試作品集   作:ひきがやもとまち

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深夜に起きたんですけど、録画番組の録画モードを変え終わるまでテレビが使えず、仕方なしに原作確認なしで書ける作品を書いた結果、書き途中だったコレだけ完成できましたので投稿しておきます。
そして今から執筆本番。設定しないと自動的には変わらないとはいえ、なんか無駄に時間使ったような気がしないこともありません…。


他称魔王様、自称凡人さん。リスタート第6章

 ――智天使に守護された聖王国のある、この異世界には悪魔王の他に【七つの大罪】と呼ばれる魔族たちの王が君臨し、互いの領地を奪い合っている【魔族領】が存在していた。

 その地では、領地と配下を持つ魔族たちが大悪魔と呼ばれ『我こそは次代の悪魔王!』を名乗り魔族領の覇権をめぐって争い合っていたのだが「魔族同士で殺し合っても人間どもを喜ばせるだけ」と程々のラインで引き上げて互いに「勝利した」と喧伝し合うのが常となっていた。

 謂わば、群雄割拠の戦国時代でありながら「命を賭けて天下を望まぬ強者ども」が現状維持という安易な道を選んでいたようなもの―――自らの権威と地位を保持し続けるため擬似的な安寧と平和と戦争ゴッコを繰り返していただけの現状と化していたのである・・・・・・。

 

 その様な戦国の武人として『自らが滅びる覚悟なく天下を望む愚か者たち』に裁きを鉄槌を下すためかどうかまではいざ知らず、魔族領より遙か遠い聖王国の辺境にて【新たなる魔王】が異界の地より呼び出されていたことを彼らはまだ知らない。気付いていない。

 その名は、ちびっ子エルフのナベ次郎。

 『第六天より来たりし魔王』を自称する【七つの大罪】にプラスされた「八番目」の悪魔王たり得る候補異種族少女。

 

 ・・・「八番目」で「二代目」の悪魔王候補が「第六」とは、これ如何に・・・?

 

 それはきっと、四天王なのに五人いたり、七不思議なのに百個以上聞いたことあったり、東京ディズニーランドが千葉にあるのと同じような理由であろう。

 きっと多分おそらくはだけれども―――――。

 

 

 

 まぁそれはともかくとして。

 

 

 

 ・・・・・・所変わってここは聖王国、某所。

 一台の豪華な馬車が護衛隊に守られながら、僻地へと向かって行軍している姿があった。

 

 石畳の敷かれた神都と違い、この辺りの貧しい地域は道が舗装されておらず野ざらしのまま放置されているのが聖王国の常である。

 馬に乗って悪路を行く旅はヒドく揺れ、尻が痛くなることこそ人の世の伝統。それは、馬に乗った護衛隊の騎士たちも、馬車に乗った只一人の乗客である貴人中の貴人も例外ではない。

 

 ――今、馬車の車輪が石コロを踏んで「ガタン!」と大きく揺れた。

 客席の中から小さな悲鳴が響いた直後に、大きな声での叱責が飛ぶ。

 

「――痛ッ・・・、ちょっとアンタ! もっと気をつけて走ってよ! 魔王討伐の前に、私のお尻にアザでもできたらどうするつもり!?」

「も、申し訳ありません! ルナ様!」

 

 御者台で手綱を握った中年の男が、慌てて平謝りして首をすくめる。

 歴が長く経験豊富な彼としては、道の悪い貧しい辺境の馬車移動で尻にでき物ができるぐらいだったら別にいいじゃねーかと思いはするのだけれども。

 そんなことは間違っても言えない。死んでも言えない。死ぬから言えない。生きていたい。

 

「私はね、今から伝承に謳われる魔王を討伐しに行くのよ! その前に、お尻にアザなんか出来ちゃったらケチが付いちゃうじゃないの! あんた私に対する信心が足りないんじゃないの!?」

「も、申し訳ありません・・・この辺りは道も舗装されてないもんでして、多少の揺れはどうしてもその・・・」

「あんた・・・・・・それ、御政道への批判ってわけ?」

「め、滅相もない!」

 

 なにしろ自分が手綱を握った馬車に乗せているのは――聖女様のお一人なのだ。

 それも三人いる聖女様方の中でも特にワガママで、手を焼く性格であることが有名な末っ子天才少女の彼女相手にそんな無礼な口を叩いたら、下手しなくても火炙りの刑に処されかねない。

 

(・・・それこそ「“痔”になるよりはマシです、お気をつけください」なんて絶対に言えねぇー! 死んでも言えねぇ―! 間違いなく絶対に殺されるから絶対に言えねぇー!

 生きて嫁のところに帰り着くため、俺は命を賭けて聖女様の尻を無傷で守り抜く! 待っててくれ、母ちゃん!)

 

 他人にもし聞こえてたら誤解されて殺されること間違いなしそうな決意を心の中で固めながら、気弱そうな御者の中年男性はビクビクしながら手綱を手繰る。

 

 ・・・余談だが、老け顔に似合わず先月嫁をもらったばかりの彼は愛妻家で、もらったばかりの新妻も美女ではないが器量が良くて、オマケに彼好みの『前よりお尻りの方が好き』なタイプの女でもあった。顔が少し『臭作』っぽいのが理由かもしれない。そんな異世界エロゲー事情は誰も知らない世界だからどうでもいいのだけれども。

 

「し、しかし、他の聖女様はいらっしゃらないのでしょうか・・・?」

 

 痛みから気を逸らして紛らわせるために言ってやった世間話の定番内容も、わがままで気が立っている今の末っ子聖女様には逆効果になる。

 

「なぁに、それ・・・? 私一人じゃ手に余るとでも言いたいの!?」

「と、とんでもございません! ルナ様なら、お一人で十分です!」

 

 馬車の座席でふんぞり返りながら、只一人の乗客である貴人の少女が相手の反応に下がりかけていた機嫌を直す。右手で窓枠に頬杖をつきながら、左手は傍らの杖先に添え、椅子に座って足を組む。

 

 ウェーブのかかったピンク色の髪。瞳の色まで淡いピンク色。

 ゆったりとした修道服に包まれながらも、そこから覗く手足は細く長く非常に魅力的――

 

 まさに見た目“だけ”なら聖女様と呼ばれるのに相応しい容貌を持った彼女こそ、聖王国の頂点に君臨する三聖女の一人。

 

 【ルナ・エレガント】16歳。

 

 ・・・いや、あるいは質実ともにそろった聖女に相応しい存在とは彼女のような者なのかもしれない。

 もとより軍事力によって支配を正当化し、神の権威によって他国の影響力を有するに至った宗教国家の女教皇とはそういうものだ。建前ばかりを口にして、現実の行動とはいつも矛盾する言動を吐く。

 事実、彼女自身も上の姉二人も「聖女姉妹」と呼ばれながら血の繋がりは一切なく、『エレガント』という姓に相応しくなく生まれも貧しい。

 信仰心もあるようで無く、魔法の才能がズバ抜けているからというだけで聖女に抜擢された「聖王国体制を維持するための道具」として選ばれただけの存在である。

 支配永続のため兵器として、国内最強戦力として、豊かな暮らしと良い待遇でもって迎え入れられただけなのである。

 

 ・・・まぁ、辺境に建てられた瀟洒な邸宅で軟禁されてた白い悪魔な英雄殿よりかは大分マシな扱いされているんだけれども。

 本人が思っているほど『聖女様』という地位が、エレガントなものでないことだけは一応ながら事実ではあったのだった。

 

「フン、当然でしょう。いつまでもお姉様たちに負けてられないんだからっ!」

 

 まだ戦ってもいない勝利を確信した笑顔を浮かべながら、ルナ・エレガントは余裕に満ちた発言を放つ。

 

 ――なにしろ彼女は今から、独断専行で手柄を独り占めしにいこうとしている途中なのである。姉たちに知られて付いてこられたりした日には、自分一人が独占するはずだった【魔王殺し】の比類無き手柄と栄光が目減りしてしまう。だからその選択肢は断じてNO!

 

 実は彼女が、普段は豊かな神都で贅沢な暮らしに満足しているのに、こんな道が悪くて尻が痛くなる僻地へと向かって騎行しているのは、先日ビリッツォ・ラングから報告のあった『復活した魔王』を討伐して、他の姉たちに自分の実力を認めさせたいと考えた故であった。

 

 優秀な姉か兄たちがいる末っ子によくあるパターンとして、姉たちと自分の立場の違いを過剰に意識し「格下に見られている!」と思い込み、周囲に自分の方がお姉ちゃんたちより上なんだと認めさせなければ気が済まないお約束な部分が彼女の精神には多分に存在しており。

 

 平たく言えば、「お姉ちゃんたちが嫌いじゃないけど、好きなんだけど、比べられると何か腹立つから自分の実力見せつけて認めさせて、いつか自分に跪かせて屈服させてやるわ! オーッホッホッホ!」・・・と言う感じに反抗期のど真ん中ドストレートを地で突っ走っている思春期妹の典型例少女だったという次第である。

 

 そんな彼女が見つけた、手っ取り早く確実に自分の方が姉たちより上なんだと世間に向かって判りやすい形で知らしめられる都合のいい獲物が先日報告のあった【真の魔王】だった。

 

 智天使様を信奉する聖王国を治める聖女の一人として、彼の大悪を討伐することは大義であり使命であり、それを果たした聖女様こそ一番スゴくて偉くて強いのだ。

 魔王を倒すのを遠くで見ているだけだった姉の聖女たちには独断専行を咎め立てする資格や権利なんてあるはずなくなっちゃう存在なのである。

 

 形骸化しているとはいえ、いや形ばかりになっているからこそ、聖王国にとって【魔王討伐】という【聖女の使命】は大きな意味を持ち、高く評価される偉業となり得る。

 早い者勝ちで、やった者勝ちな、結果こそ全ての獲物なのである。

 

(――こんな美味しい獲物をお姉様たちと一緒に討伐して手柄を分け合うなんて冗談じゃないわ! 必ず出し抜いて、独り占めしてあげるんだから!

 そのために内緒で出発して、一人で討伐に来たんだからね! もっともっと急がせたいけど、内緒だから知られるわけにはいかないし~。あ~ん、私ったら魔法の才能だけじゃなくて策略の才能まであっただなんて・・・なんて、カ・ン・ペ・キ♪)

 

 自己陶酔ここに極まれり。

 魔法の才能だけは間違いなく天才的なんだけど、何故だか天才と呼ばれ育った人たちは自分のことを一点特化型の天才だと認められるだけでは飽き足らずに、全ての方面で才能を発揮できる万能の天才なんだと周囲の人に信じさせたがる奇癖を持っている人が意外と多い。

 

 ――降ってわいた手柄を他の者に譲ってはならない! 分け合うなど言語道断だ!

 必ずや姉たち二人を出し抜いてやる――ッ!!

 

 ルナ・エレガントは彼女なりに野望に燃えて、僻地へと向かう尻の痛い馬車の旅を絶え続けていたのである。

 たとえそれが彼女個人の自己掲示欲と見栄っ張りな性格から来ているだけであろうとも、彼女個人にとっては大事な想いであり誰にも否定させる気は無い。

 

(まさに完璧な計画!! 聖王国史上、最高の聖女という呼び名は私にこそ相応しいのよ! 他の誰にも相応しくなんか無いわ! エレガントとは私のためにある言葉よね!

 その美しさと完璧さを愚民どもに見せつけるためにも、魔王! 私の栄光の飾り付けとして使ってあげるから踏み台になるため待っていなさい! オ~ッホッホッホ――ッ!!)

 

 

 ガタンッ! ガタタンッ!!

 

「痛いッ!? お尻が痛い!? 私のお尻が割れるように痛かったわよ今の揺れは!? あんた私に天罰与えようとかいい度胸してんじゃないの! 表へ出なさい! 私がやってることが間違いじゃなくて正しいってことを完璧な勝利によって証明してあげるから!!」

「なんの話をしてらっしゃるんですかー!?」

 

 御者の悲鳴が、僻地へと到着し掛かっていた谷間にある道の中へ木霊する。

 聖王国が三聖女の末っ子、ルナ・エレガント。16歳。

 根が一本気で直情径行なれど、正義感が強くワガママとは言え、悪い事してると自覚できないほどには悪意的な性格になれず、かといって手柄の独占を我慢できるほどには大人でもない。

 

 まっ、要するに反抗期真っ盛りなお年頃の少女というだけの存在が、今の彼女の人格面を表す全てだったというわけであった。

 御者のオッサン、ご心労お察しいたします。ま~る。

 

 

 

 

 ――そして、その頃。

 聖王国の神都へと続く道で、一人の魔王が一人の子供を背負いながら楽しそうに騒いでいる姿があったことを聖女たちは知らない。

 

 

「わははははッ!!! 誰も私に追いつくことなど出来ません! ブラボー!!」

「わ、わわわわッ!? ま、ままままま魔王様魔王様魔王様!! はや、はや、早すぎますよー!? もう少しスピードを緩めてくださーいッ!?」

 

 

 ・・・・・・間違いを訂正しよう。

 正しくは、一人の魔王が楽しそうに笑いながら神都への道を全速力で疾走し、その背中に一人の子供が必死にしがみついて振り落とされないよう大声で悲鳴を上げて騒いでいたが正解である。

 

 モンクの高速移動スキル【アスリート走り】

 『ゴッターニ・サーガ』でも人気の高かった戦士系ジョブ専用の高速移動スキルを、障害物にぶつかって途中停止する恐れのない、MMO世界よりも広大なリアル異世界の荒野を利用して思う存分使用しまくり、無駄に必要MP消費しまくっている最中だったからである。

 

「お断りします! 何故ならアクさん! 私はこう思ってるんです! 旅は素晴らしいものだと!

 その土地にある名産、遺跡、暮らしている人々との触れ合い! 新しい体験が人生の経験に成り得がたい知識へと昇華する! しかし目的地までの移動時間は正直メンドウです!

 その行程を、この世界に生きる私の身体なら破壊的なまでに短縮できる! だから私は旅が大好きになろうと決めたんです! 聞いてますかアクさん? アクさ~~ッん♪♪」

「聞いてます! 聞こえてますからスピードを! もう少しだけでいいですからスピードを緩めてください! お願いしますから! 落ち、落ち、落ちちゃいそうですから私がー!?」

「わははははははッ!!!!!」

 

 軽快なフットワーク、「チターン! チターン!」と足が地面につく度に鳴る効果音。

 大凡、ファンタジー世界でファンタジー装備のエルフがやるような走り方ではないそれを、ナベ次郎は心の底から楽しみながら無駄使用を笑いながら繰り返し続ける。

 

 

 ・・・世界の広大さを体感してもらうため国から国へ、長距離の歩いて移動が基本となるMMORPGの世界では、必ずしも一度行ったことのある場所なら一瞬で移動可能な瞬間移動魔法が実装されているとは限らず『ゴッターニ・サーガ』でもそれは同様で、拠点として使えそうな大きな町の近くにワープ装置があるだけで他は基本的に歩きか、船か、飛行船を使って十分か二十分ぐらいの乗り物移動が楽しめるだけの仕様になっていた。

 

 とは言え、船も飛行船も使用頻度が多すぎる乗り物のため、利便性から『無料パス』が手に入れられるイベントが存在していて、一度でもをクリアすると幾らでも乗り放題になってしまって、時間がかかりすぎる歩きでの国家間移動は人気がなくなり世界観が縮んだように見えてしまうようになるのも必然的な帰結と言えるだろう。

 

 そこで『ゴッターニ・サーガ』の配信元は、より多くの娯楽性と歩きでのフィールドマップにイベント増やして新たにマップ増やす手間暇必要経費の削減とを同時に成立させるため複数の移動スキルを追加で実装していくようになっていった。

 

 

 その中でも、【アスリート走り】は人気のあったモンクだけが使用可能な移動スキルの一つである。

 無敵時間があるわけでもないし、他のパーティーが自動的に追尾してくれる訳でもないので性能的には微妙だったけど、とにかく速くて、見た目が良い。

 

 ファンタジー世界の道を、ファンタジーな装備に身を包んだ冒険者が、アスリートみたいな走り方で疾走しまくるのである。

 シュール過ぎる光景だったし、装備のエフェクトによってはホラーにさえなり得る。一枚絵を撮影保存するカメラ機能で撮った写真を募集するコンテストで佳作に入賞した実績もある。

 

 それ程までに好きだったスキルだ。異世界でも使用できると分かって、使いまくっても何かにぶつかって止まることなさそうな場所があったら、そりゃ使うだろう誰だって。それがゲーマーの業とも呼ぶべき、“癖”というものなのだから。

 

 

「アクさん! この世の理とは即ち速さだと思いませんか!? 物事を早く成し遂げればそのぶん時間が有効に使えます! 遅いことなら誰でも出来る! 二十年かければバカでも傑作二次小説ぐらいなら書ける! 有能なのは月刊マンガ家よりも週刊マンガ家! 週刊よりもジャンプ以外は日刊です! つまり速さこそが有能な証なのがこの世界の絶対法則!! そして特攻大好きでSTRとAGI極振りな私の自慢なのです~~~ッ♪♪♪」

「だから意味が分かりません意味が! あと、せめてスピード落としてからしゃべってくださーい!?」

 

 あまりにも異世界の理を無視しまくった、自分本位なやり方を力尽くで押しつけてくる身勝手すぎる横暴な振る舞い。

 だが、本来『魔王』とは、それをする存在の事を指している。

 

 「無い」はずのモノを「ある」ことにしてしまう。

 世界を律する法則のほうこそ、あたかも「間違った屁理屈」であるかのように人々を騙し、元々はなかったはずの自分の唱える理屈こそが最初から正しかったモノのように信じ込ませる。

 それまでの世界を支配した『理』を否定して過去へと追いやり、自らが定めた『魔王の法』を新たなる世界の『理』と定め世界と人々の心を支配する。

 

 それこそが魔王。

 旧世界を滅ぼし、『魔王が定めた法』によって新たなる世界を築いてしまうもの。

 文字通りの『魔法』使い。それこそが真の魔王である。

 

 大悪魔と呼ばれ、多数の配下と領土を支配しようとも、『魔族だから、人間だから、獣人だから』と誰かの決めた定義に従って、自分の種族のみが他の種族を支配すればいい等という考え方は所詮、【民族主義右翼の人外バージョン】に過ぎずない。

 唱える者が天使であれ、魔族であれ、獣人であれ、人間であれ、定義としては全て同じ。力の強い弱いの違いしかない。

 

 誰かの決めた法則に自ら従うことを決めた、『誰かの臣下』でしかない者に魔王の名も、魔王の座も相応しい訳がないのだから――――

 

 だからこそ。

 

 

「俺たちの放った矢の雨をアッサリかわすたぁ、中々やるな。俺はここいら一帯を支配している山賊団【土竜】の頭領、オウンゴール。お前の名は―――」

 

 

 

「邪魔――――ッ!!!! そこ退けそこ退け、私が通るんですからね――――ッ!!!」

 

 

 

 バコ―――――――ッン!!!!

 

 

『へぶ―――――ッし!?』

 

 

 荒野にエンカウントする山賊とか言う、なんか定義的に良く分からない連中に襲われても会話などしない。

 『Bダッシュ中に使える跳び蹴りで纏めて倒すと気持ちいいよね♪』を実行するだけで、敵に生き残りがいるかどうかなんて気にもしないし、倒した後に落としてくれる(場合もある)小銭なんて一々拾いに戻ろうともしない。

 

 天上天下唯我独尊。それこそが魔王の在り方である。

 いちいち定義づけに拘って、世界の理やら役職名に伴う義務やらに支配されたがっている無能魔王共と【第六天より来たりし魔王を楽しんで自称する者】とを一緒にしないでくれたまえよ皆様方!? こんなのと比べるのは先方に対して失礼過ぎるというものだから!!

 

 

「他人に運命を左右されるとは意思を譲ったと言うことです! 意思無き者に文化無し! 文化無くして私は無し! 私をなくして私がないのは当たり前ェェッ! だからッ!

 私は私のやりたい時には好きにやるのですよ! ミノリさ~ん!で良かったですよね名前ー!?」

「知りませ――ッん!? 誰ですかミノリサンって―――ッ!? あとスピード落としてください! 私がもう限界寸前のバッドスピードを―――ッ!!!???」

「ワハハハハッ!! さぁ、もっと行くぞ! ラディカル・グッド・スピード!!!」

「きゃ――――――――――――ッッ!!!!!?????」

 

 

 神をも恐れず、天使をノリで蹴って寿命を縮めさせ、悪魔王の頭蓋を握り潰した特攻エルフのネタ少女がノリにノルとき理屈は通じず、道理は蹂躙され尽くされる。

 

 ・・・・・・そして後ほど、冷静さを取り戻した後に地面を転がりまくって悶え苦しみ、自らがまた犯してしまった過ちへの後悔で、自らの心を煉獄の炎で焼いて無かったことにしたい黒歴史を増やしていくのだ。

 

 人類はなにも学ばないが、魔王だってなにも学習しようとしない。

 ――だから毎度のように倒されては復活して同じ事やって、また負けて倒されて復活してを繰り返す存在なんですよね、きっと。

 

 

 そんな魔王少女を倒すために、プライド高いせいで懲りない性格の聖女様が立ちはだかってきたとき、世界の理はどう変わり、どう塗り替えられてしまうのか?

 

 

「よぅよぅ、嬢ちゃん。さっきはよくもやってくれたなァ・・・・・・落とし前つけさせてもらうぜ!

 テメェらみたいなガキなんざ、俺たちを吹っ飛ばすのに使いやがった妙な魔法にだけ気をつけていれば大したこたぁねぇ!! 野郎共!! やっちまいな!!」

『応ッ!!』

「魔法がなんですって? 魔王討伐に来たら、薄汚い山賊までいるなんてね・・・。

 まっ、オマケで倒して私を飾る栄光の一部には使ってあげるから感謝しなさい!!」

 

 

 それは今から結果によって分かること、分かり易く示される未来世界の新たなる理・・・・・・

 

 

つづく

 

『次回予告というか使う予定のネタ』

 

 ナベ次郎たちは魔物の群れに襲われた!

 聖女「ルナ・エレガント」が現れた!

 

ルナ「ちょっと!? 誰が魔物なのよ誰が!? 私どう見ても人間じゃないの! ニ・ン・ゲ・ン!!!」

 

ナベ「問題ありません。主人公に襲いかかってきて戦闘して倒せる存在はぜんぶ敵モンスターです。人間系のモンスターなんて『ロマ・サガ』じゃ珍しくもなかったですからね。だから大丈夫です、問題ありません」

 

アク「魔王様・・・・・・いくら何でも言ってることと行動が、魔王様過ぎると思います・・・・・・」


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