞り出されたように。あるいは、決壊の前触れのようで。

悲嘆に暮れる暁法の耳さえも傾けさせた。

 

「君のお父さん、琴時ちゃんのお父さんは僕達の仲間だったんだ」

 

――――――ah?

 

思考が追いつかず、感情が当てはまらなかった。

 

何も知らぬ嬰児(みどりご)のように、ただ呆然としながら、浴びせられる言葉の数々を、意味記憶として収納するしかなかった。

 

―――ああ、嬰児であったなら。

 

そうでさえあったならば、いずれはその記憶も深く鎮められたことだろう。

 

きっと、時間が薬となった事だろう。

 

そんな風に、幼児期健忘のように忘れられたらどれだけよかったかわからなかった。

 

それでもただ甘んじていた。

 

甘んじるしか無かったのだ――――

 

曰く、父親同士は同僚だった。らしい

 

曰く、母親同士も友人だった。らしい

 

曰く、その仕事は表向きの事。らしい

 

曰く、生業は秘密組織である。らしい

 

曰く、父親達はそれで死んだ。らしい

 

曰く、曰く、曰く、曰く、曰く、曰く、曰く、曰く、曰く、曰く、曰く、曰く、曰く、曰く、曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く―――

 

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

 

聞きたいことはすべて聞いた。

 

聞きたくないことも粗方聞かされた。

 

数え切れない秘事も、無理矢理こじつけた様な裏設定も、すべてが詳らかに語られた。

 

それでいて、幾重にも濾過を重ねたような、そんな純粋なバッドニュースばかり目に留まるというのも皮肉なものである。平時であれば胸を高鳴らせたであろう中二病めいた言葉の数々でさえ、それが意味するのは結局のところ、「大切な人が死んだ」というだけのことなのだから。

 

せめてもの救いというのであれば、父さんは決して卑怯者のように、醜く、卑しく、見苦しく死んだのではなく、最期まで自分の家族を、同僚を、果ては街の人々を、見境なく、それこそ手当り次第に助け、導いて、その結果、聖人の様に亡くなったことだろう。

また、義理とはいえ母親も、最期まで父さんを支え、人々を介抱し、遂には父さんと連れ添って亡くなった。

 

他人から見れば、それは決して救いでは無いだろう。

むしろ、親の死に様を事細かに知る事は辛い事だと誰もが口を揃えて言うのだろう。

 

それでいい。

 

例えそれが誰の目にも救いに見えなかったとしても、中学生の子供を残して死んでしまう不甲斐ない親に見えたとしても、自分の中にだけはしっかりと、それは救いとして残っているのだから。

 

「まずは琴時ちゃんと再会しようか。それから、今後の話をしよう―――」

 

『ついておいで』と語る背中に、ようやく自身の責務を認識した俺は、誰に誓うともなくこう呟いた事を明瞭に記憶している。

 

琴時だけは愛してやる。何があっても手放すものか―――

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

―――世の中とは往々にして悲劇である。

 

幼いとさえ表せるこの俺に、琴時に、現実がそれを知らしめたこともまた。

 

だが案ずるなかれ。悲劇には、我らの出場はもはや無い。

 

この先自分を待つものは、トレンドを外れかけた無双劇。

 

如何なるシリアスも、緊張も、悲嘆も、怨嗟も、狂信も、何も彼もが侵せはしない。

 

なぜなら我等は脚本家。

 

役者の剣では、書き手の筆には能わない。

 

どんなクソゲーもボツにして、指先一つでチーレムでも作ってやる。

 

世界は、私を追い詰め過ぎたのだ――――――

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

―――最後に随分と捲し立てたのは何も只の大言壮語って訳じゃ無いんだぜ?

 

これは謂わば決意表明とでも言うべきものだ。

 

ここまでの語り(騙り)を聴けば解るとは思うが、自分は所謂『イカれた奴』なんだ。

 

しかしだね?

 

キチガイが只の非力な人間ばかりだと思うかい?

 

そいつァコトだnゲフンゲフン……それは思い込みというモノだ。とんだバイアスさ。

 

そんな先入観なんて犬に食わせてしまえ。何の役にも立ちゃしない。

 

さあ、回想はここまでだ。悲劇の追体験なんぞロクなもんじゃないだろう――――――

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

声明

この度私は変わります

叩いて磨いて shine on shine on

好き嫌い言う前に飛んでみます

たやすく助けを求めません

燃え尽きてこそ輝く

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇




なんだこれ!? と困惑されましたら成功です。
今回は意識して一人称を用いました。その意味はそのうち

しばらくこんな余裕のない状態が続くと申しましたが、来月初旬から中旬にかけてどれほど更新できるかは全く白紙です。
最悪の場合、次回のご挨拶は『あけましておめでとうございます』になります。

それはそうと私の贔屓のアーティストが新アルバムを出しまして、本当に救われております。
皆様におかれましても心の支えは大切になさってください。


最後の詩は
B'z 53rd single 1st beat『声明』より引用。
http://bz-vermillion.com/discography/sg_53.html
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