臆病な兄と奇天烈集団   作:椿姫

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今回の話を書いてて、「ハロハピ主体小説なのにイヴがヒロイン化してきそう」と言う感じになりそうです(無意識)

では、どうぞ。


第12話 精一杯のお礼を

 

事件があったあの日から数日が経った。あのストーカーが捕まった次の日にイヴとイヴの親が菓子折を持って家に来た時はマジで驚いたのもそうだが事務所の人まで来た時はもう何事だと言わんばかりだった。お礼がしたいと言ってきたが俺は、「礼が欲しくて助けたんじゃねーよ」と一言だけ言って礼は受け取らなかった。

 

そして何も無い休日の土曜日、俺は自分のPCに向かってゲームをしているとスマホが鳴り出す。誰からかと見てみればイヴからだった。

 

「もしもし?」

『り、リンネイさん。今日忙しかったりしますか?』

「んいや?俺はゲームしてるけど…」

『あ、あの、午後って時間あります?』

「俺は基本土日は暇だぞ?」

『そうですか…13時にショッピングモールの入口に来て欲しいって言ったら来てくれますか?』

 

13時にショッピングモール…今11時40分くらいか…割と近いからなんとかなるか?

 

「13時にそこにいれば良いのか?」

『あ、はい!』

「分かった、じゃあ行くからな」

 

俺はそう言って電話を切った。13時にショッピングモールか……よく考えたら休日に誰かと、しかも異性といる時間があるのって高校生になって初めてかもな俺。何せ中学時代はアレだったからな…いかんいかん。あのトラウマは克服しないといけねぇのに…外寒いだろうからちゃんと防寒しないとな。俺は財布など諸々準備を整えて家を出た。美咲はこころ達と一緒にバンドの打ち合わせ、母さんと美葉は買い物に行ってるから実質さっきまで俺一人だったわけだからしっかりと鍵締めないとな。

 

「ぃよし、行くか」

 

 

美咲side

 

 

「美咲ー!今日はどこで打ち合わせするのかしら?」

「あーはいはい、今日は気分を変えようと思ってショッピングモール内部のカフェに行こうと思ってまーす」

「か、カフェで打ち合わせなんてお洒落でいいよね。たまにはいいかも…」

 

今あたしとこころと花音さんの3人でバンドともう一つある事の打ち合わせのためにカフェに行こうとしてまーす。本来ならハロハピ全員でと思ったんだけどはぐみはソフトボール部の試合でどうしても行けなくなったって連絡きてるし薫さんも演劇部に連行されたってわけなんです、はい。

 

「一応次のライブはここらの近辺の小学校とSPACE、あとは………あれ?」

「どうしたの美咲ちゃん……あっ!あれって…」

「花音、美咲どうしたの?」

 

こころも疑問符を浮かべながらあたしと花音さんの見てる方を向くとそこにはワークキャップを深めにかぶっているお兄ちゃんがいた。なんかソワソワしているのが遠目でも分かる。

 

「何してるのかしら?ねぇリンネー……」

「こころ、ちょっと待って。誰か来たよ?取り敢えず様子みてから、ね?」

 

あたしはこころの腕を引っ張り制止する。そして3人でカフェ越しから見る事にした。

 

 

廻寧side

 

 

ってかめっちゃ緊張するんだけど…イヴに、しかも異性に呼ばれることなんて殆ど体験した事ないからか、今かってないほど心臓がドクドクしてる。かっしーな、俺イヴの勘に障ることなにかしたっけ?……いやいやしなにもてないはずだ、信じよう。とにかく落ち着け俺。

 

「リンネイさーん!」

 

後ろから聞いたことのある声。振り向くと白髪に青緑色の瞳、灰色のロングコートに白いズボンのイヴが走って来た。

 

「いきなり呼んでしまってすいません」

「別に、暇だったし。所で何で俺を呼んだんだ?理由が聞きたいんだが…」

「それはですね…」

 

イヴは深呼吸をする。そして落ち着いたのか話を始めた。

 

「……以前にワタシがストーカー被害にあっていた際、リンネイさんが、アヤさんやチサトさん達が助けてくれました」

 

そのままイヴは話続ける。

 

「お礼に行った時にリンネイさんは大丈夫だって言ってくれましたよね?」

「あぁ…」

「あの時はリンネイさんがそう言うならってことだったんですが…やっぱりちゃんとお礼をしないとワタシの気が収まらないんです!なのでリンネイさん!」

 

イヴは俺に歩み寄り、そして俺の目を見る。

 

「精一杯のお礼をさせてください…だ、ダメですか?」

 

イヴは潤んだ目&上目遣いで俺を見る。ってか近い近い。しかもいい匂いが…って俺は何考えてんだよ。落ち着け、落ち着け俺……よし、落ち着いた。

 

「…しゃーねーなぁ、そんな風にされたら断るもんも断れねぇだろうが」

「あ、ありがとうございます!」

「でもよイヴ、具体的に『お礼』って何するんだ?」

「それはヒミツです♪では、いざ戦場へ参りましょう!」

「戦場じゃなくてショッピングモールだけどな……ったく」

 

こうして俺とイヴはショッピングモールに入っていくのだった。…ってかさっきから視線を感じたんだが、まぁ気の所為だろ。

 

 

こころside

 

 

リンネーとイヴが仲睦まじそうにショッピングモールに入っていったわ。あんなに仲がいいなんて…ま、まさかっ!

 

「ねぇ美咲!」

「ん?どしたのこころ?」

「り、リンネーとイヴって…その、え、えぇっと……」

 

あたしは言葉が詰まってしまう。

 

「?もしかしてこころ…お兄ちゃんの事が」

「ふえぇ!?そうなのこころちゃん?」

「えっ!いや、そ、そのっ…そういう事じゃなくって!」

 

あたしは完全に動揺してしまう。確かにあたしは、その、リンネーの事が、す、好きっていうかなんて言うか……気になると言えばいいのかしら?

 

「んあぁ!もうどうしたらいいのかしら!?」

「こ、こころちゃん…落ち着いて、ね?」

 

花音が宥めようとするがあたしはそれに気づかない。

 

「とりあえずこころ、まずはあんたが落ち着かないと」

「み、美咲…」

「言い方悪いかも知んないけど、そんなに気になるならさ…こっそりついて行ったら?」

「えっ!?」

「だって気になるんでしょ?」

「そ、そうだけど…み、美咲はリンネーが他の女子といたりして嫉妬とかは感じたりしないの?その、き、兄妹なんだし…」

「………はぁ」

 

美咲はニット帽をかぶり直してあたしのことを見て話し出す。

 

「……一応言っておくけどあたしはお兄ちゃんが若宮さんとか他の女子といてもそこまでは気にならないかな?寧ろその逆、お兄ちゃんの恐怖症が治るんだったら尚更他の女子とも、こころや花音さんとも関わってほしいかなって思ってるし……でも、ちょっとはあたしにもかまって欲しいかなって思う事はあるかも…ゴニョゴニョ」

 

最後の方はあまり聞き取れなかったけどあたしは決めたわ!

 

「花音!美咲!リンネーとイヴのあとを追うわよ!」

「…はいはい」

「ふ、ふえぇ?私も?」

「早く早く!行くわよーー!」

 

 

廻寧side

 

 

礼がしたいと言われイヴに最初に連れられてきたのは洋服店だ。高級ブティックとまではいかないがここの洋服は老若男女にとても好評だとか。(イヴ談)

 

「リンネイさん!早速試着しましょう!」

「お、おい急かすなって…」

 

俺はそのままイヴのペースに乗せられて似合うと言われた洋服、帽子、はたまた伊達メガネまでをも何度も何着も試着させられる始末となった。イヴは着替えた俺を見るたび顔を紅潮させたり目を逸らしながら褒めたりしていた。俺の財布の金で払おうとするとイヴが割り込んで来て「ワタシがお支払いしますからリンネイさんは大丈夫です!」と言ってくるもんだからびっくりしたぞ?結局そのままイヴが払ったんだがな。そして洋服の入った袋を持ち店を出た。

 

「お礼はまぁ嬉しいけどよ、流石に服の代金を払ってもらうのはなんか釈然しねぇなぁ…」

「ワタシの好意ですから気になさらないでくださいリンネイさん」

「って言ってもよ…」

 

グギュルルルルルルルルルルル

 

セリフを遮り腹の音がなった。ヤベぇ。イヴがいるってのに…なんか恥ずいな、人に腹の音聴かれるって。

 

「ふふっ。リンネイさん、お腹すいたんですか?」

「お、おう…昼食ってねぇからな」

「ワタシもお昼食べたいと思ってたのでいいですよ。丁度いいお店知ってますし行きましょう!腹が減っては戦は出来ぬとも言いますし!」

「いや戦なんかしねーだろ」

 

そんなツッコミをイヴにしながら俺は店へと案内された……やっぱり誰かの視線を感じるような…いちいち気にすることでもないか。案内されたのは外国料理専門店でイタリアやフランス、中華まで幅広く、イヴの出身地であるフィンランドの料理もあった。聞いたところイヴはフィンランドと日本人のハーフとのこと。ってことはクォーターとかそう言う感じなのか?しかもモデルって…なんかすげーとしか言えねぇよ、語彙力無くなりそうだわ。飯を食べながら色んな話を聞いたりした。ホームパーティーでハンネって言うイヴの友達が来たこととかこころの家で花見をしたとか沢山の話を聞かされた。楽しそうに話すからこっちもちょっと笑いそうになるしよ。

 

飯食ったあとは他のブティックだったりゲーセンだったりと色んなところを見たり遊んだりした。

俺がノールックで太鼓の●人の「●の旋律」をやって見せた際にはめっちゃ驚いてたな。そして気づけば当たりは暗くなりかけていた。

 

「今日はワタシに付き合ってくれてありがとうございますリンネイさん」

「別にどうってことねーよ、久々に楽しめたし」

「それは何よりです!そうだ、リンネイさん!」

「どした?」

「ワタシから"親愛の証"をあげたいんですけど…いいですか?」

 

親愛の証?なんだそりゃ?プレゼントとか何かか?生憎俺の誕生日は過ぎてるしそれ以前に教えたことはないはずだが…

 

「別に良いけど…」

「ありがとうございます!」

 

そう言ってイヴは俺の前に来るとそのまま俺に抱きついてきた。衝撃で思わず手に持っている荷物が足元に落ちる。

 

「ふぁっ!?ち、ちょっとイヴ!?いったい何を…」

 

突然の事で声が裏返りそうになる。

 

「これが"親愛の証"です!ハグです!」

 

そう言ってイヴは顔をうずめてすりすりしてくる。おいおいおいおいいぃ!理性持たなくなったらどうしてくれるんだよおぉぉぉ!?しかも女子特有の柔らかいものが当たってるし!人もいるんだぞ!?勘違いされたら俺今度から学校行けなくなるかもだぞぉぉぉぉおお!?

 

「リンネイさん!」

「は、はい、何でしょうか…?」

 

やべぇ。思わず敬語になっちまった。

 

「今日はとても楽しかったです!ありがとうございました!」

 

イヴの見せた精一杯の笑顔。それはこころのように眩しく、輝き、気品を溢れさせるほどだった。思わず紅潮していくのが自分でも分かる。

 

「リンネイさん、照れてます?」

「て、照れてねーよ…」

 

イヴはそのあと離れて俺に手を振って帰っていった。にしても、

 

(まだ心臓がバグバクしちまってる……イヴってあんなに積極的っつーかなんというか…まぁそれよりも…)

 

俺は茂みの方に向かって言い放つ。

 

「そこに隠れてるやつ、出てこいよ」

 

そう言うと出てきたのは、こころと美咲、そして松原だった。

 

「り、リンネー…いつから気づいてたのかしら?」

「俺がイヴと洋服店に入った時からなんとなく付けられてた気がしたんだよ…まさか3人もいたのは予想外だし何よりも美咲と松原がいた事が驚きだぞ…バンドの打ち合わせしてたんじゃなかったのか?」

「あ、あのねお兄ちゃん、実は…」

 

美咲からすべての事情を聞き、俺は納得した。偶然にもカフェで打ち合わせしてたら俺を見かけて付いてきたとの事だ。

 

「イヴばっかりずるいわ!あたしもリンネーとハグしたいわよ!?」

「ちょ、おまっ!声でけぇって…ってか美咲、なんでこころは若干拗ねてるんだ?」

「自分の心に…聞いてみて?」

「……全然分からない」

「…お兄ちゃんの鈍感」

「え?なんか言ったか?」

「何でもない」

 

そしてこの日は家に帰るまで左にぷうっと膨れたこころが抱きつき、右には服の袖を引っ張る美咲がいたのは言うまでもなかった。

 




イヴってフィンランドと日本人のハーフであってますよね…:(;゙゚'ω゚'):?
今回も読んでいただきありがとうございます。
感想等は気軽にどうぞ!勿論質問もwelcomeです!

次回更新は相変わらずの未定ですが気長に待ってもらえると嬉しいです!


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