やはり俺たちの防衛生活はどこかおかしい。   作:ハタナシノオグナ

2 / 26
つくづく日本語って横書きに向かないなと感じます。

どうぞよろしく

【追々記】平成29年9月12日
あまり修正を重ねるのはよろしくないのですが同じ言葉がふたつ並ぶというのも具合が悪いと感じ、サブタイを改めました。


強制入部編
(1)ある始まり、挨拶と罵倒。


「高校生活を振り返って」

 

比企谷八幡

青春とは嘘であり、悪である。

青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺く。

自らを取り巻く環境のすべてを肯定的に捉える。

何か致命的な失敗をしても、

それすら青春の証とし、思い出の1ページに刻むのだ。

例を挙げよう。

彼らは万引きや集団暴走という犯罪行為に手を染めてはそれを「若気の至り」と呼ぶ。

試験で赤点をとれば、

学校は勉強をするためだけの場所ではないと言い出す。

彼らは青春の二文字の前ならば

どんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げて見せる。

彼らにかかれば嘘も秘密も、

罪科も失敗さえも青春のスパイスでしかないのだ。

そして彼らはその悪に、その失敗に特別性を見出だす。

自分たちの失敗は遍く青春の一部分であるが、

他者の失敗は青春ではなくただの失敗にして敗北であると断じるのだ。

仮に失敗することが青春の証であるのなら、

友達作りに失敗した人間もまた青春ど真ん中でなければおかしいではないか。

しかし、彼らはそれを認めないだろう。

なんのことはない。

すべてが彼ら自身の自己満足であり、

自らの物差ししか認めないだけである。

仮にも義務教育を経た彼らが、法律という現代社会の規範を知らないわけがない。

だが現実には先に述べた事はまさに茶飯事。

そんな彼らのなんと愚かなことか。

とはいえ、天網恢恢祖にして漏らさず、とも言う。

学校もこのような恥を座して見ているつもりもないだろう、一年が過ぎたが。

結論を述べよう。

 

働け、生徒指導教諭。

 

 

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

 

 

「高校生活を振り返って」

 

杜暁法

我が世の春が来た。

そう期待に胸を膨らませていた昨年の自分が愚かだった。

今にして思えば、

その時私はたいそう間抜けな喜びの表情を浮かべていたことだろう。

余りにも理性に欠ける行いを嫌い、

殺伐とした日常に刺激を求めるといった相反する願いを追求した結果、

何を血迷ったことか「この総武高校ならば」と進学を決めた。

しかし実態はどうだ。

いっそのこと治安維持法でも成立させて一網打尽に摘発したいものだ。

ついでに用務員から校長の首に至るまでそっくりすげ替えれば常識の種も萌すだろうか。

(中略)

だが結局の所、問題の多くは生徒それぞれが内包するものであろう。

そもそも、10代とは寡聞にして、「承認欲求が強い」と評されるらしい。

大抵は、これに「ガキが生意気な口を云々」と言った文句が加えられるが。

なるほど、我々を見る限りこれらの言葉に対し反抗の言葉を並べることは苦しいだろう。

しかし、考えてもみてほしい。

我々は蔑称的に「ゆとり」とか呼ばれる世代である。

先日まで、個性個性と言われていたのが途端「そんなものはどうでもいい」と、

手の平を返されれば及ばぬ子供の脳みそはエラーを起こしてしまうだろう。

勿論、教育に関する指針は教師生徒共に関知できうるものでもないし、

それを傘に不貞を働く輩を擁護するつもりもないが。

閑話休題

だからこそ、どうか成熟された脳みそをお持ちであれば、

それら寡廉鮮恥な乱行をただ頑なに否定するのではなく、法理を説いていただきたい。

それこそが最も実のある、つまり「叱る」ということではないか?

蓋し大輪咲かずとも、万事に通ず社会規範を共有するならそれもまた確かな教育の成果ではないか。

盛んに説かれる『今だけの経験』に道理という概念を含ませて欲しいものである。

学校としてもそれが「総武高生としての誇り」とやらを体現できるのではないか?

実力主義とは実力が全ての免罪符となる事を許すものではないだろう。

恥知らずにも進学校を名乗るのであれば一度その辺りをじっくりと考えてみてはどうだ?

このままではgo◯gleの予測変換に『総武高校 自称進学高(笑)』とか『総武動物園』などと表示されるのも遠いことではないだろう。

せめて我が身が在籍する内にその様な事態に陥らない事を願うばかりである。

以上の様な失望と共に高校生活の初年度を終え、憧れも消えた。

総武高校で学べる事への万感の想いは尽きることは無いが、特に中学までで経験することのなかった社会科目は非常に面白可笑しい。

眼前の惨状を放置しておきながら社会制度について熱弁する教師や政治体制の倫理観に疑問を呈する人間を見ているのは演劇部の喜劇よりもよほど面白い。

この様な飽きさせない様にとの生徒への篤い配慮をモチベーションに、

今後とも学業に専念し、人格の模範を目指して邁進する所存で云々。

 

働け、生徒指導教諭。

 

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 

 

 

それぞれの作文の朗読が終わると、平塚教諭は充分に間をあけてから声を掛けてきた。

 

「―――――さて、2人とも。呼び出された理由はわかるかね。」

 

「「いやまったく」」

 

……その声はあろうことか、一蹴されてしまった。

 

「……訂正するなら今のうちだぞ」

 

一瞬茫然としたのか言葉を澱ませながらも、ややトーンを下げて再度睨め付けてくる。

 

さて、何故だろうか?

 

額に青筋を浮かべる平塚先生(アラサー)を前に、意味合いこそ異なるものの、男子生徒共は同じ言葉を思い浮かべていた。

 

比企谷八幡

 

(もり)暁法(あけのり)

 

それぞれが、先ほどの”イタイ”作文の作者である。

そんな2人が立たされているのは、新学期早々の人もまばらな職員室の隅だった。

 

「なぁ、貴様ら。私が授業で出した課題はなんだったかな?」

 

「……はぁ、『高校生活を振り返って』とかいうテーマでの作文でしたか?」

 

八幡がそう返すと、ようやく話が進むことに安堵したらしい。

 

「そうだな。それでなぜ貴様らの作文は自省ではなく煽り文句なんだ?馬鹿か?」

 

罵倒でしかない肯定が返されて、平塚先生は苛立ちを隠そうともせずに荒々しく髪を掻き上げる。こうして嘆息する女教師を対岸の火事のごとく、問題児どもは顔を見合わせていた。

 

「おい、ノリ。なんで俺らわざわざこんな所で説教くらってんの?」

 

「あぁー?お気に召さなかったんじゃねぇ? そぐわなければ潰す。いやはや恐ろしいもんだ」

 

「まじかよ学校最低だな」

 

こんな会話を交わしていると、ぽん、ぽん、と紙束で頭をはたかれた。

 

「真面目に聴け」

 

「「はぁ……」」

 

「君達はあれだな、ガラムマサラ曹長の様な性格だな」

 

著作権への牽制としても、もう少しマシな例えはなかったのだろうか。

 

「どうせならネウ〇とかDI〇の方が良かったですね」

 

「バッカお前、赤ダルマ伍長に決まってんだろ?」

 

突然の台詞に正直な感想を述べると、平塚先生の表情筋が唇に弧を描かせた。

その目はとても冷ややかなモノで、どうやら中の人ネタを笑ってくれた訳では無いらしい。

すぐさまドスを効かせた声が飛んでくる。

 

「貴様ら。この舐めた作文は何だ?体裁上言い訳くらいは聞いてやる」

 

ボーダー上層部の会議室を知らなければ震え上がりそうな怒気を視線に孕み、先生は(まなじり)を尖らせる。とはいえ、なまじ威圧感を持つだけに、『知り合い』(マジモン)と比べて圧力が足りないと感じてしまう。

つまり殺気が足りない。

 

「“天網恢恢(てんもうかいかい)祖にして漏らさず”って言いたかっただけですね。批判と皮肉はついでです。思うところが無いわけじゃありませんけど」

 

「自分は“蓋し大輪咲かずとも”ってフレーズを使いたかっただけです。たまたま目にしたら絵、内容共にどストライクでした。道徳心の低下は嘆かわしいですが別に若者限定でもありませんし、この学校の風紀なんぞに興味も有りません」

 

「何処までふざけ通すつもりだ。どれほど考え方がひねくれていようと“普通”っぽい作文くらい演じられるだろう」

 

「イヤ、そうであればそもそも提出の必要なんてないでしょう。皆が均一評価でハイ、おしまいですか?」

 

「刹那的な生き方をしてましてね、適当な新聞記事で五パターンくらい書いて一番まともなのがそのテーマでした」

 

「小僧共…あまり屁理屈を並べるな。いや、片方は理屈ですらないが…」

 

「小僧って……。いや確かに先生の年齢からしたら俺らは小僧ですけど」

 

「なんてことない会話にさえ自虐を練り込むとは……。なぁハチ、これも年齢の為せる(わざ)なのか……?」

 

「いや、どちらかと言うと(ごう)じゃないか?それは」

 

突如―ぱっ―と、空気を裂く音がして。風がふわりと遅れて届いた。

これでもか、という程に見事な手刀が顔を見合わせる2人の間隙を縫っていったのだ。

 

「次は当てるぞ」

 

おまけに目が必死だった。

 

「すみゅ、…すんませんでした。書き直します」

 

八幡は、この局面を切り抜けるために最適化された言葉を選択。噛んではいたが。

おそらく隣で笑いをこらえている者に散々に弄り倒されることだろう。

 

「あ、先生。(眉間に)皺よってますよ」

 

そして空気を読まない男の特に脈絡のない言葉の暴力が平塚先生を襲った。

 

ああ、これはもうだめかもわからんね。

 

刹那に、八幡は制裁を覚悟する。

 

フジャッケンナこの野郎! 何故よりにもよってこのアラサーの地雷原でコサックダンス踊るような真似してんの? 何が悲しくて新学期早々コイツと死地に赴かなければならないのか、はァ…働きたくない。と、現実逃避も忘れずに。

 

しかし意外にもくだされたのは鉄拳ではなく、引き攣る表情を抑えてどうにか絞り出したような一言だった。

 

「ッ…わ、私はな、怒っているわけじゃないんだ」

 

とはいえ、それは面倒事を確信させるには過分なもので。

 

……あー、出た。出たよこれ。

 

見事にシンクロした感想がふたりの脳内をよぎる。

そのうち片方がこの状況を生んだことは多分気づいてはいない。

ペースを乱されっぱなしの平塚教諭は、ふぅっと呼吸を改めると、完全に空気と化していた八幡にも視線を向け直し、至極真面目な顔でこちらを見据えた。

 

「君達は部活をやっていなかったよな?」

 

「「はい」」

 

「……友達とかはいるか?」

 

「問題にならない程度には接しているつもりです」

 

「いないですね」

 

暁法の答え(前者)はともかく、八幡の返答(後者)は期待した答えだったろうに、平塚先生は芳しくないといった顔で尋ねてきた。

 

「先程からやけに息の合った掛け合いをしているが君たちは友達同士ではないのか?」

 

「後見人が同じなので家族みたいなもんだと思います。お互い四年前に両親を失くしているもので」

 

ピクリと、ほんの僅かながら整った容姿が歪む。四年前、というワードに、深入りすべきではないと感じたのか。誤魔化すように、ふむ…と咀嚼して次の質問を投げてきた。

 

「…………彼女とか、いるのか?」

 

「「いりません(義妹/妹がいるので)」」

 

息ピッタリの断定に気圧されたらしい。

そ、そうか……と、やや引き気味に返された。

 

なんでさ。

 

そんな脳内ツッコミをそれぞれが繰り広げていると、考えがまとまったのだろう。俄にポンと膝を打った。

実におっさん臭い

 

「よし、こうしよう。レポートは書き直せ。当たり障りのないものを持ってこい」

 

「「はい」」

 

教師としては有るまじき言葉が聞こえた気がするが、ともあれ。これで一件落着ということだろう。そう思っていた時期が彼等にも云々。

 

「だが、君達の心ない言葉や態度が私の心を傷つけたことは確かだ。女性に年齢の話をするなと教わらなかったのか? なので、君達ふたりには奉仕活動を命じる。罪には罰を与えないとな」

 

……………………ん?

 

「「はぁ?」」

 

ひとりはウンザリと、ひとりはむしろ嬉々としてそんな声を零した。後者であるところの暁法は実に楽しそうに言葉を返す。

 

「裁判官気取りは結構ですが適切な命令系統に所属した覚えはありませんしどうせなら日本国憲法第18条を引いてから出直してください」

 

「黙れ小僧。貴様こそ学校教育法35条を引いてみろ」

 

またもや干戈を交えん、と舌戦の火蓋を切ろうとしたが、泥沼を嫌った第3勢力が仲裁に入った。

 

「ノリ、やめとけ。この人は『シナリオは俺の頭の中にある!』タイプの人間だ。ひとまず喋り切らせた方が早い」

 

うッへぇ…と噦(えつ)くふりをしてみせる暁法も、その辺は察したらしい。事前の反抗を諦め、ふたりは面従腹背に徹することを決める。平塚先生はそれをひとまずの従属と受け取ることにしたのか、ふん、と鼻を鳴らして歩き始めた。

 

「ついてきたまえ」

 

今後の予定がない事を多少嘆きつつ、なんだかなぁ…と現実逃避に耽る八幡と、いい暇つぶしのタネになりそうだと舌舐めずりでもしそうな暁法。

 

そんな対象的な2人を、おい、早くしろ。という声が追い立てた。

 

 

 

 

◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇

 

 




冗長ですな。普段はおおよそ5000字位にしようと思います。

書きたい欲求が「ストーリーそのもの」と「場面ごとの言い回し」という風に二極化しているせいでまとまりがないというジレンマです。

【追記】雪ノ下アンチは続きません。
私なりの彼女の成長も今作で書きたい目標のひとつです。
平塚流しもないよ!期待していた方は拍子抜けしてしまいそうですが。

【追追々記】平成29年10月17日
前前前世みたいになりましたね。
分割&再編集致しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。