臆病な兄と奇天烈集団   作:椿姫

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※廻寧は学園祭初めてって設定でごわす。
氷川日菜に姉がいることを知らない、だから氷川日菜が同じ学校にいると勘違いなう



第30話 廻寧・初めての学園祭

 

廻寧が燐子と知り合う数日前……

 

『なぁ美咲…学園祭って楽しいのか?』

『…え?お兄ちゃん学園祭知らないの!?』

 

俺の発言に美咲は目を見開く。

 

『俺んとこの中学そーいうの無かったんだよ。最近学校で学園祭に向けてどーのこーのって放送とかでよく聞くからな?』

『まぁ一言で言えば楽しい行事だよ。せっかくだしさ、お兄ちゃん学園祭楽しんだら?』

『んな事言ってもなぁ…』

 

 

 

 

 

そして現在…俺のクラスでは学園祭について大盛り上がりだった。生徒会に入ってる美鶴と学園祭の実行委員だかなんかに入ってるやつが話を進めてく中俺はスマホアプリを起動すると松原が俺に話しかけてくる。

 

「り、廻寧くん…」

「ん?なんか用か?」

「えっとね…」

 

話しかけてきた松原からクラスの係について説明を受けた。どうやら俺はクラスの装飾担当らしく松原は1人で持てない荷物を持って欲しいとの事。

 

「まぁ…暇つぶしにはなるか…」

 

松原に案内されるまま装飾の材料を取りに行き、黒カーテンやら白い服を持つ。

 

「っかし…こんなもん何に使うんだか」

「……私たちのクラスは『お化け屋敷』をやるって美鶴くんが言ってたよ?」

 

………は?松原おまえ今なんて言った?え、『お化け屋敷』って言ったのか?いやそんな事ないよな聞き間違いだよな俺を騙そうとしてる…そんなことを考えてると松原が思い出したかのように話し出す。

 

「喫茶店は別のクラスとじゃんけんして負けちゃったからお化け屋敷になっちゃったんだよね…」

 

苦笑いで話す松原を他所目に教室に戻り、俺は美鶴に問いただす。

 

「お、おい美鶴…お化け屋敷やるってのはマジなのか…?」

「?ええそうよ?廻ちゃん聞いてなかったかしら?」

 

あっさり、平然と言い切る美鶴に俺は血の気が引いてく。何かに勘づいたのか美鶴は俺にしか聞こえない声で囁いた。

 

(廻ちゃんまさか……お化けが怖いのかしら?)

(はぁっ!?なっな、なな何言ってんだお前!!)

(…その様子だと図星みたいね?でも大丈夫、アタシは紳士だから秘密にしといてあげる♪その代わりちゃ〜んと学園祭の準備は手伝ってもらうわ♡)

(美鶴テメェ…)

 

美鶴に見透かされながらも俺は渋々クラスの装飾をする事となった。装飾作りをする事数分…別の分野の奴らが困っている様子が見えた。

 

「何してんだお前ら」

 

見兼ねて様子を見に行くと錠前を間違えて付けてしまい、取れなくなっていた。お化け屋敷の中の棺桶やらなんかに使うやつらしい。

 

「奥沢ちょうどよかった!この錠前外してくれないか!?」

「鍵刺せばいいだけだろ?」

「それが…鍵が見当たらなくて」

「鍵どこかで落とした気がするんだ…スペアキーも」

「は?アホかお前ら…ちょっと待ってろ」

 

俺はそう言ってスパナを2本持ってきてロックされてる錠前に付ける。軽く力を入れると錠前はバギンと音を立てて壊れた。

 

「こういう時は1回ぶっ壊すのが楽だ。まぁこのままだと意味ねーからほれ、これで代わりの錠前買ってこい。釣りはいらねーよ」

 

そう言って俺はそいつに1000円を渡して自分の作業に戻ると同じ作業をしていた松原が声をかけてきた。

 

「廻寧くん、錠前を壊すのもすごいけど軽々お金渡せるのも…なんか、すごいね?」

「全然大したもんじゃねーよ」

 

黒カーテンを取りつけ、机を運んでるうちにあっという間に時間は過ぎていきとっくに昼の時間となっていた。学園祭期間内は各自で食うなり準備するなりやっていいらしいし、学校に泊まっても構わないとの事で送り迎えはこころの家の黒服が全面的に協力するとの事だ。マジで学園祭のためにそこまでするこころも黒服も大したもんだぞ。休憩がてら俺は購買でパンを買って教室に戻ろうとすると聞き慣れた声が俺を呼んでいた。

 

「リンネイさーん!」

 

振り返るとジャージ姿のイヴが俺に駆け寄ってきた。袖と頬にはペンキか絵の具かが付いていていて多分クラスの作品作りに精を出していたのが分かる。

 

「イヴも学園祭の準備で忙しそうだな?」

「はい!クラスで喫茶店の準備をしてました!」

 

喫茶店…あぁ、美鶴がジャンケンで負けたのはイヴ達のクラスだったわけか。

 

「確かリンネイさんのクラスってお化け屋敷だって聞きましたけど…」

「あ、あぁ…そうだけど今は休憩中で飯買いに…」

 

目を逸らしながらも答える。

 

「そうだったんですね!あっ!もし良かったらお昼ご一緒してもいいですか?」

「俺、飯食う時は基本屋上だけど良いのか?」

「はい!構いませんよ!」

 

俺はイヴと一緒に屋上まで足を運ぶ。美咲もこころもいないから2人とも学園祭の準備に忙しいんだろうなと思いながら座り込み買ってきたパンを食べる。

 

「はぁ…なんでお化け屋敷なんだよ超めんどくせぇ…」

「リンネイさんはお化け屋敷、苦手なんですか?」

「ぎくっ!?」

 

的を射抜いたイヴの発言に俺はビクリと反応する。気づかれるわけには行かないと思った俺はなんとか誤魔化そうとする。

 

「い、いや別に…そういうわけじゃなくてだな」

「私はお化け屋敷いいと思ってますよ!!寧ろ好きなんです!落ち武者とかが見れるかもって!」

「お、落ち武者?」

 

イヴは立ち上がり、意気揚々と話を進める。

 

「あの古い刀や兜、鎧…錆びやこぼれ落ちた刃…只ならぬ雰囲気…流星堂で見た物とはまた違った素晴らしさがあるんです!すごいと思いませんかリンネイさんっ!?」

「おうわっ!?お、おぅ…」

 

イヴが目を光らせながら興奮気味に俺に迫ってくる。俺は押されながら、ぎこちない返事で対応した。

 

「ってかイヴ…そんなに近いと」

「?」

 

俺に言われてから気づいたのかイヴは俺に近づきまくってた事に驚き赤面しながらその場を離れる。思わず俺も目を逸らしてしまう。

 

「はわわっ!?す、すいませんリンネイさん!」

「い、いや…別にわりーとは言ってねーよ…お、俺食い終わったからじ、自分のクラスに戻るわ!じゃーな!?」

「えっ!?あ、はいっ!」

 

俺はそのまま屋上をあとにした。

 

(何だこの感情…なんであんなに顔赤くなってんだ?そう言えば前にもこんなことあったような…)

 

ふと思い出したのは、こころと俺が一緒に出掛けた時のことだった。観覧車内でこころが顔真っ赤にしながら俺に抱きついてきた事があった。多分今それと同じようなことになってるかもしんない。

 

(……んあぁっ!?考えれば考えるほど訳わかんなくなるっ!?)

 

モヤモヤしながら俺は自分のクラスに戻って作業を再開した。

 

 

イヴside

 

 

(さっきのリンネイさん…ちょっと可愛かったような気がします…)

 

リンネイさんがそそくさといなくなってしまったあと、私は食べ終えた弁当箱をもって教室に戻って作業に入る。

 

(あれがチサトさんやカノンさんから聞いた【ギャップ萌え】というものなのでしょうか…普段はちょっとクールにみえるリンネイさんが可愛く見えてきましたね)

 

「イヴ〜、ちょっとそこの小道具持ってきて〜!」

「っあ!ハイ!」

 

私はいそいそしながら小道具をもって行く。

 

(リンネイさんが気になりますけど今は準備です!でも…もしリンネイさんと学園祭回ることができたら……)

 

 

廻寧side

 

 

「ふぃー…つっかれたぁ」

「みんなぁお疲れ様♪ちょっと休憩しましょ♪」

 

美鶴の掛け声でクラスの全員が一気に脱力する。無理もないよな、だって水分だの菓子食べたりしながらとはいえぶっ通しで作業してたからな。俺はむくっと立ち上がり教室を出ようとすると美鶴に呼び止められる。

 

「あら?廻ちゃんどこいくの?」

「ちょっとそこの自販機までいくだけだ」

 

そう言って財布を持って教室を出て自販機に向かいあったか〜いコーヒーを買ってベランダに行くとひゅうっ、と秋風が身体を刺激する。もう時期雪でも降るのではないかと思うくらい秋風が寒く感じる今日この頃。

 

「はぁ…お化け屋敷苦手なのに今の今までそれの作業やってたかと思うと気分悪くならぁ…」

 

缶コーヒーを啜りながら愚痴るが今更投げ出すのはどうも癪だから仕方無く最後までやるとしよう。そう思い飲み終わった缶コーヒーを捨てて戻ろうとする。

 

「あら?リンネーじゃない!!」

「お兄ちゃんおつかれ〜」

 

声をかけてきたのは髪をまとめているこころと、すっっかりと疲れきっているであろう美咲だった。

 

「お疲れさん…美咲、めっちゃ疲れてるんだな」

「うん…同じくらい動き回ってたのになんであんたはピンピンしてんのよ…運動部のあたしですら結構汗かいたのに……」

 

額の汗を拭きながら美咲はこころをジト目で見る。当の本人こころは美咲よりも汗をかいてないどころかかなりピンピンしていた。こころが運動得意だってのは以前に美咲と北沢から聞いてたってのもあるのか?これって。

 

「リンネーも学園祭に向けて頑張ってたのね!」

「ま、まぁ…な?こころ、その様子じゃめっちゃ張り切ってるみたいだな?」

「当たり前じゃないっ!!」

 

こころはどうどうと胸を張って喋る。

 

「学園祭はクラスのみんなだけじゃなくて先生もひとつになって笑顔で楽しむお祭りよ!!一年に一回しかない高校生活で行事を楽しまないなんて損しちゃうわ!」

 

こういう事を平然と言えるこころは本当に楽しいことを探すのが好きになっているのがよく分かる。基本黒服だけだが、松原と美咲、ハロハピメンバーでもなんでもない俺や周りまで巻き込んでハチャメチャするってのがいかにもこころらしい発想だ。

 

「"笑顔で楽しまないなんて損しちゃう"か…」

「リンネー?」

「お兄ちゃんどうしたの?」

「なんでもねぇよ。ただ…今こころが言った言葉が悪く無いなって思っただけだ」

 

言うと美咲がなぜかニヤニヤしていて、こころはその美咲の後ろに隠れていた。

 

「……ん?どした?」

「お兄ちゃんがそんなふうに言うなんて珍しいね」

「は?どういうことだ?」

 

こころが隠れたのもそうだが、美咲の言った言葉に意味もわからぬまま俺はクラスに戻った。

 

 

美咲side

 

 

「み、みさき…リンネーは戻ったかしら?」

 

あたしは背中に隠れて赤面しているこころにそう言う。

 

「ホント、あんたはどうしてこうもお兄ちゃん前にすると顔赤くすんの…」

「だって…だってぇ…」

「お兄ちゃんが好きなのはもう分かってるけどさ、いちいちこうなってたらキリないよ?」

 

教室に戻る前にあたしとこころは自販機の近くにあるベンチに座る。このまま戻ったら色々ややこしそうになりそうだしね。

 

「こころさ、お兄ちゃんと学園祭回りたいって思ってるんだったらさっさと言った方がいいと思うよー?」

「美咲が言って…あたし、言うのが恥ずかしいの」

 

もじもじしながらこころは答える。それに嘆息しながらもあたしは話を続けていく。

 

「話聞いてましたかー?自分で言わなきゃ意味ないんだよこういうもんはさ。まぁあたしもお兄ちゃんと回りたいけどそうもいかないわけでね」

「どうして?」

「だって当日あたしはミッシェ……ゲフンゲフン、ちょっと色々と用事があるからね」

 

あぶないあぶない…危うくミッシェルって言うとこだったよ。まぁ言ったところでミッシェルが着ぐるみだってことがこころに伝わるとは思って無いけどね。

 

「お兄ちゃんと回りたいなら誘うべき、あたしはもうこれ以上は何も言わないよ」

「うう…が、頑張るわっ!!」

 

 

廻寧side

 

 

「みんなおつかれ〜♡」

 

一通り作業を終えて残りはまた明日、という所で美鶴がやけに気分良さげで戻って来た。

 

「アタシからみんなにクッキーの差し入れ♡調理棟借りて作ってきたわよ♡」

「鶴姉まじかよっ!!」

「すっげー!!さすがクラス1の紳士!俺たちにできないことを平然とやって退ける!そこに痺れる憧れるぅ〜!!」

「美鶴ありがと〜っ!」

 

クラスメイトの奴らが腹が減ったと言わんばりに美鶴が持ってきたクッキーの入った袋に飛びつく。

 

「廻ちゃんも、はい♪」

「おう、サンキュー」

「さぁ、宿泊作業組と帰宅組に分かれて今日は解散ね♡」

 

俺や美鶴達は他の作業メンバーに任せ帰宅、ぶっ通しだった為その疲れからか黒塗りの高級車に追突するなんて事も無く、帰ってからはすぐ風呂に入ってサッパリしてから夕飯を食べた。

 

「ただいまー」

 

夕飯を食べ終わると同時に美咲が戻ってくる。

 

「お兄ちゃん先に帰ってたんだね」

「あぁ、美咲は今の今まで自分のクラスにいたのか?」

「それもそうだけどそれとは別にバンドの練習もあったんだ…ポピパの人達と学園祭で合同ライブすることになってさ」

「それは随分なこった…飯食ったら皿洗っとけよー」

「分かってるよ」

 

俺は階段を上がっていき部屋に戻る。荷物やらを整理し終えてからは脱力したかのようにベッドにダイブしてそのまま寝息を立てた。

 

翌日以降も学園祭の準備は滞りなく進んでいく。あっという間に時間が経ち、ついに学園祭前日まで差し迫った。

 

「みんな〜、明日は学園祭本番よ♡寝坊したり風邪ひいてこれないなんてアタシが許さないわよ〜♡」

「鶴姉それはねーって!風邪ひくわけなんかねーだろw」

 

笑いながらも孔雀が美鶴にそういう。孔雀は以前に太一との騒動で重傷だったけど、部活や身体にはなんの影響も無く今もこうしてチャラチャラしている。

 

「それってフラグってやつよ、くぅちゃん♪」

「ばっ!?フラグはへし折ってやるよ!!」

「まっ、くぅちゃんのフラグはさておいて今日は解散よ♡」

「やっとか…疲れたぜ」

 

他のやつもクタクタになりながら昇降口まで向かい、こころの家の車の送迎で帰っていく。家に帰ってソファでぐったりしてると着信音が鳴る。こころからだ。

 

「もしもし…どうしたこころ」

『り、リンネー…今時間いいかしら?』

「時間いい…と言いたいが疲れてっから手短に頼むぞ〜」

『わ、わかったわ…あのねリンネー…あ、明日の学園祭、あ、あ、あたしと一緒に回って欲しいの!!』

「…………ゑ?」

 

こころの提案に思わず声が出なかった。

 

『えっと…もしかして一緒に回る人決めてたりしたかしら?』

「え?いや、特にそういうのはいねぇけど…なんで俺なんだ?他のやつじゃダメなのか?」

『それは….と、とにかくなのっ!あたしはリンネーと一緒に回りたいのっ!!リンネーじゃなきゃダメなのっ!』

「は、はぁ…そんなに言うのならまぁ、いいけどよ」

『ほ、ホントっ!?』

 

別にこころと回るのがイヤだって訳では無いからいいけどさ…

 

『ありがとリンネー♪明日楽しみにしてるわね!!』

 

電話を終えるとこころは上機嫌で電話を切った。

 

「…………なんだったんだ?」

 

 

こころside

 

 

「言っちゃった言っちゃった言っちゃったわ〜っ!!!!」

 

あたしはベッドの上で枕を抱きしめながら身悶えしてしまう。美咲に言われた通り思い切ってリンネーを誘ったらOKしてくれるなんてすっごく嬉しい!!それに…

 

「さっきから…胸のドキドキが止まらないわ。『恋をする』って凄いのね…こんなにも、リンネーのことばっかり考えちゃう…」

 

あたし…この想いは絶対リンネーに伝えてみせるわ。

 

「うふふ♪早く明日にならないかしら〜♡」

 

 

〜翌朝 花咲川学園〜

 

 

廻寧side

 

 

「リンネー!美咲っ!おっはよ〜う♪」

「おうふっ…朝からビックリさせないでくれ…ふあぁ」

「あんたは朝から元気だねぇ…ねむっ」

「当たり前じゃないっ!今日は待ちに待った学園祭よ!!特にリンネーは学園祭初めてでしょう?あたしがいーっぱい面白い事教えてあげる♪リンネーが笑顔で楽しめるように♪」

 

手を掴まれた俺はそのままこころに連れられてしまう。美咲はミッシェルに入らなきゃ行けないらしくそのまま自分のクラスに向かった。

 

「ったく…どうなることやら」

 

こうして俺は、初めての学園祭を体験することとなった。

 




長らく更新が途切れてしまい申し訳ありません。
最新話読んでいただきありがとうございます、相変わらずの駄文ですけどもこれからもよろしくお願いします。

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