試作品集   作:ひきがやもとまち

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思いついたエロ作書いてる最中なのですけど、今作だけストックあったため投稿させて頂きました。
ぶっちゃけ煮詰まってしまい、何パターンか書いては消しを繰り返していた話でいたのでデータ量的にもスッキリさせたかった次第。

今残ってるのは2パターン分だけですので、AパターンとBパターンに別けて続けて投稿してあります。
Aパターンを読んでみたい方は1話前にお戻りください。

…正直、煮詰まったままなので、どちらを使うか考えれていません…。それぐらいに迷走してた回でしたので…スッキリしたかった次第…


他称魔王様、自称凡人さん。リスタート第15章(Bパターン)

「ルナ、出てこいッ!」

 

 路地裏にまで響いてきた聖女キラー・クィーンの荒々しい声を耳にした瞬間。

 彼女たち聖女姉妹を暗殺するため派遣されてきていたサタニスト達の指揮官ウォーキングは、勝利の確信と共にほくそ笑みを浮かべていた。

 聖女を1人でも仕留めることが出来れば“次の作戦”での勝率と効果は確実に倍増すると踏んでいたところに2人も揃うという僥倖に巡り会うことができたのだ。これを幸運と喜ばずして彼の人生に華はない。

 

 ・・・・・・とは言え、彼は他の幹部たちと違って理詰めで動き、綿密に計画を立てるタイプだったから勝利は容易いものだとまでは微塵も思ってはいなかった。

 何しろ元々が「聖女1人を殺すこと」を目的として網を張っていたところに、もう一人の聖女が騎士団100人を引き連れて合流してしまっているのだから数的には圧倒的に自分たちの方が不利になった計算になる。

 

 普通に考えれば敗北と作戦失敗は必至となるところだったが・・・・・・彼には秘策とも呼ぶべき“切り札”が存在していた。

 指導者ユートピアから直々に使用許可が降りた秘蔵の“闇”。これさえ用いれば偽りの天使の加護篤き聖女であろうと確実に仕留めることが叶うだろう。

 

 彼は、高級宿ググレの前に集まっていた見物人達に平服姿で紛れ込ませた後、裏路地で合流して揃いのローブを上から羽織った部下達に対して確信と共に不気味に響く声で指令を下す。

 

 

「聖女に災いあれ―――攻撃開始だ」

 

 

 ・・・・・・斯くして、ヤホーの町は戦場と化す。

 

 

 

 

 

「偽りの天使に死を――【火鳥(ファイアバード)】!!」

「聖女に嘆きあれ―――【氷槌(アイスハンマー)】!!!」

 

 サタニストたちからの先制攻撃によって幕を開けさせられた戦いは、まずサタニスト達の先頭に立つ魔道師達からの攻撃魔法によって戦端が開かれた。

 如何に悪魔に魂を売ったテロリスト共の集団といえど、所詮サタニストの大半は貧しさに耐えかねた一般人が感情論と剣で武装しただけのキチガイ集団に過ぎない。

 個々の戦力ではプロの軍人である騎士団に敵うわけはない弱兵集団に過ぎないのだが、パルチザンというものは都市ゲリラ戦などの不正規戦においてこそ最大限の効果を発揮して正規軍さえ圧倒する戦力たり得るものだ。

 

 その為にもまず混乱を起こし、起こした混乱を拡大すること! それがサタニスト達の基本戦略であり、正当な軍隊の訓練を受けた聖堂騎士団の精鋭たちに勝機を得られる唯一の方法論である以上は、このさい民間人は貴族や聖女と無関係だなんだと綺麗事を尊重してやる余裕はない。

 

 赤や青、熱さや悪寒を伴わせた様々な魔法の光を作り出し、聖女たちだけでなく野次馬たちをも巻き込ませること前提で撃ち出されていく。

 

「ああッ!? イヤァッ! お姉様ぁぁッ!?」

 

 その中で、当然のように最も多くの数が集中して撃ち込まれていたのは、言うまでもなく移動式玉座の頂上という狙い撃ちしやすい高所でふんぞり返って座したまま微動だにしていない聖女キラー・クィーン。

 その身に迫る色取り取りの攻撃魔法の数々を見て、姉の悪口言いまくりながらも実は超心配なツンデレ妹の典型例ルナ・エレガントが悲鳴のような叫び声で警告を発するのを聞きながら、クィーン自身は冷静に戦場を見渡し。

 

「フジッ!!」

 

 と叫び、部下の名を呼んで預けておいた武器を投げ渡すよう短すぎる指示を出す。

 

「へいッ! 姉御ぉぉぉぉッ!!!」

 

 そして以心伝心、副官の大男フジの方も細かい指示などなくとも心得たように上官の意図を過たずに解釈して、巨大な武器を玉座の頂上へと放り投げて敬愛する主君の手にキャッチさせることに成功する。

 

 ・・・・・・ただ、そんな彼らであってもサタニスト共に先手を取られてしまったことは事実であり、放たれた攻撃魔法の被害から自分たちの武器が届く範囲外にいる者たちまでカバーしきるのは不可能な状況にもなっていた。

 

 別に力のない人々を守る正義のヒーローを気取りたい訳ではないが、気にくわないテロリスト共が一方的に弱い者イジメしてるのを見せられて気分がよくなってやる義理があるわけでもない以上、キラー・クィーンとしては「落とし前を付けさせてやる」ぐらいのことはしてやろうと思いながら巨大な金棒を振るい、魔法の砲弾を粉砕してサタニスト共に目にもの見せてやる最初の先駆けとしたかったのだが、しかし。

 

 

「えい」

 

 

 ・・・と、声だけなら可愛らしい掛け声が聞こえて、パチンという指で何かを弾くような音がした。その次の瞬間。

 

 

 ――ズガン! ズバァッン!! ズバババァァーッン!!!

 

 

 民衆たちの群れに着弾する寸前にあった攻撃魔法の砲弾たちが次々と空中で爆発四散させられて、一発残らず全て消滅してしまったのである。

 

『な、なにィィィィィッ!?』

 

 流石にサタニストたちも、これには驚愕させられて悲鳴じみた叫びを上げざるを得ない。

 そりゃそうだろう。一発で人混みの一つ分ぐらいは吹っ飛ばせて血の雨降らせれるはずの威力持った光球が、目にも見えないワケワカラナイ現象で強敵倒すための準備段階を邪魔されてしまった側としては驚愕せずにはいられない。

 

 

 では逆に、民間人を守ってもらった聖堂騎士団&聖女の側は驚かなくて良かったのであろうか?

 

「なんだ!? サタニスト共の新手か!? どこから何を撃ち込んで来やがった!?」

「姉御! そこは危険です!降りてください! 姉御の身は俺たちが死んでも守り抜いて見せますぜ!」

『オウ! ガンホー! ガンホー! ガンホーッ!!』

 

 ・・・・・・メッチャ驚いて警戒感強めさせて主君を中心にスクラム組んで防御固めさせてしまう効果しかもたらされちゃおりませんでしたな・・・。

 まぁ普通はそうなるだろう。所属不明で正体不明の狙撃手から敵の攻撃を迎撃されたからと言って、顔も見ない内から自分たちの味方だと信じて安心できる平和ボケした楽観論者は現代日本と子供向けアニメの中ぐらいしかあんまおるまい。もしくはラブコメの平和主義万歳ヒロインとか。

 

 それらの内どれでもない聖堂騎士団員とヤンキー聖女様たちは、民衆を悪の攻撃から守るため戦う正義の味方軍隊として、「敵か味方か分からぬ相手の倫理に期待しすぎない」という当たり前の前提で正しく判断して行動しただけだったのだから彼らとしては悪くはない。

 

 悪いのはどう考えたって・・・・・・いきなりの不意打ちで加勢してきて、未だに正体晒さず陰からコソコソ援護射撃に徹するつもり満々の《指弾》でスナイパーしてる厨二エルフだ。間違いなくアイツが悪い。アイツだけが一番悪い。

 

 だが、しかし。

 今この場には天性のケンカ好きが、もう一人いた。

 

「・・・なんだかよく判らねぇが・・・」

 

 キラー・クィーンは、今し方目の前で起こった謎現象に明確な答えとか原因とかについては一切答えを出せぬまま解明することも出来ないままで、たった一つだけ“勘”で解ることが出来た冴えた結論を部下と妹たちにも聞こえるように大声で全員に言ってやる。

 

「今の援護攻撃してきたヤツは、俺たちの敵じゃねぇ! 味方だ! 間違いねぇ!

 なぜなら俺の勘が、そう告げているからなぁッ!!」

「え!? 勘ッ!?」

 

 姉の口から飛び出た信じがたいほどテキトーすぎる信じる理由に、頭の良さでは自信がある魔法の才能抜群すぎたルナ・エレガントが目をパチクリしながら驚いた声音で確認してくる。

 だが彼女は、殊この場においては少数派であり、異端者でしかなかったようである。

 

「と言うわけで、行くぞテメェらーッ! ご機嫌なサタニストどもには腹一杯、紅に染まる気分を味あわせてやれぇッい!! 満足しても決して許すんじゃねぇぞォーッ!!」

『ヒーハーッ!! サタニスト共を消毒だーッ!!』

「乗ったーッ!?」

 

 クィーンの根拠になってない、昭和刑事ドラマの刑事みたいな理屈にためらいなく賛同して、突貫していく一人残らずついて行ってしまう聖堂騎士団の精鋭共。

 

 フジのみならず、見た目通り聖女キラー・クィーンの手で『役立たず天使に代わってお仕置きだぜッ! 死ねやオラァッ!!』で地獄見せられ改心していた過去を持つ元悪人で今は彼女個人の狂信者と化している集団にとってクィーンの言葉は天恵に等しく、彼女の判断は全知全能の神が下した正しき判断と同義という共通認識を持っているのが聖堂騎士団精鋭たちの内実であり、生まれの事情から智天使を篤く信仰しているルナとは性質的に味方であっても実はちょっと違う者同士だったりしたのであった。

 

「ヒャッハーッ! サタニストのクズ共! 姉御に血を一滴残らず捧げろやーッ!!」

「サタニスト共に今日を生きる資格はねぇ! 地獄に落ちやがれ悪党共ぉッ!!」

「俺、この戦いが終わったら姉御に罵倒してもらうんだ・・・! 罵倒求める俺のために死ねぇいッ!」

 

 ・・・いや、なんか違うものが混じってるという点では彼ら自身の中にも敵と味方、世紀末的な悪と善が入り交じってる部分があったような気がしなくもないけれども。

 たぶん気のせいだろう、たぶん。中世ヨーロッパ風の異世界に、核戦争後の善悪は関係なし。

 力こそ正義で親友裏切って恋人奪っていった男の軍勢っぽい見た目をしてる人たちが、地獄から舞い戻ってきた元親友と同じようなセリフ言ってても互いに一切全く関係できない! そのはずだ・・・・・・。

 

『あっはっはァァ! サタニストどもォッ!! youはShockッ!!!』

 

 ・・・・・・いやまぁ、うん。そのはずだ。きっと。おそらくはになって来ちゃったけれども・・・。

 

 こうして先制攻撃の失敗によって出鼻をくじかれたサタニストたちを相手に、正体不明に援軍から協力を得て勢いも取り戻した聖堂騎士団は、訓練を受けた戦闘のプロである正規軍らしく、腐敗した政府の横暴に耐えかねた民衆が暴徒化したテロリスト共を一方的に殺戮していき、民衆の弱さと軍隊の強さを散々にひけらかしながら正義と平和と秩序維持部隊の偉大さを膨大な血によって証明することを望み。

 

「あーもう! こうなったら私もやってやるわよ!

 せめて私の魔法で死ねることを光栄に思いながらバカは死んじゃいなさい!

 《金槍衾/ゴールドスプラッシュ》!!」

 

 と、末っ子妹も途中から、反政府活動に参加した暴徒たちの虐殺に参加。次々と国家を裏切った愚かな愚民共を殺戮していきながら、勝利と聖光国の栄光に凱歌を飾ろうとした、まさにその時!

 

 ――カツッ。

 

 聖女たちとの実力差に及び腰になっていたサタニストたちの中から、一人だけ他の者とは服装の異なる隊長格らしき男が大きな箱を持って現れて、その蓋を開けるため手を伸ばす。

 

「秘蔵の“闇”をこれほど速く使う羽目になるとは思わなかったが・・・・・・この失態、聖女2人と引き換えならば許されよう―――ッ」

 

 勝ち誇ったような笑顔でそう言って、男は箱の蓋を開ける。

 そして開けた瞬間。中から飛び出してきたのは―――漆黒の液体。

 

 得体の知れない気配を放ちながら広がっていく、その黒い液体を見た瞬間。本能的に聖女キラー・クィーンは危険を察知して顔を強張らせながら妹へと振り返り、

 

「ッ!! ルナ、下がれ! こいつは奈落だ! ――あぐゥッ!?」

「えっ、ちょ・・・・・・! 何これッ!? ――アッ!?」

 

 そう警告しようとしたのだが―――遅かった。

 既に聖堂騎士団のモヒカンたちの足下を浸しながら、黒い液体はルナたちの方へと高速で接近しつつあり、この不気味な色のナニカに足が浸かっただけで男たちは次々と膝をついて立ち上がれなくなってしまい、聖女の加護が誰より篤いはずの二人でさえ糸が切れたように脱力して力が抜けて、四つん這いになるか杖にすがって倒れるのを避けるかのどちらかしか選べない状態にされてしまっていく。

 

「く、くそゥ・・・ッ」

「・・・くぅ・・・ッ、はぁ・・・んっ」

 

 ちなみに苦しんでるエロゲみたいな声が妹(16歳・貧乳)の方で、戦えなくて悔しがってる方が姉(17歳・巨乳)である。こういう需要もあるのが当たり前になって久しい異世界事情ならぬ情事は危機的状況なのに今日もエロめ。

 

「さぁ、皆の者。天使の加護は消えた――聖女を討ち取れッ!!」

 

 逆に二人の身動きがとれなくなったことを確認したサタニストたちの隊長ウォーキングは、大真面目に美少女で聖女の二人を殺すための命令を出して、捕らえて犯して聖女を穢そうとは考えない正しいテロリストの王道を律儀に遵守しようとしてくる。

 正しい手順を守るのは良いことのはずだが、こういう時にはご都合主義のお約束を優先して欲しいと願ってしまうのは、ダンジョンが舞台のファンタジーでなくても間違っているのだろうか!?

 

 と言うか、最初の援護射撃以来うちの馬鹿エルフは、どこで油売っている!?

 

 

 

 

 

「・・・・・・なんですか? このヘドロみたいな奴・・・。

 なんか色がゲロみたいでスッゲー近寄りたくないんですけれども・・・」

 

 路地裏に続く入り口あたりで、行ったり来たりしながら接近後退繰り返しているゲロみたいな色したヘドロを気持ち悪がって、実はあんまし目の前で起きてる光景を見れていなかったりした次第・・・・・・。

 

「しかも、なんかこのゲロヘドロさんたち、私のこと変な風な感じに見てきてませんかね・・・?

 なんていうかこう・・・“微妙にコレじゃない感”ってゆーのか、本人と思って近寄ってきたら別人だと解って気まずくなったときのトラウマがフラッシュバックしてきてスッゲー嫌なんですけど・・・いやマジで。超マジな話として」

 

 割と本気な真顔で苦情を訴えかけてくる、実体験ありそうな地球にいた頃はゲーオタ少年が中身の人のネタエルフは、本能的に察してしまった“奈落の求める本物の魔王様じゃなかった感”を感じ取れてしまってメッチャ気になって仕方がなくなってしまい、なかなか他のことに意識が回らなくなって久しい状態になってたりした次第。

 

 

 そもそも、今回のような現地人たちの事情に巻き込まれただけの戦闘イベントにおいて、地球からの転生者だろうと転移者だろうと、現地人の斜に構えた実はイイ人ヒーロー達だろうと関係なく、多くの場合は『面倒事に巻き込まれるのはゴメンだ』とかなんとか言って、気づかれない内に身内だけ連れて脱出しようとしたけど、市民の子供が攻撃されかかったり自分の身内に頼まれたから仕方なくとかの理由で結果的には主戦力として参戦して圧勝するのが、この手のイベントのパターンではあるのだが。

 

 この喧嘩バカで特攻大好きなお祭りエルフに、そんなリスク・リターンの考え方で、初期の時点では援護射撃だけに止めおく理由になれてたであろうか? ――否である。

 

 初期の時点で参戦しなかったのは、単に『ルナに尻の穴で銜え込まれて虜にされた魔王様』という、不名誉すぎるレッテルが張られそうな会話の流れだったから出づらかっただけであって、コイツの本音を具体的に言えばこんな感じ↓

 

 

「蹴りたい! 投げたい! 殴り・・・たいッ!! ケンカ祭りというパーティーを見たら参戦するのが人の道! 他人同士の揉め事を見て混ざりに行かざるは勇無きなり!

 昔から、『火事とケンカは江戸の華』という名言がある通り、日本人にとってケンカ祭りに介入するのは昔から続いてきた日本の伝統芸能の一つであり、伝統は守り尊ばなければいけないものですので、是非とも参加したいです!

 他人のケンカほど気楽に楽しめて滅茶苦茶にぶっ壊してしまっても心が痛まないものは他に無し! 超楽しみてぇ~ッ♪」

 

 

 ・・・・・・こんな感じのエルフである。超サイテー・・・。

 ある意味では、ヘドロゲロ君のおかげでバカの喧嘩好きによって自体がメチャクチャにぶっ壊されるのを防いでいてくれたようなものでもあったんだけれども。

 このままだとゲロヘドロ君を解き放った人のせいで、この世界が歩むべきストーリーにとって大事な人たちが殺されちゃいそうだから、流石になんとかして欲しいかな!? 助けてヒーロー!!

 

 

 ――そんな、世界救済を願う人々か誰かからの声に応えるかの如く・・・今、“天の声”がナベ次郎の前へと舞い降りる―――

 

 

「・・・あれ? なんかシステムメッセージっぽいものが浮かんできましたね。なんか書いてありますし」

 

 アバター・ナベ次郎の前に舞い降りてきた“天の声”=『メッセージウィンドウ』が開かれて、一つの文章と選択肢がナベ次郎の前に提示される・・・・・・。

 

 

 

《黒歴史モードが使用可能になりました。

 あなたが過去に消し去った黒歴史を記憶の彼方から呼び覚まして具現化し、今のあなたの体に代わって生き生きと動き回ってくれます。

 尚、このモードを発動させると一時的に暴走状態になり、あなたからのコントロールは一切受け付けなくなります。

 黒歴史モードを発動させますか? Yes/NO》

 

 

 

「そんなトチ狂ったもん誰が使いますかァァァァァァァァッ!!!????」

 

 

 ナベ次郎、魂からの絶叫。本当の本気で大絶叫。

 流石にコレは・・・・・・コイツじゃなくても嫌すぎる・・・。

 

 

「んなもんNOですよ! NO一択です! それ以外の選択肢など存在しません!!

 絶~~~っ対に、い・い・え!!! ですッ!!!」

 

 

 断言して、『はい・いいえ』のどちらかを選べる選択肢で躊躇いなく「いいえ」を選んだ、その次の瞬間。

 

 

 ――ピカッ!! ゴロゴロッ!!

 

 

 稲光が空を横切り、轟音が鼓膜を切り裂き、まるで過ちを犯した罪人を裁く天罰の光が地上へと振り下ろされて、地ベタを這い回る愚かな人間共を天井から見下ろす傲慢なる神の前では無力なサルの抵抗など無意味でしかないのだと嘲るかのように一蹴されてしまうしかなかった・・・・・・

 

 ――ような気がした。

 

 

《すみません、返事が聞き取れなかったので今一度答えを選んでください。

 黒歴史モードを発動させますか? Yes/NO》

 

 

「いや、鳴ってねぇですよ今!? 雷の音なんて響かなかったですし! 響いてたら他の人も気づきますし!

 あと私、声だけじゃなく「いいえ」って選択肢をちゃんと押しましたよね!?

 音声入力式のスーパーロボット設定じゃないんですよねこの異世界って!?

 おいコラ! なんとか言いなさいよ、いっつも理不尽なことしか送ってこないメッセージウィンドウさんよゥッ!?」

 

 

《ピカッ! ゴロゴロ・・・・・・ッ。

 すみません、返事が聞き取れなかったので今一度答えを選んでください。

 黒歴史モードを発動させますか? Yes/NO》

 

 

「効果音まで文章で書くなーッ!? エフェクトを鳴らしなさーッい!?

 ってゆーか、レヌール城はもういいって何度言えば分かるんですか!? この世界は本当にも――ッ!!」

 

 

 

 ジタバタと、路地裏の入り口あたりで地団駄踏んで、ムダな抵抗をムダに繰り返そうとしている愚かなるロリエルフ・アバターのナベ次郎。

 エルフだろうと人間だろうと、天使だろうと悪魔だろうと、たとえ魔王だろうとも。

 この異世界に生まれた生きとし生ける生物たちは皆一匹残らず・・・・・・この世界を創りし神のオモチャでしかないという悲しい現実を体現した姿はいっそ哀れでこそあったものの。

 

 それでも選んでもらわないと聖女様達が殺されてしまうため、仕方なくでもイイから押すのだナベ次郎。ポチッとな♪

 

 

 

 ―――そして。

 

 

 

『!? なんだ! あの光は!? なにが・・・一体なにが起きている!?』

 

 

 突然に生じた爆発的な光の本流。

 その光景に驚き慌てふためいて、聖女に止めを差す手すらも止めてしまい、一種の恐慌状態に陥りかけてしまうサタニスト達の集団。

 

 あるいは彼らもまた、知っていたのかもしれない。

 本能のレベルで感じ取れてしまうほど、致命的なまでに其れがなんであるかを思考より先に心が理解して、体を怯え震わせて死の恐怖に苛まれていたのかもしれない。

 

 だが、そうだとしても彼らの事項はまだ其れのことを知らない。気づいていないのだ。

 光の中から現れた、記憶の彼方より呼び覚まされし、無かったことにされてしまった忌まわしい過去を、その具現を。

 

 具現化した過去こそが、彼らサタニストにとって――【悪】と名の付く全ての者たちにとって。

 致命的なまでに絶対的な死をもたらす破滅の象徴にしかなり得ない危険極まりない存在であるという、その事実を・・・・・・!!

 

 

 

 

 

 

「・・・因果なものだ。戦場を求めて北へ北へと彷徨い続け、遂にはこんな見たこともない世界にまで来ちまうとはな。

 だが、どう世界が変わろうとも、俺たちの真実は何一つ変わることはない。

 剣に生き、剣に死ぬ。誠の旗の名の下に・・・・・・ッ」

 

 

 

つづく




【新設定紹介(使う前に変えれるよう先に確認も兼ねて)】

『黒歴史モード発動』
 ナベ次郎の中の人である学生プレーヤーが、若気の至りで演じたくなって本気出して造ってしまったことがある、某剣客マンガを中心とした同組織の格好いいキャラを寄せ集めた感じの一応はオリジナルキャラクター(笑)

 背中に「誠一文字」の文字を縫い付けたダンダラ模様で水色の羽織を纏った、如何にも“あの組織の人”しかイメージできない見た目をしている男性アバターで、武器は当然『刀』で、クラスは『サムライ』

 キャラ名は【ヒジカタ】
 ハジメとかサイトウじゃないのは『燃えよ剣』とかも好きだったことが原因になってしまってる。
 また、「新撰組」ではなく「心で戦うと書いて“心戦組”」というギャグマンガの設定をパクってきたキャラになってる辺り、当時のナベ次郎の中の人がどんなだったか想像しやすくしてみてたり(苦笑)


 尚、実は《ゴッターニ・サーガ》で造ったキャラではなく、別のMMOで使ってたはずのアバターで、登録もアカウントもとっくの昔に削除したはずなのに何故今さらになって復活させられてきたのかは全くの謎。
 ・・・まぁ、元から原作とは別ゲームから来た主人公なので今さらと思いながら造ってみた設定ではあります。

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