イデア9942 彼は如何にして命を語るか 作:M002
→はい
いいえ
再生します (ノイズ音)
あー、あー、マイクテスト。
ログを確認
音声認識システムに異常はなし。
使用素材を確認
アンドロイドが再現した近辺のカラオケ廃墟より拝借したマイク
写真屋のレフ板
その他廃材 以下変更時は記さない
テスト記録終了
グループA
音声記録その1 記録開始
この世界のこの体になってから2ヶ月が経過した
自己改造の結果 分野を問わず機械生命体の学習機能は高度なものと判明
ネットワークにつながっていた頃のデータを閲覧できた
機械工学 プログラミング 手始めに始めた分野を網羅
習得期間は僅か1日と経たずに全記録の再現が可能
実践での不備ナシを確認
機械生命体の体を動かす際 生身の頃の癖が激しい
特に関節部位のパーツがすぐにスレて使い物にならなくなる
動作の改善か パーツそのものの開発を目指す事にしようか
記録中断
グループA
音声記録その3 記録開始
自己改造の方面をシステム分野に変更
ボディ自体は駆動系の最大効率化に留める
他、ネットワーク内の機械生命体より攻撃を受けた
苦戦の末撃破 パーツはハッキングして観察 論理ウィルスを確認 破棄
未来の時間軸ではあるが、「塔」の件よりウィルス汚染の恐れあり
素材単位に分解 再構成したところ
ウィルス他プログラム自体の抹消を確認 仮称洗浄と呼ぶことにする
今後の工作活動は全パーツの分解と洗浄を行うこと
周囲の機械生命体に知性らしきものは見受けられない
フェイント 誘導に簡単に引っかかる 撃破は容易い
使用している斧の刃が潰れた
以前より鈍器として扱ったほうが攻撃力が高かった
研磨はせず 以降も鈍器としての使用を想定し修繕する
記録中断
グループA
音声記録その8 開始
今回は
まて11B これは遊んでいるわけではない
音声記録なんてつけてたの 一緒に記録に残れるなんて素敵だよね
ざ ざ ざざざ
そこはボリュームだ(ガラスが揺れるほどの大ボリュームが流れる)
え まってまって(急速に音量が萎んでいき聞こえなくなる)
―――よくわからない物音が2時間続く―――
い、11Bのスリープモード移行を確認
あいつ本来の性格はあんなにお転婆なんだろうか
歪めてしまったような気もするが まぁいいだろう
11Bには真実をしばらくの間隠すことにする
此処のところ好意的な接触回数が増えてきているが 依存傾向が見受けられる
経過観察を実施したいが パスカルとの接触が控えている
パスカルたちとの会話後 変化があればいいんだが
残っている人としての感性がそろそろ目に毒だと訴えている
服を用意するようパスカルに依頼する 二つ返事で承諾された
レーザー通信後の含み笑いが気になるが
記録中断
グループE シェパード・モニュメント式暗号化
記憶を写し取り、年表としてデータを抽出した。
あの世界に居た時プレイしたはじめの作戦。
第243次降下作戦が間もなく行われる。
余計なことをしてしまえば、機械生命体が全てを飲み尽くすかもしれない
だが何をしていなくても、ヨルハ計画は進んでしまう。
無為に散らされる命。宇宙の鉄くずとなるヨルハ機体
眺められるものなら、その失われるはずだった命が謳歌する姿を……
この記憶回路に焼き付けたい。たとえ容量不足で動けなくなろうとも。
たったひとつだけ抱いたこの決意を忘れず、あくまでも
この体を製造した炉心の名を借りて進もう
イデア9942。それが名前らしい。
なら
わたし はイデア9942ではない。だがイデア9942として生きよう。
機械生命体は、生命体だ。言葉遊びだとしても、誰も鉄くずだとは言わない。
アンドロイドも、動物も、機械生命体も、植物も、エイリアンも。
命を輝かせるこの世界で、イデアを抱いて生きるための名前。
願わくば 抱いた決意によって理想が成就されんことを
死んだら鉄くずにはなりたくない わたし は骸になりたい。
数ある命を奪いながら この矛盾を抱えて生きていこう
生きるとはそういうことらしい 難しいな
音声中断
ERROR 音声が記録されています
しまった 久しぶりに聞いていたら録音になってしまったか
11Bめ、大分苦労をかけてくれる まぁそれもいいか
しかしなんだ ヨルハ部隊として作られたとは言え、美しいな
お前も運命にあらがった
音声中断
グループA音声記録終了
再生グループBが指定されています 続きを再生しますか?
はい
→いいえ
音声再生用解読プログラムを終了
再度データの暗号化を開始します