不思議集団   作:藍澤 碧

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2.平和な日々

「やぁ。久しぶり」

からすさんが、手を上げてこちらに向かって近づきながら、バリトンボイスで声をかけてきた。

「久しぶりになっちゃたねー。今回の依頼は何?」

「これだよ」

依頼書を見せてくれる。

「・・・・・・ちょっと、これは・・・。私が1人でご一緒するのは力不足な気がする・・・よ?」

「そうかい?大丈夫だよ、今の藍メソさんなら」

「・・・そぉう?・・・いやいやいや」

そう言って右手を縦にして左右に振る。

「ムァくんもいるし、大丈夫だろう。・・・ね?ムァくん」

久しぶりにお見掛けする大長老を見上げて、ぼんやりしていたムァが慌てて返事をした。

「ニャ!?」

「ムァ? 大丈夫?」

「ニャ。大丈夫!大丈夫!!大丈夫ニャ!!」

うぅ~~ん?

「もしかして、ついったーアイルーのアルバイトが楽しみ過ぎて、心ここにあらずなんじゃ・・・?」

「ニャニャニャ!!そんなことないニャ!」

あからさまに慌てて否定しているけれど、とてもそうは見えない・・・。

「ムァぁ――。狩りには集中してくれないと・・・。大変なことになるよ?」

少しシュンとして、

「ニャー」

ムァがうつむいた。

 

「おやおや・・・。とうとう、ムァくんもなのかい?」

からすさんが、驚きと若干の呆れの混じったような声を出した。

「そうなの・・・。スズナたち、酒場の仲間のオトモに誘われているんだって」

「ほう。余程、楽しみなようだね」

「あはは。そうみたい」

依頼書をしまいながら、からすさんが言った。

「さて、依頼の確認もしたし、明日の狩りに備えて、今夜は休もうか」

「そうね。ムァもボーっとしているしね」

「ははは!そうだね」

「ニャ!失礼だニャ!!」

ムァは、一応の抗議をしているけれど、本音は誤魔化せていない。

 

 

 

からすさんのオトモ、ミツが取っておいてくれた宿に移動した。

さすが、ドンドルマ!お宿に食堂がある。

龍のコハク酒を頂きながら、ロースハツ丼を食べる。

品揃えも、なかなかである。

 

「そういえば、最近はどうなんだい?」

「ん?何が?」

「マコノフさんに相談しているって、言っていただろう?」

「うん?」

「誰かに嫌われてるかもしれないとかって」

「あー!うん。何となく解決したよ。基本的に、私が能天気すぎて困惑させているだけで、気にしすぎだって」

「・・・能天気・・・。藍メソさんのそのおおらかなところは、いいところじゃないか」

「あはは。ありがとう」

「いや・・・」

「残念ながら、そう好意的な受け止め方をしてくれる人ばかりではないんだよね・・・」

「僕はいつでも、君の味方でいるよ」

「!」

何を言い出すのよ、からすさん。びっくりするじゃない!

驚いて、龍のコハク酒を吹き出しそうになった。

「けほけほ」

「大丈夫かい!?」

相変わらずのバリトンボイスで心配してくれる。

素敵紳士なんだけれど、時々びっくりするような事を言い出すので、毎回驚かされる。

「うん。ありがとう」

「いや」

「ほーんと、からすさんって素敵紳士すぎて、モテそうだよねぇ~」

「・・・・・・」

 

そんな会話を、1杯だけと約束したマタタビ酒をちびちびと楽しみながら聞いていた、ムァとミツが顔を見合わせてクスクス笑い出す。

 

「何!?ムァ!」

「何でもないニャー」

「アルバイトが楽しみなのは結構だけど、明日の狩りはしっかり頼むわよ!」

「ニャーい。ふふふ」

?・・・何かヘンねぇ。何を企んでいるのやら・・・。

 

 

「ティガかぁ。苦手なのよねぇ・・・」

「相変らず、ダメかい?」

「練習にもなるから、大丈夫だよ」

「うん。がんばるー」

「・・・少し酔っているな?・・・それが空いたら、部屋まで送っていくよ」

「んふふ。ありがとう!」

 

 

 

翌日の狩りは、ムァもちゃんとしていたし、からすさんの華麗な太刀さばきのお蔭で、無事終えることができた。

 

「また、らいんアイルーででも連絡するね――」

「何でも、いつでも相談に乗るし、話を聞くから、遠慮なく連絡してくれよ」

「うん!!ありがとう! 今回もお疲れさま!」

「ああ、お疲れさま!」

「またねー」

笑顔で手を振って、私はベルナ村行きの飛行船に乗った。

 

 

 

 

 

狩りと移動の疲れで、ぐったりとベッドに転がっている私とは正反対に、回復が早いせいもあるのか、ムァは元気かつとても楽しそうだった。

「藍メソ!藍メソ!今日は出かけてきてもいいニャ?」

「ん。大丈夫。今日は、私はしっかりお休みする日」

少し甘えるようにベッドサイドに来て、もじもじしているムァ。

私はムァを撫でくりまわす。

「ウニャ・・・」

「ふふ。今日はアルバイトに行くの?」

「ニャ!がんばって、たくさんお魚貰ってくるニャ!」

「お魚!?」

「そうニャ!お魚がアルバイト代なのニャ!とってもがんばるとご褒美・・・」

そこまで言って、慌てて口をつぐむと片手で口を押さえるような仕草を見せた。

「ご褒美・・・?」

「何でもないニャ!今夜はお魚料理なんだニャ!」

むむ・・・!?何か隠しているわね。でも、まぁいいかな。

「楽しみにしているから、程々にがんばってね!」

「ニャ!!行ってきますニャ!」

「いってらっしゃい!」

 

 

 

 

 

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