やはり俺たちの防衛生活はどこかおかしい。   作:ハタナシノオグナ

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お久し振りです。
こうして浮上できたことを嬉しく思っています。
またしばらく期間は開きましょうが、必ず帰るとお約束します。


(3)Too Young

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

くそったれな出来事から幾日かが経って───────

小町は死んでこそいないが、生きようともしていない。

 

やはり、小町は俺を受け容れない。

当然といえば当然で、本人にその意思があっても身体がそれを拒んでいる。

それでも他人に対する警戒は和らいだ様で、俺と同い年くらいの女子が、頻りに様子を気にしていた。

生存を放棄しているような危うさを見せながら、少しづつ食事も摂っている。

感謝してもしたりないが、彼女もまた、他人の世話をする事で自己を保っている。

 

何処も彼処も頭の壊れたヤツで満杯だ。自分含めな。

 

それで、当の俺はといえば最初に言ったままだが……そうだな、口数が増えた。

え? ボッチだから口をきく相手が居ないだろうって? やかましいわ。

けどまぁ、リア充よろしく和気あいあいとしたものじゃないことは確かだな。

 

そんな健康的なら、少なくともそう装えたなら、俺はとっとと×××××に行っている。

つまり実際はそうじゃない。部屋の片隅でどうしてやろうかとひとりでブツブツ語っている。

 

『病んでる』状態らしいぜ? 今じゃ小町より重体だ。

 

こんな考えが普通じゃないってのは重々承知しているが、だからといって改められるものでもない。

遅々として進まない思考にひたすら苛立ちを募らせて、それでも時が過ぎるのをただ見過ごした。

一刻も早く開放されたいと願って、ただ待った。

『何か』を、『仕方なくそうした、そうなった』そう言い逃れられる外的要因を。

そして。

 

「君がヒキガヤヤハタくんかい?」

 

静かな、そして澄んだ声が響いた。

子供の多く集まる部屋だ。それが悲嘆によるものであれ、決して喧騒と無縁ではないこの場所で、その声はイヤに据わっていた。

 

「……ヤハタじゃない……っす、それでハチマン」

 

そんな異物感に興味を持ち、訂正を加えながら声の方へと視線を巡らせる。

声の調子からして泰然とした印象とは裏腹に、そこに居たのはまだ青年と呼べそうな男だった。

バツの悪そうな顔で『参ったなぁ』と頬を搔いて見せる仕草を見ていると、先程の声がこの男からしたとは到底思えない。

 

「ああー……じゃあ、改めてハチマン君」

 

眼の前のコイツは何を言うのだろう。

 

「小町ちゃんは僕らでアズカルンダケレド、何か苦手なものはあるかな? ザザムシとか」

 

「………………Πετάξτε μακριά?」

 

不思議な感覚で様子を伺った自分が愚かだった。煮え滾る鉛に沈んでしまえ。

 

「何言ってんだ……お前」

 

どう考えても頭がおかしい大人を前に、敵意むき出しで問い詰める。

 

コイツも俺の同類(イかれたクチ)か? それか自前か? いずれにせよロクな手合いじゃない、後者なら特に。

……ああ、コイツ後者だ。でなきゃそんな顔で戸惑えるものか、クソが。

 

「いや、小町ちゃんの世話してる子いるじゃない? その子連れて行きたいんだけれどね……」

 

訊いてないし、なおさら関係ねえじゃねぇか。

 

「イヤイヤ、今彼女小町ちゃんのお世話でメンタル保ってるから、さ。環境ごと連れてこうかねって」

 

「…………ッざけんな」

 

言うに事欠いて『小町を連れていく』だと? それもタダの『設備』として? ふざけんな! ふざけんな! っざけんな!!

 

「何か問題でもあるかな? ココに残って良いことは、何も、ない、とは思うけれど」

 

そう嘯き、辺りへぐるりと目を剥いて、最後にちらと俺を見る。隠そうともしない嘲笑を添えて。

 

その唇に爪をたててやりたい! 憎たらしい! 忌々しい! コイツは! 何を知っているのか!?

……ああ、いっそ何もかも知っていると言え。

ここで、俺は同じ愚だけは繰り返せない。

自己愛ゆえに、我儘に、俺は自分の利益を選びはしない!

二度と!

もう二度と!

 

ああ、クソがクソがクソがクソがクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソったれが!!!!

 

内言を必死に鎮めて、呻きのひとつも漏らすまい、と固く、頑なに口を閉ざす。厳重に、慎重に、背中を丸め、縮こまる。

そして。

そして。

そして。

とっくに干上がった喉から、最後の一滴までも搾り出すように。

何かを、自己を支えていた決定的な何かを、遂に八幡は。

言葉に、───────

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

「それまで」

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

その一言が、場を支配した。

畜生の様な男も、同じ部屋のガキ共も、通りすがりの看護師も。

そして、ちっぽけな決断も。

すべてがその声の主を中心に。

 

止まる。

すべての停止をぐるりと見わたして、その場すべての焦点となった女性は。

 

「あっ……すみません。コイツだけです……」

 

その顔を上気させ、恐縮した。

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

ややあって。

当初の威厳を取り戻したその人は、鬼畜野郎をその場に直らせて懇懇と説教を垂れていた。

俺はといえば、あまりにも滅茶苦茶な状況をしばらくは傍観するだけだった。

そして考える頭が戻ってきた今でも事態は混迷を極め、その謎さにどうしていいやらわからない。

そもそもこの女性はなんだ? というか、コイツらなんだ?

 

それら一切の疑念を飛び越えて、またも野郎の声がした。

 

「あー、比企谷くん。先ほどはすまなかったね、乱暴な真似をした」

 

「………………。」

 

沈黙をもって答えると、諦めを含んだ愛想笑いと共にひとつ息を吐いた。

 

「と言っても、さっきの話は本当だ」

 

瞬間、頭に血が上る。顔にあからさまな熱を感じる。

殴りかかろうとして、それを制すように、奴は言葉を続けた。

 

「ただし、君も一緒に来てもらう」

 

これまでの遣り取りを、全く無意味にする言葉を。

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

───────司。

 

夕暮れの病院、その薄闇で呼ぶ声があった。

ちらと見て、無言のまま先を促す。

 

「どうするの?」

 

質問、というにはあまりにも情報を欠いた問い。

 

「引き取るさ」

 

それでも迷いはなかった。

ただの再確認のようでさえある。

 

「親は生きてるんでしょう? 」

 

「ついさっき行ってきたよ」

 

「じゃあ……」

 

言葉が止まる。察したのか、ただの思案か。

 

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それ以上の反応(こたえ)はなかった。すれ違い、目的の部屋へ向かう。

 

その男の服装は黒に占められていた。




短いながらも確かな一歩。

【お知らせ】
次回から多少予定を変更して本編へと戻るつもりでいます。
よって、『あの事件』編(琴時'ver)はいずれ頃合を図り追加する予定です。

【追記】平成30年4月28日
誤字報告に基づき編集および若干の修正を行いました。
この場で誤字報告者の方に御礼申し上げます。
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