試作品集   作:ひきがやもとまち

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先週か先々週にやっていた『いせスラ』の再放送を見て、初放送時に思いついてたアイデアの内容を一部思い出したので書いてみました。何分にも古い記憶ですので忘れている部分が多く、継ぎはぎして無理やりまとめたため矛盾してる部分もあるかと思われますが、思いついたときに書かなかった作者の怠惰が原因ですので鼻で笑って流して下されると助かります。


転生したら三八式歩兵銃を持たされた件

 なんと言うこともない、普通の落ちこぼれ人生。三流高校を出て、名門とはとても呼べそうもない名ばかり大学に入学し、それなりの大学にすら入れなかった出涸らしとして両親から見限られ、そこそこの小遣いをお情けでもらい、何不自由ない典型的日本の男子学生19歳。

 何か足りないとすれば、いま彼女がいないと言うことと、将来の展望がまったくないってことぐらい。って言うか今までの彼女いない歴より、これから何年先まで更新することになるのかの方が問題視すべきなんだし、いなくても困るものでもないから別にいっか。

 

 そんな人生の負け犬ロードと一緒に通学路を歩んでいた平凡極まる落ちこぼれ学生Aでしかなかった俺は今、落ちこぼれ学生のお約束通り、信号のある当たりで通り魔だか薬でラリってるオッサンだかに脇腹ブッ刺されて死の淵に立たされているわけで。

 

 ・・・あ~、ナイフで刺された腹痛ぇー・・・。腹いせに隠し持ってたファッション用バタフライナイフで太股刺したオッサンの悲鳴うるせー・・・。刺された傷口から血が流れだしてくせいで寒くなってきたんですけども・・・・・・。

 俺は・・・死ぬの、か・・・・・・。こんな事になるな、ら、昨日録画した『ゴールデンカムイ』を見てから登校するんだった・・・ぜ・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

《確認しました。刺殺適正獲得、成功しました。続けて、刺突武器の所持、成功しました》

《確認しました。冷血漢獲得、血も涙もない人格を作成します。成功しました》

《電流パルス信号による記憶再生、情報不足により失敗しました。代行措置として、刺突武器との相性のいい武器を再現。付属して、相応しい軍服を作成。成功しました》

 

 

 

 

 

 

「―――で? ここドコ・・・・・・」

 

 

 眼下に広がる、見渡す限りの大森林を見下ろしながら俺は茫然自失でつぶやいて、適当な崖に腰掛けてみている。

 通り魔に刺し殺されて目を覚ますと、そこは天国でも地獄でもなく遠くから怪鳥の奇声が響いてきてる大森林だったとか、太宰とか夏目もビックリなジュール・ベルヌの世界観だよなぁー・・・。

 

 こういう時の定番所たとえ対象、富士の樹海と勘違いしようとか一応は考えてはみたんだけど、富士の周囲にあんなデカすぎる大木生えてないんだよなー。

 むしろ屋久島とかの方がたぶんあると思うぐらいにはデカすぎるし、そもそも富士の樹海ここまではデカくないっつーか、日本の国土内にこの広さは無理じゃね?とか冷静に考えてしまう程度には、まだ慌てるような時間と認識できてないらしい危機感欠けた典型的日本人の俺。

 

 ひとまず一服吸って冷静さを取り戻そうと、男子高校生の定番アイテム『二十歳になってから向けタバコ』を取り出そうとして、普段入れてある場所になくて、手探りで探ってくうちに自分が着ていた服だけでなく、どうやら体型まで変化しているらしい事実に気づかされてしまい余計に冷静さを取り戻す冷や水をぶっかけられ続けてる。

 

 せめて自分の姿がどうなってるかだけでも確認できるよう、鏡なり水溜まりなり近くにあれば良かったんだが、ないんだよなぁー・・・。

 なんか知らんが、転生したことだけは解るんだけど、それ以外なんも判らないまま放置って。どうすりゃいいんだよ、この状況。

 

「ったく・・・どうせ死んだ人間を生まれ変わらせてくれるんだったら、もう少しぐらいアフターケアしてくれても良さそうなもんだと思うんだがね――」

 

《解、お答え致します》

 

「うおわぁッ!? な、なんだ!? 一体・・・・・・」

 

 独り言つぶやきながら、ようやく見つかった紙巻きタバコを一本スパァ~っと吸ってたら、突然なにもないはずの空中から声が降ってきて話しかけられて俺は慌てふためきながら相手の姿を探して首だけ動かし、タバコは勿体ないから吸い続ける姿勢を維持し続けた。

 別に斜に構えているアピールをしたかったわけじゃない。日本人の美徳「勿体ない」を日本人として実践しただけのことでしかない。

 もっとも、今の自分が日本人の肉体してるのかどうかまでは判らんが、まだ確認してないんでねぇ。自分の目で見て耳で聞いて確認するまでは半信半疑、コレ常識。

 

《あなたが向かいたい先は自身の判断で決めて良いことですが、もし手に入れたスキルを有効活用できる道を進まれたい場合には、西へと続く道を歩まれることをお薦め致します》

「そ、そうなのか・・・。それでその、スキルってのは一体・・・能力のことなのか?」

《解、肯定です。あなたが現在獲得されたユニークスキルは三種類。その中でもあなただけしか使用できない特殊スキル【補給物資】を活用される場合には、西への道を選ぶことが最も有効であると判断しました》

「ほうほう、なるほどなるほど」

 

 なにやら怪しい声からの怪しい説明に対して、まぁ今のところ他に情報もないから半信半疑のままひとまず受け入れておくとして。

 

「――で? お前誰だよ。なんか死ぬ寸前にも似たような声聞いたような気がするんだが、意識朦朧とした最中だったからまるで思い出すことできてねぇんだけど」

 

 根本的な疑問点として、この声の正体がわからん。できれば名前ぐらいは聞かせて欲しいところなんだが。あと、今更だがスキル名【補給物資】ってなに?

 

《解。あなたが獲得したユニークスキルの一つ、【情報統合思念作戦本部】の効果音声です。能力が定着したため、的確な回答と情報伝達が迅速に下せるようになりました》

「情報統合思念作戦本部・・・・・・」

 

 ヒューマノイド・インターフェースと、自由惑星同盟軍の腐敗がゴッチャになったようなスキル名だな・・・。

 

「で、それってどんなスキルなんだ?」

《解。その時と場合に合わせて相応しい効果を持つアイテムを取り出すことができるリュックサックのことです。使いやすいように目に見える形を作成します》

 

 おお、なんか出てきたな。リュックサックって言うより、明らかに「背嚢」って感じがする古くさいデザインだけが難だが、まぁ見た目が性能に影響しないんだったら許容範囲内だ。許せるぜ。

 

「この中から、そのとき欲しいものが取り出すことができるようになる、っていう効果のスキルなんだよな?」

《肯定です。ただし、取り出せる物資自体は選ぶことはできません。効果が相応しいものであることだけが保証されているスキルです》

「・・・なんかメチャクチャ詐欺くさい効果のスキルだと思ったのは俺だけか・・・?」

 

 いきなり不安に陥らされること、この上ない代物なんだが・・・・・・まぁ使ってみる前から決めつけるのも良くないからな。念のため確認してみるとしよう。

 

「今使う事って出来るのか? 生憎と俺は今の状況自体がよく理解できていなくて、適切なものが何かなんてまるでわかんねぇんだけど」

《解、問題ありません。適切か否かはスキルの効果として自動的に判断されます。使用者が状況を理解しておく必要はありません》

「へぇ、ソイツは確かに便利だ」

 

 何が出てくるのか判らないってのは問題あるけど、適切だってことだけは確実なら道の場所に来た直後とかは非常に頼りになるスキルってことでもあるんだろう。多分だけどな。

 

《ただし、取り出せるアイテムの見た目と名称は近代における軍需品に限られており、それらが持つ逸話をファンタジー補正で独自解釈した効果が付与された物の中から取り出せる仕組みとなっています》

「ふーん。まぁとりあえず使ってみて実験してみるか・・・・・・」

 

 俺は状況が判らないまま、少しだけウキウキしながら背嚢の中へと手を突っ込んで何かを掴み取ると、右手ごと袋の中から取りだしてきて―――

 

 

 ズルッ、ポンッ!!

 テケテケッテテ~♪♪♪

 

 

 

《三八式歩兵銃、を取り出しました。自動装備致します。

 アイテム説明:【三八式自動歩兵銃】は大日本帝国陸軍初の国産ライフル。

 今のあなたにピッタリの世界観ブレイカーな兵器です》

 

 

 

「いらんわ――――――ッ!!!!!!(超激怒!!!)」

 

 

 

 いきなり最低最悪国家の銃が飛び出してきたから、全力投球で投げ出す道を選ぶ俺!!

 なんだって現代日本人の俺が、よりにもよって大日本帝国軍の傑作ライフルを手に異世界旅をはじめさせられなきゃならん! って言うか空飛んでる怪鳥から見てファンタジーだろ! この世界の世界観は! いきなり冒険始まった直後から世界観崩壊させる装備を与えてくるんじゃねぇ! 壊れるわ! 色々とこの世界の理とかそういうものが大体全部次々と!!

 

《否、不可能です。その装備を取り外すことができません。そういう仕様の兵器です》

「呪いのアイテムなのか!? このライフルは!」

 

 いや、確かに判るけどな! 逸話とか色々見てると呪われてそうだと俺も思うけどな! だからと言って、異世界転生して最初に手に入った「相応しい装備」が呪いのライフルだった身としては結構キツいぞこの状況!!

 

《それでは質問は以上のようですので、撤収致します。西への道は今立っている場所から右へ行く道の先ですのでお間違えのないよう》

「あっ! テメおい! 逃げるのか!? せめて呪いを解いてからいけよ!!」

《・・・・・・・・・》

「――クソゥッ! 声だけの存在だと今も残ってるのかどうか、判断できねぇ!!」

 

 厄介すぎるナビゲーターの存在に悪態をつくしかない俺だったが、他に行くべき道の目星もないのは事実だったので、やむを得なく言われたとおり西へと続く道とやらを進んでいくことにする。・・・ライフル持ちながら大森林の中を歩いている現代日本人って、外国の人から見るとどんな姿に映ってるんだろうか・・・?

 できることなら現代地球からきた他の転生者さんたちとは出会わず遭遇したりもせぬまま、この羞恥プレイを見られることない第二の人生を全うしたいものである。

 

 そんなことを考えながら道を進んでいくと――――ソイツらに、出会った。

 

 

「お、おおぉ、旅のお方・・・・・・申し訳ありませんが、食料に予備がありましたら我々に別けてくださいませんでしょうか・・・? 多種族との争いに敗れて食料全てを奪われ、もう三日ほど何も食べておらず、そろそろ我らも限界・・・・・・が・・・・・・」

『は、腹・・・減っ、た・・・・・・』

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 ズタボロになって、小山のように積み重なってる弱っちそうな小鬼の群れ。

 たぶんゴブリンなんだろう、多分だけども。その雑魚モンスターの代名詞的存在たちが負け犬の群れ状態になって小さなピラミッドを形成させられている醜態っぷり。

 そして、情けない見た目とは裏腹に『グー! グー!!』と盛大に鳴りまくっていて正直うるさすぎる目で見る印象と聞く音の違い。

 

「ど、どうか旅のお方・・・・・・パンを・・・、一切れでもいいですのでパンだけでも・・・」

『腹、減った・・・・・・死に・・・そう・・・・・・』

「―――――はぁ・・・・・・」

 

 正直、先ほど出てきた右手に持ってる“コレ”を鑑みると、あんまり恵んでやりたい気分にはなれなかったんだけどな・・・。

 まぁ、相手は所詮ザコモンスターの定番ゴブリンだし。食料を必要としてる状況下で、さすがに危険薬物なんかは出てこないだろう。・・・たぶん、きっと、おそらくは・・・。

 

「――とりあえず、この袋の中にある物は、自己責任でご自由にどうぞ・・・」

「おお! まことですか!? ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございますゥゥゥゥッ!!!」

『飯ィィィィィィィィィッッ!!!!!』

 

 バグバグバグバグバグッッ!!!!

 

 ・・・・・・文字通り飢えた難民たちのように、背嚢へと群がりまくっていくゴブリンたち。

 なんかもう色々と面倒くさくなってきて、精神的に疲れてきたから適当な所で寝てしまうことにする。

 おやすみ。せめて目覚める時には、今日あった全てのことが悪夢でしかなかったという現実が支配してくれることに望みをかけて――――グ~~~zzzz。

 

 

 

「お早うございます! お目覚めになられましたかお客人!!」

「誰だよ!?」

 

 夜寝て、朝起きたら死にかけゴブリンが筋肉マッチョになっていた! 心なしか身長まで三十センチ近く伸びてる気がするし、普通に別人なんじゃないのかコイツ絶対に!?

 

「お客人がお与えくださった、この魔法の食料を食べたおかげに御座います! 残念ながら中身は全て食べ尽くしてしまい、入れ物しか残すことが出来ませんでしたが村の者一同、感謝を込めて綺麗に洗っておきましたのでお納めくださいませ偉大なるお客人様!!」

「お、おう・・・」

 

 よくわからんが、とりあえずスキルのせいだと言うことだけはハッキリしたな! 今度はどんな物を出して来やがったんだ! このガラクタスキルは! 入れ物の外側だけでも目を皿のようにして見つめて証拠を探し出さないと気が済まな――――

 

 

《解、補給物資アイテム【オイコダール】の解説。

 第二次大戦中、ヒトラーが許容量を超えて服用し続けたとも言われる超危険薬物。

 強い多幸感、心地よい興奮状態をもたらし、薬が効いている間は感覚まで鋭くなって、痛みも平気になり、『自分は無敵だ!』という気持ちが沸いてきて力が漲り頭が冴え、何をしても何を言っても全て自分が正しいのだと信じられる夢のような薬。

 アヘン剤の一種で効き目が強く、非常に強い依存性を持っている。

 ゴブリンたちが口にした物は、この中でもヒトラーの主治医だったモレル医師が開発した黄金色の瓶詰め高級士官用の特注品であり、ナチス・ドイツ国防軍に初めての勝利をもたらした薬とも呼ばれている―――――》

 

 

 

「お客人がお与えくださった、この偉大なる神の薬を得た我らゴブリン軍団はまさに最強無敵! この圧倒的力をお授けくださったお客人閣下の指揮のもと世界の果てまで征服し尽くし、必ずや窮乏に喘ぐ我らゴブリンを救ってくださった偉大なる指導者様としてお迎えに上がりますことをここに制約させていただきま――――!!!」

「――――――――フンッ!!!!」

「お、お客じィィィィィッッん!? 神の薬になんて無体なことをぉぉぉぉぉッ!?」

 

 

 全力投球して、今更意味も存在価値もない、ただ俺のストレス発散のためだけに投げ捨てられることだけが残された最後の利用価値となった悪魔の薬(使用後の空瓶)を遠くのお空の彼方まで追放し、慌てて後を追っていく大勢のゴブリンたち(見た目屈強)の後ろ姿を見送ることなく俺はもう一度横になって二度寝する道を選び取る。

 もう知らん! こんな第二の人生なんてクソゲーだ! クソゲーだから寝るのだ! 現実から逃避するために、我々現代日本の男子高校生は寝るかゲームするかの二つしか逃げ場所を持っていない愚かな愚民共であるが故に!

 俺は―――もう知らんから寝る! おやすみ!

 せめて夢の中だけでも平穏無事な俺だけの世界が得られますように!!

 

 

 

オマケ『オリジナル主人公設定』

 だいぶ前に思いついた作品とキャラを今更になって思い出したから書いてみただけの人物。

 ただし記憶の摩耗によって、結構な部分が忘れてしまっていて名前も思い出せていないキャラ。

 実は現段階で描かれていないけど、見た目がロリッ子状態になってしまっており、服装は大日本帝国陸軍第8師団の軍服(子供サイズ)に変更されてしまっている。――ここら辺のことも描写されてたシーンを思い出せなかったから書けませんでしたわ(苦笑)

 意外と苦労人であり、ユニークスキル《補給物資》に色々振り回されながらも使わざるを得ない状況が連発してしまう厄介な呪いを受けて転生してきてしまった元日本の落ちこぼれ高校生。

 元々のキャラはもっと冷酷な部分があって、今でも戦闘時には冷静に相手をヘッドショットするなどのシーンで再現されるのだが、戦闘シーンがない今話の中では描きようがなかった。

 

 リムルの立場をオリキャラで代用した存在で、種族は【大日本帝国陸軍】

 ・・・もはや『魔物』と同類扱いされてしまっているが、世間の扱いも争いの元凶呼ばわりで似たようなレベルの気がするから由としておく。

 異世界の魔物たちから見ても、同じモンスター種族として受け入れられていく展開になる今作主人公のオリジナル種族です。

 

 

【スキル一覧】(ただし《軍需物資》と《三八式歩兵銃》は前述したので除外)

 

《情報統合思念作戦本部》

 本作における《大賢者》。近代風に名前が変更され、性格の悪さに磨きがかかっている以外は大賢者のままの能力と効果を有している。今作のナビゲーター役。

 

《冷血漢》

 戦闘スキル。平和な現代日本で生まれ育ったはずの高校生でしかない主人公が血を見ても騒がず、敵の頭を打ち抜いても気にすることなく戦闘を続行できる戦闘に特化された感情と思考法が一時的に付与されるサポートスキル。戦闘時には自動的に効果が発動する。

 

《刺突武器適正》

 相手を刺し殺せる道具なら、ナイフだろうと、先端の尖っただけの小枝だろうと全て刺突武器と認定させて装備して戦うことが出来るようになる補助スキル兼サバイバルスキル。

 熟練度アップによって、戦場に存在する全てのモノを自軍の武器として用いることができるように変えてしまう上位ユニークスキル《敗残の残党軍》に進化可能。


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