臆病な兄と奇天烈集団 作:椿姫
そんなわけで第7話になります!
いつものように登校してクラスに入って行くと何だかざわついていた。何かイベントでもあるのか程度に俺は考えて席に座ると誰かに話しかけられる。
「ねぇ廻寧くん」
名前を呼ばれて振り向くと水色の髪をした女子が声をかけてきた。た、確かこころや美咲と一緒のバンドにいて名前は…
「…なんか用か松原?」
目を逸らしながら返事をする。
「うっうん!もうすぐ学校で体育祭あってね……それで組み分けが発表されたんだ!」
「だから騒がしかったのか…俺はいいや」
「ふえぇっ!?な、なんで!?」
そんな会話をしてると誰か話しかけてきた。
「わかってねぇな、この体育祭うちのクラスとしちゃあ奥沢の歓迎会兼ねてるんだぜ?だから主役に頑張ってもわらねーと?」
「お前誰?」
「同じクラスなのに…まぁいいや、改めて自己紹介させてもらう。僕は五月晴 雅臣(さつきばれ まさおみ)白鷺女王様の下僕だ!覚えてくれよ?」
「ごめん覚える気ねーわ」
「雅臣くん?何してるのかしら?」
振り向くと雅臣は「女王様!!おはようございます!」と言って土下座をその場で始める。クラスのやつは「いつもの事だな」みたいな目線を送ってる。
「女王様!!鞄お持ちいたします!どうぞ椅子に座ってください!」
「ええ…それじゃあ…膝立ちしなさい?」
白鷺はそう言って雅臣を膝立ちさせると背中に座る。
「ふぅ…あら花音、それと奥沢君かしら?おはよう」
「お、おはよう千聖ちゃん…あれ?廻寧くん?」
俺は自分の鞄で顔を隠す。俺の白鷺に対する恐怖心がめっちゃ膨れ上がった。やばい。コイツやばい。そう思ってると松原が説明してくれた。
「だ、大丈夫だよ廻寧くん…千聖ちゃんは雅臣くんだけにあんな感じだから…ね?」
「それはそれで些か問題だらけだと思うが…」
ってか今更気づいたんだが俺、松原とちゃんと喋れてる。ま、まぁそれはそうとして…
「ハァハァ…女王様…ハァハァ…」
「あら?このイス建付け悪いわねぇ…?」
そう言って白鷺はイス…もとい雅臣の頬を引っぱたく。
「あはぁん!もっと強くぅ!もっと強くしてください!」
朝から変なものを見たせいか変な気分にみまわれた。はぁ……体育祭とか面倒くせぇ…みんなでセーシュンとか聞いてるだけでむず痒い。今日はもうさっさと授業終えて帰りたい……
午前中の授業が終わり俺はあるところに向かって走って行く。それは、
「チョココロネ2つちょうだい!!」
「メロンパーン!」
「俺は限定パンだァ!!」
「フランスパンよこせぇ!!」
「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロングバーガーじゃねーか!完成度高けーなおい!」
購買だ。ここで買って食うパンは美味いと噂に聞いたからな。そして美咲から聞いた話だが今日は限定の「イベリコ豚カツサンドパン〜キャビアフォアグラトリュフ乗せ」が限定40個販売だとのこと。しかもそのパンは1ヶ月に2回しか販売しないとの事だ。俺は数多の男達を押し退けてその限定パンを5つ買ってその場を後にした。そして勢いよく階段を上がって屋上まで行く。扉を開けて屋上の所にある階段を更に登っていくと…
「リンネー!意外と早かったわね!!」
「お、お兄ちゃん…ホントに買えたんだ…限定パン」
そこには美咲とこころが一緒に弁当を食べていた。
「……まさかパンを買うだけであんなになるなんて思わねぇよ…疲れた」
俺はそういいながらふたりの元に行き座り、パンをビニール袋から取り出し一口食べる。
「!?」
「ど、どうしたのリンネー!?」
「お兄ちゃん?おーい、お兄ちゃん?」
「…………ぇ」
『?』
「…………めっちゃ美味ぇ……」
俺は今、猛烈に幸せな気分なのだろう。美味すぎてニヤけそうになる。
「リンネー!?顔が凄いことになってるわよ!?」
「こんなに幸せそうなお兄ちゃん…あたしも初めて見たかも」
俺が幸せに浸ってるとこころがつついてきた。
「どうしたこころ?」
「そんなに美味しいのなら…あたしも食べてみたいわ!!」
「あ、それは思った。お兄ちゃんがそんなふうになるくらいだから美味しいと思うけど」
2人がそう言うから俺はパンを渡すと2人はそれを食べる。
「美味しい……」
「美味しいわ!」
2人にも好評だったみたいだ。そのときこころが何か思いついたのかいきなり立ち上がる。
「そうだわ!」
「どうしたこころ?」
「このパン、うちで作りましょう!そうしたら毎日食べられるわよ!」
な、なん…………だと?この最高に美味いパンが毎日食べられるのか…それは名案すぎる!
「いや待ってこころ」
「あら?どうしたの美咲」
「そんな高級なものいっぱい毎日使ったら…いくらこころでもお金なくなっちゃうよ…」
名案は一瞬で砕け散った。
「そ、そんな……」
「お兄ちゃん…そこまで落ち込まなくても…まだあるんだし…」
「あ、あぁ…そうだな」
そんなこんなでパンを食べ終わる頃には昼休みが終わりそうになっていた。
それから教室に戻っては体育祭の組み分けの紙を渡され各々の説明を受けた。あーマジでダルいわー。ん?赤組白組に分かれてる。えっと俺はどっちかなーっと……
「ふ〜ん、白組か……まぁいいや」
「おっ!廻寧も白組か!僕もだよ!」
「何だ変態ドM雅臣、お前と一緒かよ?」
「ど、ドM!?そんな酷いよ!」
どこが酷いか俺にはわからないんだが。それよりも変態というワードは否定しないんだなコイツ。自覚してるってことでいいのか?
「女王様にも言われたことないのに!!」
もう勝手にやってろ言ってろ他所でやれ。お前の相手は白鷺がしてくれるんだからいいだろ?俺は荷物を纏めて教室を出た。しばらく歩いていくと、
「リンネー!!」
後ろからこころの声がした。振り向くと松原と美咲、あとはオレンジ色の髪をしたボーイッシュそうな女子がいた。
「どしたこころ?」
「今から帰り?途中まであたし達も一緒にいいかしら?」
「こころ…あんた足早すぎ…見つけた途端に全速力で行っちゃうんだもん…」
「ふ、ふえぇ…まってこころちゃん…」
美咲と松原はぜェぜぇと息を切らしそうになってた。
「へー!みーくんのお兄さんなんだー!」
オレンジ色の髪の女子が俺の顔を見る。
「な、なんだお前は…」
目を逸らしながら言う。
「北沢はぐみ!はぐみはこころん達と同じバンドでベースやってるよー!えっと…なんて呼べばいいのかな?」
「お前の呼びやすい呼び方でいい」
「そっか…じゃあ廻くん先輩で!」
「あ、そういえば兄さん、体育祭どっちだった?」
「どっちって?」
「赤組か白組だよ…」
「あぁ…確か白組だったような…」
「そうなのね!?あたしと同じよリンネー!」
「こころと同じか?そりゃ偶然だな…美咲達は?」
「あたしは白組」
「わ、私も白だったよ」
「はぐみは赤だった…で!でもでもっ!お互いベストを尽くそうね!」
何だか北沢がぎこちなかったがまぁいいか。美咲はなにか気づいてる顔だなアレは。そんなことを思いながら帰路を歩いていく。
「じゃあはぐみこっちだから」
「私はこっちだから、じゃあね…」
「花音さん道に迷わないでくださいね」
「だ、大丈夫だよぉ!もう美咲ちゃんったら…」
「あたしはこっち。バイバイリンネー!」
「じゃあなこころ、松原、北沢」
そう言ってそれぞれ家に向かった。
『ただいま』
俺と美咲が揃えて言うと母さんが駆け寄ってくる。あれから母さんとは誤解が解けて喋れるようになった。
「廻寧、美咲おかえり」
「母さん、飯」
「はいはい、すぐに用意するわね」
俺は腹が減ってたからかすぐに飯を食った。飯を食ってからは俺は部屋に行き、買ったミネラルウォーターで抗菌剤と栄養剤を飲んでゲームを付けた。
ゲームをしてて時間を忘れてしまった。時計を見るともう11時だ。ヤベぇ風呂入ってねぇ!あれ?スマホに着信が…
「もしもし?」
『あ!やっとでたお兄ちゃん!』
「どした?」
『早くお風呂入っちゃって。あたしは寝るからね、おやすみお兄ちゃん』
美咲はそう言って電話を切った。
「さて、入るか…」
俺はバスタオルと着替えを持って風呂場に行った。
美咲side
あたしは今電話をかけている。相手ははぐみ。帰りにぎこちなかったからそれのことについて。
『もしもしみーくん?』
「もしもしはぐみ?今ちょっといい?」
『うん!みーくんから電話してくるなんて珍しいね!何かあったの?』
「何かあったのはあたしのセリフだよ…今日の帰りの時、はぐみぎこちなかったよ」
『え?そ、そうかな〜?』
やっぱり何かあるみたいだ。
「……あのさ。はぐみの考え、なんとなく分かるよ」
『え?みーくん?』
「多分、勝ち負けがつくのが嫌なんでしょ?」
『えぇ!?なんでわかったの!?みーくんってひょっとしてエスパー!?』
「エスパーなわけないでしょ…なんだかんだで結構長い時間一緒にいるんだし。少しくらいは考えてること分かるよ」
あたしはそれからはぐみの話を聞いた。はぐみ曰く、『やるからには全力で頑張る。けどチームの勝負がかかってくると……』との事。
『でもでもみーくん!はぐみは大丈夫だから!ちゃんと楽しむから!あっ!そろそろはぐみ寝るねー!おやすみみーくん!明日は頑張ろーね!?』
そう言ってはぐみは電話を切った。あたしはため息をつく。
(大丈夫かな……はぐみって、こうみえて……案外ナイーブなんだよなぁ…)
そんなことを考えながらあたしは眠りについた。
翌日起きてからはお兄ちゃんは体育祭行きたくないって言ってたけど無理やり起こしました。
「お兄ちゃん!遅刻しちゃうよ!」
「うぅ…眠い」
そんなわけで花咲川学園の体育祭が始まろうとしていた。
次回から体育祭始まります!
今回の話は次回への伏線みたいな感じで捉えてもらえればと……
イベントは限定彩獲得してまずはノルマ達成!という感じです!え?ガチャ?さ、さぁ何のことやら……(白目)
次回も見てくれている人のために頑張ります!