試作品集   作:ひきがやもとまち

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今ではハーメルンに移動されてきた永島ひろゆき先生の『さよなら竜生、こんにちは人生』が小説家になろう時代から大好きだった作者が思い上がった末に書いてみた作品です。

神様の手違いから死んでしまった少年が転生させて貰ったら二度目の手違いによってクトゥルー神話の邪神ニャルラトホテプに転生させられてしまい、地球に迷惑かけないためにファンタジー惑星へと移動し、守護神みたいな役割を果たした後に邪神として討伐されて「ようやく滅べた」と思ったら1000年後の同じ世界で人間として再スタートするチート無双ギャグファンタジーです。

クトゥルーなんてものは知らない王道ファンタジーの世界で、訳わからん理屈の魔法やら生物やらを使ってチートするお話です。
ド素人の書く妄想小説に過ぎませんが、良ければ読んでみてやってくださいませ。


二度目の人生をクトゥルーで、三度目の人生を異世界魔術師ファンタジーで送らされてる私です。

『・・・ふむ? これは如何様なる仕儀によるものなのか、説明してもらっても構わないかな? 我が親しき勇者殿たちよ。

 少なくとも私には君たち人間に討たれる理由の心当たりはないのだけれど?』

 

 幾重にも縛り上げられて身動き一つ出来なくなった自分の小さな身体を見下ろしながら私は前に立つ犯人たちに問いかけると、彼らは一様に口を閉ざして答えを返すことはない。

 

 ・・・もっとも、耐え難い心痛に歪んだ表情を見れば、私でなくとも彼らの真意を察するのに返答を待つ必要性はないのだろうけど。

 

『愚かなことだ。国の都合に従うしかない君たちが、気に病むことでもなかろうに』

 

 私の言葉に彼らはハッとして顔を上げる。・・・ん? 何故驚かれているのだ私。一目見れば一目瞭然だと思ったから言っただけなのだが・・・。

 

 ーーーああ、なるほど。心を覗かれないための精神防壁を幾重にも張り巡らせた上に、心まで閉ざして壁を敷いていたのか。そこまでやらねば、死に逝く私に謝罪の言葉と殺さなければならなくなった理由について語ろうとする己を偽ることが出来なかったのだな。

 先ほどから一言も発しようとしなかったのは、些細なことから零れ出てしまいそうになる想いを『役割を終えるまで』守り抜こうとする意思の表れだったわけだな。

 

 ・・・やれやれ、つくづく律儀な人たちだな~。人類として私を倒すべきとする決定は正しくて真っ当なものであるだろうに。

 

 

 何故なら私は『邪神』。己が仕える主人アザトースにさえ嘲笑を向ける悪神ロキ以上のトリックスター神性。

 今は人の味方をしているとは言え、いつまた理性を失って人類の敵対者になるかもしれない輩からの協力と友情に永遠があると思う方がおかしいのだから。

 

 

『人々に手を貸し、世界を救うのに協力し続けてきた私を人間の王たちは危険視するようになった。

 人々もまた彼らの煽動に踊らされて私を討てと呼号している。人類の守護者である君たち勇者としては選択を迫られざるを得なくなった。

 だからこそ自分たちから役割に志願した。一方的に助けてもらっておきながら自分たちの都合だけで手のひらを返して殺しにくる人間たちの代表として、せめて私が滅び去る瞬間まで人間たちへの恨み言をぶつけまくってもらうために。

 誰よりも恩を感じている自分たちが出来る、せめてもの贖罪のために。・・・そんな所かな?』

 

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

 

 ふむ。またしても無言か。

 まぁ、先と同じで表情だけ見れば阿呆でも分かると思うのだけど、それは言わないで逝ってあげるのが『神としての自分』が地上で果たす最後のお役目というものだろう。

 

 私は自分の体の中で人間で言うところの心臓に当たる部分に突き刺さっている白く輝く聖なる剣を見つめる。『神殺しの聖剣』だ。

 神代の時代に生きていた戦の神が呪いを浴び、世界を滅ぼさんとする破壊神に成り果てようとしていた時に自らの心臓を穿ってくれるよう人の勇者に頼んだとされる曰く付きの神造兵器で、『この世界で手に入る』神殺しの効果を付与された武装の中では文句無しの最高ランク。

 これなら後は私が自動防御と完全再生機能さえ停止させてしまえば滅ぼされることも可能だろう。・・・多分だけれども。

 

 ふと、上を見上げてみたら夜が明けていた。光の神でもある太陽神の加護が一番強まる時間帯。こういうシチュエーションで最期を迎えるときには、なにかしら気の聞いた言葉でも贈ってエンディングとすべきであろうな。邪神級の神様的に。

 

 

 

『・・・思えば、この地に降りてきてよりずっと神に敷かれたレールの上を踊り狂いながら死なずにきただけの存在であったが、君たちと出会えたおかげで最期の十数年だけは多少なりとも良い人生であったと思っているよ・・・・・・』

 

 

 そう言いながら、私は断崖絶壁スレスレに立ち続けていた身体を傾けて、奈落の底へと身を投げ出した。

 落ちて助かろうというのではない。死ぬための保険だ。だって聖剣だけだと心許なかったし、念には念をと言うことだしね。

 

 

 

 こうして私の人生は、見送る勇者たちの悲痛な表情を見ながら暗い暗い穴の奥底へと落ちていくことで幕を閉じた。永く生きすぎた私の人生が、今ようやく終わりを迎えたのである・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・終わったんだよな? 本当にこれで終わりだよね? 続きとかないですよね?

 良さげなセリフが思いつかなくて「どうせ最後なんだから」と大総統閣下の台詞をもじった恥ずかし台詞で死んだ後、三度目の人生が同じ世界で『強くてニューゲーム』だった日にはマジ泣きしますよ私。

 

 ーーまったく! なんだって一度死んで生まれ変わらせてもらった転生先がクトゥルー神話群の邪神『ニャルラトホテプ』だったんでしょうかね! 神様の手違いで死なせてしまったことへの償いとして転生させてもらったら、二度続けての手違いとか有り得なくないですか!?

 しかも『自分より上位の神格になっちゃってるみたいだからゴメン殺せない』って、なんだそりゃ! 無責任にも程がありますよ!

 

 

 まぁ、なっちゃったもんは仕方がないので地球からの避難を最優先に、他の銀河系へお引っ越ししました。

 地球近辺にいたら絶対混沌に陥れちゃうと思いますのでね!ニャルラトホテプ的に!

 

 そうして宇宙を当てもなくブラブラ散歩してる途中で中級神ぐらいの『古き神』が新しい銀河系つくって世界と人々を生みだす創造神になろうとしていたところにバッタリ出くわし、彼が創ろうとしている世界を聞いてみたら私の生まれ故郷である懐かしき前世の地球で大流行していたRPGみたいなファンタジー異世界だったので渡りに船と飛びついたのです。

 

 正体かくして神格も偽って交渉して了承を得て、地上に降ろしてやる代わりに『人類の守護者やれや』と言う条件付きでしたのでアッサリ承諾。

 こうして異世界の守護神にして邪神でもあるニュヤルラトホテプが誕生したのです。

 

 

 最初はニャルラトホテプがノーデンス役って無理じゃね? すぐ邪悪さがバレるんじゃ・・・そんな風に危惧したこともありましたが無問題。

 20世紀中盤に生み出された神話群の神様なんざ中世ヨーロッパ風異世界ファンタジーの住人たちにゃ概念すら生まれていません。

 比較的仲良くやりながら人類の敵を挽き千切っては放り投げ、焼いたり潰したり砕いたりする平穏な日常を楽しく過ごせておりましたよ。

 

 崇められたり感謝されたり神権政治に悪用されたり、恨まれたり恐れられたり忌み嫌われたり呪いの神として知らない間に使われてたりと色々ありはしましたが、平穏と言えば平穏な毎日です。

 

 ソドムとゴモラっぽい町は無数に滅んだり復興されたり新たな王朝の聖地とされたりしてきましたが、全世界の王を集めて石と棍棒で戦い合う世界最終戦争『メギドの丘の戦い』が勃発することだけはなかったですのでねー。

 

 町なんて「100回滅ぼされたら101回立て直せばいい」という名言があるほど倒れずに立ち上がれる生命力に溢れた場所だから良いのですけど、さすがにメギドの丘みたいな狭い場所に世界中から軍隊集めてこいだなんて無茶ぶりされた場合にはどうしようかと冷や冷やしていましたが杞憂のまま人生終えられて何よりでしたよ、本当に。

 

 

 さぁ! 今度こそ私を天国か地獄か煉獄かヴァルハラかシェオールか、どこでもいいですし何でもいいので普通に死後の世界へ導いてくださいませ世界様よ!

 正直、最初の命が十六年で終わった直後に数百億年単位で生きさせられた第二の人生はベリーハード過ぎます! 死んだ後ぐらいはイージーモードで!

 今度こそは人間(元)らしく平凡な生の果てに待っていた普通の死をお願いします!

 

 

 ーーむむっ!! 光が満ちてきましたね・・・。これは・・・当たりではないでしょうか!?

 頼みます! お願い来てください普通のあの世ーーーーーーーーーーーっ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーあ、目を開いたぞ。お前によく似て、綺麗に澄んだ藍色の瞳だ。大きくなったら町の男どもが放っておかなくなるだろうな。母子そろって罪作りなことだ」

「まぁ、あなたったら気が早いこと。そんな先の話で盛り上がるより、この子に名前を付けてあげるべきではなくて?」

「ん? ーーおお! そうだったそうだった、スマンスマン。嬉しすぎたのと随分前から決めていたのとで順序を完全に忘れてしまってたよ。こりゃウッカリ。わははは!」

「まぁ、あなたったら。うふふふ」

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 目の前でイチャツく初対面のバカップルを見せられながらスタートする、第三のリアル人生ゲーム。

(しかも女性の方は外見年齢若すぎるからいいですけど、男の方は完全にむさいオッサンの外見してました)

 

 ここまで出落ち感満載のRPGは初めてですね。クーリングオフは効きますか? どこのメーカーに訴状を送ればよろしいのでしょう? やり直させてもらえるのでしたら右手と左足を一本ずつくらい真理の扉にくれてやっても構いませんが?

 

 

 

「私たち夫婦の大切な愛娘にして、凡人の男と結ばれる道を選んだ異端の魔術師ユーリンの血を引く者ーーー。そして俺にとっては大事な大事な誰にもやらない愛しき我が娘よ!

 お前の名前はーーそう! 『ナベ次郎』だ!

 娘が生まれたときにはそう名付けようと、ずっと前から決めていた!」

 

 

 トンヌラよりもヒドい名前キタ━(・∀・)━!!!!

 

 いや、本気でこのオッサン大丈夫ですかね!? 主に頭の中身の脳味噌とかが! あるいは幼児性知的障害の可能性でも可!

 ここまでヒドすぎるネーミングセンスの持ち主ははじめて見ましたよ! パパスお父さん超越しまくってて逆に尊崇しちゃいそうですよ! 逆の意味でですけどね!

 

 

「まぁ、素敵なお名前・・・。草原を優しく撫でていく風のように爽やかで、小川のせせらぎのように清楚で大人しくて・・・・・・」

 

 どこが!? アンタ、さすがにこの男の人に嫁いできただけありますね! 類が呼んだ同類だからこそ可能だった有り得ない婚姻の末に産まれた子供が元邪神だったわけですね! そりゃ必然的に誕生しますよ! だって混沌としてますもん! この夫婦関係そのものがね!

 

 

「・・・まるで、この子の幸せな将来が形を成したような名前・・・きっと、天井の神々からも祝福してもらえるに違いないわ」

 

 どんな将来なんですか私の人生って!? あなた本当に娘のこと愛しているんでしょうね!? 邪神に呪われそうなレベルで可笑しすぎる名前に抱くべき疑問は皆無なのですか!? 将来的にグレて、北欧神話の悪神ロキすら上回る邪神に化けても知らないからなー!

 

 

「「ああ、今日この子と出会えた私たちは世界で一番幸せな夫婦だわ(な)・・・・・・」」

 

 

 バカップル夫婦の夫婦漫才の小道具にされるために生まれてきた子供は宇宙で一番不幸を噛みしめちゃってるぞーーーーーーっ!!!!!(`Д´)」

 

つづく・・・かも?


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