臆病な兄と奇天烈集団 作:椿姫
1話でまとめることが出来なかったので前半後半に分けます。
『あんれまぁ!!この事件のぉ、謎が解けたっペよ!!次回!農家探偵サチエさん スイカ爆散事件file4!!』
部屋のテレビでドラマを観ながら俺はカップ麺をズルズルとすする。
「ふぅ…しっかし暇だな」
テレビを消して食べ終わったカップ麺の容器を片付けてベッドに寝転ぶ。
「………」
どうせ暇なんだしNFOでもするかな、そう思いベッドから起き上がりパソコンを起動しようとすると電話が鳴った。
「おうわっ!?誰だ…」
送り主の名前を見ると「弦巻こころ」だった。俺は通話ボタンを押して応答する。
「どうした、こころ?」
『リンネー!今からあたしの家に来て!』
「は?い、今からか?」
『美咲と花音も来てるわよ!待ってるわ!』
こころはそう言って電話を切った。美咲は確か松原と羊毛フェルトの材料買いに言ったはずなのに何故にこころの家にいるんだ?
「考えても仕方ねぇか…」
俺はせっせと準備を整えて家を出た。自転車を飛ばすこと数分、こころの家に辿り着いた俺は黒服に広間まで案内され、そこにはハロハピメンバーが揃い踏みだった。
「待ってたわよリンネー!」
「廻くん先輩遅ーい!はぐみ達待ってたんだよー!?」
「いきなり連絡されて来て遅れたもクソもあるかよ…」
息を切らしながら俺は椅子に座るり、それを見ていた美咲がミネラルウォーターを俺に渡す。俺はそれをぐいっと一気に飲みほす。
「ぷはっ…それで?こころ、俺達を呼んだ理由はなんだ?」
こころの事だから、なんか楽しいこと見つけたからみんな付き合えとかなんだろうと思いながら俺はこころに話を振る。
「聞いてリンネー!ミッシェルが明日のふわキャラ選手権に出ることになったのよ!」
「ふ、ふわキャラ選手権?」
なんだか随分と緩そうな大会だな…某梨の妖精とかメロ●熊とかでも出場すんのか?
「それだけじゃ分からないでしょこころ。あたしがお兄ちゃんに説明する」
不思議がっていると美咲が出てきて俺に説明した。話を聞くと羊毛フェルトを買った帰り、美咲にミッシェルのアルバイトを勧めた人に会って世間話をしていたらいつの間にかこの大会に参加することになったらしい。
「と、言うことでね…」
「ふーん…別にいいんじゃね?」
「素晴らしい催しじゃないか、ふわキャラ選手権!むしろ私が出たいくらいさ」
「確かに瀬田が出ても違和感全くないかもな…」
「そういう事じゃないでしょお兄ちゃん…ってかその日バンドの練習あるけどいいの?」
美咲が言うには、日曜日にはバンドの練習と重なってるとのこと。だが、そんなことを言うのを想定してたのかこころは「バンドの練習も大事だけど選手権はその日だけだから出ましょう!」と目を輝かせていた。
「まぁ…そうなるよね」
こころは言い出したら止まらない。そう言いたげな美咲…もといミッシェルとして選手権に出場することを受け入れた。
「が、頑張ってね美咲ちゃん…」
「まーなんとかなりますよ…多分」
「…………」
「?どうした北沢」
出場が決まって浮かれるメンバーの中でただ1人、北沢がなにか考えてるようなそんな顔をしていた。
「えっ!?」
美咲と松原も様子が気になったのか北沢の所にやってくる。
「そう言えばはぐみちゃん…なにか気にしてる感じだったよね?」
「あ、それはあたしも思いました。何かあったの?」
2人に問い詰められて、北沢は自分が思っていたことを俺達に説明する。
「あ、あのねっ…はぐみも出るんだよっ!」
「出るって何にだよ?」
「だからそのっ…はぐみもふわキャラ選手権出るってことになったの!」
「えっ?」
『えぇっ!?』
俺らは揃いも揃って驚きの声をあげた。ルールとかは美咲からある程度聞いてはいるが人間の参加は流石にゆるくもふわっともしないだろ…俺がそう思いながらも北沢は話を進める。
「それでねっ!ミッシェルに伝言があるんだけど…みーくん、伝えてもらってもいい?」
「へ?あ、うん…別にいいけど」
美咲=ミッシェルなのになぜ気づかないのか、と言うか伝言とか言っておきながらその伝えて欲しい相手お前の目の前だぞ北沢。
「『お互い…正々堂々しょうぶしようねっ!』って伝えて欲しいんだ!」
「あ、はい。ミッシェルにつたえときまーす」
棒読みになってるのはあえてツッコミはしなかったが、伝言をしてくれると分かって嬉しかったのか気分良さげに北沢は帰っていった。
はぐみside
〜北沢家 はぐみの部屋〜
こころんの家を出て自分の家に戻ってきたはぐみはある人に電話をする。
「もしもーし!たっくん!!」
『はぐみちゃん?どうしたの、僕になにか用?』
「うん!実はね…」
はぐみはたっくんにふわキャラ選手権の事とか色々伝える。
『なるほどね…うん、僕にできることなら協力させてもらうよ』
「ホント!?ありがとー、たっくん!」
はぐみは嬉しくてベッドから起き上がる。
『でも…』
「どうかしたの?」
『協力するのはいいとして…他にも協力してくれる人っているの?』
「うん!かーくんとあーちゃんにも呼びかけたんだ!そしたら喜んで手伝ってくれるって!」
『香澄と市ヶ谷さんか…了解。手伝う日とか決まったらまた連絡してね』
「はーい!」
たっくんとの電話を終わらせたはぐみはまたベッドに寝転がりぬいぐるみをぎゅっとする。
「楽しみだなぁふわキャラ選手権!ミッシェルと全力で勝負したいなぁ〜」
???side
「ふわキャラ選手権…か。ってことになると商店街の人から布生地を分けてもらうことになるのかな…」
はぐみちゃんの話を聞いて僕は早速布生地を買いに家を出て、商店街に丁度よく売ってる店があったのでそこである程度集めた。お金的にはそれほどの出費にはならなかったのが幸いだったよ。
「これくらいあればいいのかな?あとは香澄と市ヶ谷さん達と一緒に作る日取りを決めて…と」
一応はぐみちゃんにも連絡入れとこっと…
廻寧side
〜ふわキャラ選手権当日 会場近辺〜
「っかし、こんなにもふわキャラ?がいるんですね花音さん…」
「う、うん…すごいね」
「人多くないか?俺帰りたいんだが…」
あまりにも人が多くて酔いそうになった俺は美咲…もといミッシェルに助けを求める。
「我慢してよ。今日はお兄ちゃんと花音さん、こころ達はあたしのサポート兼応援ってこと出来てるんだからさ」
応援するって約束だしな…言った本人が行かないってのは俺としても釈然としねぇから。でも…
「コミュ障には厳いなこの人の多さ…うぐぅっ….」
思わず人混みに耐えられそうになくなり、吐きそうになる。
「り、廻寧くん…酔い止めあるよ?飲む?」
「さんきゅぅ松原…」
松原から酔い止めを貰い自販機で購入した水でなんとか踏み留まることが出来た一方でこころと瀬田は…
「ミッシェルー!頑張ってー!あたしもリンネーもみーんな応援してるわー!」
「私もこの団扇で参戦しよう!さぁ羽ばたけミッシェル!!」
人目を気にせず美咲にエールを送っていた。俺と松原は美咲に「頑張れ」と一言送ってこころ達のほうに向かう。
「お前らな…少しくらい人目気にしろよ…身内だとわかると恥ずいだろ」
「あは、は…廻寧くん。こころちゃんにとっては精一杯美咲ちゃんを応援してるんだよ…」
苦笑いで松原がフォローに入る。
「ミッシェルに頑張って欲しいのは勿論だが…しかし」
「どうした瀬田?」
「いや…はぐみが来れなくなってしまうなんてね…まさか風邪を引くとは」
心配してるからか瀬田の表情に違和感を感じたのかこころが瀬田の前に出てくる。
「大丈夫よ薫!来れなくなったはぐみの分まであたし達で応援するわよ!」
「…そうだね、こころ。私達がしっかりしないとはぐみに失礼だ」
いつもの調子を取り戻した瀬田は美咲に視線を向けて応援を始めた。こういう時のこころはある意味頼りになるなと俺は思い、思わずこころに視線を向ける。
「どうしたの、リンネー?」
「えっ?いや…なんでもない…」
「?」
視線に気づいたこころが俺を見て、俺は慌てて目をそらす。
(……なんで目を逸らしたんだ俺?)
よく分からない感情に悩まされながらもふわキャラ選手権開催のアナウンスが商店街に流れた。
(まぁ気にしてもしゃーなし。今は美咲…と、北沢の応援だな。それにしてもどこにいるんだ北沢は?)
辺りを見渡すと色々なキャラの中にカラフルな色でツギハギ跡が残っているウサギがいた。確か名前が…『マリー・アンドロメダ』だったか?
(まさか…あれじゃないだろうな?いや、考えすぎか)
美咲/ミッシェルside
(はぁ…始まっちゃったよ…)
あたしはふわキャラ選手権が始まったことに若干落胆したけど気を取り直して競技に臨む。この選手権ではいくつかの競技でふわキャラ達が競い合って最後にお客さんや審査員から評価ポイントが高かったのが優勝だそうな…
(こころ達だけじゃなくてお兄ちゃんも来てくれたし…頑張らないと、ね…)
『ではふわキャラのみなさーん!最初の競技は走り幅跳びでーっす!エントリー順に飛びますので準備お願いしまーす!』
え?走り幅跳び?体力測定以来だよ…と言うかふわキャラってそんなことしないよね?
「ミッシェルー!あなたならどこまでも飛んでいけるわー!!」
「さぁ!銀河まで飛ぶんだミッシェル!!」
「が、頑張ってぇ〜、ミッシェルぅ〜」
「美s…ミッシェル…止まるんじゃねぇぞ...」
『キボーノハナー』
こころ達が応援してくれている。花音さんも気を使ってミッシェルって病んでくれてるし。…でもお兄ちゃん、応援してくれるのはあたしとしては凄く嬉しいけどそれは死亡フラグみたいなやつじゃないかな!?別に銃で撃たれたりしないからねっ!?あれ?今アナウンスの人「キボーノハナー」って言ってなかった!?
「っとと、競技が始まる前にツッコミ疲れになっちゃう」
あたしの番が回ってきたのであたしはなんとかいい記録を出せるように飛んだ。結果は2m63…か。あれ?暫定1位だ。
「意外と1位狙えるのかも…」
そう思っていた矢先、わっと歓声があがる。振り向くとカラフルなウサギが最高記録をたたき出していた。
『これはーっ!すごいです!マリー・アンドロメダの記録3m98ーっ!?やばいやばい!語彙力なくなっちゃうよこれ!?』
(やばっ…って言うかマリーの中身ってもう確定じゃん…)
あんだけ運動神経がいいのは該当するのが一人しかいない。
「…………」
マリーがあたしの方を見るとそのまま自陣地の方に行ってしまった。それを見ていた花音さんとお兄ちゃんがあたしの方に駆け寄ってくる。
「美咲ちゃん…凄かったね、マリーのジャンプ」
「ってかマリー・アンドロメダ?だったか?あれの中の人って…」
「お兄ちゃんも分かったんだね?」
「いや、あんなジャンプと身のこなし。運動神経の良さが分かる。マリーの中の人は……」
はぐみ/マリーside
「ぷはあっ!」
被り物を外してはぐみはシートの上に座る。
「お疲れ様、はぐー!はい、これ!」
「ありがとかーくん!」
はぐみはかーくんから水を貰って一気に飲み干す。
「北沢さん…すっげージャンプだったな…お前もそう思うだろ?滝河?」
「すごいよねはぐみちゃん…運動できるってのは知ってたけど僕が知る以上だよ?」
「はぐみは凄いんだよたっくん!もーっと褒めてもいいんだからね?」
「あまり調子に乗ってるとミッシェルに負けちまうぞ〜?」
あーちゃんがニヤニヤしながらはぐみに言うけどみーくんがミッシェルに伝言してくれたからだいじょーぶ!ってはぐみは言う。
「はぐみちゃん、はいコレ」
「これ何たっくん?」
もらった包み紙の中を見るとチョコレートが入ってた。
「糖分補給したいだろうなって思って僕が作ってきたんだ、生チョコ」
「ありがとたっくーん!」
「滝河…お前スゲーな」
「雄天くんは凄いんだよー!」
『なんで香澄がドヤ顔なのさ!(なんだよっ!!)』
あーちゃんとたっくんが声を揃えてかーくんに指摘してると次のアナウンスが流れてきた。はぐみはたっくんから貰った生チョコを口に放り込む。
「よっし!はぐみ頑張ってくるね!見ててよかーくん!あーちゃん!たっくん!」
初夏なんてレベルじゃない暑さが続き、本格的に夏になると蚊が飛んでくるので夏は苦手です。