やはり俺たちの防衛生活はどこかおかしい。 作:ハタナシノオグナ
初めましての方は少々驚かれるやも知れませんが、何のことはありません。
もとはひとつだったものをバラしただけのことです。
【令和元年7月13日】追記
誤字情報を頂きました。
霧玖様、ありがとうございます。
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「……にしても」
しばらく無言で歩を進め、いくらか心持ちに余裕が生まれた頃に暁法の呟きが漏れた。
どうやら先程までの出来事を
その顔はやはり険しいものだった。
「あぁ?」
「いや、何だったんだろうな、アイツ。邂逅数分で無駄に強烈なキャラ立ててたけど。」
あの場では散々愚弄しておきながら、ちゃっかりと名前は記憶していたらしい。
よくあんな不毛な会話に付き合えるものだと内心舌を巻きながら、『邂逅』という言葉にふとした疑問を覚え、つい八幡の口を衝く。
「俺が知るかよ…てか、会ったことあんの?」
「ん? なに言ってんだハチ。お前がヘマしたときの相手、忘れたのか?」
「………忘れた」
「…………………」
まったくハチらしいと苦笑しつつ、暁法は説明を始める事にした。
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「あー、そんなこともあったな。唐沢さんがホクホク顔で飯奢ってくれたっけ」
「思い出すのはそっちなのか……」
「当たり前だろ。あの時はトリオン体だったから正直ダメージとか無かったし、病院で寝てたのも方便だ……」
「いい加減ウジウジすんな、目が腐るぞ」
そう言って、その先に続くであろう言葉と、舌打ちの意味を窘める。
「ほっとけ…手遅れだっての、今更」
「同じことだ、アレだってな……と、おーい琴時!」
八幡等が日常を過ごす2年J組の前で佇む琴時を視界に捉え、暁法は話を打ち切って声をかけた。
杜
「あ、いたいた。兄さんに八幡も。どこ行ってたのよもう」
「ちょっと呼び出されてな、ってかお前ほど行動が読めないやつにどこ行ってたとか言われたくねーわ。この破天荒娘」
琴時を見たことで気を張るのをやめたのか、八幡はやや粗雑に返した。
私(シスコン)を前にいい度胸をしていらっしゃるようで、ハチさんや? 暁法はそんな呟きを零しながらもぐっと堪えて静観する。
「破天荒娘って…そりゃないよはちまん。神出鬼没って意味では並ぶ人いないくせに」
……悪ノリ合戦になる前に仲裁すべきかね、これは。そう感じた事で先刻より余程精神的余裕がある事に気が付き、やはり琴時は天使という結論を打ち出した暁法は仲裁に乗り出す。
「ほれほれ、止めだハチ。イラついてんのはわかるが相手が違う。琴時も、何か用事があったんだろ?」
本来は隊長である八幡のやるべき事なのだろうが、やはり先ほどの出来事は腹に据えかねるものだったらしい。暁法とて琴時を見てようやく快方に向かった程なのだ。小町成分の足りていない八幡のSAN値は推して知るべしというものだろう。
埒を明けようと、暁法はひとまず先を促すことにした。
「そうだったそうだった。さっき小町ちゃんから電話があって、嵐山隊が急遽出なくちゃいけなくなったから本日夜間担当を比企谷隊にお願い出来ないか、だって。」
「……毎度の事ながら、大変なんだなぁ……」 と、八幡も毒気を抜かれた様子でぽつりと呟いている。
「まぁ嵐山隊には今度いいとこの最中でも差し入れるとして、……肝心の防衛任務はどうする?」
「…流石にやってあげよう?」
「マジで社畜とかなりたくねぇな…」
意見は一致、という事でいいのだろう。
「よし、んじゃあ今日は空からってことで」
全員の意思を確認した暁法が、柏手のように手をパンと鳴らす。当人としては、コレでおしまい、としたかったのだろうが…
「……兄さん、何か嫌なことでもあったの?」
そうは琴時が卸さない。心配そうな眼差しが暁法の顔を覗き込んでいた。
「お、おう…何故にバレテーラ」
「そんな時には高い所、って言うより無理矢理にでも人の邪魔が入らない所に行きたがるでしょ? バレない方がどうかしてるって……そんなに嫌なことがあったらちゃんと言いなさいよ。今日は二人が上でいいから、さ?」
琴時によるリフレッシュ効果は凄まじいものだった。が、どうやら想像以上に苛立ちによる神経衰弱は大きかったらしい。始めはむしろ嬉々としていたはずだったのだがこのざまである。
精神が発散を求めていた。
「……ありがとな、そんじゃ甘えさせてもらう。」
「いえいえそんな、お互い様でしょ?」
「フッ、愛いやつめ」
「フフッ、愛い兄め」
まったく美しい兄妹愛だ。人類皆がこうあれば、間違っても戦争など起こるまい。
しかしこうして見つめ合っている彼等は「義」兄妹、似ようはずもない容姿である。
そんな二人を、傍から見る者は何に例えるだろうか。
詰まるところ…
「…そろそろ帰らねぇか?
…という訳だ。
「「なんかゴメン」」
「ギャグかテメェら」
――――様式美というヤツである。
「あぁ、そういえばしばらく部活に籍を置くことにした」
「はぃっ? どゆことよ!?」
「ん……まぁ色々あってな。ハチも一緒だ」
「え? 俺もなの?」
「はー……珍しい事もあるもんだね、まぁ後でまとめて聞かせてよ」
「愚痴にならんよう努力する」
「いや、あれは無理だろ」
3人は他愛もない会話を交えながら帰路についた。
◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇
とっぷりと日は暮れて、時計の針はそろそろ頂上で重なろうとしている。そんな夜更けに哨戒任務にあたる影が、三門市の星空を見上げていた。見上げる、と言っても地上からという訳では無い。
彼等の位置は、三門市内警戒区域。その上空を漂う飛行型トリオン造物の上。
琴時のトリオンを暁法が加工する事で産み出されたそれは、ボーダー唯一の航空戦力としてその実力を存分に発揮していた。
市街地でトリオン兵が滞空していれば大騒ぎだろうが、立ち入りが極度に制限される警戒区域はその性質上(トリオン体にとって暗がりが大した意味を持たないという事情を含め)夜間の明かりが極端に少なく、最低限の迷彩さえ施せばステルス性に問題は無い。また放棄地帯の意外な恩恵として、そこそこの都市部である三門市においても星が綺麗に見えるという役得がある。
一方で、ネイバーの脅威を軽視しがちな一部の好事家や、
しかし、幾ら戦力を整えて準備万端待ち構えようと、ネイバーとは気まぐれなものであり、来る時は呆れるほど沸くし、来ない時にはとことん来ない。
つまり何が言いたいかと言うと、防衛任務にも暇な時はあるものなのだ。
「綺麗だが……暇だな……」
そう零す声の主と、暢気に歌を歌っている人影がいた。暁法と八幡のふたり組である。
昼の一件で蓄積したやるせなさを発散させる為、だだっ広い空の上からお仕事中という訳だ。
「Oh, I feel my soul burn again〜♪」
「オイ、ちょっと待て。翔べよそこは。輝ける日はどうした」
知っていた筈の歌が気付けば炎上していて、柄にもなく八幡はマトモに突っ込んだ。
著作権のセーフラインは見つけるのが難しいよね。
「あれ?ハチこの曲知ってたっけ」
「お前結構な頻度でそれ歌うからな。あれだけ聞けば覚えもするっての」
「ほほう?いいぞぉ、順調に染まってきたねぇ」
「別に嫌いじゃねぇからな、むしろ好きな方だ。歌詞がちょくちょく暗いところとか特に
「ジジッ……バチン!!」
「……お出ましか?」
空間の軋むような、歪な和音。最早聞き飽きた異音の正体にアタリをつけながら周囲を観測していると、僅かなノイズと共に内線が開かれる。
「アーアー、テステス……んんっ、おにぃちゃーん、のりさーん。閑話休題だよ~。敵襲だぞ〜。座標誘導誤差、1.78! 現時点でバムスター4体モールモッド11体確認
「ああ」
「了解」
散発的な襲撃もあといくつか落ち着きを見せ、その頃には夜も明けるだろう。少し退屈を覚えながら、ふたりは躊躇なく飛び降りた。
という訳で、この話が一番短くなりました。
三段構成としてみれば案外まともかも知れません。文量のバランスだけ見ればですが。
というか、実践の描写がこれだけなのにしれっと馬鹿みたいな事書いてあるんですよね。
嫌われても仕方ないと思います。これからしばらくだんまりですし。
それでもそれを明かすタイミングも考えておりますのでご安心を。
それではまた次回で。