閃の軌跡SS   作:栖鈴

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なんで書くことになったんだっけ……??

もしかしたら、続くかも??


教団もしもストーリー

 ひんやりとした空気に目を覚ます。ぼんやりした意識が覚醒するまで、そう時間はかからなかった。

 スプリングが軋むベッドから、のろのろと起き上がる。

 変わらない光景が広がる。安堵することは決してない。

 目覚めた場所は牢屋。三方を石の壁に囲まれ、一方は鉄の檻によって閉じられた空間。碌に換気もされない場所だ。空気さえも閉じ込められている。

 牢屋を見渡すと、名前も知らない1人の子どもがすやすやと眠っている。

 その子どもも、自分も、いつまで無事でいられるか。

 

 ここは地獄。

 多くの命が弄ばれ、多くの命が消えていく場所。

 

 

 

 必死に耳を抑えていた。目も閉じて、完全に外と自分をシャットアウトする。

 それでもまだ、あの悲鳴は脳裏にこびりついたままだ。

 

 『相部屋』の子どもが起きてからも、彼と自分に会話はない。視線が合うことはあってもそれだけだ。そのまま、どちらかがふい、と視線を逸らす。

 仲良くするんだよ、と大人は言った。でもそんなことをして何になるのか。お互いにどうせすぐ()()()命だというのに。仲良くすれば、仲良くした分だけ情がわく。情がわいたぶんだけ、別れが辛くなる。

 一時の別れではない。永遠の別れだ。

 自分と彼にできるのは、どちらが先に()()()()か。恐怖に震えながら待つことだけだ。

 『どうか呼ばれませんように』と祈ったって、無駄なことだ。ここに連れてこられたら、最期。唯一の希望は、数秒、数分、数時間、数日だけ、誰かより長く生きることができること。それだけだ。

 

 ベッドの上で膝を抱え、何も考えることなく床を眺めていたその時、足音が聞こえた。複数だ。

 こつ、こつ、こつ。一定のリズムを伴って、次第に大きくなっていく。近づいているのだ。

 子どもが、びくりと体を震わせた。

 そうして、1人の大人が顔を見せた。白衣を着た男だ。

 

「やあ。おはよう」

 

 顔は笑っている。が、感情は籠っていない。

 何も言わない自分たちに気を悪くするでもなく、男はポケットをまさぐって、鍵を取り出した。鍵は檻の鍵穴に吸い込まれ、がちゃりと音を立てた。解錠されたのだ。

 

「じゃあ、こっちの君。来てくれるかな?」

 

 指名されたのは、自分ではない。子どもだ。手を差し伸べられた子どもは、大きくびくりと体を震わせて、仰け反った。

 

「い、いやだ!!」

「嫌じゃないよ。さあ、おいで」

 

 子どもは腰が抜けたのか、その場から動くことができない。後ろに引きさがろうとする腕だけが振り回される。

 

「いけない子だなあ」

 

 男は、頼むよといった。すると、新たな2人の男が姿を現した。白衣を着ていない、私服のような恰好をしている。

 白衣の男が数歩避けると、私服の男たちが牢屋の中に入ってくる。そして、動けないでいる子どもを両脇から抱えて、牢屋から連れ出そうとする。

 

「いやだ!! やめて! 放して!! いやだああ!!!」

 

 男たちから逃れようと、絶叫し、必死に暴れる子ども。最後には、会話したことすらない自分に手を伸ばして、助けを乞うてきた。

 そこからもう、だめだった。耳をふさいで、目をぎゅっと閉じて、縮こまる。自分にできる唯一逃げだった。

 

 

 いつまでそうしていただろう。数分かもしれないし、数時間かもしれない。恐る恐る目を開けると、子どもと大人たちはいなかった。この空間にいるのは、自分1人だけ。

 安堵から息を吐く。自分が助かった安堵ではない。()()()()()()()()()()()感。

 自分は何もしなかった。声を上げて、やめてあげて! ということも、あの子どもを助けるために大人たちに果敢に挑もうとすることも。

 あの瞬間、自分はあの子どもを見捨てた。

 もう二度と、あうことはないだろう。でも。

 見捨てたことが、怖かった。何もできないと知りながら、それでも何もしなかった自分が嫌だった。

 もし自分があの場で()()()()、あの子どもは助かったかもしれない。それすらしなかった。考えもしなかった。

 何もしなかった自分に、あの子どもはどんな言葉を投げかけてくるだろう。受け止める自信がなかった。

 

(いやだなあ)

 

 何もかも。生きることも、あきらめることも、何もかも。

 

 

 

 

「じゃあ、ここで。仲良くするんだよ」

「うぃーっす」

 

 誰かの会話で目が覚めた。

 いつの間にか眠っていたらしい。顔を上げると、ちょうど大人が去って、1人子どもが残されていた。自分のいる牢屋の中に。

 

「お前、ひでえ顔だなあ」

 

 子どもはにやにやと笑いながら自分に近づいてくる。

 おかしいと思った。頭がいかれているんじゃないかと。こんな地獄で、笑っていられるのだ。どうかしている。

 

「ぜってーオレに失礼なこと考えてる……」

 

 子どもは自分を見ながら苦笑する。こんなに積極的に、いや、話しかけてきた子どもは初めてだ。

 少し長めの銀髪に、赤い瞳。目は少し垂れていて、一見優しそうな雰囲気をしているが、眉がきりりとしていて、いかにもやんちゃそうな子どもだ。

 

「オレはクロウ。クロウ・アームブラスト。お前は?」

 

 子どもは名乗りながら、手を差し出してきた。握手のつもりだ。

 名前を聞かれるのも、握手を求められるのも、ここに来てから初めてだ。

 ぽかんとしながら、自分はここに連れてこられる前、父に言われたことを思い出す。

 

『いいか? 父さんとお前の名前は、()()()()()()()()がいる。お前は聡い子だ。お前が信用できて、名乗ってもいいと思った人には正直に名乗りさない。きっと力を貸してくれるだろう。ただ、信用できなくて、名乗らないほうがいいとか、まだ見極めの段階なら、名乗るのはやめておきなさい。接していったうえで信用できると思ったら、そのときは改めて名乗ればいい。わかったね?』

 

 頭を撫でながら、言葉のひとつひとつを刻み込むように自分に言った父。素直に『わかった!』というと、にかっと笑って、抱きしめてくれた。

 まさか、こんな地獄で思い出すとは。

 心の中で笑ってしまうが、それでもあれは、父との約束だ。大切なつながりだ。

 

「俺は……。俺は、()()()()。よろしく、クロウ」

 

 伸ばされた手を握り返す。

 クロウは、ニヤリと挑戦的な笑みを送ってきた。おそらく()()()()()()。そしてクロウは、恐ろしく頭が回る。

 

「ああ、よろしく。んで……」

 

 クロウはずいっと体を密着させ……ホワイトの耳元にささやいた。

 

「オレはぜってー、ここから出るつもりだ。でかい野望があるんでな、ここで死ぬわけにはいかねぇのさ。で、だ。ホワイト」

 

 顔は見えないはずなのに、今のクロウは絶対に笑っている。そう思えてならない。

 

「お前はどうなんだ?」

 

 どくんと心臓が跳ねる。

 どうせクロウの、子どもの妄言だ。ここから出られるはずがない。脱走しようとした子どもはいた。それでも、逃げおおせた子どもはホワイトが知る限り1人として見たことがない。

 しかし、クロウの言葉には、力があった。

 もしかしたら本当に成しえてしまうかもしれないと思わせてしまう。思わずにはいられない、大きな力が。

 

 考えるのなんて一瞬だった。ようは、生き残ればいい。

 諦めていたその先が、光に照らされる。今の自分はどんな顔をしているのか。目を輝かせていそうだ、とホワイトは思う。

 

「そりゃ、もちろん――――」

 

 手を握ったまま、体を起こしたクロウに、ホワイトも不敵に笑いかけた。

 

「生きたいに決まってるだろ」




ホワイト、誰なんでしょうねえ(ニヤニヤ
父、誰でしょうね……(ニヤニヤ

クロウ含め、みんな総じて「子ども」と表記しているので、「ホワイト」はもしかしたらクロウより年上かもしれないです。わかりませんよ?(ニヤニヤ
なにせ「ホワイト」については見た目の情報一切描写してませんからね。

「父」も誰なのか…
Ⅲで言及されまくってましたからね。鉄血の子どもたちとかー!(ニヤニヤ

そのほかにも、「ホワイト」や「父」とは違う伏線入れてますけど気づいてくださるでしょうか!たぶんこの伏線わかったら、ホワイトは…
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