臆病な兄と奇天烈集団   作:椿姫

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かなり更新が遅くなりました。すいません…
美咲、誕生日おめでとうございます!


第3話『花咲川の異空間』

今日は土曜日。いつもの俺なら自宅警備で忙しかったが今日は違う。妹の美咲からライブに来て欲しいとの誘いを受けたのだ。

 

「……休日に出掛けるなんていつ以来だろうな…」

 

早く目が覚めた俺は私服に着替えてリビングに向かう。そこには美咲と美葉が仲良く朝食を食べていた。

 

「おはよう美咲、美葉」

「おはよ、お兄ちゃん」

「おにーちゃん、おっはよー!」

 

美葉が俺に向かって朝イチの"すてみタックル"をしてきた。俺は吹っ飛ばされそうになるが何とかこらえる。

 

「……美葉、寝起きの兄ちゃんにそれはキツイぞ…?( ゚ཫ ゚)ゴフッ」

 

吐血する素振りを見せながらも俺は朝食を食べる。

 

「おにーちゃん!!今日はおねーちゃんたちが演奏するんだよー!!」

「知ってるよ。美咲から聞いた」

「おにーちゃんも見に行くでしょー!?」

「折角の美咲からの誘いだからね…行かないわけないよ」

 

俺がそう言うと美葉も嬉しそうにぴょんぴょん跳ねていた。美咲は頬を赤く染めながら食べてる。

 

「……2人とも、ありがと」

「ん?美咲何か言った?」

「な、何でもないよ!うん!何にも無いよ!じ、じゃああたし、練習あるから!」

 

そう言って美咲は荷物をまとめて練習に向かった。俺も久々に外出してみるかな…

 

「美葉は母さんと行くのか?」

「うんっ!おにーちゃんは……っあ、ご、ゴメン…」

 

美葉は暗くなってしまったが俺はそんな美葉の頭を撫でる。

 

「気にしないでよ美葉?俺の女性不信と恐怖症はすぐには治らないけど、少しずつ……治していくからさ?だから、ね?」

「うんっ…」

 

俺はそう言うと部屋に戻って色々準備をする。実は午前中は出かけようと思っていたからな。

 

「美葉、俺はちょっと出掛けてくるから。多分美咲達のバンドのライブ頃にはいると思うから」

 

美葉は笑顔で行ってらっしゃいおにーちゃんと言ってくれた。久々の感覚だったのかすごく嬉しかった。

 

「外に出たのはいいが…美咲達のライブがあるまで何すっかな?」

 

これだったらまだ家でゲームしてた方がマシだったかも…ゲームしに戻るのもなぁ…

 

「喫茶店とか探してそこで時間潰すかな…」

 

そう言いながら歩いていると「羽沢珈琲店」という店に目がいった。

 

(ここら辺でコーヒーとか飲んで時間潰すか…)

 

そう思い店に入る。すると開口一番珈琲店とは思えない声がした。

 

「ヘイラッシャーイ!何握りやしょー!?」

「イヴちゃん、うちはカフェだから…」

 

……あれ?ここ寿司屋かな?入る店間違えたかな?もう1度看板を確認する…うん。しっかり珈琲店って字がある。俺の目は腐ってなかった。

 

「席に案内します!」

 

さっき寿司屋のセリフを喋った白髪に連れられて席に座り取り敢えずコーヒーと新作メニューと書かれていた林檎のタルトを頼んだ。

 

「それは新作メニューになります!オススメですよ!」

 

さっきの白髪とは違う純粋そうな女子が俺にそう言ってきた。そーなのかと思い一口。うん。美味い。

 

「これはアンタが考えたのか?」

 

俺は思わず自分が女性恐怖症だということを忘れて聞いてしまう。

 

「これは私の幼馴染が考案したんです。ど、どうですか?」

 

俺は「美味かった」と一言言った。嬉しそうにしていた。やっぱり恐怖症とかを克服するにはこうやってし喋ってくしかないのか…さて。食い終わったし帰るか。やっぱりゲームがしたい。

 

「ど、どうしたの?イヴちゃん?ぼーっとしちゃって…」

 

イヴと言われたさっきの白髪は俺を見てガクガクしていた。そして数秒後、俺に詰め寄りいきなり俺の手を握った。

 

「ひっ!?」

「もしかして貴方はリンネイさんですか?」

「…そ、そうっ……だけ…ど……?」

「やっぱりリンネイさんです!ホンモノです!」

「え、えっと…イヴちゃん?ホンモノってどう言う?」

「ツグミさん!リンネイさんは中学時代剣道日本一にもなった事あるすごい人なんですよ!」

 

そう言って若宮は俺のことを尊敬の目でずっと見てた。こういうタイプは結構苦手だなぁ…けど、悪いヤツでは無いことはわかった。普通に喋れるから大丈夫そうだ。美咲と美葉の様に真っ直ぐ純粋な目で俺を見てくれてる。

 

「あ、あのさ…いつまで手握ってるつもり?」

 

俺がそう言うと若宮は顔を赤くして慌てて手を離した。

 

「す、すいま、せん…と、ところでリンネイさんは何してたんですか?」

「?俺は妹のライブが駅前で15時からあるって言うからそれまで時間を潰そうかなと」

「それでしたらワタシもリンネイさんと一緒に行きたいです!いいですか?」

 

まぁいいんじゃないかと俺は返すと嬉しそうにしていた。会計を済ませ俺が店を出る。それと同時に裏口から若宮が出てくる。

 

「では改めましてリンネイさん」

「?」

 

俺が不思議そうに思ってると若宮は自己紹介を始める。

 

「モデル兼アイドルバンド『pastel palettes』の若宮イヴと申します!!よろしくお願いします!」

 

これは俺も自己紹介する感じだな?

 

「奥沢廻寧だ。まぁよろしくな若宮」

「イヴと呼んでください!」

「若みy」

「イヴです!」

 

そう言って少し膨れながら詰め寄り俺のことを上目遣いで見てくる。ってうわ!近い近い!!

 

「よ、よろしくな……イヴ?」

 

俺がそう言うとイヴは笑顔で「ありがとうございます!」と言ってきた。某ドーナツ屋のCMで「この笑顔100円♪」とかあるけどこれはもう100円では収まらない額だ。

 

「時間潰すって言ったのはいいが何するかな…」

 

俺がそうつぶやくとイヴは目を輝かせる。

 

「だったら駅前に行きましょうよリンネイさん!!ワタシ美味しい店いっぱい知ってますので!」

 

そう言ってイヴは俺の腕を引っ張っていった。

 

それから俺はイヴに引っ張りだこにされ昼食もとることとなった。そして気が付くと美咲達のバンドが演奏する時間まであと1時間程となっていた。

 

「イヴ、そろそろハロハピのライブが…」

「えっ?」

 

そう言いイヴはスマホを確認するとかなり驚いていた。

 

「すいませんリンネイさん!こんなに連れ回してしまって…」

「いや大丈夫。間にまえばどうってことは無い、はやく広場に行って場所とっちゃった方がよくないか?」

 

そう言って俺とイヴは駅前広場に行き前の席を座った。その時聞き覚えのある声がした。

 

「あら?廻ちゃんじゃなぁい?」

 

その声の主は後ろの席に座っていた。背の高い男でオカマ口調。俺がクラスに編入した際に話しかけてきたやつ……えっと…

 

「き、君の名は?」

「アタシのこと分からないの?同じクラスの漣 美鶴よ!ってイヴちゃんもいるじゃない?2人でこんなとこで何してるのかしら?」

「ワタシはリンネイさんとハロハピのライブを見に来たんですよ!サザナミさんもですか?」

「アタシは面白そうな事がありそうだっから来てみただけよ?」

 

あぁそうだ漣だったか。

 

「ねえ廻ちゃん?」

「おい漣、廻ちゃんって俺のことか?」

「そうだけど問題かしら?」

「いや、ツッコミするのも面倒だからそれでいい」

「分かったわ。……それで話は変わるけどハロハピのライブを見に行くなんて廻ちゃんも物好きねぇ」

「?物好きってどういう事だ?」

「編入したてだから分からないのも無理ないわ。ハロハピって『変人』の集まりって言われてるのよ?特にボーカルの弦巻こころって娘がこれまたスゴイのよ?弦巻グループのご令嬢でなんでもやりたいと思ったことが実現できるてそれで天真爛漫、掴み所のないあの娘は『花咲川の異空間』と呼ばれるようになったのよ…まぁ本人は気にしてないみたいだろうけどね?」

 

俺はその話を聞いて何となく思ったことが口に出てしまった。

 

「でもそれって噂とかだろ?第一印象とかだけで何でも決めつけられるのは本人が気にしてないにしてもちゃんと見て判断しないとダメじゃないか?」

 

俺が漣とそんな話をしてるとライブの時間となった。ガスの演出と共に4人の女子と一匹の熊?らしきものが出てきた。あれ?美咲はどこだ?時間間違えたか?それとも場所か?

 

『みんなーっ!今日はいーっぱい楽しんでってねー!』

 

金髪のボーカルの女子がそう言うと観客が拍手など指笛で盛り上げる。あれが弦巻こころって女子か……

 

「ーーっ!?」

 

突然頭に何かがよぎる。何だ?初めて見た感じがしない……何なのか分からない……

 

「どうしたんですかリンネイさん?」

「廻ちゃん?」

 

2人に心配されて顔を覗かれる。俺は何でもないとだけ言っておき俺はハロハピメンバーを見渡す。オレンジ色の髪でベースを持ったボーイッシュそうなのと、紫色のポニテで顔が美男子なギター、…あれ?ドラムの奴ってうちのクラスの……松原だったか?アイツもこのメンバーの1人だったんだな…

 

そしてピンク色の熊を見て確信を持った。間違いないな…

 

(あのDJ……美咲だっ!)

 

色々ツッコミ所が多すぎて何から言ったらいいのか分からない。何で美咲が着ぐるみに入ってるのかとかハロハピに入ってるのか…んあぁっ!!考えるほどごちゃごちゃしてくるぅ!……あ、でも美咲、楽しそうだな。顔見えないけど。

 

色々あったがハロハピの曲を全部聞き終えることが出来た。帰ったら美咲を褒めてやろう。そう思いながら席を立って帰ろうとすると声を掛けられる。

 

「リンネー!?もしかしてリンネーじゃないかしら!?久しぶりじゃない!?」

 

声を掛けてきたのはハロハピのボーカルをしていた弦巻だった。ってかコイツ初対面だよな?なんで俺の名前を知ってるんだ?まぁ人違いって言って帰r

 

「ーーーっ!?」

 

さっきのだ。なんだよなんだよ何だってんだよ!?あ、頭が痛い……そ、それ……となんっ、かっ、込み上げてく……る……うぐぅっ!?

 

「リンネー?どうしたの?」

「リンネイさん?」

「廻ちゃん?さっきから震えてるわよ?大丈夫なの?」

 

弦巻だけでなく他のメンバーもどうしたのか駆け寄ってくる。熊の着ぐるみを着た美咲も駆け寄る。

 

「こころんどうしたの?その人と知り合い?」

「こ、こころちゃん……」

「運命の再開かい?儚いなぁ…」

 

(あ……ぐっ……や、やめろ…それ以上来るなっ……あがぁっ……だ、ダメだ……も、もうっ…うぷっ!?)

 

俺はとうとう耐えきれなくなってしまい、ハロハピのヤツらとイヴ、漣の前で膝立ちになって手を付きそのまま、

 

 

 

 

「うぼあぁ!おえぇぇぇぇっ!?ぐがぁぁぁぁっ!?が、がはあぁぁ!」

 

 

 

 

ビチャビチャッ!ベシャッ!!

 

 

 

 

大量に血を吐いた。それを見ていた俺以外は間を置いてから

 

 

 

 

 

 

『きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

 

 

 

 

 

 

と騒ぎ立てた。それを見ていた他の客も騒ぎ出す。や、やば……い……今回もちょっと吐きすぎたな……い、意識がっ……

 

「リンネイさん!?しっかりしてください!どうしたんですかっ!?」

「廻ちゃんっ!廻ちゃんしっかりしなさい!!」

「しっかりしてお兄ちゃん!?」

 

美咲達が……心…配して……るっ……お、起きないと……あがぁ…うぐぅっ…も、もう…ダメだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はそのまま…意識を失った。

 




今日は奥沢美咲の誕生日です!おめでとうございます!
ホントは美咲の誕生日回もと思ってたのですが時間の都合もあってせめてもの投稿になります。

次回は廻寧の過去等について…こころと廻寧に何があったのか…更新ペースは遅くなりますが待ってくれると嬉しいです。

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