仮面ライダーゲンム~Vengeance is mine~   作:K/K

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殆どゲンムというか檀黎斗は出ていませんが、次の話では活躍する予定です。


Stage 1

 2016年。人類は新たなウイルスの脅威に脅かされていた。その名はバグスターウィルス。

 コンピューターウィルスとして生まれたソレはあろうことか現実世界の人間に感染し、バグスターウィルス感染症、通称ゲーム病という病気を発症させ人々を苦しめてきた。

 バグスターウィルスの最大の特徴は、感染した患者の肉体を乗っ取りバグスターと呼ばれる実体となること。肉体を乗っ取られた患者はいずれこの世に何一つ残すこと無く消滅してしまう。

 しかし、人類もそれを黙って見過ごしている筈も無くそれに対抗する為に国が動き、衛生省によって極秘組織電脳救命センター――CRが組織される。

 この組織に属する若き医者たちは日夜バグスターウィルスから患者を救う為に戦い続ける――筈であった。

 

 

 ◇

 

 

 舗装された道を、コンビニ袋を片手に歩く白衣を着た青年。まだ幼さが残る容姿をしている彼は、CRに勤める研修医宝生永夢。

 日々、バグスターウィルスから患者を救い続けてきた彼であったが、彼も生身の人間。空腹では力も出ず、頭も働かなくなる。何時でも十二分の実力を発揮する為に近くのコンビニで昼食を買って、CRに帰る途中であった。

 このまま何事も無く無事に――

 

「ぐあっ!」

 

 ――という訳にもいかずトラブルが向こうからやってくる

 永夢の前に転がる様にして現れたのは、茶と黒を基調として装甲に覆われた怪人であった。頭部は境目の無いヘルメットの様な形状をしており、顔の上半分黒いゴーグルに覆われており、目らしき白い点が二つ。

 異形な姿。目の前にすれば、普通ならば避けるか逃げるかのどちらかであるが、永夢は躊躇うことなくその怪人に駆け寄る。

 

「大丈夫ですか!」

 

 コンビニ袋を捨てて安否すら心配する姿。まさに医者のあるべき姿と言えた。彼が躊躇うことなくこの怪人に近寄ったのは勿論訳がある。彼は、この怪人が何者か知っているからだ。

 怪人が動こうと手を上げるが、永夢はその手を掴み強引に止める。

 

「動かないで下さい!」

「うう……俺は……彼女を……」

 

 怪人の譫言に永夢は一瞬悲し気な表情になる。

 

(この人も仮面ライダークロニクルで、大切な人を……)

 

 仮面ライダークロニクル。バグスターウィルスを世に蔓延させた全ての元凶、幻夢コーポレーションから発売されたゲーム。しかし、それは様々な思惑が交差することによって生み出された悪夢のゲーム。

 今、目の前にいる怪人こそ仮面ライダークロニクルの参加者〈ライドプレイヤー〉なのである。

 

「すぐにCRに運びます。安静に――」

「あれぇ? 何でお医者さんがここにいるのぉ?」

 

 声はすれど姿は見えず。しかし、ライドプレイヤーが襲われたとなると相手はバグスター。

 そこから先の永夢の動きは流れる様であった。

 白衣の下から覗く私服の腰にいつの間にかベルトが巻かれる。蛍光グリーンの厚みのある外装をしたバックル。中央には蛍光ピンクの大きなレバー。その右部には何かを差し込む為の二つのスロットが備わっている。

 このベルトこそ研修医である彼をもう一つの姿へと変えるアイテムの一つ、ゲーマドライバー。

 永夢はベルトに装着されているサブホルダーから一本のアイテムを抜き取る。

 透明な基盤。その下はピンク色の外装パーツに覆われており、グリップの様な形状をしている。その側面には一頭身のキャラクターと『MICHTY ACTION X』の文字が描かれたシールが貼られていた。

 見る者が見れば、彼が突然ゲームソフトを取り出した様にしか見えないだろう。しかし、これこそが彼を変えるもう一つのアイテム、ライダーガシャット。

 ライダーガシャットに備わっているスイッチを押し起動させる。

 

『マイティアクションX!』

 

 快活な音声が鳴り響き、永夢の背後にゲーム画面が浮かび上がる。その画面に描かれるのはガシャットと同じ『MICHTY ACTION X』。そして、同時に浮かび上がる『Game Start』の文字。

 ガシャットが軌道すると共に永夢の中のスイッチも切り替わる。かつて畏怖と敬意から天才と呼ばれたゲームプレイヤー『M』としての顔が表に出る。

 

「この人の運命は――俺が変える!」

 

 ガシャットを持つ手を前に突き出し、腕を大きく回しながらガシャットを顔の横にまで持っていき、そこにもう片方の手を添え、剣の様に構える。

 

「変身!」

『ガシャット!』

 

 掛け声と共にガシャットがゲームドライバーのスロットに差し込まれた。

 

『レッツ・ゲーム! メッチャ・ゲーム! ムッチャ・ゲーム! ワッチャ・ネェィム!』

 

 永夢の周囲を旋回する複数のパネル。その中の一枚に向かって手を突き出す。

 パネルが永夢の前で止まり、パネルが永夢へと重なる。

 

『アイム・ア・カメンライダー』

 

 重なるパネルが永夢の姿を変える。

 特徴すべきはその姿。胴体の幅と同等の大きな頭部。首など見えず頭から直接生えている様に見える短い手。手に比べれば幾分マシに見えるが、それでも短く感じさせる足。

 顔を覆う大きなゴーグルとそのゴーグルに保護された大きな目。頭部には『く』の字型のピンクのヘッドパーツが天に向かって連なる。

 白い胴体には四色のボタンと一本のゲージ。

 どこかのマスコットキャラクターを彷彿とさせ、とても戦いが出来る様には見えない外見をしていた。

 これこそが永夢のもう一つの姿。仮面ライダーエグゼイド。

 

「うん? 仮面ライダークロニクルにそんな可愛い系のキャラなんて居たっけ?」

 

 背後から聞こえた声に気付き、エグゼイドは振り返り、そして驚愕する。

 丸い頭部。茶色の装甲。胸にはシャッターの様な装甲。自分の背後に横たわっているライドプレイヤーと全く同じ姿。正確に言えば少しだけ違う点があった。両腕にベルトが巻かれ、そこに二本ずつガシャットが差し込まれ、腰にも左右にホルスターが増設されており、そこに三本ずつガシャットが差してある。

 エグゼイドの前に立つライドプレイヤーは計十本のガシャットを身に付けていた。

 

「そんな……」

 

 思わず言葉を失う。今までライドプレイヤーを襲うのはバグスターだという先入観があった。事実、彼はバグスターによってゲームオーバーにされるライドプレイヤーたちを目撃している。

 ライドプレイヤーを襲うライドプレイヤー。この現実にエグゼイドは酷く動揺した。

 

「どうしたの? 何かビックリしてる?」

 

 エグゼイドの動揺を知ってか知らずか目の前ライドプレイヤーが馴れ馴れしく話しかける。

 その両手には倒れているライドプレイヤーから奪ったのか、銃と短剣が一体と化した武器ライドウェポンが一本ずつ握られている。

 

「プレイヤーがプレイヤーを襲うなんて……」

「ルール違反っていいたいの? でも幻夢のホームページにも仮面ライダークロニクルの説明書にもPlayer Killing――PK――はダメって書いてなかったと思うけど……」

 

 信じられない様子で呟くエグゼイド。それを聞いていたが、悪びれた様子は無かった。

 

「そういう問題じゃない! 仮面ライダークロニクルをプレイすること、そしてゲームオーバーになるとどうなるか知っているのか!」

「知っているよ。消えて無くなるんでしょ? 衛生省が散々テレビで言ってたからね。正直、あれ勘弁して欲しかったよ。あれのせいで見たい番組が潰れたし」

「ふざけるな!」

 

 仮面ライダークロニクルはプレイするだけでバグスターウィルスに侵され、ゲーム病に罹る。そして、ライフが尽き、ゲームオーバーになればその肉体は消失し消えて無くなる。それを解決する方法が無い現状、それは死と同義であった。

 だというのにこのライドプレイヤーは知っている上でプレイし、更には他のプレイヤーも襲っている。

 ゲーマーMとしてスイッチが入っているせいで只でさえ口調が荒っぽくなっているが、相手のふざけた態度で、そこに怒りが加わる。

 

「まああれこれ言い争うのなんてどうでもいいじゃない? こっちはやる気、そっちは?」

「待――」

 

 最後まで聞かずライドプレイヤーが一歩踏み出す。たった一歩。だが、その一歩で数メートルはあった距離が詰められ、ライドプレイヤーの間合いとなる。

 腰から顔を狙い、ライドウェポンが斬り上げられる。

 エグゼイドの知っているライドプレイヤーとは比較にならない速度。仮面の下で驚きつつも、身に染みている経験が体を動かし、その場から後退させる。

 眼前を通り過ぎていくライドウェポンの刃。間一髪避けることが出来たエグゼイドだが、ライドプレイヤーはそこから踏み込み、踏み込んだ足を軸に体を旋回。勢いのまま後ろ回し蹴りを胸部に打ち込まれた。

 

「ま、無くても出して貰うけどね。やる気」

「うあああ!」

 

 三頭身の身体が地面を勢い良く転がっていく。転がりながら、永夢はこのライドプレイヤーが普通ではないと考えていた。スピード、パワーの桁が違う。高レベルのバグスターか仮面ライダーと戦っている様な気分である。

 転がり終え、身体を起こす。エグゼイドの目に武器を振り上げて迫って来るライドプレイヤーが映った。

 エグゼイドに向け二つの刃が振り下ろされる。が、鳴り響く金属音。エグゼイドが手に

 持っているハンマーがそれを阻む。

 

「ん?」

 

 突然現れた武器に少しだけ驚くライドプレイヤー。エムはその隙にハンマーを突き上げ、ライドウェポンを撥ね上げた。

 

「おっと」

 

 撥ね上げられた勢いで数歩後退するライドプレイヤー。

 僅かに出来た時間の猶予。それを見逃さず、エグゼイドはゲーマドライバーの中央にあるレバーを握る。

 

「大変身!」

『ガッチャーン!』

 

 掛け声に合わせグリップを引く。中央のモニターが展開。そして、エグゼイドの前にピンク色に光の壁も展開された。光の壁にはエグゼイドに良く似た、だが頭身が違うキャラクターが描かれている。

 

『レベルアップ!』

 

 エグゼイドが目の前にある光の壁に飛び込む。

 

『マイティジャンプ! マイティキック! マイティマイティアクションエーックス!』

 

 エグゼイドから手足胴体が離れ、顔だけになったかと思えば、そこから新たな、そして長い手足が出る。更には新たな頭部も現れ、顔だったものは背部のパーツと化した。

 振り返りその姿を見せる。

 三頭身の姿はエグゼイドアクションゲーマーレベル1。これは患者からバグスターウィルスを切り離す為の姿。

 そして、これがより格闘戦に特化した姿アクションゲーマーレベル2。エグゼイド三頭身の太ましい体はすらりとした体型となり、白の外装はピンクのボディスーツに変化、頭部も標準的なものになりヘッドパーツはより鋭角になる。

 

「ああ、お医者さんってレアキャラだったのか」

 

 変化したエグゼイドを上から下にかけて眺めた後、一人納得する。

 彼の言う通り仮面ライダークロニクル内において、永夢たち仮面ライダーはレアキャラというポジションに置かれており、倒せば強いアイテムが入手出来るという設定にされている。これは仮面ライダーが救うべきライドプレイヤーたちが仮面ライダーに牙を剥く様にする為のものである。

 

「なら、やる気も湧いてくるねぇ」

 

 常に覇気の無い喋り方をしていたライドプレイヤーであったが、少しばかり言葉に喜色が混じる。

 ライドプレイヤーが飛び掛かり、左のライドウェポンを頭部目掛けて振り下ろす。エグゼイドは再びハンマーでそれを受け止めるが、空いた脇腹目掛けて右のライドウェポンが奔る。

 だが、それが届く前にエグゼイドの爪先がライドプレイヤーの右手首を蹴り上げ、その手から武器を手放させる。

 

「あ」

 

 ライドプレイヤーの目線が上空で回転するライドウェポンに向けられた間に、エグゼイドはハンマー――ガシャコンブレイカーの側面に備わっているAとBのボタンの内、Bボタンを三度押し、柄にあるトリガーを押す。

 密着した状態から『HIT!』という文字と派手なエフェクトが立て続けに三回起こり、その文字が示す通りにライドプレイヤーの左手に三度の衝撃が奔った。

 

「わお」

 

 仰け反るライドプレイヤー。エグゼイドは、今度はガシャコンブレイカーのAボタンを叩く。

 

『ジャ・キィーン!』

 

 ガシャコンブレイカーの頭から折り畳まれていた剣身が展開。先端が伸びてハンマーモードからブレードモードになる。

 

「おお。カッコイイね、それ」

 

 呑気に褒めているライドプレイヤーに向け、ガシャコンブレイカーを振り下ろ――すことは出来なかった。

 患者を、命を救う為に仮面ライダーになった。いくら目の前のライドプレイヤーが人を襲っていたとしても、このライドプレイヤー自身も既にゲーム病に罹っている。病人に対し、仮面ライダーとして医者として、ただ力を振るうことは永夢には出来ず、代わりに突き放す様にライドプレイヤーの胸に掌打を打ち込む。

 ライドプレイヤーは数歩後退したもののダメージは殆ど無かった。

 

「ふーん……」

 

 突然、攻撃方法を変えたエグゼイドに対しライドプレイヤーは、見詰めながら先程打たれた箇所を撫でる。

 

「優しいねぇ、お医者さん。まあ、まだやる気が出ないのはこっちの実力不足にさせてもらうよ」

 

 あからさまなことをしてしまったせいで、本気になれないことを易々と見抜かれる。

 

「レベルアップだったっけ? さっきしたの?」

 

 そう言いながらライドプレイヤーはホルスターに入れてあるクロニクルガシャットを一本引き抜く。

 

「ならこっちもレベルアップだ」

『仮面ライダークロニクル!』

 

 ガシャットを起動させ、それを再びホルスターへと差し込んだ。

 

『仮面ライダークロニクル!』

『仮面ライダークロニクル!』

 

 差し込むと同時に他のガシャットも自動的に起動し。音声が立て続け鳴る。

 

『エンター・ザ・ゲーム! ライディング・ジ・エンド!』

 

 見た目に変化は無い。そもそも、ライドプレイヤーにレベルという概念は無い。しかし、ゲーマーとしての勘がエグゼイドに警鐘を鳴らす。

 

「じゃあ、行こうか」

 

 左手に持つライドウェポンの剣背を押し、剣身をほぼ九十度曲げる。短剣モードから銃モードへと変わり、その銃口をエグゼイドに向け、柄にあるトリガーを三度引く。

 銃口から放たれる三発の光弾。それら全てがエグゼイドに向かう。

 ガシャコンブレイカーを構え撃ち落とそうするが、光弾の軌道を見てその動き止める。三発の内二発は、エグゼイドの左右を通過していき、三発目も頭上を通り過ぎていってしまった。

 文字通り的外れな撃ち方。あれほど何かを仕掛ける気配があったのに適当としか言い様のない撃ち方にエグゼイドは逆に動揺してしまう。

 

「うあっ!」

 

 だが、その動揺も背後から襲ってきた三度の衝撃によって掻き消される。

 背中から白煙を立ち昇らせた状態で咄嗟に背後を見る。他に仲間が居るかと考えたが、後ろにいるのは横たわってライドプレイヤーのみ。

 

「びっくりした? 次はもっと分かり易くするよ」

 

 そう言って頭上目掛け光弾を数発発射する。空目掛けて飛んでいく光弾だったが、ある程度の高さまで行くと突如角度を変えて、エグゼイドに向かって降り注ぐ。

 不可思議な軌道を描く光弾に驚くも、その光弾に向けガシャコンブレイカーを振るう。しかし、光弾がガシャコンブレイカーに触れようとしたとき、再び軌道を変えガシャコンブレイカーの刃の下へと潜り、そのままエグゼイドに着弾。派手な火花を散らす。

 

「うあああ!」

 

 堪らず地面を転がるエグゼイド。すぐに立ち上がるが、そのときには目の前に銃モードから短銃モードに戻したライドウェポンを振ろうとしているライドプレイヤーが居た。

 横薙ぎに振るわれるライドウェポン。それに合わせる様に振るわれるガシャコンブレイカー。

 しかし、互いの刃が交差することは無かった。ライドプレイヤーの刃もまた光弾と同じ不自然な軌道を描いてエグゼイドの刃を躱し、胸元を斬り付ける。

 火花と共に『HIT!』の文字が浮かぶ。

 

「くっ!」

 

 痛みに耐えながらもお返しといわんばかりにライドプレイヤーの胸部に横蹴りを放つ。しかし、当たったと思った瞬間、『MISS』の文字が浮かび、その文字が示す通り足から蹴ったという感触が伝わってこない。

 不可思議な戸惑うエグゼイドにライドプレイヤーは肩から脇腹を袈裟切り、刃を返して今度は脇腹から肩にかけて斬り上げる。

 ×の字に斬られるエグゼイド。そこに追撃の膝蹴りがエグゼイドの顎を突き上げた。

 後方へ蹴り飛ばされるエグゼイド。膝蹴りで一瞬意識が飛びかけたせいで手からガシャコンブレイカーが離れ、地面に落ちる。

 エグゼイドは地面に膝を突きながら着地し、軽く頭を振るう。

 相手の攻撃は当たるのにこちらの攻撃は当たらない。何か理由がある筈だが、それが分からない。

 今のレベル2では不利だと考え、新たなライダーガシャットをゲーマドライバーに挿入しようか迷う。

 今所持している『マイティアクションX』以外のガシャットは4つ。その中で一番レベルが低いのはレベル3だが、おそらくそれでは歯が立たない。しかし、それ以上のレベルのガシャットとなると相手が無事で済まなくなる可能性がある。

 苦悩する永夢を他所にライドプレイヤーは地面に落ちてあるガシャコンブレイカーを拾い、しげしげと眺めていた。

 

「へぇー」

 

 握りを確かめ、軽く振った後、ガシャコンブレイカーにあるスロットに注目する。

 

「これは――こうすればいいのかな?」

 

 ライドウェポンを地面に突き刺し、腕のベルトに差し込んであるガシャットを抜いて、ガシャコンブレイカーのスロットに挿し入れる。

 

『ガシャット!』

 

 その音声はエグゼイドの耳にも届く。ガシャコンブレイカーを構えるライドプレイヤーに、エグゼイドもまたゲーマドライバーに挿してあるガシャットを抜く。

 

『ガシューン』

 

 抜いたガシャットをベルトの左腰部分に装備されているキメワザスロットホルダーに挿し込んだ後、ホルダー側面にあるスイッチを押す。

 

『ガシャット!』

『キメワザ!』

 

 エグゼイドは軽く屈み、右足を一歩後ろに引く。その足からは極彩色の光が放たれていた。

 

『ライダークリティカルフィニッシュ!』

 

 ライドプレイヤーのガシャコンブレイカーもまた黒と緑が混じった派手派手しい光を剣身に纏わせる。

 凝縮された力が一点に集い、互いに必殺の一撃を放つ準備が整う。

 

「ふっ!」

 

 先に動いたのはライドプレイヤーであった。

 下から上に向けガシャコンブレイカーを振り上げる。刃の軌跡から三日月状の暗緑の光が生まれ、それが斬撃と化し、地面を砕きながらエグゼイドへ一直線に飛ぶ。

 エグゼイドは曲げた膝をバネにし、向ってくる斬撃へ跳びながらもう一度キメワザスロットホルダーのスイッチを押した。

 

『マイティクリティカルストライク!』

 

 前宙返りをして体勢を変え、極彩の光を放つ右足を前に突き出し光刃を迎え撃つ。

 エグゼイドの放つ光とライドプレイヤーの放った光が衝突し合うとき、凄まじい爆発が生じ、その音が広がると共に地面を覆っているアスファルトが一気に剥がれ、周囲に飛び散る。

 

「くうっ!」

 

 爆発の中から転がり出てくるエグゼイド。体の至る所から白煙が上がっているが、すぐに立ち上がってみせた。完全とは言えないが相手の技を相殺出来た為、見た目よりも軽傷で済んだのだ。

 一方、ライドプレイヤーはというと斬撃を放ったガシャコンブレイカーの剣腹を愛でる様に撫でている。

 

「いいねぇ、これ」

 

 先程の一撃でガシャコンブレイカーをひどく気に入った様子であった。

 エグゼイドにしてみれば新しい武器を手に入れるということは、更なるPKの被害者を生まれることを意味している。ましてやそれが自分の武器ならば尚更取り返さなければならない。

 

「貰っていい? これ」

「いいわけないだろ!」

 

 駆け出そうするエグゼイドに、ライドプレイヤーはガシャコンブレイカーの切っ先を向ける。しかし、よく見ると向けられた切っ先はエグゼイドから少しずれていた。

 

「そっちは放っておいてもいいの?」

 

 その言葉が気になり、切っ先の示す先に目を向ける。

 最初に助けたライドプレイヤーの変身が解除されており、三十代前後の男性が胸を押さえて苦しんでいる。更には体にノイズが奔り、オレンジ色の光が回路図状に体から放たれている。

 男性はゲーム病が発症していた。

 悶え苦しむ男性。

 

「お医者さん、忙しくなりそうだからここまでにしようか」

 

 ライドプレイヤーがエグゼイドに背を向ける。

 エグゼイドは選択を迫られていた。男性を救護するか、ライドプレイヤーと追うか。追えばこれ以上PKの被害を出さずに済む。しかし、ゲーム病で苦しむ患者を見捨てることになる。

 エグゼイドが選ぶ選択は――

 

『ガッシューン』

「大丈夫ですか!」

 

 患者を救う選択をした。変身を解き、すぐに男性の症状を確認する。そして、すぐにCRへと連絡を取った。

 その際、ライドプレイヤーが立っていた場所が視界の端に映る。そこには誰の姿も無かった。

 

 

 ◇

 

 

 CRに何とか男性を連れてくることができ、ゲーム病の症状を安定さられた永夢は、部屋に設置されている机に思わず突っ伏す。ライドプレイヤーとの戦いから立て続けに患者の治療を行っていたので、かなりの疲れが溜まっていた。

 

「永夢、大丈夫?」

 

 伏せる永夢に話し掛けるのは、明らかに医療現場から浮いた恰好をし、少々テンションが高い喋り方をする女性であった。

 髪型はピンク色のボブカット。その頭にはスピーカー型の帽子が乗っている。薄黄色のトップスに袖は白い薄地の布。肩部は露出している。スカートはパニエによって広がっており、音符の形をしたアクセサリーがあしらってある。

 

「ありがとう。ポッピー」

 

 心配してくれたことに疲れを隠し笑顔で応じる。しかし、相手の表情は曇ったままであった。

 永夢を心配する彼女の名はポッピーピポパポ。名前の通り普通の存在では無い。彼女の正体はドレミファビートと呼ばれるゲームから生まれたバグスターであり、それも数少ない人に害意を持たない良性のバグスターである。

 普段は仮野明日那という名と人間の姿で、看護師としてCRで働いている。

 

「元気が無い。何かあったでしょ?」

「……やっぱり分かる?」

「永夢の本当の笑顔がどんなのか私、ちゃんと知ってるからね!」

 

 明るく言われ永夢は少し照れてしまう。隠すつもりは最初から無かったが、言い出すタイミングが中々見つからなかった。しかし、ポッピーのお陰で言い出す機会を得られる。

 

「実は――」

 

 患者をここに運んで来るまでの間のことをポッピーに話す。

 

「えー! ガシャコンブレイカー、取られちゃったの!」

「……ごめん」

「でも、そんなプレイヤーがいるなんて……! 私、許せない!」

 

 PK行為をするライドプレイヤーに怒りを覚えるポッピー。だが、永夢の話はポッピーだけではなく『あの人物』の関心をも引き寄せる

 

「その話、私にも詳しく聞かせてもらおうか」

 

 声の出処は、CRの隅に置いてあるドレミファビートのゲーム筐体。ポッピーの部屋として機能しているそれの画面には、パソコンの前に座っている一人の男性が映っていた。

 恥じらいも無く神を自称し、質が悪いことにそれに相応しい富んだ才を持つ天才にして傲慢の化身。あらゆる人間の悲劇と因縁の糸を辿れば、その先に座す男。

 その名は――

 

「黎斗さん……」

「新・檀黎斗だ! 間違えるなっ!」

 




個人的に書きたかったシチュエーションを色々と書いていく予定です。
時系列としては38、39話の間としていますが、違和感を覚えることもあるかも。
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