深海棲艦・艦娘・大本営   作:ヤップ

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外交極秘文書 「宇宙開発技術の軍事転用に係る決定」


第三話 旅の途中で

「良くなった。前よりも可愛くなったよ! 」

 それぞれの艦娘を代表達は褒める。艦娘はツンとしながらも頬を紅く染めている子や、素直に喜んでいたり、なかには「ご主人様!! ありがとうナス!! 」と言って飛びついている艦娘もいた。

 吹雪さんというと、濃紺のチェック柄のスカートではあったが、膝まで生地が隠しているため、落ち着いた雰囲気となり、単純に「司令官、新しいスカートありがとうございます!! 」と言って笑顔を見せてくれるのは、財布の衝撃を受けた心に癒しをもたらしたのであった。

 

……そんなような買い物の楽しい時間もすぐに過ぎて、次の別れを迎えることになる。

 東北方面とそのほかの方面で分かれる事になるからだ。千葉方面に行く秋葉少尉は漣さんを連れて、東京方面に向かう田中中尉は、五月雨さんを連れて向かう事になる。艦娘は両者とも顔をぐしゃぐしゃにして、それを見つめる代表は、保護者のように彼女らの手を握っていた。こちらも電さんが泣いていたが、吹雪さんと叢雲さんはじっと堪えているようである。

 列車がきて我々6人は乗車し、一路青森まで目指すことになる。発車する頃にはついに叢雲さんも吹雪さんも泣き出し、ホームにいる二人に思いっきり手を振った。

 

 列車が走った後は涙を堪えつつ、3人とも駅弁を掻き込む。日も傾き仙台に着く頃には3人とも泣きつかれて寝ていた。佐藤少尉が小さく敬礼すると、電さんを抱えて降りて行く姿を見送った。

 

 残りの青森に着くまで着く時間、二人が寝ている間に、竹林中尉と少し話をすることにした。

 

「竹林中尉……大本営は一体何を考えているんだと思う? 」

 

「何をとは?」

 竹林中尉は、返事を返した

 

「ふんっ……とぼけるなよ。あのいけ好かない案内人に盾突いたんだろ? だから君もこんな遠くに飛ばされた。違うかい?」

 10人の代表者の内、遠方に飛ばされたのは私と竹林中尉だけだった……。

 

 

「あんたも、やったのか?」

すると、竹林が驚いたようにしてこちらを見た。……ビンゴである。

 

 

「ああ、あんなトンデモ設定……受け入れられるはずがない。」

 スヤスヤと寝息をたてているこの子たちを見て、駆逐艦だと言わせるには流石に無理があると思った。

 

「佐藤少尉は、気付いていたんだろうか? 」

竹林中尉が呟く。

 

「おそらくな。奴はあんな感じだが、かなりのキレ者だろ。だから仙台止まりなんだ。」

 奴が昨日食堂で見せた顔・発言。キレ者だという状況証拠は揃っている。

 

「そういえば、あんたは何処まで行くんだ?北海道とは言ってたけど……」

 

「日本海側の留萌までいく。稚内と小樽の真ん中ぐらいにあるところらしい。」

 

はぁ~!と竹林は私が行くところに馳せて感心した。

「随分遠いところまで行くんだな~。でもそれじゃ左遷みたいなもんじゃないか? 」

 

「本当さ! 」

私はそう言って笑って誤魔化す。しかし直ぐに真顔に戻る。

 

「……正直、自分には就任式が行われる前から、大本営に睨まれることがあったんじゃないかと思っている。 」

 

「ふ~ん。それは何が? 」

 

「現状は言えないな。自分でも確信がないから……でも……どうもね。吹雪さんは従妹にそっくりだなぁと思ってさ。 」

 

「…………」

竹林は沈黙している。

そういえばこいつは何をいったのか話していないぞ?

「君こそ何言ったんだよ。」

 

「俺か?俺はなぁ……艦娘が何であるのかを疑って、そのことを聞いたのさ。」

 

「……それはフェイクだな。」

 

「なんでそう思う?」

 

「そんなことを言ったら、君は樺太よりも北に行くと思うぞ。」

私がニサニサと笑いながら言うと竹林の奴もニサニサ笑った。やっぱり嘘だな。

 

「ああそうだ。実際言ったのは、叢雲がアルビノに見えるから、海での任務で紫外線とか大丈夫なのかと尋ねただけだよ。それだけで青森さ。」

 

「……大本営は何か疑問に思っただけで、遠隔地に飛ばすのか?」

 

「そういうことだろ。あんたも思っている通りこの艦娘って言うのには、何か重大な秘密があるに違いない。だけどそれを大本営は隠さなければいけないんだろ。だがな。それが大きな問題だとして、人間に損失があるもんじゃなければ、別に詮索する必要もないんじゃないかと俺は思っている。自分の為……この子達のためにもな。」

 

 

 竹林は私に大本営の秘密を探るなと提案するかのように答えた。……それは竹林の保身か?それとも何か知っているのかわからないが、私は何故かどうしても聞きたかった。

 

「竹林中尉、もしかして君は……「待て、起きる。」」

竹林は私が言いだそうとしていた言葉を止めさせる。

 

……叢雲さんが起きそうになっていたからだ。

この問答は一旦お開きになった。

 

「……あれ?ここは何処なの?雷は……?」

叢雲が眼をこすって、我々に問う。

 

「おはよう!雷は仙台で降りた。もう青森に着くぞ。」

竹林が答えると、叢雲は窓を見る。

 

「えっ!? ということは仙台を過ぎた?もう青森に着くの!? ちょっと吹雪!起きなさいよ!! 」

まだ眠っている吹雪さんを叢雲さんは起こす。

 それを見てニタニタ笑っている竹林は、降車のアナウンスを聞くと「おっ!!もう青森に着くみたいだぞ!! 」と言って叢雲を焦らせた。

 

 

 海峡を繋ぐトンネルは破壊されており、明日の連絡船に乗るため新青森駅を出ると、風景は悲惨なものだった。もう暗がりではあったが薄く見える建物の影は痛々しく、沿岸からの砲撃で破壊されたものであることは容易にわかった。まるで東京解放時の東京のように、教科書の写真で見たような人が幾万も生活できる都市としての姿はなくなっていた。

 だが深海棲艦の脅威も減った今、日本の復興は始まっている。

 そのような意味で青森は、本州と北海道を結ぶ重要拠点となり、かつての栄光を取り戻そうとするが如く、街に光が灯り始めていた。

 そんな復興の中心である街の中心部に行くと、青森臨時鎮守府がある。今日はここで一泊し、翌日、それぞれの行先へ分かれる事になる。

 

 

 鎮守府に入ると、代表が高島尚典大佐が直々に出迎えをしてきた。

「遠いところご苦労さん! 疲れたでしょうから今日はこの鎮守府でゆっくりしていきなさい!! 」と歓待を受けた。

 

「お気遣い感謝します!! 」と敬礼をすると、高島大佐は大笑いし、

 

「ここは繁華街に近いし、破壊が少ない街ビルを借りて鎮守府にしているから、ご近所の付き合いもしっかりしなくてはいけなくてさ~。私みたいに愛想良くないとやっていけないんだよ~。君らも、鎮守府代表になるわけなんだから、そこらへんとこしっかりしとかないと、隊舎生活みたいにはいかないよ!! 」と言った。随分娑婆気がある大佐である。

 

「…………」

 竹林はそのことを聞いて苦笑いをしていた。まだ二日ぐらいの付き合いだが、高島大佐の娑婆気ある雰囲気や指摘された近所との付き合いが嫌いなのだろう。

 

 高島はそんな苦笑いしている竹林を一瞥し、今度は艦娘を見ると何やら目を丸くしたが、直ぐに笑顔を作り言った。

「そういえば……大本営から彼女達の艤装が届いているよ。食事の後、部屋に行き確認するといい!! 」

 

 

 大佐と私達は食事を共にした後、各自二人部屋が二つ提供された。各部屋に一つずつ艤装が置かれていたので、どうも所属の艦娘と寝ろという事らしい。

 吹雪さんが叢雲さんと一緒なのは最後なんだから、一緒に寝てもいいと思うのだが、吹雪さんは私と一緒に寝ると言ってガンとして譲らなかった。

 どうしようか思っていると高島大佐の秘書から、大佐が私と竹林を呼んでいると呼び出しをされた。

 

 一体何なのかと思って、竹林と共に執務室まで行くと……

 

「いやぁ~すまないね! これに付き合ってくれないか? 」

と、大佐はボトルと二対のグラスを持って、私達に酒をすすめるのだった……。

 

 談笑の始めは本当に他愛もない話だったが、互いの心情を探るうちに、大佐の方から本題を始めだした。

 

「……私はここに来て一年なんだがね。やはり君達も何処かの戦場で艦娘を見たくちなんだろう? 」

 

……大佐も見たくちなのか。 

「……そう、ですね。私は東京開放作戦のときに……」

「同じです。」

 

「なるほど。どのような艦娘を君たちは見た?」

 

「私は、巨大な大砲を持った女性を見ました。」

「自分は制圧した地下路線を防衛している時に、列車で運ばれていく艦娘達を見ました。 」

 

 列車に乗っていたのが艦娘か解らなかったため、あえて言わなかったのだが、竹林がそれを言ったのを聞き「それは、私も見ました。」というと、大佐は一瞬思考を巡らし語り始めた。

 

「なるほど、おそらく君たちが鎮守府代表になったのは、その列車を見たからかもしれない……。私もね、同じように集団でいた艦娘を見たことがあるのさ。その時私が見たのはね。背格好から何からすべて同一の艦娘だった。

 ……そして今日、私は驚いたんだけどね。その時見た艦娘が大石中尉の艦娘とそっくりだったんだよ……。」

 

大佐の話に私は驚愕した。

 

 

 

 

 

 

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