試作品集   作:ひきがやもとまち

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出し忘れていたのですが、先日公開した「シェイクスピア俺ガイル」、あれは実のところ途中から派生した分岐系の1ルート作品で、ゆきのんとの対面時までは全くの別人が主人公で話を進めてたんです。
悪意ある評価をし始めたら人格変わっちゃったから急遽キャラクターを変更しただけです。
ですので本来はこういう始まり方でしたと言うのを投稿しておきます。

主人公のモデルは銀河英雄伝説のヤン・ウェンリー(駄目な人バージョン)です。


追記:
要れたと思ってたら入れ忘れていた分を付け足しておきました。
「追加分」と書かれている下の部分からです。


やはり俺のクラスメイトが穏和な表情で辛辣な台詞を吐く黒髪の少女なのはまちがっている。

「ーーなぁ、比企谷。私が授業で出した課題は何だったかな?」

「・・・はぁ、『高校生活を振り返って』というテーマの作文でしたが」

 

 国語教師の平塚静先生に詰問口調で問いただされて、比企谷八幡君が困っている。

 当然だろう。課題を出された授業中に、あれほど熱心に情熱を込めて一心不乱に書き綴っていた長文を否定されようとしている未来が目前まで迫っているのだから。

 

 まったく! 最近の日本では他人の持つ技術に対して金を払うと言う考え方が欠落していく一方だから困るんだ!

 プロの料理人にちょっと弁当作ってくれだの、マンガ家に町内会の会報にマンガ書いてくれだの、歌手に町内喉自慢大会に出てくれだの、大工に犬小屋作ってくれだの、お笑い芸人に飲み会でなんか面白いこと言えだの、声優にあのキャラの声やってーだの、教師が読書が好きで文学系の高校生に授業中だからと『高校生活を振り返って』をテーマに作文書くことを強制しておいて出来が悪ければ編集部(職員室)に呼び出されて問題点と修正個所のご指摘を説教とともに受けさせられるなんて・・・・・・君たちはあれかい!? ジャ○プなのかい!? 集○社かなにかにでもなったつもりでいるのかい!?

 

 冗談じゃあない! そう言うのは本来全て報酬が発生してしかるべき案件であって、それを知り合いだから教師だからと言う理由だけでなあなあで済ませるのは世の技術職に対する侮辱に他ならず、将来的にはライトノベル作家になって大ヒット作は出せずとも慎ましく暮らしていけるぐらいの収入は入ってくる程度の中堅作家に憧れて本気で夢を追って目指し努力もしている少年少女に絶望を与えて夢を奪うことに他ならないのだ!

 

 子供たちを正しく教え導く側にたつ教師という職でありながら、平塚先生。なぜ、貴女にはそれがお分かりにならないのですか!?

 

「・・・おい、安田。普段から眠そうな目を腐らせてまで何考えてる。おまえはおまえで禄でもない内容の作文提出してきたんだから反省しろ」

「・・・はい・・・」

 

 ちぇっ、誤魔化しきれなかったし、逃げきれもしなかったか。やはり中学時代の後輩ほど私は逃げ上手ではないらしい。苦手分野を克服するための努力なんてしたことなかったからなぁ~。

 

 仕方ない。ここは大人しくご叱責を賜ろう。いくら不機嫌だからって、まさか昨今の高校教師が生徒相手に拳を持ち出して威嚇するはずもないのだろうし(後ほど予測に願望が混じっていたことを思い知らされることになりました)

 

 そして平塚先生は比企谷君の時と同じく、私の書いた作文も大きな声を出して読み上げ始めたのだった。

 

 

 

『高校生活を振り返って』

 2年F組 安田園李

「自分の私生活を他人に誇るように書くのはやめよう」

 

 

 

「な・め・と・ん・の・か!?」

「・・・ふひはへん」

 

 むにーっと、左右の両手でほっぺたを引っ張られるお仕置きを賜りながら私は深く反省し、自分の文才の無さを心の底から慨嘆していた。

 ああ、もちろん分かっていた。分かってはいたさ。

 私もさすがにこの内容は酷いものだと理解することくらいは出来ていたんだ!

 

 ・・・ただ、授業中に話し声も聞こえず先生も黙ったまま椅子に座って睥睨するだけで、あとはカリカリ、カリカリと鉛筆やシャープペンを走らせる音だけ聞こえてくる環境って・・・眠くなるんだよね。

 睡眠欲は人間の持つ三大欲求のひとつであり、“私としては”三つ全ての中でも頭ひとつふたつ抜きんでた最大にして最強の欲望すべてを支配する覇王のごとき存在だと認識している。

 

 人間の肉体の内、頭に生えた頭髪数本を残して全てを支配する偉大な覇王に対抗するには、それなりの準備と時間が必要になるものでしてね・・・・・・?

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「すひはせん、ごへんなはい。ははまりますからすごはないですごはないで、かおがこはいです」

 

 あと、目も怖いですし振り上げられた拳はもっと怖いです。

 暴力による思想弾圧反対。圧制者よ妥協せよ。平和こそが繁栄につながる唯一の道である。

 

「・・・いいか、お前たちよく聞け。私はな、お前等のバカっぷりについて怒っているわけじゃないんだ」

「いや、今あんたはっきりとバカっぷりって声に出して指摘してたんですけど・・・」

「私は怒ってないんだよ、比企谷」

「いえ、ですから先ほどご自分の口から・・・」

「わ・た・し・は・お・こっ・て・な・い・ん・だ・よ」

「・・・はい、怒ってませんね。ぜんぜん全くこれっぽちも怒っておられないとボクも思います。思いますからお願い殴らないで!」

 

 比企谷君がヘタレていたが・・・すまない。私にはなにも出来ることはないんだ・・・。無力なクラスメイトの一人を許してくれ・・・。そして、出来るならばそのまま先生の怒りを買い続けてヘイトを集め続けてくれると嬉しいかな。私は楽を出来るから。

 

「君たちは部活やってなかったよな?」

「はい」

「ラノベ部があったら入るつもりでいましたが、無かったので今現在申請中です」

「・・・それは一生待ち続けても許可下りないだろうから、もう無所属って事にしていいと思うぞ・・・?」

 

 何故か先生から哀れみの視線を向けられてしまった。ホワイダニット、『どうしてやったか』。・・・ミステリーは戯言シリーズしか読んだことないし、あれは途中から異能バトル物に方針転換していくからたぶん、今の用法も私の認識も間違っているんだろうな。世の中は誤解と錯覚と勘違いでのみ成り立っている。

 ・・・『Ⅱ世の事件簿』も広義的にはミステリーに分類されるんだったっけかな?

 

「・・・友達とかはいるか?」

 

 いや、いないこと前提で確認とられましても。

 

「びょ、平等を重んじるのが俺のモットーなので、特に親しい人間は作らないことにしてるんですよ、俺は!」

「つまり、いないということだな?」

「た、端的に言えば・・・」

 

 比企谷君の答えを聞いてから、平塚先生はやる気に満ち溢れた顔になり、

 

「そうか! やはりいないか! 私の見立て通りだな。君の腐った目を見ればそれくらいすぐにわかったぞ!」

 

 ・・・本当に確認のための質問だったんですね、さっきの・・・。

 いやまぁ、手順は大事ですから何ともいいませんが、もう少しだけでもぼっちの心を抉らない表現方法で孤独な少年少女の告白に耳を傾けてほしいといいますか、何といいますか・・・。

 

「安田の方はどうだ!? 友達、いるか!?」

「顔を合わせれば二、三、毒舌の応酬をしないと会話が始められない知り合いなら僅かばかりは」

「・・・そ、そうか。いや、そのなんだ・・・あまり自分の運の無さに気を落とすなよ?」

 

 いえ、ですから哀れまれましても。案外あいつらも付き合ってみると、良いところもあったりはするんですよ?

 たとえば、生徒会から目を付けられて『歩く風俗壊乱』と呼ばれるほど要領よく女性を愛する嫌みなイケメンなとことか、相手が売るつもりのない喧嘩でも買ってやる気満々の陽気なハンサムなところとか、『家内安全』を掲げて傍迷惑な輩をまとめて一カ所に押し込めたがる秀才の先輩だったりとか、学校が「子供の成長に良くない影響を与えるから」と規制をかけた本の数々を隠匿して回し読みする組織『有害図書愛好会』の会長を務めて規制側との構想に熱中するあまり自身はあまり本を読まなかった革命家志望の後輩なんてなかなか良い奴ばかりで・・・・・・。

 

 

 ・・・・・・おかしい。どう言うわけか改めて列挙しながら思い出してみると、彼らの長所だと感じていた部分がどうしようもなく駄目な点のように感じられて仕方がない。

 やはり、彼らの中で私一人だけが常識と良識を持った平凡で善良な凡人だからだろうか・・・? よく考えてみれば、彼らも哀れなものだな。

 『口の悪い奴は信用するが、口のうまい奴は信用しない』と言う一点に関してのみは、私と同等の良識を持った常識人ばかりなのだが・・・。

 

 

 私が沈黙したまま思考に没頭していると、何かを勘違いされたらしい先生が微妙にわたわたしながら比企谷君に意味のない質問を投げかけ始めていた。

 

「・・・え、えっと・・・彼女とか、いるのか?」

「今は、いないですけど」

「そうか・・・安田はどうだ? 彼氏とかは、いるのか?」

「私の夢は年金で生活しながら売れないラノベ執筆に没頭することですので、それを支えてくれると言ってくれる男性がいたら・・・・・・でしょうかね?」

「いないよ、そんなご都合主義の化身みたいな男がこの世に実在していて堪るか。

 むしろ、もし実在してたとしたら私が全力で貰いに行く」

「はぁ」

 

 正直、適当に答えただけの言葉に喰い気味な反応を返されると困るのだが。

 自分でも自覚はあったのか、平塚先生は「コホン」とひとつ咳払いで誤魔化そうとしてから本題のまとめに入られたようだった。

 

 

「よし、こうしよう。レポートは書き直せ」

「「はい」」

「だが、君らの心ない言葉や態度が私の心を傷つけたことは確かだ。女性に男性関係の話をさせるなと教わらなかったのか?」

「・・・いや、先生が自分から振ってきた話だったんじゃ・・・」

「なので! 君たちには奉仕活動を命じる。罪には罰を与えないとな」

「・・・おい、安田。教師の横暴という罪に相応の罰を与えたいんだが、なにか良さそうなのを知ってないか?」

「うーん・・・市立校だからねぇ・・・私立だったら色々やりようはあるんだけど、一応市立学校の教員は地方公務員扱いだからなぁー。役所に届け出を出すにも被害規模が小さい。もう少しボロを出すまで待った方が良いかもしれないよ?」

「・・・なるほど、貸しを返してもらうときは返せない額まで貯まってからと言うことだな。覚えてこう」

「おいこら、そこの目が腐ってる知能犯罪者二人組。職権乱用で処罰されたくなかったら、そう言う相談は教師の目と耳が届かないところでしろ。我が身を省みない捨て身の特攻で、あの世までご同行されてもしらんぞ」

「「すいませーん。ごめんなさいーい、もうしませーん」」

「まったく、君らという奴は・・・」

 

 とても傷ついてるとは思えないほど威勢よくーーただしちょっとだけ心労を感じさせる声音でーー嬉々としてそう言ながら立ち上がった平塚先生の揺れる胸を直視しながら比企谷君は、

 

「奉仕活動って・・・何すればいいんですか?」

 

 と質問し、平塚先生はそれに答えず「ついてきたまえ」とだけ言って職員室の扉へと向かう。

 残された私たちは互いの顔を見合わせてから溜息をつき、手間のかかる子供を持った親の心地で彼女の後を追ったのだった。

 

 

 

追加分

 

 

「着いたぞ」

 

 先生が立ち止まったのは何の変哲もない教室。本来なら利用目的に添った名称が記入されていて然るべきプレートには何も書かれていなかった。

 私たちが不思議に思って眺めていると、先生はからりと戸を開けて教室の中へと入っていった。

 

 その教室には机と椅子が無造作に無造作に積み上げられていて、一見すると倉庫として使われているようにしか見えない。他の教室と違うのはそこだけで何か特殊な内装もない。部屋の立地から鑑みると、これはいささか妙な話だった。

 

 千葉市立総武高校の校舎は少し、忌まわしい形状をしている。

 道路側に教室棟があり、それと向かい合うようにして特別棟があって、それぞれが二階の渡り廊下で結ばれていると言う、四方をリア充によって包囲された四面楚歌状態。

 即ち、ぼっちにとっての地獄を顕現させた魔界なのである。まさに治安維持を名目とした思想弾圧機関による恐怖政治。

 言論の自由を容認しようとせず、ただただ『リア充こそが絶対的強者! 弱者たる非リア充を撲滅することこそ、神が我ら選ばれし者に与えた神聖な義務であーる!』と言う狂った思想を体現させた絶対的独裁高校なのである。ああ、イヤだイヤだ。

 

 

 ーー話が逸れたので、一端戻すが、現在我々が平塚先生によって案内された場所は特別棟であり、各種部活動の部室が点在している二階の階段をさらに上がった三階にある一室の前だ。

 見渡してみたが、他の教室に使われてそうなものは一室も見当たらない。完全ではないだろうが、ほぼ完全に1フロア丸ごと私たちだけの貸し切り状態だった。

 

((・・・事案発生・・・か?))

 

 折しも比企谷君と私の思考が同じところに到着していることを、我々二人は視線を交わし合うことで確認できた。

 

 どう考えても年頃の少年少女二人を女教師が連れ込んでいい場所ではない。ましてや先頃彼女は自身の口から結婚願望があることを明言した後である。警戒するのは道理であり、また生物としてはごく自然な自衛手段でもあるだろう。

 

((逃げるか・・・?))

 

 再びのアイコンタクト。こう言うとき、普段から体育の授業以外ではペアを組まされ続けているぼっち同士は理解が早くて助かると思う。

 君子危うきに近寄らず。文系であり、国語の学年三位と四位を常に争いあうライバル同士な井の中の蛙コンビは、申し合わせた訳でもないのに絶妙なコンビネーションプレイでもって粛々と戦略的撤退の準備を始めようとしていたのだがーー、

 

「ーーそれで、そのぬぼーっとした人たちは?」

「ああ、彼らは・・・何をしているんだ君たちは。早く入ってこい。罰を与えるとはいったが、廊下に立たせていた覚えはないぞ」

 

 ーー逃亡失敗。引き留められてしまった。

 仕方ない、腹を決めよう。幸いなことに室内には先客がいて、容姿端麗頭脳明晰を絵に描いたような端麗な美少女で・・・いやいや待て待て、落ち着け私。これはむしろ危険度が増してはいないだろうか? 平塚先生が拗らせる余り、男に飢えた狼となって襲いかかってきた場合に美味しくいただかれてしまう獲物が一人増えただけな気がするのは私だけなのだろうか?

 

「彼らは比企谷八幡と、安田園李。入部希望者だ」

 

 戦慄していた私であったが、幸いなことに平塚先生の発言によって不安の大部分は解消された(全部とは言っていない)。

 どうやら本当にただの部活勧誘であったらしい。まぁ、勧誘が強制の部分に引っかかりを覚えなくもないのだが、ここまでで出揃っている条件を統合して考えてみれば大方の察しはつく。ここは合わせてあげるとしよう。

 

「二年F組比企谷八幡です」

「同じく、二年F組安田園李です。はじまして」

「君たちにはペナルティとしてここでの部活動を命じる。異論反論抗議質問口応えは認めない。しばらく頭を冷やせ。反省しろ」

 

 まさに言論弾圧のために設置された暴力機関の現場責任者らしい言い様であった。まぁ、仕方がない。言論を統制する側の人間なんていつの時代もこんなものだ。

 言っても聞く耳持たないだろうし、四回以上翻意を求めると物理的に首が飛ばされかねない。大人しく従っておくのが賢明と言うものだろうなぁ。

 

「と言うわけで、見ればわかると思うが彼らはなかなか根性が腐っている。そのせいでいつも孤独な哀れむべき奴らだ。人との付き合い方を学ばせてやれば少しはまともになるだろう。

 こいつらをおいてやってくれるか。彼等の捻くれた孤独体質の更正が私の依頼だ」

「それなら、先生が殴るなり蹴るなりして躾ればいいと思いますが」

「私だってできるならそうしたいが最近は小うるさくてな。肉体への暴力は許されていないんだ」

 

 先生のご尤もなご指摘を前に、ぐうの音も出ない。

 ただし、それでも言いたいことがないわけでもない。

 

「先生、それは一部ながら誤解が見受けられます。我々は哀れな存在かもしれませんが、孤独な存在などでは決してない。ちゃんと友達ならいますとも。ゲームとかパソコンとか本の中に大勢ね。

 二次元の住人たちが三次元の人間に劣るという考え方はサブカルチャー全般に携わる職場に着くことを希求する私のような少女にとっても非常に許し難い背信行為であって、青少年の精神的成長に決してよい影響を与えうるものではないと確信しております」

「・・・・・・その心は?」

「はい。つまり私はなにが言いたいのかと申しますと・・・・・・早く帰ってゲームがやりたいんで帰ってもいいですか? ここ、なんだか物凄く面倒くさそうな場所なので・・・」

「駄目に決まっているだろうが!?」

 

 ちぇっ。どうにも今日は私の逃げ口上でうまく成果を出すことができないな。馴染みのない環境に放り込まれて調子を崩してでもいるのだろうか?

 

「・・・なるほど。確かにこれは重傷ですね。そこの男からは下心に満ちた下卑た目を見ていると身の危険を感じますし、そこの彼女からは得も言われぬ駄目人間臭が滲みでていて今にも感染させられてしまいそうな危険性を感じます」

「いや、ちょっと待ってくれ雪ノ下・・・さん。こんな奴と同類にされるのは誰より俺が納得できない。訂正と謝罪と賠償と帰宅許可ぐらいは頂かせてもらわないと矛を収める気にはなれんのだが?」

「・・・あなたも早く帰りたいという気をまったく隠せていない時点で、同類扱いされても文句は言えないと思うのだけれど・・・」

「安心したまえ、雪ノ下。その男と隣の女は目と根性が腐ってるだけあってリスクリターンの計算とか自己保身に関してはなかなかのものだが、刑事罰に問われるような真似だけはけっしてしまい小悪党だからな。

 言ってるだけで、こちらが許可を出しさえしなければ自主的に逃げ出して帰宅することはけっしてないと保証するよ。彼等の禄でなしっぷりは信用してくれていい」

「何一つ褒められてねぇ・・・」

「いや、むしろディスられてたね今、確実に露骨にはっきりと。

 うーん・・・ここまで悪し様に罵られると逆に私なんかは彼女の発言に一定の信をおいてしまうのは、我が事ながらにどうかと思うよ」

「俺も本当にどうかと思うぞ、その悪癖は・・・つか、自覚あるなら治せよ」

「小悪党・・・なるほど・・・」

「しかも、こいつと話してるうちに納得されちゃってるよ・・・」

 

 うん、まったく以て尤もすぎる正しい意見だ。反論のしようがない。どうやら正論家ばかりの場所で私一人だけが異端みたいだし、やっぱり私だけでも帰った方がいいと思っているのだがどうだろうか?

 

「まぁ、先生からの依頼であれば無碍にはできませんし・・・。承りました」

 

 心底いやそうに言った雪ノ下さんの言葉を受けて、平塚先生は満足げに微笑むと、

 

「そうか。なら、後のことは頼む」

 

 とだけ言って、さっさと帰還してしまわれた。

 ・・・ここのコミュニティに関する説明は一言もなしですか。察するに、知りたいと思ったら彼女に直接聞けと。

 要するに“人付き合いを強制的に学ばされる”わけだな、私たちは“お互いに”。

 

 ・・・・・・やれやれ・・・面倒くさい・・・。


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