臆病な兄と奇天烈集団   作:椿姫

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仮入部、体験入部を始めた廻寧と燐子。はてさてどうなるでしょう…

では、どうぞ。


第28話 深緑と黒耀のラルゴ 〜黒ずむ家庭科部と剣道〜

「テニスラケット、初めて持ったけど…案外軽いな」

 

美咲に案内されてテニス部の部室に来た俺は早速ラケットを持たされる。

 

「あんまり振ってラケット投げ飛ばさないでね?」

「間違っても俺はそんな事しないの知ってるだろーが。ってか美咲、部活戻らなくていいのか?」

「今から戻るから大丈夫。あと、他の人とか先輩達にお兄ちゃんの事伝えてくるからお兄ちゃんは動きやすい格好に着替えて待ってて?」

 

そう言い美咲は部室を出ていくのを見てから鍵を閉めて自分のカバンやらを置いて動きやすい格好になる。まぁ制服のズボンを軽く捲って髪をヘアゴムでまとめるくらいしかしてないげど。部室は男女共用になっていて男が使えるのは青、女子は赤って色事に分けられているから有難い。鍵は内側からしかロックをかけれないから覗きとか間違って扉を開けないように配慮もしてくれてるからマジで助かる…

 

「ふぅ…こんなもんか」

「お兄ちゃーん?おっけー?」

 

扉の先で美咲の声がしたので俺は「問題ねーぞ」と一言声を掛けてから鍵を開け部室から出る。

 

「んじゃテニスやってみるかー…ってどうした美咲?」

「へっ!?いや…お兄ちゃんが髪を後ろでまとめるのが珍しいなーって思ってて」

「そうか?部屋だと髪まとめることは多いぞ俺。それよりも早くレクチャー頼むわ」

「そうだった。じゃ、行こっか」

 

美咲に案内されて俺はテニスコートへ向かった。

 

「最初は軽くラリーとかでいい?」

「ラリー…打ち合うってことか?」

「ん。そゆこと、まぁ物は試しって言うしやってみよ」

 

 

 

燐子side

 

 

弓道部に案内されたわたしは、渡された弓道着に着替えて氷川さんの元に行く。

 

「氷川さん、お待たせ…しました」

 

氷川さんは声に気づきわたしの方に振り向く。

 

「よく似合ってますよ白金さん」

「あ、ありがとうございます……」

「では…早速、やってみますか?」

「そ、そんないきなり…」

 

たじろぐわたしに氷川さんは優しく微笑む。

 

「大丈夫ですよ、私がサポートします。それに先にやってみせた方がわかりやすいと思うので」

 

そう言うと氷川さんは弓を手に取り、そして的を目掛けてゆっくりと弓を引き、矢を穿つ。

 

氷川さんが放った矢は的の真ん中をしっかりと射抜いていた。見ていた他の弓道部員の人も流石氷川さんと言わんばかりの表情を浮かべている。

 

「ふぅ…」

「す、すごい…流石氷川さんです」

「そんなことはありませんよ」

 

わ、わたしもやってみようかな…。座りながら見ていたわたしは立ち上がって弓道具を手に取る。

 

「あ、白金さん。これを手につけてください」

 

氷川さんから手に嵌めるゴム製のグローブを渡される。

 

「木くずとかで手が荒れるのを防止してくれますよ」

「ありがとう…ございます」

 

グローブを手に嵌めて改めて弓道具を手に取る。

 

(あ、さっきよりも手に馴染む…もしかしたらこれって…いける、かな?)

 

「矢を放つときは無心になったり、集中すると気が楽になりますよ?弓を引くのはさっき教えた通りです。まずはやってみましょう」

「は、はい!」

 

わたしは数十メートル先の的に身体を向けてゆっくりと弓を構える。

 

(集中集中…、無心になる、か…よし!)

 

わたしは力を込めて弓を引き矢を穿つ。ズダァァンと音がなり矢が的に刺さる音が部室内に響き渡る。見てみると、私が放った矢はさっき氷川さんが当てた矢と殆ど同じとこに刺さっていた。

 

「あ、当たった…?」

「白金さん…凄いじゃないですか!初めての人でここまでできるなんて!」

 

氷川さんが座っていた椅子から立ち上がりわたしの方に向かってくる。

 

「いい、いいえ…そんなことないですよ…氷川さんの教えがよかったからですよ…」

「謙遜しないでください。自分に自信持ってください白金さん。もし、白金さんが良かったらこのまま弓道部に入部してみt」

 

氷川さんのセリフを遮るように放送が鳴った。

 

『鰐部七菜です、生徒会の皆さんに連絡致します。この後学園祭予算案について会議を行いますので生徒会室に集まってください』

 

放送が終わると氷川さんはいつの間にか制服に着替え終わっていて他の部員の人に断りを入れていた。

 

「すいません白金さん。私、これから生徒会に行かないといけなくなって…」

「わたしはだ、大丈夫です。氷川さんは生徒会に行かなきゃ…」

「心配してくれてありがとうございます」

 

氷川さんはわたしにうっすらと微笑みそのまま部室を出ていく。見送ってからわたしも弓道着から制服に着替えて荷物を持って部室から出ていった。

 

「ふぅ…次、どこに行ってみよう?」

 

とりあえず他の部室も回ってみよう…そう思っていると後ろから声を掛けられる。

 

「あれ?リンコさんじゃないですか!」

「わ、若宮…さん?」

 

 

廻寧side

 

 

「あ、あぢぃ…づ、疲れだ…」

「お兄ちゃん大丈夫?」

 

ラリーを終えた俺はベンチに座って飲み物を飲んでいる。

 

「まさかあんなに動くなんて思わなかったぞ…」

 

最初は軽く打ち合うって言ってたけど美咲がどんどんスピード上げてって俺がボールに追いつけなくなるしよ…その一方で美咲はピンピンしてたけど。流石テニス部だぜおい。

 

「まぁでもお兄ちゃん結構動けてたじゃん?ずっと前の体育祭の時よりマシになったんじゃない?」

「それは一理あるな…長距離は苦手だけど」

「あ、あはは…どうする?休憩したらまたラリーする?」

「いや、流石にやめとく…」

「そっか….」

 

俺の返答に美咲は表情を変える。

 

「でも、さ…お兄ちゃんと一緒にこういうこと出来てあたしは楽しかったよ。また、出来たらいいなって思ってる」

「そうか…ま、そのうちあるといいな。じゃあ俺はそろそろ行くぞ」

 

俺はベンチから立ち上がり美咲に、部活がんばれよと言い残し荷物を取りに部室へ戻った。

 

「さーて…次はどこいくかな?」

 

荷物を持って次はどこに行くか考えてると、何やら嗅いだことのないような謎の異臭がした。

 

「ん?なんだこの匂い…うげっ!?なんじゃこりゃぁ!!」

 

異臭の正体を探ってるとそれは近くの家庭科部からだった。周りを見ると他の奴らも異臭で困惑している。

 

「か、家庭科部……?なんでこんなとこから異臭が…?」

 

恐る恐るドアをノックするが返答がない。ドアノブに手をかけるとドアが開いていた。開けてみるとそこには…

 

「……なんだこりゃあ」

 

家庭科部と思わしき人と数人の男が倒れていた。それだけではなくコンロの上には黒く蝕まれたフライパン、その中には色褪せた野菜と肉が転がっている。家庭菜園で設置してあったのか何かの苗やら種が見るに耐えない事になっていた。

 

「アンタら大丈夫か!?」

 

駆け寄ると倒れていた数人の男が立ち上がる。口には何かを食べたようなあとが付いていた……もちろんそれも黒ずんでるが。

 

「……あ、あんた、助けに来てくれたのは嬉しいが…はやく、逃げろ…ごふぅ」

「あ、あれは食い物じゃない…味の大虐殺だ…」

「体力回復どころか…し、死人が出る…」

「は!?し、死人?大虐殺?な、なんの話をして…」

「ふぅ…やっと黒ずみが落ちたぁ…ってあれ?廻寧くん?」

 

その時、俺に声をかけてくる奴がいた。振り向くとそこにはエプロンを付けている丸山彩の姿があった。

 

「ま、丸山…この惨状はなんだ?ってかお前は何してんだよ?」

「え、えっとね…」

 

黒ずみと異臭の原因と思われる丸山が俺に事情を説明した。どうやら家庭科部に体験入部して、部員に渡されたレシピ通りに作ったらこうなった…との事だ。にしてもよ…

 

「…なんでピーマンの肉詰めでこんなダークマター作り出すんだお前は!?」

「だ、ダークマターじゃないよ!私はレシピ通りにやっただけだもん!」

「レシピ通りにやって何故この大惨事になるんだよ!?えげつねェ程の異臭だぜオイ!せめて原型とどめてない状態で完成はしないでくれ!」

「つ、次はきっとちゃんと出来るもん!」

「今のお前の言葉に説得力なんてあると思うな!!…けど」

 

俺は頭を抱えながらバッグの中からタブレットを取り出して栄養学と料理関連のアプリを開く。

 

「り、廻寧くん?」

「丸山…もう一度1から作り直してみろ?材料はあるよな?」

「へ?う、うん。家庭科部の人が『これは好きに使っていいやつだから』って」

「よし…」

 

死屍累々状態の家庭科部員たちを1度外に放り出して俺は丸山に知ってる限りの知識を叩き込むことにした。

 

「おい待て丸山ぁ!ピーマンの種とワタは取り除こうとするな捨てるなぁ!」

「ここって食べられない部分じゃないの!?」

「んなわけねぇだろダァホ!!種とワタにはピラジンとか栄養が豊富にあるんだぞ!」

「ぴ、ぴらじん?」

「ピラジンには血行促進効果があるんだよ!血液をサラサラにする効果もあれば脳梗塞や心筋梗塞の原因とされる血栓を防ぐことだってできる!それ以外にも、冷え性の改善、育毛効果が認められてんだぞ!さらに言えば種にはカリウムという成分が含まれているわけだがカリウムってのは、体内の余分な塩分や水分を排出する役割を持ってて肌のむくみ改善にも繋がるんだ!いいか!!」

「は、はいぃ!?」

 

引き篭もってた時に培ったクイズゲームで得た知識と馬鹿みたいにタブレットに入ってる専門学書のアプリをフル活用すること数十分…丸山は何とか料理ができるくらいまでにはなった。

 

「お、美味しい!すごく美味しいよ廻寧くん!」

「よ、ようやく…お、終わった…」

 

俺はフラフラしながら家庭科部を出て行こうとくる。

 

「廻寧くん?どこ行くの?」

「疲れたから飲み物買って休むんだよ…それと丸山」

「?」

「…なにかする時は予め何が必要だとか対策とかはしとけ…ぶっつけでやってトチるよりはマシだろ?」

 

そう言って俺は家庭科部から素早く立ち去った。これがきっかけで今後何かしら苦労するなんてことは梅雨知らずの俺は近くの自販機まで駆け込む。

 

「つっかれだ…教えるのがこんなにめんどくて大変だとはな…」

 

買った飲み物をグイッと一気に飲み干す。

 

「ぷはっ…生き返るぅぅ…」

 

そろそろ帰るかな…色々疲れたし帰ってネトゲよりも寝たいし。

 

「…………ドー!」

 

ん?なんか聞こえるぞ。誰かが大きな声で叫んでいるような、そんな声だった。体育館からか?

 

「ブシドーーーーーーーーーー!!」

 

スパアァン!!と言う音と木が撓るような音が同時に響き渡る。ってか聞いたことあるぞこのフレーズ…と、言うかブシドーって言うやつなんて一人しかいないだろ…そう思いながら今度は体育館に足を運ぶことした。

 

「さぁ、リンコさんも一緒にレッツブシドーです!」

「は、恥ずかしいです…そんなに大きな声…出せない、ですよ…」

「恥なんてありません!慣れてしまえば楽しいですよ…って、リンネイさんじゃないですか!!」

 

そこにいたのは剣道部員と、剣道着を着たイヴと先程ゲーム部に絡まれていた女、白金燐子がいた。

 




次回でラルゴ編を纏めてこころや美咲関連のストーリーを書きましょうかね?


次回第29話 深緑と黒耀のラルゴ 〜懐かしき剣道、変えたい自分〜
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