臆病な兄と奇天烈集団   作:椿姫

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仕上がりました…なんか最近ちょっとでも更新しないと失踪疑惑付いちゃうんではないかと心の中で怯えてます。
それと1回で纏められなかったので後半に続きます。




第16話 こころと廻寧・2人きりの時間 前編

今日は約束の土曜日。俺はこころと出掛けることになっている為なのか早く目が覚めてしまう。俺はどうやらNFOにログインしたまま寝てしまっていたみたいだ。

 

「うわ、やっべぇ…RinRinさん達怒ってねぇかな?」

 

よく見たらメールボックスには「寝落ちしちゃってますかσ( ̄^ ̄)?」ってきてたからすんませんって返信を送りログアウトしてPCを閉じる。部屋の時計を見ると6時50分を指している。いつもだったら8時頃に目の覚めるが何かの予兆か…まぁいいや。布団を被ってもう1度寝ようとするとスマホが鳴り響く。

 

「誰だよこんな朝早くに……って、ぉうわ……こころ?」

 

出ない理由もないから俺は電話に出る。

 

『リンネー!!おはよぉー!!』

「…朝っぱらから元気だなお前は」

 

やべっ…めっちゃ耳キーンってなったぞ。そんなこととはつゆ知らずにこころは電話越しに話しかけてくる。

 

『当たり前じゃない!あたしはいつでも元気よ!…そ、それに今日はり、リンネーと2人きりでゴニョゴニョ…』

「ん?最後がよく聞こえねーぞ?何つったんだ?」

『ふぇっ!?な、何でもないわ!!そ、それよりも集合時間に遅れないでよねっ!?』

「わーってるよ。昨日の夜何回も俺に確認したじゃねぇか」

『ふふ。だったら大丈夫ね!じゃあリンネー!また後でね!!』

 

そう言ってこころは電話を切った。さっき言った通りこころが昨日の夜に待ち合わせの場所と時間を連絡してきたんだよな…どんだけ心配性なんだよあいつ。8回も連絡くれば覚えるってーの。俺は服を着替えてリビングに向かった。母さんが驚いていたけど「今日出掛ける」って言ったら納得していた。いつも遅く起きるからってのもあるけどソレはどうなんだというツッコミはしないでおいた。

 

「約束の時間は……9時か、まぁ着替えてくるか」

「廻寧」

 

母さんに呼び止められる。

 

「なに?」

「…いや、何でもないわ。楽しんできなさい」

「?」

 

俺はそのまま部屋に戻って出かける支度をした。

 

「…何だったんだ?」

 

 

こころside

 

 

リンネーと2人で出掛けるなんて初めてだから何着てこうかしら♪

 

「ああんっ!もうっ!色々恥ずかしすぎて訳分からなくなっちゃうわよ〜♪」

「こころ様、盛り上がってるところ申し訳ないのですが…」

 

黒服が話しかけてきた。何かしら?と聞き返す。

 

「洋服を決めるのはいいのですが廻寧様とのお約束の時間が…」

 

そう言われて見てみるとあと1時間ほどしかなかった。あたしは冬物の長袖と黄色のユニオンジャック、冬帽子等を着て約束した場所まで向かう。

 

「こころ様!」

「?」

「本当に我々はおともしなくてよろしいのですか?もしこころ様に何かあっては……」

「心配いらないわ!大丈夫よ!」

 

そう言ってくるっと振り向いて黒服達に笑顔で言う

 

「だってリンネーがいるもの!じゃあ、行ってくるわね〜♪ふんふ〜ん♪」

 

鼻歌混じりにあたしは気分よく家を出た。

 

 

半田side

 

「太一さん、弦巻こころが家から出たのを確認しました!」

「よっしゃあ。そっちはどう?侵入ルートの方は?」

「はい。ここからなら弦巻家への侵入が出来ます!」

 

そう言って侵入ルートを見せられる。

 

「よくやった。いいかみんな、決行は弦巻こころが廻寧との外出から帰ってきて15分後だ。絶対にミスは許されないぞ」

『了解!』

 

さぁ廻寧、もうすぐ君を呪縛から解き放ってあげるよ…忌まわしき弦巻家と共にね!

 

「フフフ…楽しみだ………」

 

 

廻寧side

 

 

約束の駅前広場で俺は今時計を見ながらこころの到着を待つ。

 

「そろそろ時間か…」

 

そんな事をぼやいてると遠くの方から手を振って来る人影が見えた。

 

「リーンーネー!!」

 

眩しい笑顔と金髪を靡かせてこころが走ってくる。

 

「ごめんなさいリンネー!待ったかしら?」

「いや、俺も今来たところだから大丈夫だぞ?」

 

まぁ、20分くらい先に来てたのは言わないでおくか。

 

「ねぇリンネー!この服どうかしら?」

 

そう言ってこころは意見を求めてくる。俺は、似合ってるぞ。と言うとこころは何故かぷくっと頬を膨らませる。

 

「ど、どうした?」

「どうした?じゃないわよ!も、もうちょっと何かないのかしら!?」

 

何かないかって言われても…ま、とりあえず頭撫でとくか?俺はこころの頭に優しく触れてゆっくりと撫でる。気持ちよかったのかこころは、えへへと言いながら喜んでいた。

 

「これでいいか?」

 

俺が聞くとこころは笑顔で頷く。

 

「うん!それじゃぁ行くわよ!」

「お、おい!あんまり引っ張るなって!?」

 

腕をぐいぐい引っ張って駅の中に行き、俺とこころは切符を買った。そして下り電車に乗って目的地へと向かう。

 

「2駅先だったよな?」

「ええ!」

 

俺とこころは電車の中で話す。にしても土曜日だってのに人多いな…

 

「何でこんなに人多いんだよ…」

「そう言えば今日はあたし達が行くところで何かイベントやるらしいわよ!」

「へぇ…っておい、まさか知ってて行くんじゃないだろうなぁ…?」

 

俺が苦笑いでこころに問い質すと「さて、何のことかしら?」とはぐらかされる。こりゃ一杯食わされたな…そんな事を思いながら目的地まで景色を眺めることにした。

 

 

こころside

 

 

リンネーと2人で出掛ける…もうそれだけでドキドキなのに更に電車の中で密着しそうになっててもうなんて言ったらいいか分からないわ…

 

ガタンッ!

 

突然電車が揺れる。あたしとリンネーだけじゃなく、他のお客さんもそれにびっくりする。

 

「リンネー大丈…夫!?」

「あ、あぁ…こころは大丈夫か?」

 

リンネーはあたしが寄りかかっていた窓に手を当ててバランスを保っていた…のはいいんだけど…

 

(この状況、電車の中であたしがリンネーに壁ドンしてるみたいじゃない/////)

 

リンネーはまるで気づいてないみたい……しかもかなり近くてさっきよりも胸がドキドキする!

 

「こころ?どうした顔赤いぞ?ま、まさかっ…」

 

もしかしてリンネー、自分が壁ドンしちゃってる事に気づいたの!?

 

「どこかぶつけたんじゃねぇのか!?大丈夫か!?」

 

むうぅぅぅぅ…なんで気づかないのよ〜。あたしの事を気遣ってくれるのは嬉しいけど…そんな事を思ってると

 

『次は聖木松〜聖木松、お降りの際はお気をつけてくださいませ』

 

目的地のアナウンスが流れる。

 

「リンネー!そろそろ着くわよ!」

「そんなはしゃぐなって。分かってるから」

 

今日は最高の日になりそうね♪あたしは気分よく電車から降りて元気よく走っていった。

 

 

廻寧side

 

 

「それでこころ?俺達はこれからどこに行くんだ?」

「決めてないわ」

 

こころの発した一言に俺は困惑する。

 

「え?決めてねぇの?」

「決めてないわよ?だって…」

 

そう言ってこころは一歩前に出て俺の方に振り向く。

 

「…リンネーといれば何処でだって楽しいもの!」

 

こころは満天の笑顔で俺に言った。俺はその太陽のような眩しさに一瞬だけだがドキッとした。

 

「ん?そっぽ向いちゃってどうしたのリンネー?」

 

こころはニヤニヤしながら俺の顔色を伺ってくる。

 

「な、何でもねぇよ…ほら、行くぞ…」

「ふふっ♪リンネーでも照れる時あるのね?」

「お前は俺をなんだと思ってんだよ…」

 

そんなことを言いながら俺とこころは歩いていった。

 

 

花音side

 

 

「はぁ…」

 

私は今日はバイトもハロハピのメンバーとも集まりがないので美咲ちゃんと一緒に羽沢珈琲店で一息入れています…ここのコーヒーはホント美味しいよ…

 

「…お兄ちゃんとこころ今頃楽しんでるんだろうなぁ…」

「あ、あはは…美咲ちゃん…そんなに心配しなくても廻寧くんとこころちゃんなら大丈夫だよ …」

「別に心配してるわけじゃないんですけど…ただ、」

「?」

 

私が首を傾げると美咲ちゃんはちょっとだけ頬を膨らませる。

 

「最近こころとかばっかりに構ってあたしにあんまり構ってくれなくて……しかもお兄ちゃんったら全然気づがないんですよ…」

 

最近練習が無い時はこうやって美咲ちゃんの話を聞くことが多いんだよね。一件愚痴みたく聞こえちゃうかもしれないけど裏を返せばそれぐらい廻寧くんの事を兄妹として大事に思ってるんだなぁって……

 

「って、花音さん?聞いてます?」

「ふえっ!?き、聞いてるよっ!?」

「だったらいいんですけど…はあぁ…」

 

どうやら、まだまだ話は終わりそうにもないみたい。だから今日は、私は美咲ちゃんの話を楽しそうに聞くことにした。

 

(こころちゃんと廻寧くんが帰ってきたら…どんなことしたのか聞いてみよっかな…)

 

そう思いながら私はコーヒーを飲んだ。そしてこの時の私や美咲ちゃん、廻寧くんはあんなことが起こるだなんて思ってもいなかった。




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