仮面ライダーゲンム~Vengeance is mine~ 作:K/K
「マックス大変身!」
『マキシマムガシャット!』
エグゼイドは取り出したガシャット──マキシマムマイティXガシャットを事前にガシャットを抜いていたゲーマドライバーに挿入。
『ガッチャーン! レベルマーックス!』
マキシマムマイティXガシャットがゲーマドライバーにセットされると、ガシャット内に入っていたエグゼイドの形をしたスイッチが飛び出す。
『最大級のパワフルボディ! ダリラガン! ダゴズバン!』
マキシマムマイティXガシャットによりエグゼイドの頭上に出現する巨大なエグゼイドの顔。
「でっけー顔!?」
エグゼイドの巨大顔面が出て来たことにライドプレイヤーは驚きの声を上げる。
エグゼイドはマキシマムマイティXガシャットから出ているエグゼイド型スイッチを押し込み、そして巨大顔面へ向かって跳び上がった。
『マキシマムパワーX!』
巨大顔面が開き、中にエグゼイドが収納される。エグゼイドが内蔵されたことで巨大顔面に折り畳まれていた手足が展開。エグゼイドの顔からエグゼイドの顔が出現することで変身が完了。
二つの顔がライドプレイヤーを見る。
「顔が二つある……」
首から下がパワードスーツを連想させる装甲に包み込まれたエグゼイドに、ライドプレイヤーは思ったことをそのまま口に出してしまった。
「……レベルマックスって言ってたけど、具体的に幾つ?」
「マキシマムレベルは99だ!」
仮面ライダーエグゼイドマキシマムゲーマーレベル99。最大レベルに到達したエグゼイドにライドプレイヤーは嘆くように天井を見上げた。
「何だそりゃああああっ!」
叫ぶライドプレイヤー。レベル50のファンタジーゲーマーを無力化させたと思った途端にレベル99のマキシマムゲーマーの登場である。ゲームのイベントなら理不尽極まりない展開。もしも、エグゼイドが逆の立場だったのならコントローラーを放り投げていたかもしれない、と思ってしまうぐらいに。
「このゲーム創った人、クリアさせる気ないでしょ?」
「……」
ライドプレイヤーの愚痴にエグゼイドは閉口してしまう。意図した発言ではないが、ライドプレイヤーの言葉は核心を突いていた。何せ、仮面ライダークロニクルを創った本人が、奇跡が起きないことにはクリア出来ないレベルの難易度にしてあるからだ。
「レベル99か……」
ライドプレイヤーはエグゼイドを観察するように見る。エグゼイドは敢えてレベル差を強調したが、相手に降参する意思がないことがその目で分かった。薄々そんな気はしていた。
あれこれと不満を漏らしているが、ライドプレイヤーから諦めを微塵も感じられない。どんなに難易度が高く、ストレスが積もろうとも絶対にクリアしてやるというゲーマーとしての意地。エグゼイドも共感出来る意思がその目から感じられた。
(何が何でも攻略してやる、っていう雰囲気だな)
ライドプレイヤーという仮面ライダークロニクルに於いて雑魚に等しい扱いをされているキャラで、彼は正規の方法ではないがレベル50のブレイブを攻略してみせた。発想の柔軟さとバグワザによる予想外の戦法が如何に脅威なのかを表している。
(油断はしない。でも、まずはブレイブの安全を確保しないと)
ブレイブはライドプレイヤーのバグワザの影響で今も処理落ち状態となって空中で停止している。そして、ライドプレイヤーは動けないブレイブの上に陣取っている。下手に攻撃をすればブレイブが巻き込まれる。実質、ブレイブは人質であった。
「そっちは反則クラスの強さだし、こっちも反則しちゃおうかなぁー」
ライドプレイヤーはガシャコンソードをブレイブの首に当てる。エグゼイドが懸念していた展開になってしまった──かと思いきや、ライドプレイヤーはあっさりとガシャコンソードを首から離してしまう。
「ビビった? 驚いた? しないよ、そんなの。幾らなんでもさー」
ライドプレイヤーはエグゼイドの反応にケタケタ笑う。
「悪ふざけを……!」
「そっちもレベル99なんてもの出してこっちを驚かせたからおあいこってことで」
悪戯が成功したことにライドプレイヤーは上機嫌になっている。一方でエグゼイドはライドプレイヤーの行動に怒りつつも頭の中では冷静に思考していた。
(ブレイブを人質にするって露骨な真似はしないが、自分から有利を手放すことまではしないか)
ある程度のマナーは守りつつもフェアプレーまでとはいかないダーティーな行為をする。実にやり難い相手である。
ライドプレイヤーはガシャコンソードを炎剣から氷剣モードに切り替える。
『コ・チーン』
「まずはじっくりと動きを調べないとねぇ」
ライドプレイヤーはガシャコンソードを片手で振り上げながら自身の目線の高さまで持って行き水平に構えつつゲームパッドの形をした鍔にもう片方の手を当てる。
「よっ!」
手首を返す直前に素早くBボタンを連打。ガシャコンソードが前方に突き出されると同時に刀身から無数の氷柱が撃ち出された。
エグゼイドの脳裏に二つの選択肢が浮かぶ。回避と防御、マキシマムゲーマーのスペックならばどちらを選んでも間違いにはならない。ただし、それはその時のみの正解。
後のことを考えるとエグゼイドは一手、二手先のことを予測しながら戦う必要がある。
「はっ!」
エグゼイドの片腕が伸びる。蛇腹構造をしているので伸縮自在。倍以上の長さに伸びて別の箇所の鉄骨を掴み、縮めて自身を引き寄せる。移動している間にエグゼイドへ飛ばされた氷柱は外れ、天井の一部を貫いて彼方へ飛んでいってしまった。
巨体且つ鈍重そうな見た目とは裏腹に軽快な動きで天井を移動したエグゼイド。ライドプレイヤーはその行動を訝しむ。
「今のはガードしても問題なかったんじゃないの?」
防御ではなく回避を選んだエグゼイドに疑問を投げ掛ける。ライドプレイヤーもレベル差を甘く見ていない。今のエグゼイドの回避行動に不自然さを覚えた。
「なあ。俺とゲームをしよう」
「はっ?」
エグゼイドは問いに答えるのではなく、ライドプレイヤーをゲームへ誘う。当然、ライドプレイヤーは急にそんなことを言われて呆けた声を出してしまう。
「急に何を……それにゲームって?」
「ルールは簡単だ。お前が攻撃をし、俺は避ける。攻撃が一発でも当たったら俺のゲームオーバー。逆に当たる前にお前に俺が触れたらゲームクリアだ」
「ふーん……」
エグゼイドが言うようにルールは至ってシンプル。しかし、ライドプレイヤーは見た目には分からないが態度からして明らかに乗り気になっている。エグゼイドの言葉を一言一句聞き逃さないように前のめりになっていた。
今まではライドプレイヤーからゲームを仕掛けていたが、エグゼイドたちは立場から本気で戦うことはしなかった。ライドプレイヤーはそれが気に入らずに何とかやる気にさせようと奮起していたが、逆にエグゼイドの方からゲームの提案をしてきた。誰かとゲームすることに飢えていたライドプレイヤーは強く喰い付く。
「俺が勝ったら何かご褒美はある?」
「俺の持っているガシャット、全部やるよ」
「わーお」
エグゼイドの大盤振る舞いにライドプレイヤーは感嘆の声を上げる。真正面から戦う必要もなく一発でも当てたら勝ちのルール。ライドプレイヤーにとって非常に有利な条件である。
だが、エグゼイドが用意するものはそれだけではなかった。
「それだけじゃない。俺に勝ったら好きなだけ言いふらせばいい」
「何て?」
「『俺はМに勝った』ってな」
沈黙が訪れる。ライドプレイヤーはエグゼイドの言ったことを一瞬理解出来なかった。数秒経って言葉の意味を理解すると、声を震わせながらもう一度訊ねる。
「Мって……天才ゲーマーМのこと?」
「そうだ」
ライドプレイヤーはまた黙ってしまう。入ってきた情報を処理するのに時間が掛かっている様子であった。
やがて──
「あはははははははははっ!」
今までにないぐらいの、心の底からの笑い声を上げる。
「凄い! 凄い凄い凄いっ! こんな偶然ってある!? こんな所でМに会えるなんて……!」
感極まったように叫ぶライドプレイヤー。未だに起こっていることが現実だと信じ切れていないようであった。
「そっか! そっかー!」
ライドプレイヤーはガシャコンソードを振りながら言った。
「М! 俺、あんたのゲームプレイ百回は見たよ!」
エグゼイドからすれば興味を惹けたらそれで良しと思っていたが、予想を上回る程のリアクション。どうやら彼はМのファンらしい。
「良いよ! やろう! М! 俺とあんたのゲーム勝負だ!」
ライドプレイヤーはエグゼイドの勝負に乗る。乗らない理由が無い。
「Мなんだからさぁ……ガッカリさせないでよ!」
ゲームスタートはライドプレイヤーが切る。合図代わりに炎剣モードのガシャコンソードで炎を礫のように飛ばしてきた。
「はっ! よっ!」
エグゼイドは礫の軌道を一瞬で読むと両手を伸ばし、掴んだ鉄骨を伝わりながら移動して炎の礫を避けていく。
「甘い、甘い」
鉄骨を掴んだ手を伸び縮みさせて挑発するエグゼイド。
「このー!」
ライドプレイヤーはガシャコンソードを振り上げるが、本気で怒っているのではなく怒ったフリ。友達同士でゲームをプレイするときのような堅苦しさを抜きにしたもの。
「だったら難易度アップだ!」
『透明化!』
ガシャコンソードに『透明化』のエナジーアイテムが付与された。ライドプレイヤーはその状態のガシャコンソードを振るう。
ガシャコンソードが空を切り裂く。しかし、何も起こらない。先程のような炎の礫が飛んでくることはなかった。
エグゼイドは凝視する。エナジーアイテムを使って何も起きない筈も無い。目を凝らし続け、気付いた。こちらに近付いている陽炎のような揺らぎに。
「不味い!」
エグゼイドは真横に腕を伸ばして柱を掴む。伸ばした腕に引っ張られてエグゼイドは空中を疾走。そのすぐ後にエグゼイドが居た場所で炎が爆ぜた。当たった鉄柱は熱により赤熱化している。
エナジーアイテム『透明化』の効果をガシャコンソードに付与したことで攻撃を透明状態にして見えなくしていたのだ。
エグゼイドがしっかりと見ていなければ開始早々にゲームオーバーになっていた。
「いきなり難易度上げ過ぎじゃないか?」
「何言ってんの? 天才ゲーマーМ相手なら温すぎるぐらいだろうがっ!」
『コ・チーン!』
ガシャコンソードを氷剣モードに切り替えると、さっきと同じようにボタン連打と斬撃をほぼ同時に行う。
「Мの対戦動画、百回以上は見たよ!」
「そりゃどうも!」
『透明化』が続いているのでエグゼイドからは何も見えない。しかし、エグゼイドのやることは変わらない。不可視の炎の礫を回避したときのように僅かな変化を捉える。
「見えた!」
微かに揺らぐ白い煙。それが透明になった氷柱の冷気。その冷気によりエグゼイドは軌道を予測。
「二度も同じことをさせないよ!」
だが、ライドプレイヤーもそうなることは分かっていた。エグゼイドの動きを予想し、移動先を狙って再び氷柱を飛ばす。
移動先を潰すライドプレイヤーの攻撃。移動する直前であったエグゼイドは反射的に留まる。その間にも最初の攻撃はエグゼイドへ迫っている。
「なら!」
エグゼイドは柱から手を離し、落下。そのまま地面に着地。地面はライドプレイヤーが行ったバグワザによりトランポリンのように触れたら強制的に跳ねるようになっている。
エグゼイドの両足が地面に着く。そのまま真上に跳ぶかと思いきや、体が跳ね上がる寸前に前屈みになり、低空且つ前方へ跳ぶ。強制的にジャンプさせる足場だと分かっているのなら予め跳ぶ方向を調整することも出来る。
ライドプレイヤーの足元を通過していくエグゼイド。ライドプレイヤーも目でそれを追い、狙いを定めようとする。
低空ジャンプなので滞空時間は限られており、エグゼイドの足はすぐに地面に着くのだが──
「はっ!」
触れた瞬間にエグゼイドは切り返すような後方ジャンプを行い、跳んできた距離を引き返す。
「うおっ!?」
素早い切り返しにライドプレイヤーはエグゼイドの姿を見失ってしまう。マキシマムゲーマは身軽さだけでなく動きも俊敏。少しでも反応が遅れれば、あっという間に視界から消えてしまう。
「何処に──」
行った、と言う前にライドプレイヤーに影が掛かる。マキシマムゲーマの巨体がすぐ目の前にまで迫っていた。
ライドプレイヤーは息を呑む。足場を不安定にさせるバグ技だった筈なのだが、エグゼイドはすぐにそれに順応するどころか有効に活用していた。
天才ゲーマーの名は伊達ではないことにライドプレイヤーは戦慄と興奮を覚えながら両手を伸ばして来るマキシマムゲーマーを見る。
「だけど!」
このままエグゼイドの思い通りにはさせない、とライドプレイヤーはブレイブを蹴って離れた。有利な陣地を失うことは痛いが、固執したら負ける。ライドプレイヤーはそれを即座に判断していた。
マキシマムゲーマの伸ばした手はライドプレイヤーではなく処理落ちで動けないブレイブを捕まえていた。
間一髪免れた。ライドプレイヤーは空中から落下しながらそう思っていた。
(……うん?)
そのとき、ライドプレイヤーはある違和感に気付く。ブレイブを抱き締めるようにしてしがみつくマキシマムゲーマー。大きな顔が嫌でも目に入る。
(顔……顔……顔!?)
ライドプレイヤーは気が付いた。今のマキシマムゲーマには顔が一つしかない。収まっている筈のエグゼイドが居ないのだ。
「これでゲームクリアだ!」
エグゼイドの声が聞こえる。すると、マキシマムゲーマの背後から飛び出し、落下していくライドプレイヤーへ飛び掛かった。
(やられた!)
跳ねる地面でライドプレイヤーが一瞬エグゼイドの姿を見失ったとき、エグゼイドはマキシマムゲーマの装甲から飛び出してマキシマムゲーマの背後に隠れていた。マキシマムゲーマを動かすことでライドプレイヤーがブレイブから離れるのを誘い、空中に逃げる瞬間を狙った二段構えの作戦。
(こりゃダメかも)
エグゼイドが手を伸ばして来る。空中に居るライドプレイヤーにはそれを逃れる術は無い。ガシャコンソードで反撃する方法も考えられた、どう足搔いても一手遅いのが分かってしまった。
「ま、いっか」
負けるのは悔しいが、天才ゲーマーМに負けるならそれはそれで納得出来ると思い、ライドプレイヤーは悪足搔きをしない。
「永夢ー!」
女性の声。それはエグゼイドの良く知るポッピーのもの。エグゼイドは視界の端に廃工場内に入ろうとしているポッピーの姿を捉える。
エグゼイドの背中に冷たいものが走る。
「ダメだ! 入るな!」
エグゼイドはライドプレイヤーとのゲームの決着よりもポッピーを優先する。
「え?」
しかし、一歩間に合わずポッピーは廃工場内に足を踏み入れてしまう。彼女は展開されているゲームエリア内に入ってしまった。バグによって歪められたフィールドに。
「きゃああああああっ!」
踏み入れた瞬間、ポッピーの体が真上に跳ね上がった。バグワザ・トランポリンにより歩くだけでも強制的にジャンプさせられてしまう。
「ポッピー!」
高く跳ね上がったポッピーの体が頂点で向きを変え、頭から落下していく。例え、跳ねる地面であっても受ける衝撃は変わらない。
ポッピーが危ない。そう思った次の瞬間にはエグゼイドは迅速な行動に移っていた。マキシマムゲーマに指示を飛ばす。ブレイブに抱きついていたマキシマムゲーマが手を伸ばす。だが、それだけでは間に合わない。マキシマムゲーマが伸ばした手をエグゼイドは踏み台にして蹴り、ポッピー目掛けてジャンプする。
落下途中のポッピーを空中で受け止め、そのまま近くの柱に片手でしがみつく。
「大丈夫か?」
「永夢ゥ……ありがとう」
危ない所を助け出され、ポッピーは感謝する。エグゼイドもポッピーを無傷で助けられたことに安堵する。
「あらら。残念、残念」
感謝と安堵の空気を吹き飛ばす半笑いの声。ライドプレイヤーが地面を跳ねながら二人の方を見ている。
「あと一歩だったんだけどなぁ。まぁ、運も実力の内って言うしプレイセンスは負けていたけど、俺の方が運が良かったってことだね!」
腕組みをしながら何度も跳ねる姿はシュールとも滑稽とも言えるものだが、そんなライドプレイヤーが言っているようにエグゼイドは絶好の機会を逃したのは事実である。
「永夢、私──」
自分がしでかしてしまったことを気付かされ、ポッピーは顔面蒼白になっていく。
「大丈夫!」
ポッピーの罪悪感を吹き飛ばすようにエグゼイドはわざと大きな声を出す。
「必ずゲームクリアをしてみせるから心配するな!」
「でも……」
「ゲーマーМを信じてくれ」
エグゼイドの言葉にポッピーは頷き、意気消沈していた顔に微笑が戻る。これまで積み重ねてきた信頼が彼女の中の不安を消し飛ばしてくれた。
「そうだ! 永夢、これ!」
ポッピーはワインレッドの外装パーツにラベルが貼られていないガシャットをエグゼイドへ渡す。
「これは?」
「黎斗が違法ガシャットに対抗する為に作ってくれたガシャットなの!」
「新しいガシャット!」
「でも、黎斗が言うにはこれはゲームじゃないって……」
「ゲームじゃない?」
エグゼイドはそれが何を意味するのか考えた。そして、思い出す。黎斗が仮面ライダークロニクルのプロテクトの甘さに憤っていたこと、不正コピーや改造されたクロニクルガシャットに怒っていたことを。
「もしかして、これは!」
渡されたガシャットが何なのかに気付いたエグゼイドは、ガシャットのスイッチを押す。
『マイティセキュリティX!』
既に展開されたゲームエリアを伝って緑色の光が広がっていく。すると、ある変化が生じる。
「うおっと!?」
バグワザで跳ねていたライドプレイヤーは、急に地面が跳ねなくなりバランスを崩して尻餅を突く。
「──っ!? 動ける! ……離せ」
バグワザによって動きが固まっていたブレイブも緑の光が通過すると自由に動けるようになっていた。ついでに抱きついているマキシマムゲーマに離れるように言う。
「はっ!」
エグゼイドはポッピーを抱えて地面に降りる。やはり、地面に触れても跳ねることはなかった。先程の緑の光により発生していたバグが無くなっていた。
「やっぱり!」
マイティセキュリティⅩガシャットの効果を見てエグゼイドは確信する。ライドプレイヤーもエグゼイドが持っているガシャットが何なのかに気付く。
「それ! 修正パッチかよ!」
修正パッチ。プログラムの一部分を修正してバグ修正や機能変更を行う為のデータ。今のでゲームエリアに発生していたバグが修正されたのだ。これによりもう同じバグは発生しない。
『ガッチョーン ガッシューン!』
マキシマムマイティXガシャットをゲームドライバーから抜く。召喚されていたマキシマムゲーマがデータに還る。
「このゲームの運命は、俺が変える!」
これ以上違法改造、不正コピーが仮面ライダークロニクルに溢れない為に、空いたスロットへマイティセキュリティⅩガシャットを挿入。
『ガシャット!』
ゲーマドライバーのレバーを閉じ、すかさず開く。
「エックス大変身!」
『ガッチャーン!』
ゲームとは異なる未知なる力の解放。エグゼイドはそれに若干の緊張とそれを遥かに上回る好奇心を抱く。
『バージョンアップ!』
本来ならばレベルアップと告げられるところがバージョンアップという別のセリフに変わっている。この時点で既存のガシャットとは異なっていた。
『バージョンアップ! セキュリティチェック! マイティマイティセキュリティエーックス!』
マイティアクションⅩを元にして作られたと思われる変身音声。それが鳴る中でエグゼイドの体に変化が生じる。
ピンクなどのカラフルなエグゼイドの体が目の部分を除いて黒一色に染まる。黒くなった体にはディスプレイのように緑色の蛍光色で描かれた数字、アルファベット、記号の組み合わせであるプログラムコートが高速で流動している。
『聞こえているか? 宝生永夢?』
「ゲンム?」
変身を終えた直後のエグゼイドの聴覚に直接語り掛けられるような黎斗の声。
『これが聞こえているということは、ポッピーが無事に私のガシャットを受け取ったということ。まずは神の恵みに感謝したまえっ! ぶぇははははははははは!』
「うるさっ」
予め録音されていた黎斗の声が流れ始める。耳元でかなりの声量で聞かされているので、エグゼイドは反射的に耳を押さえそうになるが、スーツ内に直接流れているので音量を絞ることが出来ない。
『このガシャットは、仮面ライダークロニクルのプロテクトを強化する為のプログラムだ。これを使えば違法改造や複製ガシャットを使用している連中に負けることはないだろう。君はプログラミング出来ないので、君でもアップデート出来るようにゲーム風にしておいた。私の気遣いと神の才能を讃えたまえ! そして、私の仮面ライダークロニクルを穢す者たちに天罰を与えろ! さあ行け! 仮面ライダーエグゼイドセキュリティーゲーマレベル
言いたいことだけ言って黎斗の録音は切れる。耳の奥まで響く声だったので今も耳鳴りがする。
色々と文句があるが、仮面ライダークロニクル用の修正パッチを作ってくれたことには取り敢えず感謝する。
「さあ。違法なゲームはもう終わりだ」
「やだね! 俺はもっとこのゲームで遊びたい! あんたと遊びたい!」
我儘を言いながらガシャコンソードを振り上げるライドプレイヤー。武器にエナジーアイテムの効果を付与しようとする。
エグゼイドは両手を合わせ、広げる。手と手の間に浮かび上がるプログラムコード。それが弾丸のように撃ち出され、ガシャコンソードに命中すると中へ吸い込まれていく。
「え? あれ?」
ライドプレイヤーはすぐに違和感に気付いた。エナジーアイテムの効果がいつまで経ってもガシャコンソードに付与されない。
「嘘!? プロテクトを掛けられた!?」
ライドプレイヤーが言う通り先程の攻撃はプロテクトの強化。これによりガシャコンソードは違法行為の影響を受けない。しかもそれだけでない。
「うわっ!?」
バチン、という音が鳴りライドプレイヤーの手からガシャコンソードが滑り落ちる。ライドプレイヤーは慌ててガシャコンソードを拾い上げようとするが、見えない膜に覆われているかのようにガシャコンソードに触れられない。
「無駄だ。お前はもうそれに触れられない」
不正コピーガシャット使用者は、仮面ライダークロニクルに関わるアイテムを使用出来ないというプログラムが追加された。今のライドプレイヤーのようにエグゼイドたちの武器は二度と使用出来ない。
「や、やば……」
「観念しろ」
「嫌だ!」
ライドプレイヤーは背を向け、走り出す。降参することは選ばず、この場から逃走することを選んだのだ。
「──言った筈だ。終わりだ、と」
マイティセキュリティⅩガシャットをゲーマドライバー側面にあるキメワザスロットホルダーに挿し変え、ホルダーのスイッチを押す。
『キメワザ!』
エグゼイドの体を映し出されているプログラムコードが、エグゼイドの足元からゲームエリア全体に広がっていく。
逃げるライドプレイヤーの足元をプログラムコードが通過していく。
「あ、あれ?」
ライドプレイヤーの動きが突如として固まった。
「う、動けない!?」
プログラムコードによりゲームエリアがアップデートされ、それにより不正なガシャットを使用していると判断され、ライドプレイヤーを異物として認識する。ゲームエリアそのものが今やライドプレイヤーにとって敵になったのだ。
「はっ!」
エグゼイドはジャンプ。同時にキメワザスロットホルダーのボタンをもう一度押す。
『セキュリーティクリティカルストライク!』
エグゼイドの右腕に投影されていたプログラムコードが集まっていき、緑に発光する。跳躍したエグゼイドはライドプレイヤーの頭上を超え、彼の目の前で着地。振り向き様に右拳をライドプレイヤーへ打ち込んだ。
本来ならば『HIT』『GREAT』『PERFECT』も文字エフェクトが出現するが、マイティセキュリティは攻撃する為のガシャットではなく修正する為のガシャット。故にマイティセキュリティゲーマーの攻撃力はゼロなのでダメージは発生しない。しかし──
『改修の一発!』
その音声の後にライドプレイヤーの体にプログラムコードが浮き上がる。そして、ライドプレイヤーの変身は強制的に解除された。
「な、何で!?」
変身が解除されたことに驚き、再び変身しようと仮面ライダークロニクルガシャットを起動させるが、全く反応しない。
「無駄だ。仮面ライダークロニクルはバージョンアップした。お前のコピーガシャットはもう使えない」
「そ、そんな……」
唯一の遊び道具を奪われた少年は力無くへたり込んでしまった。
「永夢ー!」
戦闘を終えたエグゼイドへポッピーが近付いて来る。ブレイブもこちらに来ているのが見えた。
一先ずこの戦いを終わらすことが出来たが、まだ元凶であるテンが残っている。一刻も早くマイティセキュリティXガシャットの力でテンたちの暴走を止めなければと気持ちを再び引き締めたとき──
『ポーズ』
──決意を嘲笑うかのように全てを静止させる音が聞こえた。
オリジナル形態の音声を考えるのが一番難しいですね。
結局既存のやつを真似してしまいます。