ただし作者は現在貧乏なので原作の彼が出ている巻が買えておりません。あくまでアニメ版準拠です。なのでアニメで出てない設定に関しては作者もまだ知りません。
所詮は一目惚れしたから書いてみた、それだけの作品、いえ、回です。
現在から約十年前。世界を震撼させた『白騎士事件』。
誰もがテレビに釘付けになったこの事件が起きた際に、周囲の人々と似て大きく非なる反応を示した一人の『天災』がいた。
「飛びましたか!?飛びましたよね!?今アレは!?」
テレビに齧り付くというか、へばり付いていると言うべきなのか、どちらかと言えばハッキリと後者に分類されるであろうほど画面に顔を押しつけて喚き散らしてる女子小学生というのは、見ていて決して心楽しくなる光景ではない。
いや、むしろぶっちゃけ気持ち悪い。見てくれだけなら眼鏡をかけた細身の文学系美少女と言っていい程度には見栄えするから、余計に性質悪く見えて仕方がない。
あえて言おう。こいつ、きめぇと。
「ーーちょっと、そこの君。悪いんだけど、そこの交番まで来てもらえるかな? お巡りさんと人生について話し合おう」
「そんな!? もうちょっと見せてくださいよ!」
緊急時だろうと、いや、緊急時だからこそ子供たちの安全確保のためご町内を見回りに行こうとした巡査長さんにも見過ごすことの出来ないレベルで挙動不審。
それでいて言ってる言葉の意味は正しく伝わっているが、真意まではまったく伝わっていない。
そもそも彼女の耳に警官の声は届いているのだろうか? どうにも狂気じみた表情がすべての信頼感に背を向けていて、信用度0以下なのだが・・・。
「飛んでいる・・・うぇっへっへっへ・・・あんな不合理な物が空を・・・っ!
うわぁーはっはっはっは!!」
根本的な問題として、感想どころか着目している点がおかしかった。
彼女にとって重要なのは自分以外の人間が作ったロボットが空を飛んでることであり、自分とはまったく違う設計思想で空飛ぶロボット技術を編み出した者がいたことだけであり、それ以外の戦闘力とかエネルギーシールドとか完璧なステルス能力とか究極の機動兵器だとか、そんな“戯言程度の機能は”どうでもよくて、ただただ空飛ぶロボットが自分の考えるもっとも美しい形ではない“実に不愉快きわまりない代物”だった事こそが、彼女の人生最大の大問題点だったのである。
「・・・いいですかァ~? 空はボクの領分?なんですよ~?
それを犯すことが如何に無謀かつ無礼なことか、今度はボクの方こそが必ずや教えて差し上げましょう!」
気炎を上げて決意した眼鏡の怪しい美少女が後世において『SS動乱』または『天災たちの争覇戦』とも呼称される世界規模の争乱の時代を混乱に導いた二人の『天災』、その一翼を担うことを知る者は約十年後のIS操縦者育成のために設立された日本の国立学校IS学園入学までは存在していない。
二人の出会いが世界にとって災厄にしかならないであろう事を、この時の世界も、入学を決定した直後の世界も、最初の事件を起こす前の世界も、事件が露呈せざるを得なくなった大事件が起きる寸前までの世界も気づいていなかった。
ハッキングされたミサイルをすべて切り落とした白いロボットを捕獲もしくは撃墜するため出動した各国保有の艦隊は日本海に到着して直ぐ戦闘を開始したが、それらの艦には自軍の力を世界に見せつけてやろうという皮算用から少なくない数の軍事ジャーナリストと体面上の理由から同席させざるを得なかった一般ジャーナリストたちが乗船しており、彼らのうち後者の方は律儀にちゃっかり許可も得ずに戦闘の光景を撮影し、リアルタイムで全世界に同時生中継を行いまくっていたのだが。
結果として世界は、この映像のせいで大混乱に陥る羽目になる。
それまでは空にロボットを飛ばすことだけに注力してきた天災は、自分ではないもう一人の天災の発明品を見せつけられたことで一大奮起し、軍事面でも勉強を積み重ねていくことになる。
彼女が作るのはISか? それともISとよく似た別のナニカなのか?
すべてはIS学園入学まで分からない・・・・・・。