その分、前回よりかは面白くなっていると自分では思いたいです。
――かつて、聖書をもとに綴られた物語の中で神話になった少年は、こう言ったと歴史書には記されております。
『なんでだよー!? 嫌なことから逃げ出してなにが悪いんだよぉっ!?』
――と。この言葉こそ、まさしく至言と呼ぶべきもの。人間誰だって嫌な事からは逃げ出したいですし、辛い過去はなかったことにしたいもの。なかったことにしたい歴史は黒歴史として地下深く埋めて記録ごと抹消させ、白いお髭さまに歴史を書き直させることで完全消去する。
・・・これが未来の地球人の取るべき正しい手法と確定しているのですからね。なにも恥じる必要はないのですよ本当に。聖書を元にした物語の主人公が言ってんだから絶対ですよ、マチガイナイ。
―――と、言うわけで。
「おうおう、ちょいと待ちな嬢ちゃんたち。さっきはよくも俺たち土竜に、舐めたマネしてくれやがったなぁ。そんなに痛い目にあいたかったのかぁ、エエェッ!?」
「・・・・・・さぁ・・・。あなた方は、どこのどちら様だったでしょうかねぇ・・・・・・」
私は後ろから全速力で追いかけてきて追いつかれちゃったばかりの山賊さんたち相手に、全身全霊でしらばっくれて、過去の自分が犯した過ちを黒歴史化して無かったことにするため全力を尽くす道を選ぶと決めていた次第です。
私はなにも知りませんし、見てません。やってもいません。
昨日の夜に改めようと誓ったばかりの黒歴史封印をアッサリ忘れて、広い道を見つけた途端に走り出したくなってしまった元気マンブラザーズが如き新たな黒歴史を生み出してしまった直近の過去など私は知らないのです。知らないって言ったら知りません。嫌なことだから逃げ出すことが正義であり正しいのです。
だから私は間違ってません。逃げちゃダメだなんて嘘っぱちだとエリートぼっち高校生先生が言ってました。神話になった中学生少年も高校生になれば同じ答えに達するはず・・・。
だから私は悪くな~い、悪くな~い。間違ってもいな~いし、覚えてもいな~~~い・・・。
「あ、あのー・・・魔王様? この人たちってもしかしなくても、もしかしてさっき吹っ飛ばされおられた山賊の人たちなんじゃないでしょうか?」
「・・・しー!です、アクさんしー! そういうのは言わなければいいんです! 認めなければいいんです! 知らぬ存ぜぬで貫き通せばなんとかなるのが大人の世界なんですよ! あなたも大人になれば分かりますから、だから今はしー!なのです!」
「あっ、テメェ! やっぱり覚えてるじゃねぇか俺たちのこと! 人蹴っ飛ばしておきながら覚えてねぇフリしやがるとはヒデェ野郎だなテメェはよぉ!! ちっとは人様とお天道様に顔向けできるよう真っ当な人生を生きようとは思えねぇのか全くよぅ!!」
「山賊団にそこまで言われる覚えないんですけどね!? いくら私でも言っていい人と悪い人がいてもいいと思うんですけれども!?」
思わず全力反論して、自分でも覚えてたこと認めてしまうしかなくなる私・・・。クソゥ、全部このツッコミ体質が悪いんや・・・。異世界召喚されてゲームキャラになる日本人はみんなツッコミ属性が強すぎる人ばかりなのが悪いんや・・・。
「はぁ・・・・・・こうなっては仕方がありませんね・・・。真面目にお相手いたしましょう。――で? あなた方は一体だぁ~れ?」
「フッ、やっとコッチへ向き直りやがったな。では、あらためて名乗りを上げてやる。三度目はねぇから、耳かっぽじってよぉーく聞きな」
《早乙女ヨシオ山賊団》とか、名付けたりしちゃダメなんですかな? このオジサンたちって。
「俺は土竜の頭領、オ・ウンゴールだ。早速で悪いが、エルフの嬢ちゃんと金髪チビの嬢ちゃんたち。お前らは聖女ルナ・エレガントが俺たちを誘き出すための囮だな?」
「・・・・・・は? え? 聖女? ルナ・エレファント・・・って、何の名前ですかそれって・・・? 月のように巨大な象型モンスターの一種ですか?」
「どんなバケモンだそりゃあ!? んなデカすぎるバケモンなんざいて堪るかアホッ!!」
山賊の頭領さんは怒り出しましたけど・・・・・・いますよね? 普通に。月ぐらいの巨大な動物って神話上のファンタジー世界にだったら。
世界全てを背中に乗っけてる亀とか魚とか珍しくもないのが、神々の住まう地球神話上の世界デッス。
「って言うか、オ・ウンゴールってちょっと格好いい名前ですね。アインズ・ウール・ゴウンみたいで、結構憧れますよ。少しだけ羨ましいです」
「え? そ、そうか? それほどでも・・・まぁあるだろうな俺の名前だし。ワッハッハ! いや参ったなこりゃハッハッハ!!」
「ええ、本当に羨ましいですし格好いいと思いますよ。・・・出来ることなら、自分のと変えて欲しいぐらいにはですけどね・・・」
ちなみに私の名前は《ナベ次郎》です。オ・ウンゴールの方が、アインズ・ウール・ゴウンの下位互換で劣化番っぽい名前っぽくて少しだけ憧れる気持ちに嘘はありません。・・・割と本気で今からでもいいから自キャラ名変えたい・・・。
「お、お頭。しっかりしてくださいよ!」
「わ、わかってるよ安心しろお前らぁ!」
そしてなんか、部下っぽい人たちに心配され始めたから怒鳴り声で安心させてあげるアインズ・ウール・ゴウンさん(なんかコッチの方が呼びやすかった)
全然関係ないですけど、この人の顔ってどっかで見覚えあると思ってたら、中学校時代にクラスが一緒だった青木さんのお父さんによく似てらっしゃいますね。本人かどうか聞いても大丈夫なんでしょうかな?
・・・結構デッカい会社で専務やってた方なのでね・・・。そんな人が異世界で山賊やってるレベルにまで落ちぶれられた可能性を考えると気軽に聞くことも出来ませんよ・・・。
学校時代に好成績を自慢してた人が数年後に屋台でタコ焼き売ってるところとかに出くわすとメチャクチャ居心地悪くなるから出来れば避けたい大学近くで開かれるお祭りみたいな感じで・・・。
「あーと、・・・コホン。――さっき俺たちを吹っ飛ばしやがった手品、ありゃあ魔法だな? 不意打ちとはいえ、俺たちの奇襲と包囲陣を破ったことだけは褒めてやるぜエルフの嬢ちゃん。さすがは種族全員が魔法を得意としているとか言われてるエルフ族だとな」
「・・・そですか。えっと・・・どもです」
明らかに取り繕ったこと丸分かりな言い方で会話再開したのを分かっていながら、何も言い返すことなく素直に共食してみせることしか出来ない私、種族全員が魔法が得意なエルフ選んで魔法が一切使えない職業のモンクになってるネタきゃらエルフのナベ次郎っす・・・。
「だが、俺たちにもメンツってもんがある。ガキ二人を襲って吹っ飛ばされて終わったんじゃ、この渡世は凌いじゃいけねぇのさ。嬢ちゃんたちには悪いが死んでもらうぜ。せめてもの情けとして、苦しむ死に方だけはしねぇようにしてやるから安心して、あの世へ行きな」
一応は(見た目だけは)子供相手だからなのか、大上段からの上から目線とはいえ妥協案っぽいことを口にしてくるアインズ・ウール・ゴウンさん。
やっぱり偉大な人と似たような名前を持って生まれてきたりすると、器が少しだけでも大きくなるのでしょうかね? ・・・じゃあ何故、美姫ナーベと爆弾魔フカ次郎の合いの子ネームな私の器はちっこくなる一方なんですかね!!
「おっと、下手な気は起こさねぇ方がいいぜ。魔法使いなんざ気力が尽きりゃ、ただの案山子も同然よ。話してる間に弓使いたちの配置も終わってる。お前らに生き延びれる道はねぇよ。諦めて大人しく成仏しときな。俺たちに襲われて苦しまずに死ねるってだけでも相当にラッキーな事なんだからよ」
とのことでしたが、私としては死ぬ気もなければ、アクさんを殺させてしまう気にもなれそうにありません。
一方で矛盾するようですけど、この方たちを殺してでも逃げたいかと聞かれたら、そこまで嫌うほど嫌な気分になる人たちでもないからなーと、思ってしまってもいましたので少々困りものな状態にありました。
「あわわわ、あわ、アワワワ・・・・・・」
迷いながら悩みながらも、私にしがみついてハワワ軍師ちゃんみたいな反応しているアクさんの頭を撫でてあげながら父性本能満喫しつつ。
私はこれからどうしたもんかなーとか思って、高く青い空を見上げてポケットの中の戦争のOPを思い出していた丁度そのとき。
『魔法が何ですってぇッ!!』
「・・・え?」
「おう!?」
なんかいきなり声が響いてきて、空の上に妙な光が見えたと思ったら急速に枝分かれして形を変えて、山賊さんたちの頭上へと雨霰のように降り注いできたのでした!!
「え!? なに!? なにが起こったんですかこれ一体!?」
光の雨に打たれた山賊さんたちだけでなく私も慌てて、砂埃から顔とアクさんを守りながら状況把握も実行し、少し離れた道の先から“少女”が一人で近づいてくるのを発見しました!
「魔王討伐にきたら、薄汚い山賊までいるなんてね」
尊大な口調で自信満々に言ってくる、シスター服を着た少女さんでした。
杖をついて歩いてきてましたけど、別に足が不自由なわけではなく何かの強力なマジックアイテムの様であり、彼女自身の容貌や服装と合わせてみても相当に高位にあるプリースト系の職業に就いている女の子のようでした。
「これは・・・ヤバいかもしれませんね・・・」
冷や汗を一滴垂らしながら、私は緊張にこわばる顔を隠すことが出来ずに呟いてしまいました・・・。
ピンク色の長い髪、太ももが見えるスリットの入った純白のシスター服を纏って、ストッキングを履いた絶対領域まで完備しているプリースト系の美少女。
そして彼女がやってきた目的は『魔王討伐』で、今相手をしているのは山賊たちの集団・・・ッ。
間違いありません・・・! コイツは――エロゲー展開です!! エルフ少女と純真無垢な薄幸美少女がいていい状況じゃありません! 一刻も早く離脱しなければ最悪の場合、中身男の見た目だけロリエルフがオークたちに犯される誰得展開に発展しかねません!
逃げなきゃダメです! 逃げなきゃダメです! 逃げなきゃダメです! 人生には逃げなきゃダメな時というのも往々にして結構あるものなのですよシンジ君!!
「ちぃっ! 筋書きが狂った! テメェら! 引き上げるぞッ!!」
しかも、そうこう考えてる間にアインズ・ウール・ゴウン様たちだけ先に逃げだそうとしちゃってますし! ちょっと待って置いていくな!
お願いですから、この状況下に女の子二人だけ置いていくの本当にやめてぇ!?
「ちょっ、待ってください! 逃げるんでしたら私たちも一緒に―――」
「バッカじゃないの? 私から逃げられるわけないじゃない!
金色に裂かれよ!! 《ゴールド・スラッシュ》!!!!」
と、叫ぼうとしていたところで後ろから追撃が発射されてきました。
逃げるために背中をさらしていた山賊さんたちが、次々と光の矢で貫かれて絶命していきます。
・・・さすが教会から派遣されてきたっぽいシスターに人は容赦ねぇ~・・・。聖職者とはとても思えない、この仕打ち。やはりエロい服装をしてシスターという職業に就いている人たちは外道な性格してるのがデフォルトなのでしょうか? スカート履いてないカレンさんみたいな感じで、貧乳の癖して服だけやたらとエロいのが彼女たちの特徴だと私は思う。
「うわぁぁぁっ!?」
「あ・・・ッ」
――って、ヤバ!? 女の子が容赦なく人殺しまくってる事態に、ついつい郷愁に駆られてトリップしちゃってましたが私は一人で来たんじゃないんでした! レベル的には弱っちいアクさんを守ってあげなきゃいけない立場出来てるんでしたわ!
「え、ま・・・・・・!?」
「危ない、アクさ―――っん!!!」
ギリギリのところで光の刃が彼女の体に届く寸前、私の方が先に彼女の近くまで接近することに成功し、彼女をかばうように前へ出た私の元には光の矢が至近距離まで迫ってきてしまっており、そこで私は―――!!!
「やっべぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!!!!?????」
「ちょ、え、魔王さ・・・きゃああああああああっ!?」
アクさん抱え込んで全身全霊で回避しました! 避けました躱しました! この際攻撃受けないで済むなら何だってありです! 受け身なんか考えてる余裕なねぇ! とにかく逃げる! 逃げる逃げる逃げるぅぅぅぅッ!!
ゴロゴロゴロゴロゴロッ!!!!
人生には逃げなきゃいけない時があるのですよぉぉぉ―――ッ!!!!
「ちょっとアンタ! なに私の魔法避けてんのよ!!」
「当たったら死んじゃうかもしれないでしょーが!? んなもん誰だって避けますよ! んなこともわかんないんですかバカなんじゃんですか貴女は!?」
「ばッ!?」
思わず相手の言い分に激高しちゃって反射的に罵声で怒鳴り返してしまう私。
だってそうでしょう? モンクにとっての魔法攻撃なんて最低最悪の鬼門じゃないですか! 遠距離攻撃職のウィザード系と接近戦特化のモンクによるタイマンなんて、近づかれたら負け、近づけなったら負けの、殺るか殺られるかなガチバトル。エンジョイプレイヤーに求めるような代物じゃねーのですよぅ!!
いや、もちろん魔法職は基本的に対MOB用の職業であって、対人でタイマンするもんじゃないってことぐらい知っているのですけれども!
でも逆に、それが出来る人だったら『敵対プレイヤーを殺すためだけに用意された廃プレイヤーによる廃ウィザード』ってことが確定しちゃう職業でもありますのでね!?
訳わかんない状況下で、しかもゲームオーバーが現実での死に直結しちゃってるかもしれないですゲーム化してる可能性もある異世界転移している今、君子危うきには絶対近寄りたくないモンクにとっての危険人物! それこそが彼女!
・・・えーと・・・、名前知らないですけどプリースト系の癖して攻撃魔法に特化してるっぽいバーサーカーヒーラーのなんとかさんです!!
「こ、この私に向かってバカですってぇ!? あんた、誰に向かって口を利いてるのか分かってんの!?」
「知りませんよ! いきなり名乗りもせずに攻撃してきたのは貴女でしょうが! 説明責任ぐらい果たしなさいよ本当に!」
「フンッ! 聖女が悪しき存在を討つなんて、当たり前の話じゃない」
尊大そのものな口調で断言されてくる、自称聖女様。
まぁ、教団で崇められてる聖女なんて大体そんなもんですから別にいいんですけどね。この際、アタモニ神団の聖女エルレイン様とかよりマシならそれでよろしい。ラスボスの神様蘇らせた人類の敵の聖女様なんてマジ要らねーです。何度か殺しても死なねー相手でしたのでマジ面倒くさかった。
「・・・って言うか、さっき貴女に討たれそうになってたのは山賊さんとか私だけでなく、無力で小さなか弱い女の子だったのですがね?」
「う゛・・・・・・。そ、それはその、え~とぉ・・・」
おいコラ、聖女様。アンタまさかさっきの誤射ですかよ・・・。
誤射で女の子殺しかかって悪しき存在を討つのが当然がどうとか言われても、説得力なさ過ぎて困るんですが。
――しかし、これは案外使えるかもしれませんね。このネタで揺すって交渉すれば、このまま安全に場を離脱することが可能になるかもしれません―――
「ふ、フンッ! 悪人の分際で何を言い出しているのかしらね? あんた、私が誰だか分かっていないようね。私は三聖女の一人、金色のルナ・エレガントなのよ!!」
「・・・誰・・・? ルナ・“エレファント”って、象人間系の亜人族かなにかの人ですか・・・?」
「あんた達ぃ! この間抜けな頭したガキを捕らえなさい!!」
『え? あ、はい。お、オオオオォォォォォッ!!!』
なんか背後に控えてた騎士団っぽい人たちが前に出てきちゃいました! なぜですかー!? 私はおかしなことは何も言ってなかったのにー!?
「隠したって無駄よ! あ、あんたきっと例の魔王ね! そうよ! そうに違いないわ! だからお供で連れてるその子もきっと聖女が倒すべき悪!! だから私は正義なのよ!」
「なぜその呼び名を知っているー!?」
相手の言葉を聞いて、思わず私は回避行動も逃げるための方策を考える思考も完全放棄して、聖女を名乗ったルナ・エレファントさんの顔を睨み付けながら怒鳴り声を上げてしまいました!
いつの間にか私の黒歴史が、知らない間に知らない人にまで伝わってしまっていたという衝撃の事実に私は驚愕させられていたからです!! ネットの世界で情報拡散は日常茶飯事ですが、まさかネトゲキャラになって転移した先の異世界でまで個人情報漏洩の危機に見舞われるとは! ネットリテラシーは異世界においてすら無しなのですかね!?
もし私だけだったなら誤解の余地もあったのですが、ノリであのとき従者に任命してしまっていた“アク”さんの事まで知られているとなると誤解の余地は一部も無し!
く、クソゥ・・・。せっかく黒歴史の封印を新たに施したばかりだったというのに・・・なぜ今更になって蘇ってくるのですか私の黒歴史! いるべき心のマウンテンサイクルに帰りなさーい! ターンエーガンダム要りません!!
「ほ、ほらやっぱり! あんた魔王だったんじゃないの! 自白したんだから間違いないわね! 確定ね! 言い逃れは出来ないわよ! はい、魔王だから今ここで死刑!! 悪は滅ぼされろ魔王――ッ!!」
「ぐっ!? ゆ、誘導尋問とは卑怯な手をぉ・・・ッ!!」
私は歯ぎしりして、人を騙すのに長けた悪しき教団と聖女の双方を激しく恨み、睨み付けました! やはりエロい格好したシスターの所属する宗教勢力というものは、外道な聖職者と極悪人の集まりだったと言うことですかぁぁぁ・・・・・・ッ!!!
「あの・・・魔王様? ボク、あんまり頭良くないのでわからなかったのですが・・・・・・先ほどの聖女様は悪くなかったと思いますよ?」
「・・・・・・・・・」
アクさんが隣で言ってくる言葉を、私は聞こえないフリして気づいてもいないフリを実行に移します。
嫌なことからは逃げてもいい。聖書を基にした物語の主人公が言っていたのですから間違いはありません。聖女よりも聖書です。濁点が一つないだけ清純さは少しだけ上!・・・なはずです。たぶん、おそらくはそうであって欲しいと願うばかりですが・・・。
『ウォォォォッ!!! この世を夜で支配しようと欲する悪しき魔王! その首、頂戴つかまつる!! ドオリャァァァァァッ!!!』
「なんかモブキャラ達までいっぱい聞いていやがりましたー!?」
やべー!? 突っ込んできてる途中だった騎士団のことスッカリ忘れてましたー!?
どうすべー!? どうすべー!? こんな大人数の口を封じる方法なんて皆殺し以外に知らないんですが!? 異世界転移した途端に大量虐殺する羽目になるアインズ様ルートはアンデッドの精神安定持ってないとキツすぎると思うのですが!? どうすべーどうすべー!? 本当の本気でどうすべー!?
こ、こうなったら・・・・・・やりたくはありませんが、あれをやるしか他に私に明日はない状況にまで追い詰められてしまっているということなのですかぁぁぁぁ・・・・・・ッ!!!
『ウォォォォォッ!!!』
「・・・く、ククク・・・・・・」
『ウォォォォォッ!!!! ―――おおぉ?』
「グワーハッハッハッハッハッハ!!!!!!」
私は胸の前で腕を組んで大きな声で高笑いをすると。
驚く騎士達の前で、伝家の宝刀“ヤケクソ”を抜き放ち、魔王の刃として振り下ろしてやったのでした!! 彼の心の臓を掴み取ってやるために!!!
「小賢しくも我が正体、暴きたてに攻め来るとは愚かな女よ。真実など知らなければ、今しばらくはその命、長らえることも出来たであろうに・・・。
余の首、取れるとでも思い上がったか? 笑止ぃぃぃぃぃッッ!!!!!」
ピカッ!! ゴロゴロゴロズガァァ~~~ン!!!!
一喝すると同時に、課金アイテムの残ってた中から《ステンドグラス背景》と《雷効果音グラフィック》を使用して超常現象っぽさを演出!!
「な、何よこれ? これは一体なんなのよ!? あ、あんた一体何者なの!? ま、まさか本当に本物の復活した魔王なんじゃ・・・・・・!?」
「余はぁぁ・・・・・・昔と今、そしてこれからの世に跋扈する全ての邪気と魔性が人の形に集まったバケモノ・・・。
第六天魔界より来たりし、真なる魔王成りぃぃぃぃぃッッ!!!!」
そして大声で叫ぶと同時に、モンクスキル《雄叫び》を使用! 1ターンの間、敵の行動を強制停止させてもらいました!
「な、なによこれは!? か、体が動かない!? 前に進むことも出来ないなんてそんな!?」
「今しばらくは、この現世に満ち満ちた邪気と魔性を吸収する腹づもりであったが・・・我が正体を知られてしまった以上は、是非も無ぁぁしぃぃ・・・・・・余が直々に平坂へと送り、その頭蓋を揃って杯としてくれようぞゥ!!!」
『ひ、ヒィィィィィィィッ!!??』
この状況をどうにかするため今の私が取り得る最終手段にして最後の武器!!
それこそが!!!
「我が正体を知った者、全て滅する!!! 愚者共よ!! 余の秘密を知ろうなどとした己の愚かさを地獄の釜の底で未来永劫悔やみ続けるがいい!!!!」
脅迫して黙らせる!! 他言無用と脅しまくる!
私の恥ずかしい秘密をこれ以上広めないためには、もうそれしか道はない!!!
*ナベ次郎は 混乱している*
つづく