臆病な兄と奇天烈集団   作:椿姫

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パスパレイベントの新規星4日菜をあててテンションが高くなり駅で思わずはしゃいでしまったら見知らぬおじいさんに「大丈夫か?」と心配されました。




第18話 悪夢の序章

 

廻寧side

 

 

「んぁ…」

 

俺はベッドから身体を起こして身体をひねる。

 

「……」

 

日曜日だから休みだぜヒャッハー!みたいなテンションで起きることは今日はできなかった、というかそんなテンションで起きないけどな。昨日のこころとの事がありうまく寝付けなかった。あんなふうに迫られたら誰でもドキドキするってーの…なんかヘンに意識しちまうしよぉ…

 

「お兄ちゃん起きてるー?」

 

部屋の外から美咲の声が聞こえる。起きてるからいいぞと言うと美咲が部屋に入ってきた。

 

「どうした?」

「あのさ、こころからこんなメールが届いたんだけど…お兄ちゃんにも届いてない?」

 

そう言って美咲はスマホのメール内容を見せてくる。そこには

 

『今日、あたしから大事な話があるの!!ハロハピのみんなとリンネーを交えた大事な事なの。11時頃に江戸川楽器店前のカフェに来て!!』

 

と送信されていた。俺もスマホを確認するとメールが来ていて同じ内容だった。

 

「これって…こころがまた変な事思いついたってことでいいのかな?」

「ま、十中八九そうだろ。取り敢えず俺は飯を食う。美咲、準備するから待ってろ」

 

俺はそう言って朝飯を食って出かける支度をちゃちゃっと済ませる。そして美咲と一緒に家を出て江戸川楽器店前のカフェへ向かった。店に入ると瀬田や北沢、松原達ハロハピメンバーの他に、イヴと白鷺が来ていた。

 

「お前らも来てたのか…イヴ、白鷺。というかこころと面識があったんだな」

 

俺がそう聞くと二人とも静かに頷いた。あとはこころが来るのを待つだけなのだが…

 

「こころんが一番最後に来るなんて珍しいな〜。何かあったのかなあ?」

「確かに…こころちゃんってこういう時は絶対最初に来るから、ね…?」

 

松原と北沢が不思議そうに呟く。確かにこころが最後に来るなんて珍しいなんてもんじゃない。美咲曰く、

 

『こころは何か集まりとかあると最初に来てるから……行動力どーなってんだか、はぁ…』

 

なんてぼやいてたからな…。時刻はもう約束の11時を過ぎている。

 

「遅いわね…」

 

白鷺がそう言うと同時に俺のスマホだけが鳴り全員の視線が俺と俺のスマホにいく。見てみるとこころからだった。

 

「リンネイさん、どうしたんですか?」

「廻くん先輩!もしかしてこころんから!?」

 

イヴと北沢の言葉に俺は頷く。

 

「廻寧くん……なんて届いてるの?」

 

松原に言われて俺が内容を確認すると動画が1つ届いていた。

 

「動画が届いてた」

 

その言葉に殆どが首を傾げる中、白鷺は冷静に喋る。

 

「取り敢えず届いた動画を見てみましょう?若しかしたら遅れた理由とかがあるかもしれないわよ?」

 

俺は全員に見える様にスマホをテーブルに置く。そして届いた動画を再生すると

 

『っ!?』

 

全員の顔が恐怖に包まれる。

 

「……え、どういう……事?」

 

送られてきた動画をみて受け入れることが出来なかったのか美咲が声を漏らす。

 

「ね、ねぇお兄ちゃん、こ、これ、何?」

「俺に聞くなよ…分かるわけねぇだろうが」

 

その動画にはありえない光景が広がっていた。こころとその父親と母親、そしてもう1人身内かと思われる男が鎖や手枷足枷に繋がれて拘束されていた。しかも暴行を加えられたあとがあったのか親の方には血がついてたりしていた。そんな様子に戦慄しているとマスクを被ってフードで覆った奴が出てきた。

 

『やっほ〜☆これを見ているってことは無事に動画が届いてるみたいだね?嬉しいなぁ、しかもこれもリアタイで見せてるわけだから頑張って弦巻家を襲撃して占拠したかいがあったってもんだよ』

 

…は?弦巻家を襲撃して占拠?しかもリアタイだと?

 

『おっと話しすぎると声でコイツらが起きてしまう……』

 

そう言うと後ろにいるこころ達を視線を向けてからもう1度俺達の方を見る。

 

『僕達はこれからこの外道どもに制裁を下す。金持ちの人間が屑だって事を武力をもって行使する!制裁を食い止めたければ…これを見ているであろう奥沢廻寧……キミ一人で来たまえ』

 

突如俺の名前が出てきて俺はその場で身震いしてしまう。

 

「お前は何者だ!?な、なんで俺の名前を知ってる!?」

 

思わず携帯の向こうに声をかけてしまう。するとその返答がわかっていたかのような口調で喋る。

 

『キミのことは1番知ってるし何より…周辺の人間は全員調べさせて貰ってるよ、今これを見てるメンバーを廻寧以外全員言い当てれば信じてもらえるよね…奥沢美咲、北沢はぐみ、瀬田薫、松原花音、白鷺千聖、若宮イヴ』

 

名前を当てられて全員顔色を変える。

 

『禁則事項だけどもし警察とかを呼んだら弦巻家の全ての人間の命の保証はしない。弦巻こころはおろか関係者1人ずつ拘束して吊し上げにしよっかな♪…それじゃあね♪』

 

動画が終わると同時に全員の顔色が再び恐怖に包まれる。

 

「どど、ど、どうしよう!?このままじゃこころんが!?」

「落ち着け北沢」

「そ、そんなこと言っても!廻くん先輩だって怖いはずだよ!?」

「相手の狙いは俺だけみたいだ。お前らが騒ぎ立ててどうこうなるもんじゃない」

「…だったら策はあるのかい?」

 

瀬田が俺に聞いてくる。

 

「相手は武装してる上に武器を持ってる事は確実だ。警察とかに頼ればこころは疎か、私達も被害を蒙ることになる。そしてキミ1人で行ったとしても犯人グループが生かして帰すかなんて分かったもんじゃない…」

 

俺は顔色変えずに答える。

 

「犯人の狙いは俺だ。俺がこころの家に行って犯人薙ぎ倒してくりゃいい話だろ?」

 

そう言って店を出ようとすると美咲とイヴに腕を掴まれて止められる。

 

「待ってくださいリンネイさん…みんなでいくべきですよ…」

「お兄ちゃん…どう考えても罠だよ…」

 

俺は掴んでいる二人の腕を離す。そして敢えてキツい言葉を美咲とイヴだけでなく呼ばれた全員に冷たい目で言い放つ。

 

「…あまり同じことを言わせるな。犯人の狙いは俺だ。だから俺1人で行く、お前達は何があっても付いてくるな、いいな?」

 

俺は勢いまかせに店を出てそのままこころの家まで走っていった。

 

(犯人は俺を知ってるやつだった、声は変声機を使って変えたんだろう……俺を恨んだり嫌う奴なんて山ほどいるが、一体誰が……?)

 

 

千聖side

 

 

奥沢くんが走っていくのを私達はただ呆然と見ることしか出来なかった。

 

「……」

「どうしたのイヴちゃん?」

「…あんなに怖い顔をしたリンネイさん…始めてみました…」

 

イヴちゃんがここまで怖がるなんて…他のみんなも同じことを思ってるみたいね。そう言えば以前に……

 

『貴方が……この手紙を出したの……?貴方は何者なの!?奥沢くんの過去ってどういう事なの!?』

『そんないっぺんに聞くと何から答えればいいか分からないよ…『白鷺千聖』』

『っ…………私を知ってるの?』

『廻寧の身の回りの人間は全て調べさせてもらっている…当然アイツのことも』

『アイツ?』

 

こんな話を聞いた気がした。しかも話していた相手は奥沢くんの親友だった男の人。

 

(まさか彼が事件を…?いや、でもまだ100%彼って決まったわけじゃないわ、結局言ってた計画やらなんやらに関しては何も聞いてないわけだし……美咲ちゃんに彼のことを聞いてみ)

 

「千聖?どうしたんだい?考え事?」

 

薫に話しかけられて私は驚く。

 

「あ、すまない…そんなに驚くとは思わなかった…」

「ごめんなさい…ちょっと、ね」

「白鷺先輩…」

 

美咲ちゃんが前に出てくる。

 

「もしかして何か知ってたりするんですか…?」

 

その言葉に私は頷く、そして美咲ちゃんに問い質す。

 

「ねぇ美咲ちゃん……『半田太一』っていう人を知ってるかしら?」

「え?」

 

美咲ちゃんが驚いた顔をして私を見る。

 

「は、半田太一って…お兄ちゃんの中学の時の友達だった人ですよ?…なんで白鷺先輩がその名前を?」

 

やっぱりね…このやり取りにみんなが私と美咲ちゃんを見てる。

 

「え?え?みーくんどうかしたの?」

「ち、千聖ちゃん?美咲ちゃん?」

 

花音とはぐみちゃんは困惑している。

 

「美咲ちゃん…私、以前に半田太一っていう人に会ったの、そこで聞いたのよ…奥沢くんの過去について」

 

全員の顔が驚愕の顔に変わる。

 

「り、リンネイさんの、過去……?チサトさん!本当ですか!?」

「千聖ちゃん……廻寧くんの過去って…どういうこと?」

「千聖……何があったのか話してくれないか?」

 

私はみんなにその時聞いた話と奥沢くんの過去の事について聞いた限りのことを全部話した。勿論美咲ちゃんは過去のことは知ってたみたいだったからすぐに納得してくれたわ。

 

「……リンネイさんにそんな事が…」

「廻くん先輩何も悪くないよ!?悪いのはその人達じゃん!?」

「……」

「……廻寧くん、グスッ」

「花音さん、ハンカチあるよ?」

「……ありがと美咲ちゃん」

「みんな、奥沢くんのことを聞いて色々思うことがあるかも知れないしこころちゃんのこともあるわ」

 

呼びかけにみんなが頷く。

 

「私達のやるべきことは…」

 

 

 

廻寧side

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

俺はこころの家の前までくる。

 

「げほっ!ごほっ!…ちょっと飛ばしすぎたか…」

 

今は体力を気にしてる場合じゃねぇ…俺は侵入口を探すために辺りを見渡す。

 

「どっか行けるところ……あ、あった」

 

俺は"従業員専用"とプレートに書かれたドアを見つけた。そしてそこまで走っていきドア開けて素早く入る。

 

「待ってろよこころ…すぐに助けてやるからな」

 

 

太一side

 

 

「太一さん!」

 

椅子でふんぞり返ってると1人が部屋の扉を開けて入ってくる。

 

「ん?どうしたの?」

「監視カメラに廻寧さんの姿がありました!!」

 

その言葉に全員が反応する。

 

「廻寧は一人で来てた!?」

「は、はい!さっき従業員専用の入口から入っていくのを見ました!」

 

良かったよ廻寧…キミは約束を破る人じゃないって分かってたよ。僕は持ってきた紙袋の中から護身用のスタンバトンを全員に投げる。そしてもうひとつ、あるものを取り出す。

 

「!?た、太一!それって…」

 

僕が取り出したそれは緑色の液体が入った注射器。人体に注入すると少しの間だけおかしくなる僕が作った薬品。これの他にも筋弛緩剤とかたくさんの薬品がある。ここにはモルモットがたくさんいるから使いたい放題だよ。

 

「みんなや廻寧には注入しないから。これは…」

 

僕はちらっと部屋の片隅に転がっている執事の男に目をやる。そしてデスクから立ち上がりそいつらの頭を掴んで言い放つ。

 

「コイツに使う、モルモットがいて助かったよ」

 

そう言うと黒服が必死に抵抗をする。

 

「…お、お前達……こんなことが許されるとでも思ってるのか……がはっ!?」

「金持ちに仕えてたモルモットの分際で何僕に命令してんだ。バーカ」

 

僕は蹴りを腹に入れて気絶させる。そしてそのまま衣服の上から腕に注射器を刺して薬品を注入する。

 

「太一、そいつをどーするんだ?」

「適当に廻寧が来そうな道に投げ捨てといて?エレベーター使えるだろうし」

「へーい」

 

執事を連れて行くのを見送り気絶している弦巻こころと親達を見る。この光景をどれだけ待ちわびたことか…実現してニヤニヤが止まらないよ…

 

「廻寧……もうすぐキミは"悪魔"から開放される……その時は…僕ともう1度、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"友達"になってくれるよね…?」

 

そうでなければキミとの約束を果たせないからね…

 




オリキャラのCVやらを知りたいという方がいたので紹介していきます。

漣 美鶴(さざなみ みつる)
イメージCV.宮野真守
廻寧と同じクラスの男子で女性口調。バスケ部に所属してる。家が理髪店のため、ヘアスタイルにはかなりこだわりをもつ。健康にも人一倍気を使っている。

虹村 孔雀(にじむら くじゃく)
イメージCV.岡本信彦
廻寧と同じクラスの男子でチャラ男。美鶴と同様バスケ部に所属。地毛が桃色だからか制服の着付けかは知らないが度々風紀委員に目をつけられる。テストは赤点常習犯。

半田太一(はんだ たいち)
イメージCV.酒井広大
中学時代に廻寧と仲が良かった1人。家が病院を経営していて親は病院長を務めている。弦巻こころに対しての異常なまでの執着心と復讐心から今回の計画を実行した実行犯でもある。

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