仮面ライダーゲンム~Vengeance is mine~   作:K/K

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いつの間にか新型コロナにかかってました
比較的軽めで済んでいますが、それでもしんどいですね



Stage 8

 仮面ライダーレーザーターボWバイクゲーマーレベル0。その登場にライドプレイヤーたちは分かり易いぐらいに動揺している。

 

「へ、へん! 何だよ! ちょっとアーマーが増えて、ちょっと武器が増えただけじゃねぇか! そんなんでビビると思ってんのかよ! 虚仮脅しじゃないのか!? なあ!?」

 

 震え声で誰が聞いても虚勢にしか聞こえないライドプレイヤーの一人の発言。彼は先走ってプロト爆走バイクガシャットを取りに行ったライドプレイヤーである。さっきと今の行動からして緊張感が高まると何かしらの行動を起こして自分の緊張や恐怖を解こうとする癖がある。

 見た目だけだと同意を求めてくるライドプレイヤーに対して仲間たちの反応は──

 

「いや、どう考えてもハッタリとかじゃないでしょ」

「元から強いの考慮してもマイナスにはならないって」

「っていうかさっきの動き見たでしょ? 現実逃避は止めなって」

 

 ──少し冷ややかなものであり、冷静に説いて虚勢を諫めてすらいる。

 

「や、やる前からそんなのかよ……」

「どう考えて強そうにしか見えないでしょ。だから──」

 

 その瞬間、向けていたガシャコンスパローから光矢が射られる。仲間のライドプレイヤーですらも驚く完全な不意打ちであった。

 

「よっと」

 

 しかし、レーザーターボは装備しているタイヤを高速回転させ、その回転でガシャコンスパローの光矢をあっさりと弾いてしまった。

 

「良い性格してんなー、お前ら」

 

 不意打ちにしっかり対応しながらライドプレイヤーたちを皮肉混じりで褒める。

 ライドプレイヤーたちの腰は引けていた。レーザーターボが強気に出たらそのまま逃げ出しそうなぐらいに。

 その態度を見たレーザーターボは、ライドプレイヤーの変身者である少年たちが大人に対して強い不信感や恐怖を抱えているような印象を抱く。

 

「……自分が怖いか?」

 

 レーザーターボは直球で訊いてみた。すると、その言葉を挑発と捉えたのかライドプレイヤーの一人が強く反発してくる。

 

「こ、怖いわけないだろ! 俺たちが! お、俺たちは仮面ライダークロニクルで強くなったんだ!」

 

 彼が言ったように仮面ライダークロニクルガシャットを使えば子供でも大人に勝てるぐらいの力が手に入る。日頃から大人に対して強い恐怖を覚えている者からすればこれ程心強いものはないだろう。

 

「強くなった、強くなったんだ! もう親の言いなりになる必要もないぐらいにさ! 見ろよ!」

 

 ライドプレイヤーはそう言って地面を殴り、コンクリートの床に罅を入れる。

 

「こんなことも出来るんだぜ!? 俺たちは!? こんなの見たら何も言えないさ!」

 

 恐怖心を誤魔化す為のなけなしの意地に聞こえる。そして、仮面ライダークロニクルに縋っているようにも感じられた。

 徐々に追い詰められているせいか生意気で無邪気だった面が剥がれ、幼く脆い面が出ていきた。

 

「──そっか。でも忠告しておく。仮面ライダークロニクルで遊ぶなんて止めておけ。碌でもない大人の餌食になるだけだ。ましてや、やばいガシャットを使っているんだ。目を付けられるぞ?」

 

 素直に聞くとは思っていない。だが、言わなければならない。真実を伝えることが必ずしも正しい結果に繋がらず、逆に人生を狂わせてしまうことをレーザーターボは身を以て知っている。

 それでもレーザーターボは敢えて真実を突き付けた。今の自分ならばそれでも救えると信じて。

 

「う、うるさい! 大人なんてどうだっていいんだよ! どうせ自分のことばっかだ! 俺たちが楽しいことをして何がいけないっていうんだ!」

 

 案の定強く反発するライドプレイヤー。他のライドプレイヤーたちも言葉には出さないが、言葉を荒げている彼と同じく仮面ライダークロニクルを止めるつもりはない様子である。

 

「まあ、そうなるか……。いいぜ、ならかかって来い。うるさい大人代表として自分がとことんお前たちとやってやる」

 

 レーザーターボは構えらしい構えを見せず、ライドプレイヤーたちの攻撃を待つ。

 

「……言ったな。だったらとことんやってやる! 行くぜ! 勝って俺たちのゲームを守るんだ! ついでにレアアイテムも奪ってやれ!」

 

 仲間に発破を掛ける。他のライドプレイヤーたちも吹っ切れたのか強く頷いた。

 

「後悔しろ!」

『高速化!』

『高速化!』

『高速化!』

 

 全員一斉に行うエナジーアイテムによる『高速化』。貧弱なライドプレイヤーでもここまで重ね掛けをすればレベル50相手でも翻弄出来る速度で移動出来る。

 ライドプレイヤーたちは残像を発生させながらレーザーターボの周囲を動き回る。速度で攪乱し、相手に狙わさず、自分たちの攻撃のタイミングを読ませない戦法である。

 レーザーターボは両腕のタイヤ型腕部武装から光弾を撃ち出すこともせず、ただ棒立ちのままであった。

 レーザーターボの隙だらけな姿にチャンスと思ったのかライドプレイヤーの一人が高速移動中に拾った剣モードのライドウェポンで斬りかかる。

 ライドウェポンがレーザーターボを斬る。しかし、手応えがない。すると、そこにいた筈のレーザーターボが居ない。

 

「刃物はあぶねぇぞ」

 

 いつの間にか側面に回り込んでいたレーザーターボが、タイヤを振り上げてライドウェポンを弾き上げてしまう。回転しながら打ち上げられたライドウェポンを、両手に装備しているタイヤから光弾を放ち、撃ち抜いて真っ二つにして破壊する。

 ライドプレイヤーが斬ったと思ったのは、レーザーターボの残像であった。

『高速化』を重ね掛けした状態でも速いと思ってしまうレーザーターボの動きにライドプレイヤーは驚き、すぐにその場から移動する。

 彼が動けたのは殆ど奇跡であった。レーザーターボという存在への恐怖が無意識に体を動かしたからである。

 レーザーターボは追撃をしなかった。武器破壊が目的で元からするつもりがなかったが、前後から来ているライドプレイヤーたちが見えたからだ。

 それぞれがレーザーターボから奪ったガシャコンスパローを握っている。敵に奪われたガシャコンスパローを見て、敵に奪われることが多い武器だと思ってしまう。

 前はゲンムに使われ、今はライドプレイヤーたち。レーザーターボとしては大事に扱っているし、使い勝手の良い武器だとちゃんと感謝しているが使い勝手が良いということは他の者たちにとっても扱い易いということなのだろう。

 前後から振るわれる鎌モードのガシャコンスパロー。だが、二つの鎌は空を切る。斬ったと思ったときにはレーザーターボはしゃがみ込み、地面に円を描く動きでライドプレイヤーたちの足を払う。

 

「うわっ!」

「あうっ!」

 

 一瞬の浮遊感。すぐに腰から地面に落ちて強かに打つ。痛みに慣れていない未成年たちからすれば目の奥から火花が飛び出すような衝撃である。

 彼らはレーザーターボが何をしたのか分からなかったし見えてもいなかった。レーザーターボが速過ぎて。

 レーザーターボにはプロトガシャットの性能を限界まで引き出す能力がある。それに加えて同じガシャットを使用していることによる相乗効果で今のレーザーターボは誰も追い付けない速さで動くことが出来る。

 声を出せないぐらい痛みに悶えるライドプレイヤーたちにレーザーターボが近付こうとする。だが、一歩踏み込んで止まる。

 レーザーターボが首を動かすと、彼の顔のすぐ横を光弾が通り過ぎていった。射線を辿ると銃モードのライドウェポンを構えるライドプレイヤー。プレッシャーや恐怖からライドウェポンを握る手は震えていたが、決して銃口を下げずレーザーターボを狙い続けている。

 何故そこまでするのか。答えは至って簡単なこと。友達を守る為である。

 

「……仲間思いじゃねぇか」

 

 これじゃあこっちが悪人だ、と内心苦笑するレーザーターボ。すると、ライドプレイヤーが引き金を引こうとするのが見えた。

 

「銃もあぶねぇぞ」

 

 レーザーターボは両手のタイヤを投げ放つ。投げられたタイヤは回転し、タイヤ部分から黄色のエネルギーを発する。

 スローイングされた二つのタイヤはそれぞれ異なる軌道で飛ぶ。片方は下から弧を描くように、もう片方は山なりの軌道で。

 下からホップしたタイヤが構えていたライドウェポンを突き上げ、宙に上げる。そこに待ち構えたように山なりのタイヤが命中してライドウェポンを破砕。ライドプレイヤーの武器を破壊すると二つのタイヤは軌道を変えてレーザーターボの手の中に戻る。

 圧倒的な実力差を見せつけ、ライドプレイヤーたちは成す術が最早無いことを思い知らされる。

 そんな彼らの中に在るのは恐怖しかない。かつて大人たちから嫌という程刻み込まれた恐怖が、仮面ライダークロニクルガシャットという縋るべき支えを失い噴出してくる。

 レーザーターボは怯えるライドプレイヤーたちに心を痛める。しかし、放っておくことは出来ない。レーザーターボは最後に自分が為すべきこと為す。

 

『ガッシューン!』

 

 ゲーマドライバーからプロト爆走バイクガシャットを抜き、側面にあるキメワザスロットホルダーに再挿入。そして、すかさずホルダーのスイッチを押す。

 

『ガシャット! キメワザ!』

 

 プロト爆走バイクガシャットの力が両タイヤに流し込まれ、激しい光と回転を生み出す。

 

『爆走クリティカルストライク!』

 

 レーザーターボは回転するタイヤを投擲。身軽になった瞬間、周囲の時間が静止したと感じさせる程の速度で動き出す。

 爆走バイクガシャットとプロト爆走バイクガシャットの相乗効果で生み出される爆発的エネルギーを全て走りに変え、誰も追い付くことの出来ない速度で独り走る。

 レーザーターボの動きを感知することも出来ないライドプレイヤーの一人から仮面ライダークロニクルガシャットを奪い、宙へ放り投げる。

 続いて先程足払いをして未だに転倒中の二人からもクロニクルガシャットを没収し同じように宙へ投げ上げた。

 

「こいつも没収だ」

 

 ついでにガシャコンスパローも返して貰う。

 残った一人からもクロニクルガシャットを奪い、先に投げた三つに合流させる。

 一秒にも満たない時間の中での激しい走り。下手をすれば暴れ狂うかもしれない力を持ち前のセンスで走る力に変換したことで音すらも追い越し誰も反応出来ない。

 四つのクロニクルガシャットが同じ高さになったとき、レーザーターボは跳躍。右足に黄色のエネルギーを纏わせ滑空。そのタイミングで投擲していた二つのタイヤが左右から迫る。

 レーザーターボとタイヤが紙一重のタイミングで交差。キックと回転によりクロニクルガシャットを完全粉砕する。

 

『会心の一発!』

 

 着地したレーザーターボはキックの勢いでニ、三メートル程地面を滑った後、止まる。全ては瞬きよりも速い出来事であった。

 

「あっ」

「ああ……」

「マジかよ……」

「はぁ……」

 

 変身が解け、手元からクロニクルガシャットが無いことに気付いたことで敗北したことを思い知らされた元ライドプレイヤーたち。彼らはまだ幼さ抜け切れていない中学生ぐらいの年齢であった。

 

「これで終わりか……」

 

 敗北を受け入れ、薄汚れたコンクリートに大の字になって倒れ込む。

 

『ガッシューン!』

 

 レーザーターボは変身を解除し、貴利矢の姿に戻って少年たちの傍に寄る。

 

「自分に教えてくれないか? 何でこんなことをした?」

「別に深い理由なんてないよ……嫌なことを忘れて遊びたかったんだよ、俺たちは……」

 

 一人が代表して心の裡を語る。

 

「ここに居る連中はさー、俺も含めて結構良い中学通ってるんだよ。知ってる? ──学校」

 

 出された名前は貴利矢も知っている有名な進学校であった。

 

「そんな良い学校通っているのに、何で仮面ライダークロニクルになんか……」

「通っているだけだよ。俺たち別に進学校に行きたかった訳じゃない。ぜーんぶ親の希望。俺たちは言われるがまま受験しただけ」

 

 少年は力なく笑う。夢や希望を持って進学校に進んだ訳じゃない。全ては親のエゴ。

 

「学歴コンプレックスっていうやつ? 自分よりも頭の良い学校に通わせたいだけ。そうしたら、自分に箔が付くから」

 

 笑えるでしょ? と言っても少年は空元気に笑う。他の少年たちも同じようにケタケタ笑っていた。何一つ面白くないのに。

 

「……笑えないな」

「何だよ、ノリが悪いなー」

「ノれねーよ、そんな話に」

 

 貴利矢の真剣な表情を見て少年は笑うのを止める。貼り付けた笑みの下から現れたのは虚無としか言いようがない無表情であった。

 

「家では勉強、勉強、勉強。それ以外は塾漬け。成績下がれば怒鳴られるし、殴られる。でも、俺たちは我慢しなくちゃいけない。だって子供だから」

 

 貴利矢は彼らが聡明であることを嫌でも理解してしまう。衣食住を与えられた子供が親に逆らうことなど出来ず従順になるしかないと悟り、諦めてしまっているのだ。

 

「だからさぁ、テンが仮面ライダークロニクルのコピーガシャットを持ってきてくれたことには感謝してんだ。今まで生きてきた中で一番楽しかったし、面白かった」

 

 無表情であった顔に年相応の笑みが戻る。

 

「テンは俺たちのヒーローなんだ」

「……」

 

 貴利矢は黙るしかない。この少年たちの心を救ったのは間違いなくテンという存在。もしかしたら、壊れていてしまったかもしれない彼らをギリギリの所で踏み止まらせたのかもしれない。

 

「一つ聞いていいか? そのガシャットで──」

「親に今までの仕返しをしたかって聞きたいの? する訳ないさ! 俺たちは()()()()()()()()なんだからさっ!」

 

 少年の悲しい皮肉に貴利矢も表情を険しくする。

 

「でもまあ……やっときゃ良かったかも……俺たちの仮面ライダークロニクルはゲームオーバーになったし……」

 

 少年たちの顔が全てを諦めた表情になる。

 そんな顔をされて──

 

「……自分は医者だ」

「え?」

「分野は違うが、ちゃんとケア出来る医者を紹介するし、今の家庭環境を変える為に色々な伝手も探す」

 

 ──何もしない医者など存在しない。

 少年たちは戸惑った様子で顔を見合わせている。

 

「ま、すぐに信じられる筈もないか」

 

 貴利矢はその場で胡坐をかく。

 大人に対する強い不信感。それを払拭するには、やはり大人自身の行動。

 

「言いたいことがあるなら、聞くぞ?」

 

 

 ◇

 

 

「ふははははははは!」

 

 ゲンムの貫手がテンの顔に放たれる。

 

『バ・コーン!』

 

 ハンマーモードとなったガシャコンブレイカーのハンマー面がゲンムの貫手を真っ向から受ける。

 

「よっ」

 

 軽い掛け声とは裏腹に繰り出されるのがチェーンソーモードとなったバグヴァイザーⅡの斬り上げ。ゲンムの顎下に高速回転する刃が迫る。

 

「ふうぅん!」

 

 ゲンムは上半身を反らしてそれを回避。更に片手でガシャコンブレイカーを鷲掴みにした状態でテンの胸を前蹴りで突き放す。

 

「あっ」

 

 ゲンムとテンが離れると同時にテンの手からガシャコンブレイカーが奪い取られた。

 ゲンムは上半身を反らした状態で数歩後退した後、やけに滑らかな動作で反らしていた上半身を戻す。

 

「これは返してもらうぞ」

「あーあ。盗られた」

「元は私の物だっ!」

 

 正確にはエグゼイドの物だが、生みの親であるゲンムからすれば自分の所有物という認識なのだろう。

 

「それに比べるとこっちはショボいから嫌いなんだよねー」

 

 テンはそう言いながらライドウェポンを取り出し、二刀流を継続する。そして、改めてガシャコンブレイカーとライドウェポンを見比べた。

 

「やっぱりそっちのレアアイテムの方が好きだよ、僕は。特にデザインが」

「ふん」

 

 鼻を鳴らすゲンム。実はガシャコンブレイカーのデザインが良いことを褒められ上機嫌になっている。

 

「ならば、この神がデザインしたガシャコンブレイカーで葬ってやろうっ!」

 

 しかし、だからといって手加減などしない。意気揚々とガシャコンブレイカーで倒すことを宣言する始末。質が悪いことにゲンムの倫理観では寧ろそれが栄誉だろうと本気で思っているのだ。

 ゲンムは白い外装のライダーガシャットを取り出し、ガシャコンブレイカーのスロットに挿す。

 

『ガシャット! キメワザ!』

 

 ゲンムはガシャコンブレイカーを振り上げながらジャンプ。その間にガシャコンブレイカーは禍々しい黒い光を放つ。その黒い光はゲンムを蝕むように蠢き、ゲンムも呻き声を洩らすが耐えてみせる。

 

『デンジャラスクリティカルフィニッシュ!』

 

 挿し込んだガシャットの名はデンジャラスゾンビガシャット。ゲンムが集めた死のデータから創り出されたガシャットであり、使用者にも大ダメージを与えかねない恐ろしいガシャット──ゲンムはプロトマイティアクションXガシャットオリジンの力でそれを軽減させているので自由に扱える。

 

「ふはははっ!」

 

 ガシャコンブレイカーを両手で持ちながらジャンプ。着地と同時にガシャコンブレイカーを地面に叩き付けた。黒い光が波紋のように広がっていき、テンの足元まで伸びる。

 黒い波紋から黒い手が伸び、テンを捕まえようとする。

 

「うおっと」

 

 伸びてきた手を避けるが、避けた先にも黒い手。また回避するが再び黒い手が待ち構えている。見れば周囲を覆う無数の黒い手。テンの逃げ道を完全に塞ぐ。

 

「やばっ」

 

 テンが何とか逃げようとするも動きが途中で止まる。テンの足を黒い手が掴んでいた。一度捕らえられてしまえば後は成す術もない。テンを覆うように黒い手が重なっていき、最後に大爆発を起こす。

 

「はぁ……ふん」

 

 会心の一発に満足そうな声を出していたが、それもすぐに鼻を鳴らして不愉快そうにする。

 

「ああ。びっくりした」

 

 爆発したと思われたテンが無傷の状態で立っている。

 

「不愉快な……私の許可なく勝手にゲームを改造して……!」

「やれちゃったからねー。色々と試しちゃったよ」

 

 テンは悪びれた様子もなくいけしゃあしゃあと言う。

 

「そういうことをやる時間が一杯あったからね。結構簡単に出来るんだよ、僕は」

『ガッチャーン!』

 

 バグヴァイザーⅡを百八十度回転させ、チェーンソーモードからビームガンモードに変更する。

 

「こんなこともね」

『仮面ライダークロニクル!』

 

 新たな仮面ライダークロニクルガシャットを取り出して起動。負荷が生じているのか起動と共に緑色の電流が走る。

 

『ガシャット!』

 

 それをバグルヴァイザーⅡのスロットに挿し込む。すると、バグルヴァイザーⅡにも同様の現象が起こっていた。

 

「私のバグルヴァイザーⅡに違法なガシャットを入れるなぁぁぁぁ!」

 

 ゲンムは怒り狂いながらガシャコンブレイカーを振り上げ駆け出す。だが、その後に聞こえた音声に駆ける足を止めざるを得なかった。

 

『キメワザ!』

 

 バグルヴァイザーⅡのBボタンが押されることで発せられた音声。しかし、それは有り得ないことだった。

 今起こっていることが信じられないゲンムにテンは、起きていることが現実であることを教えるようにAボタンを押す。

 

『クリティカルジャッジメント!』

 

 テンが腕を一振りする。バグルヴァイザーⅡから緑色の光弾が無数にばら撒かれ、それが一斉に放たれた。

 光弾は地面に着弾し、複数の爆発を生む。その爆発の中でゲンムは微動だにしない。

 幸運なことに光弾がゲンムに命中することはなかった。否、偶然にしては出来過ぎており、どう考えても意図的に外されている。

 その理由は何なのか。

 答えは至ってシンプルなもの。先程のは攻撃ではなくゲンムを驚かせる為のサプライズに過ぎなかったのだ。

 

「貴様……まさか、クロノスのデータにまで辿り着いているとは……!」

 

 クロノス。それは仮面ライダークロニクルに於ける最強の戦士の名。そして、クロノスがいなければ仮面ライダークロニクルを攻略することが出来ないという理不尽な裏ルールが存在する。

 

「深く、ふかーく潜ってみたら見つけちゃったよ。意外だけど仮面ライダークロニクルガシャットには全部変身出来るみたいだね。1パーセント以下の確率である当たりのガシャットで変身出来る、みたいな散財しない感じは良心的だね。でも、変身させるつもりはないでしょ? 条件厳しいってレベルじゃないよ?」

 

 ゲンムの設定した高過ぎるハードルにテンは苦言を呈する。しかし、そんなことはゲンムにとってどうでもいい。

 

「貴様ぁ! クロノスのデータまで吸い出したのかぁ!?」

「その通り。まあ、一部だけだけどね」

 

 秘蔵のデータであるクロノスのデータまで入手しているテンにゲンムは怒りと焦燥を覚えた。そして、ゲンム──檀黎斗の悪い部分を刺激する。すなわち脅威と感じた人物を排除しようとするエゴに満ちた殺意。

 ゲンムはガシャコンブレイカーから乱暴にガシャットを抜く。

 

『デンジャラスゾンビ!』

 

 起動したガシャットを構えながら走るゲンムにテンは再びバグヴァイザーⅡのボタンを押そうとする。

 

「グレードX-0──変身!」

『ガッチャーン! レベルアップ!』

 

 ゲーマドライバーのもう一つのスロットにデンジャラスゾンビガシャットが挿入され、レバーが開かれる。

 

「うわっ!?」

 

 テンは目の前に突如として投影された映像に驚く。映像の中ではゲンムがマリオネットのようにカクカクと左右に踊っていた。

 

『マイティジャンプ! マイティキック! マイティーアクショーンX!』

『アガッチャ! デンジャー・デンジャー! デス・ザ・クライシス! デンジャラスゾンビィ!』

 

 映像の向こうから聞こえてくる音楽。それが流れ終えた瞬間、投影された映像を蹴破って伸びてくる黒い靄が纏った足。

 テンは咄嗟にバグルヴァイザーⅡで受け止めるが、蹴りの威力で数十メートルも蹴り飛ばされてしまった。

 

「はぁぁ……!」

 

 映像を物理的に破壊しながら現れるのは姿を変えたゲンム。

 白骨を彷彿とさせる白いアーマーに変わり、バイザー部分には赤いバイザーが掛けられているのだが、一部が割れていることで下の目が露出しており赤と水色のオッドアイになっている。

 死体=ゾンビを連想させるその姿の名は仮面ライダーゲンムゾンビアクションゲーマーレベルⅩ-0。現状に於いてゲンムの最強の力。

 これを見せたということは、ゲンムの考えは一つしかない。

 

「本気っぽいなー。もしかして、僕殺されちゃう?」

「愚問だなぁ」

 

 分かり切ったことを聞いてきたテンをゲンムはその一言で一蹴する。

 

「わお……ワクワクしてきた!」

 

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