臆病な兄と奇天烈集団   作:椿姫

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テスト期間なのに投稿する人です。




第11話 芽生える想い

イヴside

 

 

「イヴ…ど、どうしたのいったい!?」

 

お母さんが部屋のドアを開けてワタシを見て開口一番声を上げた。今のワタシは目の下に濃い隈、ボサボサになってしまった髪、そして涙を流していたのだから。

 

「う…うぅっ…今は1人にしてください…」

「え?え、えぇ…それはそうと学校はどうするの?」

「………休みます」

 

そう言ってワタシは部屋のドアを閉めた。そして毛布にくるまる。

 

「…リンネイさん…ミサキさん…チサトさん…アヤさん…誰か、誰か助けて……」

 

涙を流しながら呟くワタシの枯れそうなその声は今は誰にも届かなかった。

 

 

千聖side

 

〜花咲川学園〜

 

「千聖ちゃん…イヴちゃんに電話繋がった?」

「いえ、全然繋がらないわ……彩ちゃんは?」

「わ、私も繋がらないよ…イヴちゃんに何かあったのかなぁ…」

「そうとしか思えないわね…いつもならLI●Eにもすぐに反応をするのに…」

「とりあえず何か分かったら教えてね?」

 

彩ちゃんはそう言って自分の教室に戻っていった。それと同時に奥沢くんが教室に入ってくる。そう言えば奥沢くんはイヴちゃんといる時がたまにあるわね?後でイヴちゃんの事何か知らないか聞いてみようかしら…

 

 

廻寧side

 

〜放課後〜

 

 

学校に来る途中北沢から聞いた話だと『イヴちんが連絡もないよ!クラスのみんなも心配してたんだ!廻くん先輩は何か聞いてない!?』との事だった。北沢とイヴが同じクラスだって事は聞いたし昨日は美咲からも情報は聞けた。こころの方に頼んでいたアレはちゃんと出来てるとの事だ。イヴには電話をかけてるけど繋がらないってことは携帯を手放しているってことだろうな…

 

「廻寧くん」

 

声を掛けられて振り返ると松原がいた。

 

「どうした松原」

「なにか考え事してたから…どうかしたの?」

 

俺は松原に事情を説明する。

 

「……って言うわけなんだ、なんか知らないか?」

「そう言われても…あ、そう言えば」

「どうした?」

「昨日千聖ちゃんとカフェに行った時なんだけどね…男の人が離れた席で携帯を見ながらニヤニヤしているの見かけたんだ…」

「それって何時頃だ?」

「えぇっと……16時頃だったよ?」

「服装とかは覚えてるか?」

「ほとんど黒い服だった気がする…ごめんね情報が曖昧で」

「いや、松原と白鷺の目撃証言もあるから助かる、サンキューな」

「お役に立てたなら…こ、光栄かな?」

「あ、お兄ちゃん、それに花音さんも」

 

松原と話していると美咲が教室に入ってきた。

 

「美咲、そっちの方はどうだ?」

「お兄ちゃんに言われた通り、うちの学校のパスパレファンクラブ名簿表貰ってきたよ」

 

そう言って美咲は俺にファイルを渡してくる。そして俺はイヴ推しのメンバーを全員確認した。

 

「さて…犯人探しはもうすぐおわるぜ?」

『ほ、ほんとっ!?』

「本当じゃなかったら言わねえよ」

 

美咲と松原が声を揃える。俺は自分の荷物を纏めて教室を出ようとする。

 

「その話本当なの?もし良ければ私達にも聞かせてくれるかしら?」

 

廊下に出ると声がしたので振り向くと白鷺とピンク色の髪の女子がいた。それを見て松原は反応する。

 

「千聖ちゃん…それに彩ちゃんも…」

「私達もイヴちゃんと同じパスパレのメンバーとして放って置くなんてできないわ」

「も、もし良かったら…私も一緒に行っていい?」

「どうするお兄ち…に、兄さん?」

 

美咲が俺に聞いてくる。俺は「勝手にしろ」と一言だけ言ってそっぽを向いた。

 

「じゃあイヴの家に行くか…そろそろストーカーが何かしら動くぜ?」

 

 

???side

 

 

今日はイヴちゃん学校に来てなかったなぁ…きっと僕の手紙を読んで恥ずかしくなったんだよね?照れ屋さんなんだね?

 

「ぐへへへへへへ…早く家から出てこないかなぁ〜写真を撮ったあとは今日はこの手紙をポストに入れるんだァ〜うぇへっへっへっへっへっへへへへへへへっゲホゴホ」

 

やべぇ、笑いすぎて咳き込んじまった。電柱の影に隠れながらイヴちゃんが出てくるのを待つ。周りを見渡し誰も居ないことを確認する。この時間帯は人がいないことは一週間も前から張り込んでリサーチ済みだ。そう思ってるとイヴちゃんのお母さんが家から出てきた。

 

「イヴ、お母さんちょっと買い物行ってくるから留守番しててね?」

「は、はい…」

 

(イヴちゃんのお母さんが家から出て来たってことは今はイヴちゃん1人!ハァハァ…い、イヴちゃん…今行くからねぇ…私服のイヴちゃん可愛いよぉ…僕だけのものにしたいなぁ…)

 

イヴちゃんがドアを閉めたのを確認する。そしてイヴちゃんのお母さんが車で走っていったのを目で確認すさした。…………このシチュエーションをどれだけ待ちわびたことか!モデルとして活動していた頃からの大ファンの僕が遂に!遂にぃぃ!!イヴちゃんと、イヴちゃんと…うへ、うへへ、うはははははははははは!!

 

「今はあの男もいないし邪魔する輩は誰もいない!おっと…あまり声あげるとバレちまう」

 

改めて誰もいないことを確認して僕はイヴちゃんの家のポストに手紙を入れてチャイムを鳴らす。そしてイヴちゃんが出てくるのを待つ。そして玄関のドアが開いた。僕は思い切りイヴちゃんに抱きつこうとする……

 

 

 

 

 

 

「引っ掛かりましたね、こころ様と廻寧様の言った通りでした」

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

僕はいきなり蹴りをくらってその場に思いっきり倒れ込む。何が何だかわけも分からず見るとそこにはイヴちゃんともう1人、白髪で身長がイヴちゃんと代わりないそっくりな人がいた。

 

「ど、どうなってんの?」

 

悪化に取られていると庭から人が出てきた。昨日の男もいるしパスパレの千聖ちゃんと彩ちゃんもいたし他にも何人かいた。

 

 

廻寧side

 

 

「ど、どういう事だよ!?」

 

ストーカーは俺たちの方を見て叫んだ。

 

「そんなに聞きたきゃ教えてやるよ」

 

俺はそいつに説明を始めた。

 

「まずお前がこの時間帯に来ることを予測する。そしてこころに頼んで『イヴと殆ど身長が代わりない黒服の人を1人、イヴに変装させて家に置いておく』事をした。勿論イヴには許可は貰っている、更にはお前のことを目撃しているやつがいた。同じクラスの松原と白鷺だ。昨日の16時頃カフェにいたらしいじゃねーか。携帯みてニヤニヤしてたってなぁ?大方イヴの隠し撮り写真だろ?」

「そ、それは…」

 

その言葉で男は後ずさる。

 

「それと…お前が隠れていた電柱の隣のカーブミラーを見てみろよ?」

 

俺がそう言うと男はカーブミラーを見る。そこには俺がイヴから許可を貰いこころに頼んだ監視カメラが仕掛けられていた。

 

「お前は昨日も手紙をポストに入れたみたいじゃねーか?その時からお前の行動の全部は撮らさってるんだ」

「う、嘘だろ……」

 

俺は手紙を取り出して男に見せる。

 

「か、返せ!お前が見ていいもんじゃない!」

 

手紙を取り返そうとして俺の方に来たが俺は躊躇いなく男の前で手紙を破り捨てた。

 

「あ…あぁ…ぼ、僕のイヴちゃんへの手紙がぁ…」

 

項垂れる男の胸ぐらを掴み低い声で言い放つ。

 

「お前のその執拗に追いかけ回す行為がイヴの迷惑になっているのが分からないのか?お前がイヴの事を好きだと言うことはこの手紙から読み取れる。けどお前がやっている事は立派な犯罪だ…」

 

そう言うと男は黙り込む。反省したんだろうと誰もがそう思ったその時、

 

ズシャ

 

俺の右肩に違和感を感じた。見てみるとナイフで切られた痕があった。傷は深くはないが出血して右肩は血に染まる。痛みで俺は肩を抑えてその場に倒れ込む。

 

「があぁっ!く、クソがァ!」

「お兄ちゃん!!」

「リンネイさん!!」

「奥沢くん!!」

 

 

美咲とイヴと白鷺が叫ぶ。油断した…まさかナイフ持ってるとはなぁ…痛ってぇ。そしてその隙を見て男は美咲たちを押しのけイヴの方に走る。

 

「イヴ!逃げろっ!」

 

そう叫んだのも束の間、イヴは腕を掴まれてナイフを首元に突きつけられる。

 

「い、イヴちゃん!!」

「て、テメェら動くんじゃねぇぞ!?ちょっとでも動いたらイヴちゃんを殺して僕も死ぬ!ひっひっひ、うへへへへへへへへひゃはははぁ!!!!」

「お兄ちゃん!しっかりして!?」

「奥沢くん!」

 

白鷺と美咲が駆け寄ってくる。

 

「お、俺は大丈夫だ…」

 

そう言いながら俺は立ち上がる。右肩に力が、は、入らねぇ…

 

「テメェ……ナイフに麻痺毒塗ってやがるなぁ?」

「へっへっへ…よく分かったなぁ?」

 

神経が麻痺してるから感覚が分からねぇ、腕が取れて無いみたいな感じだ。おまけに出血もしてるし…で、でもこのままだとイヴは確実に殺されちまう、そんなことは絶対にさせない。俺は痛みをこらえながらイヴの元に向かう。

 

「よ、寄るな!お前からぶっ殺すぞ!?」

「り、リンネイさん!逃げてください!わ、ワタシは…大丈夫ですから!」

 

イヴは涙を流しながら俺に懇願する。

 

「………ぇよ」

「あ?何つったおめー?」

「そんな顔されたら…大丈夫なわけねえだろうがよ!」

 

俺は痛みを堪え一瞬で男との距離を縮める。男は一瞬怯むも俺にナイフを突きつけるが、俺は隙を伺い左腕で裏拳を顎に1発撃ち込んだ。

 

「があっ!?」

「……イヴを傷つける奴は、俺が許さない」

 

言い終わると同時に男はナイフを落とし翻り、その場に倒れ込み頭を打ってそのまま気絶した。

 

「い、イヴ…ぶ、無事でよかっ…た…」

「り、リンネイ、さん…」

「ぐうぅっ!」

 

俺はその場に倒れる。右肩の出血が止まってない。さっさと止めねぇと…そ、それ以前に体力使ったなぁ………

 

「お兄ちゃん!しっかりして!大丈夫!?」

「リンネイさん!リンネイさん!!」

「奥沢くん!」

 

美咲たちに起こされ肩を回される。

 

「……ははっ、締まりねぇなぁ俺」

「そんな事っ、無いです!リンネイさんは、ワタシの事をた、助けてくれました!感謝しきれないです…ありがとうございます!ありがとうございますっ!!」

「ぶ、無事で良かったなイヴ…そうだ黒服さん、あとの処理任せていいか?」

「廻寧様の頼みとあらば、了解致しました」

 

その後俺は家で治療してもらい何とか出血を抑えた。イヴについては丸山と松原が家に泊まるということで解決したし白鷺は事務所かなにかに今日のことを報告していた。男は勿論逮捕された。ストーカーしていた男はイヴと同じクラスの男子で花咲川パスパレファンクラブのメンバーだったとの事だ。モデル時代からの大ファンでいきすぎた行為に走ってしまったとの事だった。更には脅迫罪、殺傷まだとはいかないが怪我をさせたから中々の罪に囚われるだろう。まぁ本人の反省が見られれば罪は軽くなるかどうかは別としてだが。

 

「それじゃあお兄ちゃん、傷口開くとダメだから安静にしててね?」

 

美咲は応急箱を持って部屋から出た。

 

「……………」

 

俺はさっきの自分の言葉を思い出す。

 

『……イヴを傷つける奴は、俺が許さない』

「…なにくせぇセリフ吐いてんだよ俺、バカみてぇだな…」

 

俺は疲れがピークを迎えたのかそのまま寝てしまった。

 

 

イヴside

 

 

ストーカー被害がなくなって安心しました。アヤさんとカノンさんが泊まってくれてワタシの不安を和らげてくれたので本当に嬉しいです。

 

『イヴを傷つける奴は、俺が許さない』

「………/////」

 

あの時のリンネイさんがすごくかっこよく思いました。剣道をしていた頃からリンネイさんが気になり始めて、花咲川に編入してきて、リンネイさんといる時間がいつもよりもとても楽しく思えました。思い出す度に顔が赤面しそうになる。

 

(あの言葉を思い出すだけでこんなになっちゃいますぅ…)

 

「あんなこと言われたら…好きになっちゃますよ、リンネイさん」

 

ワタシの呟いたその言葉は誰にも聞かれることは無かったが、あまりにも恥ずかしかったので中々寝付く事が出来なかったのはここだけの話です。

 




何とか書き上げることができました。
次回はまとまり次第アップします。気軽に待ってくれると嬉しいです。
感想や評価は気軽にしてくれると嬉しいですし励みにもなります!
これからもよろしくお願いします!

ではまた次回

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