臆病な兄と奇天烈集団   作:椿姫

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後編でっす!
あと2ヶ月で僕も本格的に社会人……頑張ります!!


第17話 こころと廻寧・2人きりの時間 後編

「リンネー!早く早く〜♪」

「おまっ…はえーよ…ちょっと……休憩させてくれ…」

 

俺はベンチに座って息を整える……やベぇよ、こころ……お前はどんだけ体力あるんだよ。最初の方は何ともなかったんだけどあいつ…興味ありそうなものみつけたら目光らせて片っ端から行くもんだからあっちこっち行ったり来たりしてもう大変だぞ。美咲や松原達が苦労したのを身をもって実感したわ。

 

「……めっちゃ喉乾いた…」

 

俺は近くの自販機まで行き飲み物を買った。そして手に取った飲み物をこころに投げるとこころは慌ててキャッチする。

 

「お前も走りまくって喉乾いたろ?飲んでいいぞ、ソレ」

「あ、ありがと…」

 

こころはそう言って受け取った飲み物を飲む。

 

「ぷはぁ…リンネー、なんか暑っつくないかしら?」

「お前なぁ…あんだけ走り回れば汗くらいかくぞ?」

「それもそうね…じゃあ」

 

俺がそう言うとこころは上着を脱いで腰に巻き始めた。

 

「これだったら大丈夫ね、リンネー!」

「あぁ、そうだ…なっ!?」

「ん?どうしたのリンネー?」

 

俺は慌ててそっぽを向く。なんでそっぽ向いたのかと言うとこころが上着の中に来ていたシャツが汗で肌にひっついていた…つまり、あの、その………し、シャツが透けて下着が見えたんだよ…

 

(これは注意するべきなのか!?いや、仮に注意したとしても『見たのっ!?』って顔赤くされてその場でお仕置きされるのも嫌だ!指摘してもしなくてもこれはBad Endルートじゃねぇかっ!?)

 

「さっきからどうしたのよリンネー?」

 

悩んでいる俺にこころが話し掛けてくる。まずい…ど、どう言ったらいいのか……俺は悩んだ末に思い浮かんだ事をこころに言った。

 

「こ、こころ……暑いって脱ぐのは、わ、わかるけどよ…流石に今は冬だぞ?すぐに冷えるから着といた方がいいとお、おもうぞ?」

「リンネーがそう言うなら…」

 

そう言ってこころは再び上着を着た。これで何とか一安心と思ったのも束の間、そのまま俺の腕を引っ張る。

 

「じゃあ次はあそこ行きましょ!お腹すいちゃったわ!」

 

そう言いながらレストランまで連行され、席に座る。入ったのはパスタの専門店だったみたくメニューを見れば美味そうなものなこれでもかというくらいある。

 

「………ジュル」

「リンネー、ヨダレでてるわよ?」

「……あ」

 

咄嗟にヨダレを拭う。他の人がいるのもそうだがこころに指摘されたからなのか余計恥ずい。

 

「よっぽどお腹空いてたのね?」

「う、うるせぇ…ほらさっさと頼むぞ」

 

俺はさっさと料理を注文する…ったく、何でこんなに恥ずかしい思いしなきゃいけねぇんだよ…

 

「……何で俺の顔見てんだよこころ?」

「こんな風に恥ずかしがるリンネーって珍しいじゃない」

「アホか、俺だってそういう時はあるってーの」

 

そんなことを言いながら出された料理を食べていく。俺は腹が減ってたからすぐに食い終わった。だから後はこころが食べ終わるのを待つだけ、まぁこころも食うペース早いから関係ないけどな。

 

「ふぅ…美味しかったわ!」

「そうだな……っておいこころ」

「?」

 

俺はティッシュを取り出しこころの口元を拭く。

 

「お前、ソースが口についてたぞ?ったく」

 

ティッシュをゴミ箱に捨てて席を立つ。

 

「ん?おいどうしたこころ?」

「え?ええ何でもないわっ!!い、行きましょリンネー!」

 

なんであいつ顔赤くしてんだ?……まぁいっか。さっさと会計済ませるか。

 

 

こころside

 

 

はわわわっ!あ、あ、あんなの卑怯じゃないっ!!

 

会計を済ませたあたしは店の前でリンネーを待つ。と言うかさっき、り、リンネーの手の感触があたしの頬に……

 

「もぅ…リンネーったら無意識すぎるわよ」

「誰が無意識だって?」

 

後から声をかけられて振り向くとリンネーがいてあたしは思わず慌ててしまう。

 

「い、いや、何でもないわよっ!うん!何でもないわっ!?」

「なんで疑問形?……まぁいいや、次どっか行きたいところあるか?」

「えっ!?つ、次は…」

 

あたしはまわりを見渡して次はどこに行くか考える。

 

「……っあ!あそこにしましょう!」

 

あたしはリンネーを引っ張り店の中に入った。入ったのは洋服店。戸惑ってるリンネーにあたしはちょっとだけ追い打ちをかけた。

 

「あたしに似合いそうな服をリンネーに選んでほしいの!」

 

 

廻寧side

 

 

は?こころお前今なんて言った?似合いそうな服をコーディネートしてってか?え?それマジで言ってる?イヴに服を選んでもらったことはあるけど他人の服を選ぶのはしたことなんてないぞ!?ましてや女子!難易度高すぎないか…

 

「えぇ……どんなのがいいんだよ?」

「リンネーがあたしに似合うと思ったのを渡してくれればいいわ!それをあたしが着てリンネーに評価してもらうわ!」

 

マジかぁ…選ぶだけじゃなくて評価もなのかよ…

 

「しょうがねぇなぁ……」

 

そう言いながら服を見渡す。アクセサリーやシュシュ、ホットパンツや冬服のトレンドをバッチリ抑えたものがこれでもかというくらいある。声に出して言ったことはないがぶっちゃけこころって何着ても似合うと思うんだよな、可愛いし。ま、それは美咲にも言えたことなんだけどよ。

 

なんで声に出して本人に言わないのかって思うかも知んないだろ?そーいうセリフはな、めっちゃ格好いいやつが言うからこそ効果的面なんだよ。俺みたいな奴が言っても何にも思わねーだろうしな、思っても言わねーよ。さて、そろそろ決めないとな……俺は目に留まった洋服を何着か選んでこころに渡した。

 

「こんなもんか?」

「ありがと!早速着てみるわね!ね、ねぇリンネー」

「?」

「の、覗いちゃ、ダメよ…?」

 

俺は溜息をついて

 

「間違えても覗くわけねぇだろうが…」

 

と言った。こころは「だったら安心ね!」と言い残しそのまま試着室に入っていった。待つこと数分……カーテンが開けられと同時にこころが、

 

「リンネー、どうかしら?」

 

と俺に聞いてきた。まず思った事は1つ、めっちゃ似合ってる。素材がいいってのもあるし何より着こなしもちゃんとなっている。俺はこころに近づき「似合ってるぞ」と言った。

 

「ふぇっ!?………あ、ありがと」

「で、どうするんだ?買うのか?」

 

俺がそう言うとこころは、買うわと言ってカーテンを閉めた。その後も俺の選んだ服は偶然にもこころに似合いまくって褒める度に顔から湯気を出しそうになっていたが俺には全くその理由が掴めなかった。それと、俺がレジで金を払ってた時に店員がニヤニヤしていたのは正直気味が悪かった。そのまま服の会計を済ませてこころが待っている方に向かい服の入った紙袋を渡す。

 

「……これって、あたしが払うべきなんじゃないかしら?」

「こんぐらいの出費どうってことねぇよ、じゃあ次はどこ行くんだ?」

「ん〜、さっきからあたしが行きたいところばっかりだったから次はリンネーが行きたいところに行きましょ!」

「いいのか?」

「問題ないわ、まだ時間はあるもの!」

 

とは言ったもの、俺が行きたいところか…特にないんだよな…ここに来るまでにペットショップだの本屋だの、ゲーセンだったり色々連れ回されたからな…ふと、窓の外を見るとピエロがマジックショーしたりしている。カフェテリアでアイスを食べてる人がいたり……アイス食いたくなってきた。

 

「リンネー、もしかしてアイスが食べたいのかしら?」

「ん?まぁ…なんか冷たいやつが食いたいなーって思ったんだ!」

「じゃあ決まりねっ!!早く行きましょっ!!」

 

こころは気分よくスキップしながら先に行く。

 

「ちょ、まてよ……はぁ」

 

俺はこころのあとを追うようにカフェに入る。そしてアイスを注文し早速一口食べる。

 

「ん〜っ!冷たくて美味しいわねっ!」

「そうだな」

 

そういう一方、こころの食べてるアイスをふと見る。よく見たら季節限定のものだった。うわぁ…めっちゃうまそぅじゃねぇか…

 

「なぁこころ」

「?」

「お前の食ってるやつさ……ひと口食わせてくれないか?」

 

 

俺は無意識に、こころにそう言っていた。

 

 

こころside

 

 

「え?」

 

リンネーが、あ、あたしのアイスを食べたい……?こ、これってよく恋人とかカップルがやることとかそういう類の事じゃないっ!?

 

(べ、別にアイスを食べさせるのは構わないしあたしも嬉しいっていうか……そのっ、えっと……)

 

突然のことすぎてあたしは身悶えする程動揺してしまう。

 

「?おーい、こころ?どした?」

「えっ!?ひ、ひと口ほ、欲しいのねっ!?だ、大丈ぶゅよ!?」

「舌噛んでる時点で大丈夫な気がしないんだが!?」

 

流石にリンネーもツッコミをせざるを得ないほどだった。あたしは大丈夫って言ってリンネーに一口アイスをあげる。

 

「お、美味ぇなこれ、サンキューこころ。じゃあ今度は…」

 

リンネーはそう言って自分の持ってるアイスを差し出す。……まさかこれって、

 

「俺のアイスも一口やるよ、ほれ」

 

至極当然のようにアイスを差し出す。それは嬉しいんだけど……リンネーは自分の口をつけた方を出していた。これって…か、間接キスみたくなっちゃうじゃない!?

 

「どした?食べねぇのか?」

「た、食べるわよっ!」

 

あたしはそう言ってアイスを食べたけど、自分で買ったアイスよりもリンネーから貰ったそれはそれを上回るほど甘ったるいような気がしてならなかった。食べた後は店を出てどこに行くか考える。電車の時間を考えたら次に行くところで最後、楽しかった時間はあっという間に終わっちゃうわ。

 

「時間的に最後になるな…」

 

リンネーは辺りを見渡してどこに行こうか考えてる。あたしもどこがいいか考えてると目に映ったものがある。

 

「ねぇリンネー!最後はアレに乗りたいわ!」

 

そう言ってあたしが指をさしたのは

 

「観覧車か…」

「もしかしてリンネー、高いところが苦手なの?」

「いや、乗ったことないから…」

「だったら大丈夫よ!すっごく楽しいから!」

 

 

廻寧side

 

 

へぇ…観覧車に初めて乗ったけど思ってたのより結構揺れることもあるんだな。今俺は目をキラキラさせたこころに連れられ半ば強引に観覧車に乗っている。

 

「……結構いい景色だな」

 

そこから見えるのは白銀の銀世界、あたり一面が雪景色だ。こころも窓に手を当てて見ている。

 

「ねぇ……リンネー」

 

咄嗟にこころが口を開く。そしてそのまま、俺を見て淡々とした口調で話し始めた。

 

「あたしね…今日すっっごく楽しかったの!リンネーと一緒に色んなところ見て回って…最高の1日だったわ!!リンネーは……どうだったかしら?あたしと今日1日いて…楽しかった?」

 

俺はため息をつく。……何聞いてんだかなぁ、そんなの、

 

「楽しかった…それ以外になんかあるか?」

 

俺がそう言うとこころは「ありがとう」と今日見せた中での最高の、最上級の笑顔で言った。

 

「ん?どうしたこころ?また顔赤くなってるぞ?」

 

俺が指摘すると恥ずかしがりそっぽを向く、そして再び俺のことを見る。

 

「ど、どうした?ホントに大丈夫か?」

「………リンネー、ちょっとだけお願い聞いてくれてもいいかしら?」

「は?お、お願い?別にかまわねぇけど…」

 

俺が言い終わると同時にこころは向かい合わせになり俺の足に跨ってくる。そしてそのまま俺の事をじっと見る。

 

「ちょ、は?おm」

 

言葉を遮るようにこころは俺の背中に手を回してそのまま抱きついた。

 

「はあぁぁっ!?いや、ちょ、ええぇっ!?お前何してるんだよっ!?」

 

俺がそう言ってもこころは離れようともしない。寧ろかなり密着してる……そのせいかこころの胸が当たってるんだよ。ってかお前、結構胸あるんじゃねぇか…

 

「リンネー」

「な、なんだ…?」

「観覧車が下に着くまでの間…こうしてちゃ…ダメ?」

 

そんな目で俺を見るなぁ!!目を潤ませないでくれ!!そして上目遣いって!これなんてハッピーセットだよっ!?絶対断れないやつじゃねぇか!!って落ち着け俺ぇ!!

 

「……まぁ、下に着くまでだったら…別に…」

 

言い終わるとこころは密着度を上げてくる。ふふふと言いながらくっつく様子は人懐っこい犬みたいな感じだった。それと同時に俺は観覧車を降りるまで謎の羞恥に耐える他なかった…。

降りてからこころは自分のした行為が恥ずかしかったのかずっと顔を紅潮させていた。恥ずかしがるくらいならやんない方が良かったんじゃねぇのか?まぁされた側の俺がそういう事を言えた立場ではないとは思うが。

 

「…ほら…帰るぞ」

 

その後俺達は電車に乗って駅に戻り家に帰ることとなった。家に帰る途中、羽沢珈琲店から出てきた松原と美咲に偶然会って今日の事をかなり追求された、特に美咲に。観覧車での事は言わないことにした。多分言ったら美咲も松原も顔赤くするだろうし俺自身もなんか恥ずかしいからな…

 

 

こころside

 

 

家に帰ってきてあたしはすぐに部屋に飛び込んだ。恥ずかしくて枕に抱きついてそのままベッドの上でかれこれもう数分は考えるのをやめてたわ。

 

「う〜〜!!あたしは何してるのよ〜!?あたしのばかぁ〜!!」

 

思いっきりリンネーに抱きついてあんなこと言っちゃうなんて〜!?電車の中とか目を合わせるのも恥ずかしかったわよ!!……でも確信したわ。

 

「あたし……リンネーのことが大好きなのね…」

 

今すぐにでもリンネーに告白したいしもっっと一緒に、2人でいたいと思ってしまう。

 

「…もしリンネーもあたしの事が好きだったら…」

 

そんな妄想に浸っていると部屋のドアをノックする音が聞こえた。入っていいわよと言うとぜぇぜぇと息を切らした執事が入ってきた。

 

「ど、どうしたのっ!?そんなに息を切らしてっ!」

「た、大変ですこころ様…突然ガスマスクとフードを被った怪しいヤツらが入ってきてほかの黒服達を次々と眠らせて……ゴホッ!」

「しかもそいつら、今この家中にガスやら何かを撒き散らして…このままだとこころ様やお母様方が危ないと思ったので迎えにきた所存です!早く来てくださいっ!」

「え、ええっ!分かったわ!」

 

あたしはベッドから飛び起き執事達と部屋を出ようとした。その瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

バチバチバチィ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「………え?」

 

執事があたしの首にスタンガンを当ててたっぷり電気を流していた。

 

「……か…は…」

 

あたしはそのまま廊下に倒れる。そのまま気絶しそうな頭で執事達を見る。

 

「変装も見分けれないなんてバカなんすかこの女」

「首筋にたっぷり電気流したんだし見つかる前にコイツ連れて太一んとこに戻るぞ!?この服あっついんだよ!」

「りょーかいっス」

 

……何の……話…して…る………の?た、太一さん?あたしは抵抗も虚しく、そのまま意識を失った。

 

 

太一side

 

 

「太一さん!弦巻こころ連れてきたっスよ!」

 

僕がデスクに座ってると扉を開けて2人が入ってくる。

 

「執事服あぢぃ〜、なぁ太一、これもう脱いでいいか?」

「あぁいいよ、2人ともお疲れ様。弦巻こころはそこにいる親と一緒に鎖につないで逃げれなくしてね?」

 

僕がそう言うと気絶している親の所に行き鎖と鍵を掛けて完全に逃げれなくした。

 

「ってか太一さ〜ん、黒服のヤツら気絶させるのにどんだけクロロホルムと睡眠薬使ったと思ってんですか〜?」

「廻寧を助ける為の安い出費だと思えば安いでしょ?」

 

今僕達は弦巻こころの父親の部屋を占拠している。ここからなら外の景色も見れるし部屋だってなかなか広いし存分にくつろげる…僕が作った薬の実験も出来そうだしねぇ〜。

 

「ふふっ、これで準備は整った」

 

僕がそう言うとみんな口々に声を上げる。

 

「太一、いよいよだな」

「太一さん!遂に廻寧さんを助けることが出来るんですね!」

「やっと…やっとなんだな…」

「この日をどれだけ待っていたか…さっさと殺してやりたいぜぇ弦巻家ぇぇ」

「………………」

 

みんな殺る気も充分あるみたいだ。

 

「さぁみんな!!これから楽しいショーが始まるよ!!準備はいいかい!?」

『オオォォォ!!』

「傲慢で最悪な弦巻家に思い知らせてやろうじゃないかっ!!僕達の怨み、怒り、そして何より…廻寧の思いをっ!!こいつらをこの世から抹消して廻寧を解放しようっ!」

 

楽しくなってきたよ…さぁもうすぐだよ廻寧……君をこの女から、忌まわしき屑どもから解放してあげるよ…僕の初めての友達、廻寧。

 

「フフフフフフ……ヒャハハハハハハァァァ!!」




遂に動き出した半田太一とその仲間達、拘束されたこころや親、占拠された弦巻家!果たして廻寧はこころ達をを助けることが出来るのかっ!?

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