仮面ライダーゲンム~Vengeance is mine~   作:K/K

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やっぱり投稿間隔を短くする為に一話の量を減らして投稿することにしました。
その分話数が少し長くなると思います。


Stage 5

 振り下ろされるライドウェポン。エグゼイドの脳裏に受け止めて武器を奪うという選択肢が浮かぶ。だが、その選択肢はすぐにキャンセルすることとなる。

 

『マッスル化!』

 

 筋力の増強により振りの速度と威力が跳ね上がった。

 

「くっ!」

 

 エグゼイドは横に跳び、斬撃を躱す。外れたライドウェポンが床に触れると、床が大きく罅割れる。破壊力を見る限り今のはエグゼイドの力でも受け止めることが出来ない。

 

(厄介だ……!)

 

 通常時と違い、違法改造されたライドプレイヤーはエナジーアイテムを取らずに効果のみを使用出来る。先程のように直前まで使用する素振りを見せないので判断に遅れが出てしまう。

 倒すことだけに専念すれば問題無いが、医者としての矜持が未成年を傷付けることを強く拒む。どうにかして無力化出来ないか思案する。

 兎に角まずは武器を取り上げることに専念し、回避直後のエグゼイドは床を強く蹴って接近。ライドウェポンへ手を伸ばす。

 

『鋼鉄化!』

 

 ライドプレイヤーは片腕に鋼鉄化を施し、盾にしてエグゼイドの手を防いだ。しかし、そうなることは想定内。エグゼイドはライドプレイヤーの腕を掴んで後ろへ跳ぶ。

 

「うおっと!?」

 

 強い力で引っ張られ、ライドプレイヤーは勢い良く前方に倒れかかる。その状態からエグゼイドは手を離す。

 

「ととっ!」

 

 ライドプレイヤーはバランスを保とうと反射的に両腕を振り回す。エグゼイドは再度ジャンプ。ライドプレイヤーの頭上を宙返りで跳び越えながら掲げられたライドウェポンの刃を両手で挟み、ライドプレイヤーから奪い取る。ライドプレイヤーも咄嗟のことでエナジーアイテムの効果を使用することが出来なかった。

 

「あっ!」

 

 声を上げるが最早遅い。エグゼイドは奪い取ったライドウェポンを構える。

 

「……降参して今すぐ変身を解除してくれ」

 

 剣先を突き付けているがエグゼイドは彼を傷付けるつもりはない。あくまで脅しているだけ。

 

「……ふふっ」

 

 ライドプレイヤーは脅されても笑っていた。余裕の表れか、それともエグゼイドの脅しが本気でないことに気付いたのか。

 

「先生。ゲーム好きだよね?」

「……? ああ」

 

 相手の意図が分からないが、取り敢えずイエスと答える。

 

「俺も好き。でも、俺のゲームの楽しみ方って少ーし変わっているんだよねー」

「変わっている?」

「本当ならやれないことをやっちゃう。そこにしか見出せない楽しみ方ってのがあるわけ。つまり──」

 

 ライドプレイヤーは両手の拳を握り締める。

 

「こういうこと!」

『伸縮化!』

 

 エナジーアイテム効果によりライドプレイヤーの両腕が伸びる。先程と同じくエナジーアイテムの組み合わせによる攻撃かと思われたが──

 

『伸縮化!』

『伸縮化!』

『伸縮化!』

『伸縮化!』

 

 ──腕が伸びた状態でエナジーアイテムの重ね掛け。一見すると意味の無い行為。これから、エグゼイドたちにとって驚愕すべきことが起こる。

 

「バグワザ!」

 

 ライドプレイヤーは伸びる両手を同時に突き出した。二つの拳がエグゼイドへ迫る。だが、エグゼイドはライドウェポンであっさりとその拳を受け止めた。伸縮化は相手の意表を衝くものであり、工夫をしなければ相手に大ダメージを与えられない。

 スペックとしてはエグゼイドの方が上回っている。まず通常時で押し負けない。

 そう思っていた。

 

「ぐあっ!」

 

 エグゼイドが発する苦鳴。エグゼイドの胴体に打ち込まれている二つの拳。それは、ライドプレイヤーの肩から伸びた第三、第四の腕から繰り出されたもの。

 

「馬鹿な!? 腕が増えただと!」

 

 我が目を疑うブレイブの前で更に四本の腕が肩部から発生し、合計八本の腕でエグゼイドを殴り飛ばす。

 

「スパイダー」

 

 体の至る箇所を殴られて転倒するエグゼイドを見下ろしながら技らしき名を呟く。

 

「ごほ! ごほ! これって!?」

「どう? びっくりした?」

 

 得意気な様子のライドプレイヤー。伸ばしていた腕を戻すと増えていた腕がブレた後に消えてしまう。

 

「エナジーアイテム『伸縮化』を短時間で上限数以上重ね掛けすると起こる現象だよ。一種の処理落ちだね。ちゃんと腕は伸縮しているけど伸ばした状態の腕がゲームエリアに残るんだ。伸ばしたままの腕にもちゃんと判定がある。最大で腕を八本増やせるからスパイダー」

 

 何が起こったのかを丁寧に説明するライドプレイヤー。しかし、ゲームに関して知識が無いブレイブにとっては説明されても意味不明であった。

 

「一体何が起こったんだ! 研修医!?」

 

 エグゼイドは殴られた箇所を押さえ、咳き込みながら起き上がる。

 

「ごほ、ごほ……恐らく意図的に起こしたバグだ……」

 

 ゲームに関する知識が豊富なエグゼイドは、すぐに相手が何をやったのかを理解する。

 

「意図的なバグだと?」

「ゲームは想定外の操作をすることでバグが発生することがある。あいつがやったのは、その想定外の操作を解析し、バグを自分の意思で起こしたんだ……」

「そんなことが出来るのか……」

「普通は出来ない……特に幻夢コーポレーションのゲームなら」

 

 幻夢コーポレーションのプロテクトの強固さも有名だが、それと同じくらいにバグの少なさも有名であった。完璧と呼ぶに相応しいプログラミングによりバグの発生を許さない。少なくともエグゼイドがプレイした幻夢コーポレーションのゲームでバグに遭遇したことは一度もない。

 しかし、今のライドプレイヤーたちが使っているガシャットなら話は別である。不正コピーの上に違法改造まで施されたガシャット。正規版では出来ないことが可能となる。

 

「因みにこのバグ、テンが見つけたんだよね。コピー品だから面白いバグや使えるバグがあって楽しいよ」

 

 エグゼイドはゲームのルールに従ってゲームをプレイする王道的なゲーマーであるので賛同は出来ない。しかし、そうやってゲームを楽しむ者たちの存在を知っている。褒められるような遊び方ではないが、ゲーマーとして強く否定も出来なかった。

 

「まだまだ見せてないバグは一杯あるよ~?」

 

 挑発するライドプレイヤー。一気に戦い難くなる。相手が何をしてくるのか本当に予想出来なくなった。

 

「ふふっ」

 

 ライドプレイヤーは警戒するエグゼイドたちを一笑した後、駆け出す。狙うのは先程攻撃をしたエグゼイド──ではなくブレイブの方であった。

 

「ちぃ!」

 

 氷剣モードのガシャコンソードを振り抜く。刀身から複数の氷柱が発射される。相手を貫くものではなく、命中と同時に凍結させる捕縛用の攻撃。

 

『ジャンプ強化!』

 

 ライドプレイヤーはエナジーアイテムを使用。読み上げられた通りジャンプ力が強化されたライドプレイヤーは大きく跳躍し、氷柱を跳び越える。

 大ジャンプをしたライドプレイヤーは最高点に達し、そのまま落下するかと思われたが──

 

「バグワザ」

『ジャンプ強化!』

 

 落下が始めるタイミングでライドプレイヤーは空中で跳ねる。変則的な二段ジャンプ。これもまたバグが起こす現象。

 

「エアジャンプ」

 

 空中でエナジーアイテムを落下するタイミングで使用することで発生するバグ。ジャンプ強化のエナジーアイテムを取り込むことで一瞬だけ落下判定が無くなり空中でジャンプすることが可能とする。

 空中での再ジャンプにより天井を突き破る勢いで跳び上がるライドプレイヤー。ライドプレイヤーは天井付近で体勢を変え、足から天井へ突っ込む。そして、天井に足が触れたタイミングでもう一度エナジーアイテムの効果を使った。

 

『ジャンプ強化!』

 

 天井を足場にし、ジャンプ強化により上空から勢い良く落下。落下地点にはブレイブが立っている

 ライドプレイヤーはそのままブレイブへ突撃。埃が積もっている床は二人の衝突の勢いで埃が巻き上がり、二人の姿を覆ってしまう。

 

「ブレイブ!」

 

 埃の中で揉み合う二人。エグゼイドも助けに行こうとするが、そうなる前にライドプレイヤーが飛び出してきた。

 

「へ、へへ」

 

 見せつけるように掲げられた手。握られているのはガシャコンソード。揉み合う中でブレイブから奪っていた。

 

「レアアイテム、ゲット!」

 

 限られたプレイヤーしか手に入れることが出来ない武器を手にし、意気揚々のライドプレイヤー。一方でブレイブは空になった己の手を見詰めている。そして、力が入り過ぎて震える手を強く握り締めた。

 

「それは俺のメスだ……!」

 

 感情を抑え込んでいるが、それでも隠し切れない激情を感じさせる。

 

「今は俺の」

 

 ブレイブの感情を逆撫でするライドプレイヤー。ブレイブは手加減し過ぎたことを思い知る。

 ブレイブは新たなガシャットを取り出す。赤紫カラーの外装。側面には円形のダイヤルが付けてある。通常のガシャットとは異なり二本分の厚みがあり、基盤部分も二又になっており外装に貼り付けられたシールも左右とも違う。

 ガシャットギアデュアルβと呼ばれる特製のライダーガシャットのダイヤルをブレイブは捻る。ダイヤルには外装と同じく左右異なるゲームの名とキャラクターが描かれてある。

 

『TADDLE FANTASY!』

 

 ブレイブの背後に『TADDLE FANTASY』と角を生やし鎧を纏ったゲームキャラクターが描かれたゲーム画面が浮かび上がる。

 

『Let'S Going King of Fantasy!』

 

 ゲーム画面からマントを付けた赤紫と青色の配色の鎧が飛び出し、ブレイブの周りを飛び回る。

 

「術式レベル50(フィフティー)

「──え?」

「変身!」

『デュアルガシャット!』

 

 タドルクエストガシャットが抜かれ、代わりにガシャットギアデュアルβ装填され、レバーが開かれた。

 

『ガッチャーン! デュアルアーップ!』

 

 飛び回っていた鎧がブレイブの頭上に移動し、降りて来てブレイブの上半身に被さる。首元部分から仮面がスライドし、ブレイブの顔へ装着される。

 

『タドルメグルRPG! タドールファンタジー!』

 

 赤紫色を主とした鎧。背後に付けられたマントがブレイブの放つ見えざる力で揺らいでいる。鎧と同色の仮面に側頭部から突き出た一対の黒い角。先程までのブレイブがRPGの勇者だとしたら、今のブレイブは勇者と敵対する魔王或いはドラゴンを彷彿とさせる。

 仮面ライダーブレイブファンタジーゲーマーレベル50。相手が相手だけだった為に手加減をしていたが、厄介なバグ技を使用してきた為に上から力尽くで押さえ付ける為に一気にレベルを上げる。

 

「嘘でしょ!? レベル50ぅ!?」

 

 ライドプレイヤーはファンタジーゲーマーのレベルに驚愕していた。

 

「あの看護師さんといいおかしいって!? こっちはレベル1か2なのに! どういうこと!? 運営側と癒着してるの!?」

 

 理不尽さゆえに喚くが、ライドプレイヤーの指摘はある意味正解。ガシャットギアデュアルβの生みの親は黎斗。仮面ライダークロニクルも本来ならば黎斗がゲームマスターを務める筈であった。運営側と癒着というのはあながち間違いではなかった。

 

「こっちも反則してるけどさぁ! そっちも反則じゃない?」

 

 埋めきれないレベル差について非難するが、ブレイブからすれば知ったことではなかった。

 ブレイブはライドプレイヤーに向けて手を翳す。その手に黒い靄のようなエネルギーが発生。すると、ライドプレイヤーの体も同種のエネルギーによって包まれる。

 

「うん?」

 

 ライドプレイヤーの足が地面から離れる。ブレイブが指を動かすとライドプレイヤーの体が水平になる。ファンタジーゲーマーの念動力がライドプレイヤーの体を操っていた。

 念動力が解除されてライドプレイヤーは背中から地面に落ちる。

 

「痛っ!」

 

 背中を強く打ち、ライドプレイヤーは悶える。

 

「ブレイブ!」

「……分かっている。あくまでこれは警告だ」

 

 ブレイブが言うようにあくまでも警告。実力差を見せつけて降参させるのが目的である。

 

「いてて……」

 

 ライドプレイヤーは背中を擦りながら立ち上がる。

 

「やったなぁ!」

 

 実力差の一端を見せつけたが、ライドプレイヤーは怯むことはなく逆にやる気を燃え上がらせる。

 

『カ・チーン!』

 

 その心情を表すかのよう奪ったガシャコンソードの鍔側面に付けられているAボタンを押し、氷剣モードから炎剣モードに切り替えた。

 

「こっちか?」

 

 もう一つのボタン──Bボタンを叩く。

 

「もう一回?」

 

 更に一回。

 

「これでどうだ!」

 

 三回Bボタンを押したことでガシャコンソードの能力が発動待機状態に入る。初めて触れる筈の武器をゲーマーとしての直感で使いこなそうとしていた。

 

「うおりゃ!」

 

 ガシャコンソードを振り上げながら柄にあるトリガーを指で押す。炎を模した刀身から実際の炎が噴き上がり、ライドプレイヤーが振り抜くと刀身から三日月状の炎が飛ばされた。

 ブレイブは回避する素振りも見せず、炎の斬撃の前に立つのみ。その瞬間、ブレイブの目が一瞬輝く。炎の斬撃がブレイブのすぐ傍まで迫ったとき、炎の斬撃は突如として形を崩す。

 何かに衝突したかのように潰れる斬撃。すると、内包されていた炎が四方へ飛び散る。そのときになって浮かび上がる不可視の障壁。障壁に沿うようにして炎が散ったことでブレイブの正面にドーム状のバリアが張られていたことを知る。

 

「何それー!?」

 

 意気揚々と必殺技を繰り出したライドプレイヤーは叫ぶ。レベル差は分かっていたが、それ以外の能力にも差があり過ぎた。

 

「それは俺のメスだ──返してもらうぞ」

 

 ブレイブがマントを翻したかと思えばマントの端を掴み、腕に巻き付ける。

 

「はっ!」

 

 ブレイブが腕を前方に突き出すと巻き付いていたマントは螺旋状に伸びていき、鋭い先端を持つ槍と化す。

 

「うおっ!?」

 

 ライドプレイヤーはガシャコンソードで咄嗟にガード。剣の腹で受けるがブレイブの一撃の重さにライドプレイヤーは数メートルも床を滑っていく。

 

「お、重い! し、痺れる……!」

 

 手に伝わって来る強烈な衝撃。ライドプレイヤーにとっては味わったことのないものであった。

 

「こ、こうなったら!」

『マッスル化!』

『マッスル化!』

『鋼鉄化!』

 

 内蔵されているエナジーアイテムを使用。筋力と防御力を上昇させ、ブレイブの攻撃に備える。

 ブレイブはライドプレイヤーに手を翳す。

 

「ふっ!」

 

 ブレイブの掌から放たれた黒い光がライドプレイヤーに掛けられる。ライドプレイヤーは防御を固めるが、すぐにブレイブが行っていることが攻撃ではないことに気付く。実態攻撃よりももっと凶悪であった。

 

「マジかよ!?」

 

 ライドプレイヤーは自分の身に起こったことに気付き、絶叫する。

 

「エナジーアイテムの解除!? こんだけレベル差あるのにバフ解除持ちかよ!」

 

 光を浴びせられたことにより先程までかけていた強化が全て解除されていた。ライドプレイヤーは理不尽だとして喚く。レベル差を埋める方法は今のところエナジーアイテムによるステータス強化しかない。それすらも封じられるとなるとライドプレイヤーが勝つ方法は無くなってしまう。

 

「今すぐ変身を解除してその違法ガシャットを渡せ」

 

 ブレイブはライドプレイヤーに降参を促す。どう足掻いても攻略出来ない実力の差を見せつけた。いい加減諦めて馬鹿な真似を止めて欲しかった。

 ライドプレイヤーは俯き、脱力しているように見える。ブレイブの言葉で諦めたかのように見えたが──

 

「まだだ! ブレイブ!」

 

 エグゼイドには違って見えた。ライドプレイヤーは諦めていない。彼が発する気配は微塵も弱っていない。何が何でも勝つという狡猾な意思が感じ取れた。

 ライドプレイヤーは最小限の動作でガシャコンソードに備わっているスロットへ仮面ライダークロニクルガシャットを挿し込む。

 

『ガシャット! キメワザ!』

 

 挿し込まれたガシャットのエネルギーがガシャコンソードに充填され、刀身が多色に発光する。

 

『ライダークリティカルフィニッシュ!』

 

 派手なエフェクトと共にガシャコンソードが振るわれる。空を切る斬撃はエネルギーに変換され、振るわれる度に刀身から三日月状のエネルギー弾を放ち、計五発のエネルギー弾がブレイブへ飛ばされる。

 ライドプレイヤーにとって現時点で使用出来る最強の必殺技。ブレイブは両手を突き出す。その目が輝きを放つとブレイブは黒いエネルギーを纏う。黒いエネルギーは剣の形になり、ブレイブの周囲に十本以上浮かぶ。

 

「ふん!」

 

 ブレイブが突き出していた両腕に力を込めると浮かんでいた黒い剣が射出され、ライドプレイヤーが放ったエネルギー弾と衝突。ライドプレイヤーの攻撃を相殺する。

 

「うえっ!?」

 

 ライドプレイヤーのエネルギー弾は、ブレイブの発射した黒い剣に次々と撃ち抜かれていき、最後に残った黒い剣がライドプレイヤーの足元に突き刺さる。

 次の瞬間黒い剣は爆発を起こし、ライドプレイヤーは衝撃で仰向けに倒れこんだ。

 

「つ、つえー……」

 

 倒れたライドプレイヤーは絞り出すような声で言う。ライドプレイヤーとブレイブとの間にはどうやっても埋めることの出来ない差があった。

 

「……降参しろ」

 

 再三に渡って変身解除を要求するブレイブ。出来ることならもう立ち上がって欲しくないのがブレイブの本音であった。ファンタジーゲーマーに変身したのもギリギリの選択である。これ以上は加減出来ない。

 

「ふふ……」

 

 しかし、ブレイブの思いやりを無下にするかのようにライドプレイヤーは笑う。

 

「俺、ゲームで難しいボスやステージにぶつかるとムキになってクリアするまで何度も何度も繰り返すタイプなんだよねー」

 

 反省した様子も無く自分のプレイスタイルを語る。

 

「……何を言っている?」

「分からない? 強敵とか高難易度にゲームオーバーになると逆に燃えちゃうタイプってこと」

「……これはゲームだが、ゲームではない」

 

 ゲームのような攻略法や戦い方はある。しかし、実際は命のやりとり。ゲームにはない重く、非情なリアルがある。

 

「知ってるよ。だからこそ──」

 

 ライドプレイヤーはごく自然な動作で地面に両手で触れる。ブレイブはそれを不自然に思わなかったが、エグゼイドはその動きに不穏なものを感じ取り、声を上げる。

 

「ブレイブ! 今すぐ止め──」

「バグワザ──トランポリン」

 

 エグゼイドの判断は一歩遅く。既にライドプレイヤーは行動に移る。

 

『ジャンプ強化!』

『ジャンプ強化!』

『ジャンプ強化!』

『ジャンプ強化!』

『ジャンプ強化!』

『ジャンプ強化!』

 

 その瞬間、全てが跳ね上がる。

 

「うわっ!?」

「なっ!?」

 

 突然宙に打ち上げられたことに驚くエグゼイドとブレイブ。落下し、地面に足が着くが再び跳ね上げられる。

 

「これは!?」

「と、止まらない!?」

 

 何度も何度も跳ね上がり、自由に動くことの出来ないエグゼイドたち。

 

「あはははははは!」

 

 ライドプレイヤーもまた同じように跳ね上がりながらこのバグ現象を楽しんでいた。

 トランポリンと名付けられたこのバグワザ。地面に密着した状態で連続して『ジャンプ強化』のエナジーアイテムを使用することでプレイヤーのみならずゲームエリアそのものに『ジャンプ強化』を付与するというもの。ジャンプをしなくとも地面に足が触れただけでジャンプ判定がされ、文字通りトランポリンのように各プレイヤーは跳ね続ける。

 

「くっ!」

 

 ブレイブは念動力を発動させ浮遊する。バグワザ・トランポリンも足が地面に触れなければ効果は発揮しない。

 だが、それがライドプレイヤーにとっての狙いであった。

 

「ブレイブ!」

 

 エグゼイドが叫ぶ。彼には見えていた。ゲームエリア全体に付与されたジャンプ強化を利用し、壁を蹴って高速で接近するライドプレイヤーの姿が。ブレイブが空中で留まっているので狙いも定め易い。

 

「しまっ──」

「遅いよ!」

 

 ライドプレイヤーはブレイブに横からタックルし、そのまましがみつく。

 

「これが俺の攻略法さ!」

 

 ブレイブにしがみついたままライドプレイヤーはあるエナジーアイテムを連続使用。

 

『高速化!』

『高速化!』

『高速化!』

『高速化!』

『高速化!』

『高速化!』

『高速化!』

『高速化!』

 

『高速化』のエナジーアイテム。だが、対象はライドプレイヤー自身ではなくブレイブ。

 敵に強化のエナジーアイテムを使用する行為が分からず戸惑うブレイブであったが、ゲームに詳しいエグゼイドはライドプレイヤーが何をしようとしているのか真っ先に気付く。

 

「まさか!?」

 

 未だに跳び続けているエグゼイドは天井付近まで跳ぶと鉄柱を掴んでぶら下がる。足さえ地面に着けなければバグの影響はない。

 ブレイブにしがみついていたライドプレイヤーは、しがみつくの止めてブレイブの体をよじ登る。何故かブレイブは微動だにしない。

 

「バグワザ・ラグ」

 

 ブレイブに肩車されるような態勢になったライドプレイヤーが得意気に言う。

 

「処理落ちか……!」

「正解。やっぱりそっちの先生の方がゲームを分かっているねー」

 

 どんなゲームでも一度に処理出来る動作は決まっている。処理が重ねられれば動作は重くなり、やがてフリーズする。ライドプレイヤーのやったことは正にこれを再現したもの。

『高速化』のエナジーアイテムを大量に使用することでブレイブの動作を強制的に超高速にさせ、ゲームでの動作をフリーズさせるもの。

 質が悪いことに原理を知っていなければフリーズ中も動作が次々と入力されていくのでフリーズする時間が継続される。フリーズを解くには一定時間動いてはいけない。

 今のブレイブは、意識はあるが体がついていけない状態であり、何とか足掻こうとしているがその足掻きがフリーズを長くさせるという悪循環に入っていた。

 

「少なくとも俺がゲームを止めるまではこの人、このまんまだよ」

「くっ……!」

 

 ライドプレイヤーはガシャコンソードを担ぎながらエグゼイドへ言う。

 

「お互い難易度上げて行こうよ。そっちの方が楽しいからさぁ!」

 

 エグゼイドは相手を見誤っていた。相手は正規のプレイヤーとは異なる今までにない戦法で仕掛けて来る。生半可なレベルではきっと攻略される。

 勝つには最大級の力で挑まなければならない。

 

「例え、バグだらけのゲームだとしても──」

 

 エグゼイドが取り出したのは新たなガシャット。ガシャットギアデュアルβと同じく二本分の厚みがあった。

 

「ノーコンティニューでクリアしてやる!」

『マキシマムマイティX!』

 

 

 




ゲームのバグってこんなものなのだろうか、と想像しながら書いたので実際に合っているかは分かりません。
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