もっと明るい話になるつもりが、どっかで狂いました御免なさい。
尚、私は原作ファンですが、原作好きの方にはお勧めできない内容になっております。読む場合はご注意を。
以前に大失敗をやらかした原作ですので、ご指摘ご批判等は控え目にお願い致します。
「ようこそ、奉仕部へ。歓迎するわ。二人とも。
平塚先生曰く、優れた人間は哀れな者を救う義務がある、のだそうよ。頼まれた以上、責任は果たすわ。あなたの問題を修正してあげる。感謝なさい」
室内に沈黙が落ち、比企谷殿の顔が怒りに歪み始めるのを眺めながら、私はひどく出来の悪い三流喜劇をみせられたような嫌な気分になっておりました。
なんと言うかこう・・・見物料払ってないからって忍耐にも限度があるだろう、みたいな感じで。
ーー致し方ありませんな。
本来、サブカルチャーをこよなく愛する型月ファンの我が輩としては、あくまで主役の少年の傍らに立ちながら物語のクライマックスまで見届けて、見ているだけで終わるつもりだったのですが、これほど平凡きわまる過去の亡霊を目の当たりにさせられたのではテコ入れの必要性ぐらいは出てこようというもの。
エッセイは好きではありませんが、ライトノベル好きも偶には言葉でヒロインをいたぶってみるのも普段とは違う視点が得られて悪くはないかと。
「ーーそれで? 彼女の言葉をそのまま真に受けて信じてしまったのですか? そんな頭空っぽの説明を? ひどく空しい、空虚さだけが満ち満ちているだけの戯言を?
かわいそうで哀れなあなたを救ってあげようとした平塚先生の救済の言葉をすなおに真に受けて、ひとりぼっちの部活動もどきを今の今まで続けてこられたと?
はっ! 傑作だ。とんだ茶番劇だ。三文芝居にも程がある! 退屈すぎて自身の新作を一作書き上げてしまいそうになりましたね! 出来ませんでしたが!
一流の戯曲が一流の劇として完成を見るには、一流の俳優が必要なそうですが、あなたは演技ではなく素の人格が茶番じみている」
「・・・道化? それはまさか私の事ではないでしょうね? 安田さん」
「おや? この室内で君以外の適任者がだれかおりましたかな? だとしたら失礼を。他の可能性が思い当たらず、ついつい出過ぎたことを申しました。ご無礼をお許しくださいフロイライン」
「その喋り方はやめて、不愉快だわ」
「おお! これは失礼しました。以後気をつけることにいたしましょう、フロイライン」
「・・・・・・」
静に怒りを高める彼女には、なんら感応する部分を見いだせなかったので私は彼女の事など気にすることなく勝手に話を進めることにした。
「第1に。そもそもここは部室などではない。何故なら奉仕部などと言う部活動は、学園のどこにも存在してはいないからです。
存在しない部活動に活動内容などあるわけがない。それ故に奉仕部は奉仕部でいられる、と言うわけです」
「訳が分からないわ。わかるのはあなたの頭が病気であることくらいなものね。ここは奉仕部の部室で、私はこの部の部長。平塚先生にも承認された正式な部活動にケチを付けるなんて、あなたの神経を疑ってしまいそうだわ」
「はっはっは。これは異な事を。現実の学校に部長と部員、併せても一人しかいない部活動など本当に実在するとでも? そんなものない。あるわきゃないですなぁ、馬鹿馬鹿しい」
「・・・・・・」
「だいたい、所属する部員数によって支給される部費の額が決められる学内の部活動は、部費によって学校が生徒たちを支配し、活動を制限しながら暴走に歯止めを利かせる機能を併せ持ったもの。
それ故に各部活動は各々趣向を凝らして部室を飾り付け、個性を出すことで部員を誘い込んでは入部届に判を押させる。
部員を募集する気がないからプレートに名前を書かない、それを知りながら黙認している平塚先生。これはもう、部活動として教職員の皆様方に認識されていない何よりの証ですなぁ~!」
「・・・・・・・・・」
「おまけに新入部員として預けられた我々が部の活動内容を聞けば『そうね。ではゲームをしましょう』? いやはや、これは傑作。
よもや、部の責任者が説明責任を放棄して優越感を誇示することにより自己満足に浸りたいがためだけに何も知らされずにつれてこられた見ず知らずの男子生徒二人を弄ぶとは! 世の中腐っとりますなぁー、はっはっは」
「・・・・・・」
「だいたい、持つ者が持たざる者に慈悲の心を以て施しを与えるって表現、矛盾していると感じたことはありませんので?
どう考えたって優越感からくる見下しであり、超上から目線で「これが欲しければ、這い蹲って靴をお舐め!」とか叫んでる、未成年者の前では口にできないお店のお嬢さん方と言ってることが変わりませんけど?」
「つか、ふつうに考えて、優れた人間が哀れな人間を救うもなにも、こんな教室でぽつねんと座って一人読書に明け暮れてるあなたの方が助けを求めてくる側より、余程哀れで救われてない存在なのでは?」
「・・・・・・」
「決定的だったのは、貴女のその態度!
初対面の相手に先制攻撃をしかけることにより心理的に優位に立ち、終始自分のペースで話を進めたがるのは自分の隠された内面を他者に見られないようにするためのカモフラージュである場合が往々にしてあったりしますが、貴女は果たしてどうなのでしょうな?」
「さらに! 貴女は会話が始まってよりこの方、自分の意見は断定系で、相手の意見は問答無用の否定系で話し続けられて参りました。
これは逆説的に自己承認欲求の強さと、他者の言葉によって傷つけられてきた幼少期のトラウマとを表した分かり易くて平凡な特徴であると我が輩は考えますなー」
「即ち! この奉仕部とは名ばかりの空き教室。
ここに入られれている我々は他者と上手くコミュニケーションが取れないコミュ症の集まりであり、奉仕部とは保健室学級の優等生バージョンみたいなものであり、学校に来たくてもこれない生徒ではなくて、来たくてもこれなくなって可笑しくないレベルなのに来てくれている生徒たちを安全に隔離し悪臭渦巻く学校のリア充どもから保護してくれているからこそ。
まさに地上のーー否、否、総武高校最後の楽園! ぼっちコミュニティ『奉仕部』!
それこそが、この教室の偽らざる真の姿! 誠の真名なのですよ!!」