臆病な兄と奇天烈集団   作:椿姫

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体育祭編の話となります。

今の所廻寧がちゃんと喋れる女性はこころ、花音、美咲、美葉、イヴ位ですかね?


第8話 花咲川体育祭 午前

 

 

「美咲、離してくれないか?」

 

俺今美咲に手首を掴まれて無理やり登校させられている。俺は手を離すように言う。

 

「だめ」

「何で?」

「だって離したらお兄ちゃん家帰るでしょ?」

「いや体育祭とかダルいしさぁ、ぶっちゃけ参加したくないんだよ…女子だって多いし…」

「そんなこと言ってたら元も子もないよ?克服するんでしょ?」

「それ言われると返す言葉がない…」

「だったら頑張るしかないよ?」

 

俺は観念して学校に行く事にした。まぁ無理くり連れられてる時点で拒否権なんて無いに等しいし。

 

学校に着いてからは体育着に着替えて校庭に集合して長々と理事長の話を聞く。そして俺の知らない校歌をうろ覚えで歌い終わり次は選手宣誓になった。代表の男女2人が理事長の前でやるアレだ。

 

『宣誓!我々花咲川学園生は!スポーツマンシップに乗っ取り!』

「せいせいせい」

「どうどうどうと」

 

多い多い。一個ずつ多いぞ。なんで誰もツッコまねぇんだよ?

 

「た」「た」「か」「う」「こ」「と」「を」「ち」「か」「い」「ま」「す」

 

今度は分けすぎだよ。ってか絶対打合せしただろお前ら。そして周りもなんかいってくれよ…心の中でツッコミしてる俺が変じゃね?頼むから理事長だけでもいい、ツッコミしてくれ…

 

「素晴らしい選手宣誓ありがとうございます!」

 

駄目だこいつ……早くなんとかしないと…

 

そんなわけで花咲川学園体育祭が始まったのだった。そして俺は白組だから美咲達と白陣地に行く。最初の競技は徒競走との事。

 

「な、なぁ美咲…」

「どうしたのお兄ちゃん?」

「あの選手宣誓って…アレでいいのか?」

「お兄ちゃん…気にしたら負けだよ?」

「お、おう…」

 

美咲も気にしてたんだな…

 

「じゃあ、あたしは徒競走の準備あるから…応援してね?」

 

美咲はそう言ってイヴ達が集まっているところに向かった。見送ると後ろから声をかけられる。

 

「リンネー!!」

「どうしたこころ?」

「今からあたし達徒競走に出場するの!応援よろしく頼むわ!」

「安心しろって?美咲もこころも応援すっからよ?」

 

俺がそう言うとこころは笑顔で美咲のあとを追った。

 

 

美咲side

 

 

「つーかさっきの選手宣誓!アレでいいのかよ!?ふざけるにも限度ってものがあるだろうが!奥沢さんだってそう思うだろ!?」

「あはは…市ヶ谷さん…気にしたら負けだって…」

「もしあたしが選手宣誓だったらアレやらされてたのかって考えると……やべぇ、震えが…」

 

市ヶ谷さんと話していると山吹さんとはぐみ達が来た。因みに山吹さんは、はぐみと同じ赤組です。

 

「でもさ、あーちゃんって成績優秀者なんでしょ?生徒代表はあーちゃんしかいないって思ったけど…」

「体育の成績も含めてってなると有咲は別だからなぁ…」

「沙綾、あたし今から帰っちゃダメか?体育祭とか本気でダルいんだけど…ムリ…」

「まぁまぁそんなこと言わないでさ?有咲も赤組でしょ?一緒に頑張ろうよ?ね?」

「そうですよ!」

 

今度は若宮さんが出て来た。

 

「ワタシ達の優勝で間違いなしですよ!なんと言っても赤組には我らが大将、ハグミさんもいますから!」

「我らがって……イヴちん大袈裟だよぉ〜」

 

そんなことを話してると今度は丸山先輩が来た。

 

「みんなも赤組?よかったぁ〜、仲のいい子と別々になっちゃって不安だったけどみんながいるから安心だよ〜」

「あ、アヤさんも赤組ですか!嬉しいです!よろしくお願いします!」

「うん!よろしく!今日はチアガールもやるから赤組を目一杯応援するよ!」

「徒競走だから…出るのは有咲とはぐみ…こころと美咲だね?両方とも頑張って!」

 

山吹さんはそう言って赤組陣地に戻っていった。

 

「ミサキさんミサキさん」

「ん?どしたの若宮さん?」

「リンネーさんって白組ですか?」

「え?う、うんそうだけど?どうかしたの?」

「じゃあ後でリンネーさんに『お互い頑張りましょう』って伝えてくれますか?」

「そんなことなら全然いいよ?」

「ありがとうございます!」

 

さて、あたしは徒競走頑張りますか…

 

 

廻寧side

 

 

「雅臣くん?ちゃんと椅子らしくしなさい?」

「あひぃ!ごめんなさい女王様!」

 

白組陣地では白鷺が雅臣にいつも通りしつけをしていた。なんだろう…雅臣が今日いちばん輝いて見える。叩かれてあんな表情できるのはあいつだけだ。

 

「まさか白鷺まで白組だとは…」

「あら廻ちゃん?あなたも白組かしら?」

「そのオカマ口調は漣 美鶴か?」

「正〜解♪名前覚えててくれて嬉しいわ♪」

「個性がつえーから嫌でも覚える」

「そんなつれない事言わずにほら、そろそろ美咲ちゃんが走るわよ?応援しないと?」

 

美鶴に言われて見ると美咲達が走り出した頃だ。

 

「ほらほら廻ちゃん!おっきい声で応援しなさいって♪」

「…頑張れ美咲」

「美咲ちゃーん!廻ちゃんが頑張れって言ってるわよ!」

「ちょっ、おま声でけーって…恥ずいだろーが」

 

声が届いたのかなんと美咲が1等でゴールした。

 

「そう言えば美咲、前にテニス部だって言ってたな…だったら運動できてもおかしくないな」

 

俺がそう呟く。美咲はゴールした時に俺が見てることに気づいたのか表情を僅かだが緩めていた。

 

(後で褒めてやるか…あんなにがんばって走ったんだからな…)

 

美咲が走り終わって次の走者を見ると昨日会った北沢がものすごい早さで走っていた。それを追うように猫耳のような髪をした女子と男子諸々が走ってた。アイツ早くね?カタカナで表現するなら『バビューン』だったぞ?そんな事を思ってるとアナウンスが流れてきた。

 

『次の徒競走は2年生全員参加となりますので準備をお願いします』

 

………は?

 

「どうしたの廻ちゃん?そんなに顔青くして?」

「2年生全員参加って幻聴が…」

「幻聴じゃないわ、ほらいくわよ?」

 

そう言って美鶴が俺の腕を引っ張っていく。

 

「離せぇ!!離せ美鶴ぅ!!シニタクナーイ!!シニタクナーイ!!」

「こんなに声出す廻ちゃん初めて見たわ?これはレアね!」

「何でそんなに冷静なんだよお前!?イヤだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

結局俺は美鶴に連行された。そして長距離を走るハメになった。なぜ俺がこんなに走るのを拒否するのかと言うと……

 

「おえええええええぇぇ」

 

こんな感じに吐いちまうんだ。うぇっ…気持ち悪い…引き籠ってたから運動なんてしてないし体力だって無い方に等しい。

 

「ちょっと廻ちゃんんんん!?なんでゴールした途端に吐くのよ!?たった200m走っただけじゃないのぉ!?ってか臭っ!ゴール付近臭っさ!」

「うえっぷ……美鶴ぅ…自慢じゃないが俺は100m走ると20秒台を叩き出したことあるんだぜ?」

「ドヤ顔で言うことじゃないわよ!?あとガッツポーズしないで!まず木陰で休んでなさい!」

 

俺は美鶴に言われて木陰に行く。先生達が俺の吐いたモノを片付けてそこに消臭剤をこれでもかと言うくらいにばら撒いてた。匂いが消えたのを確認してから残りの2年が走った。それから俺は教室まで薬を取りに行き栄養剤などの錠剤を飲んで何とか吐き気は治まったが、長距離とかはもう二度としたくないと思った。軽く走るくらいなら全然いけるけども…

 

薬を飲んで戻って来ると3年男子の騎馬戦になってた。白組陣地に座って見てみるとそこは混沌と呼ぶにふさわしい戦場だった。

 

「帽子よこせぇぇぇぇ!!」

「くたばれごらぁ!!」

「死ぃぃねぇぇぇ!!」

「エクスカリバァァァァァ!!」

「俺がルールだぁぁぁ!!」

「死ねランサァァァァァァ!!」

 

なんだか宝具を使いそうな人達が一瞬だけ見えたが見なかったことにしよう。ってか殴り合いになりかけてるし…止めない方も止めない方だけどいいのかよ?俺は隣に座っていた美咲に話しかける。

 

「な、なぁ美咲…」

「お兄ちゃん、さっき吐いてたけど大丈夫?こころ達も心配してたよ?」

「大丈夫。薬飲んできたし。それよりもさ…」

「?」

「騎馬戦ってなんだっけ…?」

 

目の前の世紀末な光景を見て美咲に問いかける。それに美咲は苦笑いで答えた。

 

「ごめんお兄ちゃん…あたしもこればっかりは…」

『次は1年生女子全員によるダンスです!準備の方をお願いします!』

 

アナウンスが流れてきた。次はダンス…美咲たちが踊るのか…

 

「行ってくるね?」

「美咲のダンスかぁ…」

「…あんまりジロジロ見ないでね?は、恥ずかしいから/////…」

 

おい妹よ。それは翻訳すると『頑張って練習したから見ててお兄ちゃん!』ってことでいいんだな?よしそういうことにしておこう。

 

「お兄ちゃん今頭の中でヘンなこと考えたでしょ?」

「いや全然全く何も?」

「…だったらいいんだけど」

 

そう言って美咲はクラスの女子達と一緒に行った。そしてその踊りは男子達を鼓舞するかの如く大盛り上がりだった。踊りが終わって美咲達が戻って来る。

 

「リンネー!!どうだったかしらあたしたちのダンス!」

「こころはめっちゃくちゃはっちゃけてたな」

「みんなの前で踊るとか…超恥ずいんだけど…」

「んなこと言うなって美咲、ちゃんと踊れてたじゃん」

 

俺はそう言って美咲の頭を優しく撫でる。

 

「あ…ありがと…」

「リンネー!あたしも!」

 

そう言いながらこころは頭を突き出してくる。別に減るもんじゃないしな…俺はそう思いこころの頭も撫でた。

 

「ありがとリンネー/////」

「なんで赤くなってんだ?」

「な、な、何でもないわ!」

「はぁ…」

『次は昼食休憩となります!午後の競技は13時30分からとなりますのでみなさんちゃんと食事を取ってくださいねー!』

 

アナウンスが流れてきた。もう昼食か。さて、弁当を食いに行くか…

 

「お兄ちゃん?どこ行くの?」

「え?何って弁当を食いに教室に戻るだけだぞ?」

「もしかしてお母さんのLIN●見てないの?」

「いや俺母さんのLI●E持ってねーよ?」

 

溜息をついた美咲が携帯のトーク画面を見せてきた。

 

『ごめんね2人とも。ちょっとお仕事が立て込んじゃって3日間は帰ってこれなくなりました♡』

「……こういうわけなんだよお兄ちゃん…」

「『帰ってこれなくなりました♡』じゃねーだろ…どーすんだよ飯無いと腹減りすぎて午後やってけねーぞ俺」

 

後で母さんにはたっぷり説教しないといけないな…そんな事を考えてるとこころが俺と美咲が唸ってるのを見て話しかけてきた。事情を話すと、

 

「それならあたしが持ってきたお弁当があるの!みんなで食べましょ!」

 

そう言って引っ張られた先には、黒服がシートやらなんやら色々出してバイキング見たくなっていた。しかも北沢や白鷺、松原とか他の奴らもいるし。え?、何これ?

 

「2人ともどうしたのよ?」

「いや、だってさ…」

「これ…弁当のレベル超越してるだろ…でも…美味そうだな…」

「リンネー!美咲!遠慮しないで食べて食べて!」

 

俺達はこころが用意した弁当(?)を食べた。高級な食い物ばっかりだったし昨日食べたイベリコ豚カツサンドパンがあったからすぐに食らいついちまった。聞いてきて食いたいもの言ったらすぐに黒服運んでくるんだから驚きを隠せねぇよ…

 

「ふぅ…美味かった…」

 

そんなこんなで訳で飯を堪能したわけだ。金持ちって凄いな。今日改めてそう思ったよ…

 

「リンネー!美味しいかったかしら?」

「あ、弁当の事か?さんきゅーなこころ。お前のおかげで餓死しないですんだわ」

「いやいやお兄ちゃん…餓死はしないと思うよ…」

「あ!リンネイさーん!」

 

声をかけてきた方を振り向くと赤いハチマキを巻いてるイヴがこちらに向かってくる。

 

「どうしたイヴ?」

「ちょっとお話したくて、良いですか?」

「俺はいいけど?大事な話なのか?」

「はい!リンネイさん…」

 

そこでイヴは1拍開ける。

 

「午後も精一杯頑張りましょう!」

「お、おう…?」

 

そう笑顔で一言言ってイヴは走り去っていった。

 

「…何だったんだ…?」

「若宮さんってああいう人だから…」

「そっか。まぁ頑張る、か……?」

「なんで疑問形なの?」

『間もなく午後の競技が開始時刻となります!学生の皆さんは自陣地に集まって下さい!競技に出る人はそのまま準備をお願いします!』

 

午後のアナウンスが流れてきた。こうして俺達は午後の準備に入っていった。





最近話が思いつかない日が続きます……
若干風邪気味(熱はない)だからなのもありますし…忙しいってのもありますね
でも更新できる時には更新しようと思います!お気に入り登録数100人突破してて驚きました!見てくれている皆さんありがとうございます!

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