試作品集   作:ひきがやもとまち

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大分前に『プリズマ☆ロード』と連載作の候補を競い合ってた作品を思い出したので書いてみました。
最近、どこに行っても暗い話ばかり耳に入る現状が嫌だったので原作に配慮することなく書きたいようにハッチャケてる作品です。

FateZERO原作ですけどアホっぽい話です。アホ作好きの方だけどうぞ。


もしも切嗣が喚んだセイバーがオルタ化してたら

「メリー、サンタクロース姿で失礼。貴様が私のマスターと言う奴か?」

 

 『魔術師殺し』衛宮切嗣の運命は、世界を救済するため第四次聖杯戦争で召喚した騎士王が黒く染まっていたことで一変させられる・・・・・・。

 

 

 

 

 ――森のとば口でじゃれ合う父娘の小さな姿を、城の窓から見下ろす灰色の冷たくて冷酷な眼差しがあった。

 窓辺に佇むその少女の立ち姿は、か弱さや儚さからは程遠い。

 

 まぁ・・・冬にビキニ着て上から軍用コートを羽織っている姿に、か弱いとか儚いとかバカな感想を抱いてしまった時には脳外科に強制連行以外の選択肢はないかもしれんけど・・・。

 

 

「何を見ているの? セイバー」

 

 背後からアイリスフィールに呼びかけられて、窓辺の少女ーー水着メイド姿だけどセイバー・オルタは振り向いた。

 

「・・・アイリスフィールか。いやなに、外の森で息女と戯れているマスターを見ていて、ふと思っていただけだ。

 ーー森の中で年端もいかぬ少女を笑いながら追いかけ回す、冴えない中年男性という生き物を世間はどういう目で見るのだろうかと」

「そ、そうなの・・・。それは大変・・・ね?」

 

 困ったような笑顔で応じるしかないアイリスフィール。言われるまで気づかなかったが、確かにちょっとアレかもしれない。

 今この場は人除けの結界が張り巡らされたアインツベルン城内であるから良いとしても、聖杯戦争が終わって切嗣が勝ち残り娘のイリヤと外の世界で幸せに暮らすためには、あのムサくてボロいスーツ姿を放置したままなのは非常にまずい。

 

 せめて日本に行く前に無精ヒゲぐらいは剃るよう言い含めておかなければと、ごく普通の妻らしい発想を魔術で造られた人造人間ホムンクルスの女性に抱かせた時点でセイバー・オルタの偉業は、本来喚ばれるはずだった青い方を越えたのかもしれなかった。

 

 

「切嗣のああいう側面が、意外だったのね?」

 

 微笑するアイリスフィールに、セイバー・オルタは素直に頷いた。

 

「忌憚なく言わせてもらうが、私のマスターは戦場で生きる者としては心が弱すぎている。決意も覚悟もまるで足りていない。最強のサーヴァントがなごやかマスターに首輪をつけて戦場に引きずっていかなければならないようなものだ。

 体が弱いのは構わないが、心が弱いのは見ていて辛い。少しばかり平和な日常で鈍った体を鍛え直してやる必要があるかもしれんな」

「そ、そうですか・・・」

 

 セイバー・オルタの言葉にアイリスフィールは困り果てた顔で苦笑するしかない。

 

 個人的には、寒いのを承知で気に入っているからと水着メイド服姿から着替えようとしない精神力の持ち主と比べられて尚、負けない心を持っている人間がいるとしたら英雄の仲間入りを果たしてるだろうから「貴女いらないんじゃないのかなー」と思ったりしなくもないのだが、良妻賢母の鏡である心優しいアイリスフィールは本人にそれを伝えることは決してしない。ただ穏やかに微笑むのみである。

 

 ・・・・・・見守り続ける母の愛も、時には考え物かもしれないなーと、この場に第三者がいてくれたら思ってくれたかもしれないのに人除けの結界によって阻まれているから無理である。魔術ってこう言うところでつくづく万能じゃない。

 

「・・・どうした、アイリスフィール。なぜ笑い始める?」

 

 自分から話しかけてきておきながら、何かを思い出したように突然笑い出したアイリスフィールの姿を見て、セイバー・オルタはやや憮然となり問いただす。

 

「・・・・・・ごめんなさいね。召還されたときのこと、まだ根に持ってるのかな、と思って」

「無論だ。私の姿格好が皆の想像するものと違うというのには慣れているが、さすがに喚びだした当人から『誰だよお前!? 偽物か!?』等と罵倒しなくてもよかろうに」

 

 風格こそ颯爽とした威厳に満ちていながら、出てくるときに着ていた服装はミニスカサンタである。しかもクラスはセイバーときたものだ。

 これで喚びだしに応じてくれた英霊が、彼の名高き高潔な騎士王様であるなどと誰が信じられるというのか? 信じる奴の頭が狂ってでもいない限りは偽物の可能性から疑うのは当然の選択であるだろう。

 

 魔術師の常識を無視した攻撃で相手を仕止める戦い方を得手としている切嗣だが、自分以上に常識の通じないサーヴァントを引いてしまったのでは常識論を展開するしか道はない。つくづく反転したサーヴァントとは厄介きわまる存在なのである。

 

「確かに私は生前、正しさと騎士道を奉じて無駄な足掻きをしたこともある。だが、決して迷いがなかったわけではない。常に「こうした方が結果的には良いのではないか?」という葛藤を抱えながら生きていた。悩むことなく下した決断はひとつたりと存在しなかったのだ。

 ならば、この世界とは違う歴史を歩んだ平行世界で「そちらの道」を選んでいた私がいて、その死後に英霊となった方の私がエクスカリバーの鞘に引き寄せられる形でキリツグのサーヴァントに選ばれていたとしても不思議はないだろう? 英霊の座は時間も空間も関係ない場所にあると聞かされたし」

「いやまぁ、そう言われてもねぇ・・・・・・仕方がないのよ。あなたの伝説はあまりにも有名すぎるし、私たちが知ってるアーサー王とはイメージのギャップが凄すぎていて」

 

 なにしろサンタコス着て出てきた理由が『雪中に建つ城内に喚びだされたから』と断言してのける黒く染まった騎士王様である。こんなのとアーサー王伝説を結びつける奴は頭が以下同文。

 

「容姿については、岩から抜いた契約の剣の呪いによる物だからな。私にはどうすることもできない。付け加えるなら、服はもっとダメだぞ? 私はこれを気に入っている。

 クラスは変わらずとも、私が着替えたいと思わない限りは決して着替えない」

 

 セイバー・オルタは頑固でわがまま。

 

「しかし、今のマスターの置かれている現状はサーヴァントとして仕える身として捨て置けんな。いい年をした男親が昼日中から娘と遊びほうけるばかりで外にでて働こうともしないとは・・・。

 これではクリスマスに娘にあげる「微妙にこれじゃない系」のプレゼントを買うことすら出来ないではないか! 英国一のジェントリになるなど夢のまた夢だぞ!嘆かわしい!」

「いや、あのねセイバー? うちは大富豪でキリツグは入り婿だから一生かかっても使いきれない額の収入は既に得ているのよ? あと、ここって一応ドイツなんだけど・・・」

「特にやることがなくとも体は動かす、それが出来るマスターと言うものだぞ? アイリスフィール。

 それになにより、良き信頼関係は何者にも代え難い。私はそう思っている。私がマスターに厳しいのは、キリツグを信じているからだ。今はぐうたらでも、必ずや英国一のジェントリになれる男の中の男だと!」

「セイバー・・・っ! あなた・・・そこまでキリツグのことを・・・・・・!!!」

「それ故に私をサーヴァントとして引き当てた以上、マスターには理想の生活を覚悟してもらう。二度寝も運動不足も引きこもりニートも許さん。掃除洗濯も徹底的にやる。

 さぁ、しっかり働いて稼げるようになってらっしゃいませマスター様よ!」

 

 

 叫んで飛び出し、ガラスをガッシャーーーーーーーーーッン!!!!

 

 ・・・・・・地上三階ぐらいの高さから飛び降りてイリヤと戯れていた切嗣の目の前に降りてきた水着メイド姿のセイバーに驚かされるあまり『セイバーとは話をしない』ことを決めていた切嗣は、咄嗟に自らの立てた誓いを破らされてしまう。

 

「セイバー!? 何故ここに!? イリヤと遊んでいる時は距離を置くようにアイリから伝えられていないのか!?」

「私はマスターのサーヴァントだ。故に職務の怠慢は看過できん! ちょっと目を離した隙に訓練を怠けて娘との戯れに逃避するとは情けない!

 兵士とは走る者のこと! 休まず走り続けることこそが、生きて戦いを勝ち抜き家族の元へと帰り着く最前の手段なのだと教えておいたはずだぞマスター!」

「は、離せ! 僕はイリヤと過ごすことで戦いの場に赴く覚悟を決められるんだ! 戦いばかりで荒んだ心を癒してくれるのは家族の愛だけなのだと、何故貴様にはわからない!?」

「臣下が死のうと人々が苦しもうと何も感じない女である私に、そのようなモノを期待するな! 私が剣として貴様のために出来るのは敵と戦い倒すことのみ。

 ならば、貴様に仕えるサーヴァントとして果たすべき職務は、貴様が戦場から生きて帰ってこれるよう鍛えてやること。ただそれだけだろう。

 さぁ、わかったらとっとと走ってきなさいマスター様よ! かわいい娘の元に生きて帰りつけるように私がモルガーンで手伝ってやるから!」

「ちょっ、おま、宝具振りかぶってサーヴァントが生身の人間追いかけ回してくるのは反則だろぉぉぉぉぉぉっ!!??」

 

「わーい! おいかけっこ! おいかけっこ! クルミの冬芽探しでズルしてたキリツグなんかやっちゃえ、セイバー!」

「委細承知! オーダーを承った! 見敵必殺! サーチ&デストロイ! サーチ&デストロイ!」

「イリヤァァァァァァァァァ!? 君もなのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっい!?」

 

「ああ、キリツグ・・・!! あなたがイリヤと私以外の人(?)の前であんなに素直に本音をさらけ出すなんて・・・・・・!

 やっぱりセイバーは伝説にある通り人々に笑顔をもたらす名君アーサー王で間違いなかったのね・・・!!」

 

 

 

 氷に閉ざされたアインツベルン城。

 そこは一千年の永い時の流れの中で“成就”への執念に犯され尽くした、暗くて陰鬱なはずの城。

 

 だが、一年ほど前からこの城に騒ぎ声が絶えた日が訪れたことは一度もない。毎日何かしらのトラブルが発生し続けており、縁もゆかりもない他人なのに我が物顔で城主面して気ままに振る舞う暴君が、暗く沈んでいる暇など与えてくれたりしないのである。

 

 

 

「・・・・・・うるさすぎる。聖杯研究に集中できんのじゃが・・・」

「耐えてくださいませ、御当主様。私どもホムンクルス程度ではセイバー様に刃向かっても斬られるだけで足止めにもなりませんから」

「くっ! 間桐が令呪の使用回数を無限にしておいてくれればこんな生活を送らずに済んだはずなのにぃぃぃぃっっ!!!」

「成就のためで御座います、御当主様。どうか、忍従の程を(錬金術の腕しかないのに最強クラスを他人に喚ばせてる時点でダメだったと思うけど言わない。なぜなら私はホムンクルスだから)」

 

 

 

セイバー・オルタのステータス

 

 マスター:衛宮切嗣。

 *気分によってはマスターをトナカイと認識したり、ご主人様になってもらったりもしている。

 

 真名:アルトリア・ペンドラゴン

 

 性別:女性(性別を偽る気は全くない)

 

 属性:混沌・悪

 

 備考:

 冷酷そうに見えるだけで、お気楽極楽気ままに生きてる黒い鎧を着た暴君。呪われてる設定も今となっては怪しい限りである。

 しょっちゅうコスチュームチェンジをするが、クラスはセイバーで変わらない。(要するに只のコスプレ)

 

 聖杯にかける願い:

「山のようなジャンクフードが食べたい、山のようなチョコミントアイスが食べたい、山のようなターキーが食べたい、山のような・・・(以下略)ーーもしも聖杯が偽りだったら破壊する」

 

 サーヴァントとして召喚に応じた理由。

「なんとなくだ(キッパリ)。

 おそらくだが、どこかにある平行世界の私が聖杯に異常なほど固執した縁でもあるのではないか? 私自身は万能の願望器など弱い心の持ち主を誑かすためだけに存在している気がして、胡散臭いとしか思っていないのだがな・・・」

 

 

*ステータス上の数字は原点通りです


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