イデア9942 彼は如何にして命を語るか   作:M002

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9/22 三話目の投稿です

あれだ 色々と無茶苦茶だけどあれだ
うん アレなんですよ ほんとにアレでして

どう説明したらいいかわからないけど一つ言わせてください


ニーアオートマタという神作品を引っ掻き回してごめんなさい

※わあああああ 手違いで投稿順番ミスったあああああああ
 すみません わああああああ

19:38追記 書き置き一挙公開(´・ω・`)マジコウカイ


文書21.document

 ポート作成。

 アクセス履歴分解削除。

 自我データ確認。

 イデア9942個体名仮登録。

 ネットワーク接続。

 攻勢防壁解除。

 自我データ確認。

 防壁自動解除プログラム起動確認。

 

「……ここか」

 

 簡略化された世界、入り組んだ通路のような、機械生命体たちの自我そのもの。どこまでも遠く響く声。一歩踏み出した(データを入力)側から、流れ出されそうになる自我。

 

 ここが、機械生命体たちのネットワーク。

 そこで、少年の形をしたデータが走っている姿が見える。彼は、幾つかの残存データに触れているようだった。

 

「見つけた。形状放棄、溶け込む……がああああああああ!」

 

 今まで、絶対に無かった事態が引き起こされる。イデア9942が苦しみのあまり声を出すという、この世界で見たことのなかった光景が。自我を確立しなければ行けない状態での、自分という形状を放棄したことで、更なる侵食が始まったのだ。

 この時のために進化させてきた演算機能だった。だが、それもこの奔流の中ではギリギリ対抗できるという程度。このような状況下で形をなくした彼のせいでもあるのだが、必要なことだ。ここから固定された形状を持ってポートを走っては、9Sに追いつけない。

 

 金色の繊維のように変化したイデア9942の自我が、声というデータの漏洩すらさせないため絶叫を押し殺す。彼の全演算機能と、機材の演算補助をフル稼働させてこの深海とでも言うべき圧力の中を駆け巡る。

 

 アダム、そして9S。

 二人の影に、ようやく追いついた。

 

 アダムが放つ言葉は9Sの欲望や、押さえ込んできた感情を爆発させようとしている。ネットワーク上では精神だけがある状態。剥き出しの魂に掛けられた言葉が、9Sの理性や心を追い詰めていく。

 アダムが何を望んでいるのか、それはイデア9942にも理解できない。だが、ここで打ち込まれた言葉が9Sの未来をより侵食していくことは確かだった。

 

「そうだな、違いはある。誰にでも」

「誰だ……なんだ、お前は?」

 

 その形を思い出す。

 まず、マフラーが作られた。その次に彼の体が。

 どこにでもいる中型二足の姿だ。

 最後に帽子が手に生成される。

 

 手に持った帽子をゆっくりとかぶり、その下から視線を投げかける。

 

「はじめまして、だな。アダム」

「イデア……9942……」

 

 9Sの呻くような声。

 その顔には「どうしてここに」という言葉が書かれている。

 

 だが、彼は助けに来たはずの9Sをあえて無視して、アダムに向き直った。

 

「貴様はなんだ? ネットワーク上の個体ではないらしいが」

「そうだな、自覚している。それにしても憎悪か、君の依存する対象を力説するのはいいが、考えの押しつけは人間相手では嫌われるぞ」

「は、知ったような口を」

 

 途端、イデア9942にかかる圧力が増す。

 現在ネットワークの権限を握っているのはアダムとイブ。二分しているとはいえ、世界にどれだけの機械生命体がいるのだろうか。それら全てを統括し、かつこうしたネットワークを存続させるだけのサーバー代わりの機材もあるはず。

 海が降り注いでくる、という表現が合っているだろうか。ギシリ、と。自分の体ではない、意識のどこからか聞こえてきた嫌な音に、流せるはずもない冷や汗の感触をイデア9942は思い出した。

 

「なるほど、こういう感覚か」

「貴様……!?」

 

 しかし、それも一瞬のことだ。

 彼は襲い掛かってきた他の個体の自我を分析し、あろうことか自分の演算補助のために乗っ取ったのである。現実世界では、どこかの機械生命体が行動不能に陥り、イデア9942の演算補助のため、起動している以外の機能を完全に停止させている。

 

「人間に憧れ、人間を模倣し、人間を分解し、知識を得る。そして理解していく…なるほど、憎悪は確かに人間たちの中でも強い感情で、歴史を動かしたこともあるほどだ。憧れ、依存する対象にしてしまうのは悪くはない」

「…なぜかは知らないが、貴様のようなヤツが知ったような口を」

「だが、人間の抱える欲望が憎悪一色だと? 馬鹿馬鹿しい、多様性に欠ける。それに人間はそこまで美しいわけじャないぞ。覚えておけ」

「何…?」

 

 ようやく、イデア9942は9Sを助け起こした。

 精神攻撃もあるが、この膨大なネットワークで、招かれたとは言え単身で入らされた9Sはそうとうに憔悴しているらしい。

 

「9S、憎悪が悪いとは言わないんだ。醜いなんて以ての外。人類が定めた、大勢の価値に流されるな、所詮人類なんて間違いと惰性で生きている奴らばかり」

 

 イデア9942は知っている。

 技術に溺れ、機械を使い、日々なにを生産するでもなく暮らす人々を。

 何かを成し遂げるだけの知能も、技術も持たずにただ学ぶ年頃を。

 そのような機会すら与えられず、単なる命を繋ぐ動物のように生きる者を。

 ありとあらゆる他人から奪うだけ奪い、消費するだけの犯罪者や欲望の権化を。

 

 世の中を特に何も考えず、与えられた仕事をこなすだけだった惰性的な人間を。

 

「歴史に名を残す偉人ばかりが記録に残るが、そんなものは人類の0.0001%にも満たない。むしろ、名も無き大勢はこう考えている。感情とか理屈なんてどうでもいい。自分で考えるだけなら誰にも迷惑なんてかからない。深く考えなくていい、ただ、取り繕う顔を用意できるだけ上等だと」

「何を言う…人類がそんな、アンドロイドのような愚物であるはずが」

 

 イデア9942の言葉は、人類というものが作り出した知識に憧れを寄せるアダムにとって、到底見逃せる発言ではなかった。だが、それは人間そのもののようであるとも言える。その実態を知らない相手に対し、過剰なまでに理想を持ち、理想と違えば文句を言う。

 人間なんて皆、そんなやつばかりなのだから。

 

「夢を見すぎだ、世の中を知らないガキめ」

 

 だから、この一言を吐き捨てる。

 目を見開き、絶句するアダムを尻目に9Sへと語り続ける。

 

「何もかもを否定しつづければ、そのままどうしようもないクズに成り果てる。君があくまで人のような意志を持ち続けるなら、自分の気持ちに素直になることから始めろ」

 

 それは、アダムの言葉と同じだった。

 だが、続く言葉は違う。

 

「折り合いを付けて、相手と悪いところを、許しあうんだ。そして自分に正直になれるパートナーだけに、多くをさらけ出せばいい。もし内面を知られるのが怖ければ、それはそれでいいんだ。整理できた気持ちから、一つ一つ打ち明けていけば……その相手が2Bだというのなら、彼女はきっと分かってくれる」

「2B…が?」

 

 9Sは考える。

 ずっと、感情をひた隠しにしていた。

 消えてなくならないこの醜いであろう感情を、打ち明けてもいいのだろうか。そうしてしまっても、2Bの側にいても、いいのだろうか。

 

 9Sの目が全てを語っていた。

 イデア9942に感情を表現するだけの顔はない。それでも、彼は告げる。その声色は9Sを肯定するように、優しいパスカルのそれを思い起こさせるように。

 

「ああ、少しずつ、少しずつでいいんだ。君たちはきっと、ヨルハという重苦しい兵士の肩書から開放される時が来る。その時まで大事に持ち続けていてもいいんだ。君自身の、大切な気持ちなんだから」

「僕の、大切な気持ち……そうだ、僕は2Bを」

 

 「  」したい。「こ 」したい「あ 」したい

 二つの感情が、9Sの中でせめぎ合う。

 

「君が大事に抱えるソレを、決して失うな。そして選びとれ。君が否定した方の感情を告げて、許し合えることが出来たなら、それは素晴らしいことだろうから」

 

 9Sの体が粒子となって飛んでいく。

 ボディに意識が引き戻されている前兆だった。

 

「くっ、待て!」

「そうはいかん」

 

 アダムは、その目論見が叶わなかった事に焦り手を伸ばすが、その手がイデア9942の持ち出したデータの斧によって弾かれた。

 

「がっ! キッサマァ……!」

「アダム!」

 

 ここは現実ではない。データを制す者こそが強い世界。

 イデア9942が機械生命体のネットワークの一部を掌握していく。アダムの繰り出す攻撃に使われた分だけ、リソースが彼の支配下に置かれていく。その傍ら、9Sの意識は完全にボディへと帰還を果たしていた。

 

「お前も……いや」

 

 開きかけた口を閉じ、彼は帽子を片手で抑えかぶりをふった。

 

「何を!」

 

 あまりにも、この機械生命体らしきモノは危険すぎる。

 本能から染み出した脅威と恐怖に駆られ、焦ったアダムは腕を伸ばしてイデア9942を捕らえようとする。だが、それを難なくイデア9942が掴み取って締め上げた。腕から、アダムに痛みが走る。痛みとともに刻みつけるように、イデア9942が言葉を続けた。

 

「よく聞け、アダム。憎悪なんかに拘らず、人類なんかに拘らず、世界に目を向けろ」

「貴様に、人類の残した知識の価値が……何が分かるというのだ!」

 

 掴まれた腕を弾き、鋭い蹴撃を繰り出すアダム。

 左腕でいなし、身をかがめたイデア9942が裏拳で彼の顔面を打ち据えた。

 

「分かるさ、滅んだ種程度の残留データなんかに何の価値も無いということがな」

「私のこれまでの行為が……無駄だというのか!?」

「いいや、全てが無駄じャないさ。君たちが真の進化を目指すならば、そこからほんの一部、優れた部分だけを抜き出せばよかッたんだからな」

 

 そう、イデア9942が否定したいのはこのネットワークの中に存在する、あの情報のことだった。

 

「データも見させてもらッた。何の改善もせず繰り返している失敗、か。君たちのほうが優れているというのに、何故人間なんぞの悪い部分にまで拘り再現するのか……この()には理解できんな」

「優れて…いる?」

 

 顔を抑え、アダムが呟く。

 そうだ、とイデア9942が彼を肯定する。

 

「その意味は自分で考えてみろ。そして、その優れた命をどうするか……そこは君自身に任せる。この場でその命は奪わんよ」

 

 イデア9942は空を切る動作をする。

 ネットワークの一部を掌握したため、彼は侵入したときよりもずっと簡単にネットワークから切り離されていく。データの漏洩履歴は無かった。まさに、証拠を遺さない完全犯罪。残されたのは、彼の不可思議な言動を正面から受けたアダムだけ。

 

「イデア9942……」

 

 彼が生まれてから依存する感情に傷をつけた者の名前。

 顔を歪め、イデア9942への憎悪を募らせるアダム。しかし、その傷を埋めるように呟かれた名前もまた、彼のものだった。アダムはしばらく立ち尽くした後、ネットワークに潜行させていた自我を浮上させる。

 機械生命体のネットワーク内に、再びの静寂が訪れた。

 

 

 

「パスカル」

「ああ、イデア9942さん! よかった、自我データを表すグラフが急速に形を変えていましたから、貴方にもしものことがあったのかと……本当に、無事でよかった」

「心配をかけたな。だが、全てが終わった。こちらも、もうあんな場所は懲り懲りだ」

 

 ひどく疲れたように、イデア9942が帰還する。

 帽子で顔を覆い隠して、ひと仕事を終えたと言わんばかりに息を吐き出す音を出した。

 

「また、何か隠していますね?」

「……気のせいではないか?」

「イデア9942さんが何か隠していたり、考えていたりする時、帽子をいじる癖がありますよ」

「なんだッて」

 

 思わず帽子から手を離し、それを見つめるイデア9942。

 

「そうか……」

 

 もう、話しても良いのかもしれない。

 イデア9942はそんなことを思いながら、パスカルとその場で別れるのであった。

 

 




イデア9942とかいう機械生命体マジでバケモンじゃん、ていうか元人類なのに人間否定しすぎでしょう……

矛盾だらけの主人公ですがよろしく見てあげてください
21:55※あとがきの余計な作者の感想を一部消去し、感想欄との乖離をなくすため文章を修正。以前は見苦しくてすみませんでした


と、作者自身も訳わからんくなってきました
イデア9942の主張ブレッブレで草生えて論理ウィルス増える
あと作者はオリ主否定してません
勝手に動き回るから文句言ってるだけです

でもこのカオスから次続けるってマジでどうなるんだろ
ちょっと楽しみ

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