試作品集   作:ひきがやもとまち

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「銀英伝×コードギアス続きだったため、別の作品も続きを書きたい欲求があり続けて、でも書ける時間と体力なくて等の理由で半端にしか書けてないものが多く出来てしまってる昨今。

とりあえず、【聖剣学園の魔剣使い】のオリ主版二次の2話目ができましたので投稿です。


聖なる剣の学園と黒き魔剣の女王と・・・2話

 

 その日、地上を支配する人間の時代は終焉の時を迎えていた。

 突如として現れた『謎の侵略者』の脅威に晒された人類は、それまでの歴史を侵略者との戦いの中で全て失われてしまい、今では誰の記憶にも記録にも残っていない。

 

 目的も生態も一切が不明。異世界から現れたとも言われる未知の『敵』

 虚無を意味する【ヴォイド】と名付けられた人類の敵によって、数多くの国が滅ぼされ、逃げ出した多くの国民たちが【棄民】となり、数多の犠牲で大地は赤く染め上げられていった・・・。

 

 その過酷な環境が新たな力の覚醒を促したのか、やがて人類の中から『敵』と戦える特殊な力を持った子供たちが誕生し初める。

 その力を人々は、『ヴォイドと戦うため人類に覚醒めた力』として解釈し、その力の多くが武器の形を取っていたことから、何時からか伝承にある人類を守るため神が与えたと伝わる聖なる武器『聖剣』の名で呼ばれるようになり、その力を使える者達を『聖剣士』と呼んで人類防衛の主力として称えられる存在となっていった。

 

 

 

 ・・・・・・それまでの時代が終焉を迎えた日より64年。

 人類は聖剣士を防衛の中心として新たなる体制を構築し、ヴォイドの侵略によって崩壊させられた国々を統合。

 人類防衛のため団結して敵と戦う、新たなる時代が始まっていた。

 

 

 そして今は、《人類統合歴64年》

 ヴォイドに対抗するため建造された要塞にして、数多の聖剣師たちの城《セブンス・アサルト・ガーデン》を中核とする人類防衛と存続のための果てなき戦いは、未だ終焉の時を迎えていない・・・・・・。

 

 

 

 そんな時代に、とある山道を一台のバイクが土煙を上げながら疾走していた。

 横にサイドカーを付けた大型の車体で、整備されていない山道を土煙を立てながら苦もなく疾走し続けている。

 厳ついデザインの大型車でありながら、乗っているのは意外にも見目麗しい二人の少女たちだった。

 

「お嬢様ー、でも本当に私たちだけで行くんですか? 明日まで待ってフィーネ先輩も一緒に来てもらった方が安全だと思うんですけど・・・」

 

 二人の内で、サイドカーに座っている方の少女が、サドルに跨がっている操縦者の少女を見上げながら、やや不安げな口調で懸念を口にする。

 金色の髪をツインテールにした、発育のいい肢体をもった健康的な魅力の少女だった。

 表情にはイタズラ好きな猫を思わせる部分があるものの、身にまとった天性の陽性さが陰湿なイメージを緩和している。

 

 『レギーナ・メルセデス』というのが彼女の名であった。

 

「なに言ってるのレギーナ。ヴォイドは古代の遺跡ほど発見される確率は高いんだから、攻めてきてからじゃ遅いのよ。だからこそ私たちが探索のため派遣されてきたんじゃないの」

「それはまぁ、分かってるんですが・・・」

 

 対して、彼女から忠告とも受け取れる言葉を言われた操縦者の少女の方は、バイクを走らせながら前だけを見つめたまま提案された内容を却下する。

 銀髪の長い髪と、意志の強そうな赤い瞳を真っ直ぐ前へと向けたまま微動だにしない、美しすぎる容姿をもった美少女だった。

 使命感と責任感に満ちた美しい顔立ちは、だが真面目すぎる印象をも同時に受けなくはなく、どこかしら切羽詰まったようにも見えなくはない。

 硬質でありながら、張り詰めているが故に、ヒドく脆さをも同時に感じさせられる・・・・・・そんなアンバランスさが印象的なアルビノの少女。

 

 『リーセリア・レイ・クリスタリア』それが彼女の姓名であり、レギーナにとっては幼い頃からメイドとして仕え続けてきた家のご令嬢でもある存在。

 そして・・・・・・今は亡き家系の血を引く主君として『守るべきお嬢様』でもある少女だった。

 

「フィーネは学園執行部から情報解析の手伝いを依頼されて現場にまで出てこれないし、サクヤの方はカジノに行ってた場合は明日には帰ってくるかさえ不鮮明なんだから、私たちが行くしかないでしょう? 今さら文句言わないの」

「それもまぁ、分かってはいるんですけど・・・」

 

 理屈としては相手の言うとおりであることを認めながらも、未だ承服しかねる本心を態度と口調によって現す金髪の少女。

 彼女が、ここまで懸念を示すのには理由があった。人員が足りていないのである。

 

 先日の地震で山肌の一部が崩れ、その下から未発掘の遺跡が発見された。その探索任務に自分たち第18小隊が命じられたのは昨日のことだったが・・・・・・突然の命令で幾つかの偶然が重なってしまいメンバーが集まることができなくなってしまっていた。

 

 リーセリアが率いる【セブンス・アサルトガーデン聖剣士養成学院第18小隊】は本来4名のチーム。

 しかし情報探査と索敵を担当する先輩生徒は、昨日から与えられていた解析作業が予想以上に難解らしく、端末を介しての補助支援さけでの参加となり、本人は部屋で解析作業を続行するため同行することが出来なくなってしまっており。

 今一人のアタッカーを務めている少女剣士に至っては、昨日の昼頃から行方が分からず、連絡がつかないまま今朝になっても帰ってきていない。

 

 人数だけでも定数の半分まで割り込んだ状態で、ヴォイドの巣かも知れない未知の遺跡へ探索に赴くのだ。これで主の身を案じない使用人などいるはずもない。

 ・・・ましてリーゼには、人数以外にも大きなリスクを背負っていると知っているなら尚更に・・・・・・

 

「それに――」

 

 と、主君である美しすぎる少女は、レギーナが懸念した想いを言葉にしてハッキリと、その想いを承知で貫く意志を宣言する。

 

「みんなに守られてる立場のままじゃダメなのよ。私自身が戦わないと――私自身が戦えるようにならないと・・・・・・もう二度と嘘を吐かなくていいように、絶対に――」

「お嬢様・・・・・・」

 

 そう言われてしまえば、レギーナには返す言葉はなく、相手の行動を制止しようという意思も言葉と共に消失するしか道はない。

 何より相手の想いと覚悟は、自分自身も共有しているものなのだ。その想いを否定することに繋がってしまう行動を、あの【出来事の記憶】を共有している彼女に取れるはずもなかったから―――

 

 

 

 

 

 

 

《――では、任務を複写する》

 

 山道をバイクで駆け上り続けたリーセたちの元へ、アサルトガーデンの情報解析室と私室を兼ねた寮の一室から、情報支援と全体への作戦伝達をになう上級生からの声が届いたのは、目標値点の遺跡へと到着して入り口へ入ろうとした直後のことだった。

 

《第18小隊は地震により出現した地下遺跡を調査し、ヴォィドの巣を探索せよ。なお戦闘は自衛のためにのみ許可する》

「了解、調査を開始します」

 

 短く簡明に、だが必要な手順は完璧に守って真面目な表情を崩さぬままリーゼは遺跡の中へと足を踏み入れていく。

 彼女たちの耳にはクリスタル製のイヤリングに似た形状の遠距離通信用機器が小さくブラ下がっており、声はそこから届いてきていた。

 

 この遺跡に到着するまで、相手の上級生が沈黙を保ったままだったのは、これが理由によるもの。

 相手の能力と《聖剣》の機能をもってすれば、会話すべては無理でも一部は聞くことは出来、なにかしらの指示を与えてきてもおかしくはないはずであったが、前日に依頼された資料の解析に聖剣の機能は大部分を回さざるを得ず、こうして機械技術に頼っての情報支援に徹するしかなくなってしまっていたからである。

 

 コチラから呼びかければ即座に反応してくれるのに不足はないが、相手がコチラの状況をリアルタイムで把握するのは難しく、何かあった時には自分たちの方から助けを求めるしか他に方法はなくなるかも知れない・・・・・・レギーナが、そうなる危険性を懸念してお嬢様に言った言葉は、そういう意図を込めてのものでもあった。

 

「セリアお嬢様、気をつけてくださいね? ここまで深いと戻るのも大変ですし~・・・」

「まだ言っているの? ヴォイドは遺跡の地下深くに巣を構築するものなのなんだから、見逃す訳にはいかないわ」

「はぁ~い・・・・・・って、あれ? この音・・・」

 

 ややざっくばらんな態度で告げた注意に、生真面目な一般論を返されてしまって大人しく受け入れるしかないかと諦めていたレギーナの耳に異音が聞こえてきて、ズズン・・・と大きな音が続けて何度か響いてくる。

 走って近づいていくと、そこには倒れた巨大な石造りの彫刻が横たわっていた。

 一見すると恐ろしい見た目を持つ異形なものたちを象った、少し不気味な像ではあったが出来そのものは悪くない。

 

「なんですかコレ? 彫刻?」

「副葬品・・・だと、思う。死んだ人に所縁のあるものを一緒に埋葬するのよ」

「へぇ~。趣味はともかく、これだけ大きい彫刻と一緒に埋葬されてるってことは、近くに昔の時代の偉い王様でも埋まってるって事ですかねぇー?」

 

 両親共に聖剣士だった名門出身者のセリアは、幼い頃からの教育も影響して古い時代に造詣が深い。考古学などにも精通しており古代文字の解読までやってのけるなど、学術系の才能が非常に豊かな才女でもある。

 

 対するレギーナは、些か厄介な生まれの事情故に『古くからの因習が残る王族』といった存在に抵抗があったため、半ば意図的に古い王家の歴史などからは遠ざかろうとするところが未だに残っており、この手の話にはどうも疎い。

 

 レギーナは説明の“内容には”感心しつつ、さして興味もなさそうな口調で評しただけだったが・・・・・・セリアの方には何かしら感じる所があったのだろう。あるいは“誰か達”と“この場所に眠る王”を混同視していたのかもしれない。

 

「・・・・・・もしこの場所が《王の眠る墓》なら・・・・・・その王様は、きっと寂しいでしょうね」

「・・・・・・」

 

 小さな声で発せられた主からの呟きに、従者であるレギーナには返す言葉はなかった。

 上に立つつもりで育てられてきた者の気持ちは、従うつもりで生きてきた者には共有できない部分がある――その事を十年以上にわたって主と一緒に過ごしてきた彼女には理解できるようになっていたため、敢えて感想を返すことなく無言のまま通路を進んでいき、やがて大きな曲がり角に出て、そして驚かされることになる。

 

 ピピピピピッ!!

 

「っ!! 機械が反応した!? と言うことは、この扉。まだ生きてるってこと・・・? 魔導装置なの?」

 

 地下7階層の最奥にあり、曲がり角に位置する場所に立てられていた巨大な扉の前まで到達した瞬間、腰に下げていた棒状の魔導装置が激しい反応を示して警報音を響かせ始めた。

 本来はヴォイドが出現する際に生じる《ヴォイド反応》を感知するための計測器だが、その激しい反応の割にヴォイドが近くから発生して襲って来ようとする気配はない。

 見える範囲であるのは、この巨大な扉だけ。その扉に近づいたことで機械が反応したのなら、この扉自体にエネルギーが供給され続けていて機能したままになっている可能性が高いということだ。

 

 また、動力を用いた魔導装置としての扉なら、確かに巨大すぎるサイズにも納得がいく。

 ・・・・・・とは言え。

 

「ふんぬぅぅぅぅ!!! ・・・・・・ゼェ、ゼェ・・・やっぱり無理です、お嬢様・・・開きませんぅ・・・」

「・・・まぁ、そうでしょうね」

 

 従者であり、目覚めている《力》を使いこなせる為、常人よりも高い身体能力を発揮できるレギーナが全力で押してみてもビクともしない。

 巨大すぎる扉は、そのサイズだけでも充分すぎるほどの障害物であり、エネルギーが供給され続けていて使用可能なままだったとしても『古代技術が用いられている古代遺跡の装置』を動かす方法なんてものは64年前に、今の世界の始まりと一緒に大半が消えてしまって、《戦術移動都市》にあるライブラリーに保存されている記録でも漁りに戻らないことには分かりようがない。

 

 普通なら、ここで諦めるしかないところだったが・・・・・・

 

「とりあえず、ブチ破ります? 中どうなってるか分かりませんし、私の《ドラグハウル》ならいけるんじゃないかと思いますし」

「う~ん・・・それしか他に手段がない以上は仕方な――っ! 待って! そこに何か書いてあるっ」

 

 レギーナが困ったような表情を浮かべながらも、意外に過激な案を提案してきたのを、状況的にしょうがないかと判断しようとした直前、セリアが声を上げて扉の前へと歩み寄る。

 

 持ち主の心を映し出すとも称されている《目覚めた力》の性質故なのか、レギーナは顔に似合わず力業で強引に突破する方法を考えやすい悪癖があり、それを可能にできると信じるに足るだけの威力が彼女の能力には備わってもいるので、必ずしも暴論というほどにはならないのだが、他の手段が選べるのに超したことはない。

 

「・・・古代エルフ語・・・じゃないわね。精霊文字、でもないみたいだし・・・・・・だけど似ているのは確かだし、それに・・・・・・」

 

 扉の全面に貼られていたプレートに刻まれた文字らしきものを写真で撮影して記録した後、セリアは自分の知識を元にして文字の解読作業のためブツブツと独り言を呟き始める。

 彼女はもともと家柄故なのか、もしくは本人自身の趣味も影響した結果だったのか、今ではあまり学ぶ者が多くなくなりつつある考古学や古い知識に関して見識が深く、ちょっとした歴史学者のマネ事ぐらいはできる能力と自信がある人物だった。

 

 それでも尚、見覚えはあっても自分が今まで見てきたものとは文法が異なる古代の文章を、即興で手早く解読し終えれるほどの異能じみた特殊能力まで期待できるはずもない。

 

「あの~、その作業って時間掛かります?」

「うん・・・少し・・・・・・」

 

 背後に立つ困り顔のレギーナから聞かれた質問にも、気もそぞらな態度で返すだけ。相当に集中しているらしい。

 

 ――これは“かなり長く”かかるな・・・。

 

 と自身の経験から判断したレギーナは、逆にこれを好機と考え、単独行動を取る口実として利用しようと割り切ることにする。

 

「では、私は先にアッチの方を探索してきますね!」

「ええ、お願い。そっちが終わるまでには私の方も完了させておくから」

 

 そう許可をもらった上で、意気揚々とお嬢様の元を離れて一人だけでの行動を気楽に開始する、プライベートではセリアに仕えるメイドでもある少女レギーナ・メルセデス。

 とは言っても彼女は別に、守るべきお嬢様と一緒に行動するのがイヤだったという訳ではない。むしろ守るためにも自分一人で行動した方が良いと先程から考えていたアイデアを実行しただけのことだ。

 

 もし今のまま、お嬢様が扉の解読に集中してくれているなら、その間に自分が探索し尽くせば比較的に出口まで近い距離にい続ける彼女の生還率は飛躍的に上昇することになるだろう。

 

 また正直、自分の《聖剣》は狭い密閉空間内で使うのに最適とは言い難いのも理由の一つで、下手をすれば味方であるお嬢様を落盤で危険にさらしてしまう恐れがあった。

 仲間同士で屋内を探索任務中に前回戦闘できるタイプの能力ではないのである。それぐらいなら別行動を取って最善を尽くした方が守りやすい。

 

 レギーナはレギーナなりに主を思う気持ちで背を向け、彼女との物理的な距離を離れてしまった。

 果たして、その選択が幸であったか不幸であったか。余人が知りうる話ではなく、未来と神だけが現段階で答えを知る全てという、そんな命題。

 

 その命題故に、セリアもまた運命を大きく振り回される選択となってしまう事になる――

 

 

「それにしても・・・・・・どこかで見た気がするのよね、この文字・・・。どこで見たのかしら――って、え?」

 

 

 記憶の中におぼろげに残っていた記録の残滓を探るため、より近くで手を触れさせてみて、感触から思い出そうとした瞬間でのことだった。

 扉は急に光を発したかと思うと、急に稼働を始めて重々しい音を響かせながら、ゆっくりと内側から門は開かれ、驚くセリアを内部へと促す。

 

 それはまるで、待ち続けていた主の帰還を迎えた喜びに打ち震えているかのように。

 あるいは、従者が眠りから目覚めた主君を迎えるため扉を内から開け放ったかのように。

 

「これは・・・あっ! あの石――中に人が・・・いるの?」

 

 そして、その扉が開かれた先に立つ、広くもない部屋の中央に据えられていた巨大な水晶を目にした瞬間。――彼女の中でナニカがはじける音が響き渡る。

 

「だったら、助けないと!」

 

 腰に差したデバイスへと手を伸ばして、彼女は銃口を相手に向けて――発砲する!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――その王は、闇の中で一人眠りについていた。

 戦に敗れ、国土を奪われ、共に戦った同胞たる魔王たちは斃され尽くし、最後に残るは自分一人だけとなってしまった孤独な王。

 同じ寝所で共に眠るは、物言わぬ意思なき巨像のみ・・・・・・

 その孤独と冷たさの中での眠りは、だが王にとって安らぎと安堵を感じさせてくれる穏やかな時間でもあった。

 

 人は、人以外すべての生命たちも、この世に生まれた全ての『生ある者』は皆、この世界に自分一人だけの存在として生を授かり、一人きりの永い時を過ごした後、再び自分一人だけで無へと還って全てを喪われる―――そうなる運命を与えられて誕生するのが『生命』だという事実を、王は既に知っていたからだ。

 

 たとえ同じ胎内から生まれた別の生命とともに生まれ出ようとも、相手は相手であり己ではない。

 どれほど長い時間を共に過ごし、解り合える伴侶を得ようとも、『愛する伴侶』は己ではなく他人であって、他人なればこそ『愛し合う』ことが可能になる。

 仮に自分と同じ一つの墓所に、どれだけ多くの者たちと共に埋葬されることがあったとしても、それは『同じ墓の下』に『他人たちの死体と一緒に埋められただけ』であって、死後に逝くべき場所と留まる処が同じか否かは限らない。

 

 人は、全ての生命は一人だ。自分だけで生まれ落ち、自分一人だけで生きて死ぬ。その運命からは誰も逃れることは決して出来ない。

 だからこそ、永遠に一人きりの生命は―――他者と共に過ごす刻を求めずにはいられないのだろう・・・・・・・・・それが王が達した答えであり、セリアが未だ至れぬ『年齢』にしか達していない理由。

 

 その一人きりで過ごす場所で見る夢の中で、王は久しぶりに『彼女』と再会する。

 

 

「『千年の後、天の星落ちる刻――』」

 

 遠い記憶の彼方から、“彼女”の声が聞こえてくる。

 それは自分が、かつて聞かされた話の一説。

 自分が彼女と交わした、誓いの一文。

 

「『人の子の器に女神の力を宿す者が現れる。それを見つけ出すのが私に与えられた使命』・・・・・・たしか、そういうことで合っていたのだったか?」

 

 記憶の中の自分が、フルフェイスの兜の下で皮肉気に唇を曲げながら答えを帰す。

 応えられた女神も、また微笑とともに背を向ける“イメージ”を自分に見せつける。

 

「覚えてくれてるみたいだね。

 なら、それでいい・・・・・・」

 

 もう大分長い間、聞くことができなくなって久しい女声。

 実際に体験した出来事の風景ではなく、自分の中にある彼女のイメージが、『夢』という形で今、王の頭の中で再構築が成されようとしている。

 

 だからこそ王は、一人きりの眠りに暖かさと安らぎとを深く感じることが出来てもいた。

 相手の言を信じるならば、千年の彼方にある遠い未来へと去ってしまった、再会できるか否かも定かでない女神と自分は、夢の中でだけは再び確実に会えることができるのだから。

 

 もうずっと長い間、声を聞けなくなってしまった少女の言葉を。

 長い長い間、見ることが出来なくなってしまった麗しい娘の神々しい姿を。

 

 会えなくなってしまった者の声を聞き、会えなくなった者と邂逅できる場所。

 それが――夢。

 だが――夢は夢であるからこそ、目覚めの時が近いという現実の息吹を、王に否応なく押しつけてくるものでもある。

 

 夢を見るということは、自分の意識が覚醒しはじめ、夢を夢として認識できるほどに意識は現実へと帰還しようとしている証左。

 目覚めれば、おそらく彼女を探すための旅が始まる。

 どれだけ長くかかるか分からず、探し出せるか否かさえ判然としない、未確定な女神と交わした再会の邂逅。

 

 なればこそ、少しでも長く眠りについたままで居続けたいとい思ってしまう。

 今少し彼女の側にいたいと。彼女と再会していられる時間を引き延ばしたいと。

 

 ・・・・・・だと言うのに・・・・・・

 

 

 

 ――ガィン! ガィンッ! ギュインッ!!

 

 

 ・・・・・・先刻から響き続けている騒音が、王を心地よい夢の微睡みから追い立てるかのごとく、不快な不協和音を響かせ続けている。

 うっすらと、その寝所の中で薄目を開いてみると、自分が眠る場の正面にたち、一人の少女が何らかの魔導具らしきものを手にして、何事かを呟きながら、効果のない攻撃を繰り返し続けているようだった。

 

 あまりにも威力の低すぎる攻撃は、寝所の障壁に阻まれて虚しく弾かれ続けているようではあったが、その弾かれる際の衝突音が不快な騒音となって王の覚醒を『微睡みからの目覚め』ではなく『けたたましい騒ぎに叩き起こされた強制覚醒』へと強引に変えさせられてしまっていたのである。

 

(・・・・・・何者だ? この霊廟は、《封魔壁》によって完全に閉ざされているはず。たとえ城が落ちたとしても侵入者が入れる場所ではないはずだが・・・・・・)

 

 王は、眠りにつく寸前に行使した魔術の成功を認識しながらも、『蘇るまでの予定時間』の方には確信が抱けぬまま、水晶の中で首をかしげる。

 愚かな墓荒らしの類い――その可能性も考えはしたが、即座に切り捨てた。

 

 たかが金目当ての墓荒らし風情が入り込めるほど、安っぽい防備を霊廟に施した覚えはないし、封魔壁で覆われている霊廟に金目的で侵入できている時点で『ただの愚かな墓荒らし』と呼ぶには無理がありすぎる。

 

(・・・まぁいい。聞いてみれば分かることだ。――《言語解析魔術》)

「――クッ! これもダメかっ、ただの石じゃない!? なら次は《アンチ・マテリアル》で!

 待ってて! すぐに助けてあげるからねっ!!」

(・・・・・・・・・??)

 

 とりあえず相手の立場だけでも解してみようと、時代や国や人種の違いに影響されないレベルに達した翻訳系の魔術を使用してみたのだが・・・・・・余計に状況が分からなくなっただけで役立つ要素は残念ながら特に得られなかったらしい。

 

 ただ、どうやら目の前の少女は誰かを助けようとして、魔王たる自分が眠る霊廟の立つ位置に攻撃をし続けているらしい事だけは理解できた。

 水晶越しに見える景色からでは相手の姿はよく見えないが、自分が知っている女子用にまとう衣服とは大分異なる形状をしていることだけは見て取ることができた。

 

 ・・・・・・とすると、予定していた1000年の時を経ての眠りと転生とは、双方ともに成功したということなのだろうか?

 おそらく状況から見て、そうなのだろうと思いながらも妙にシックリとこない。不思議と違和感を覚える。

 どこか己の感覚がズレているような気が・・・・・・いや、ズレているのは転生したばかりの肉体が感じている体感か?

 

 ――どちらにしろ、蘇りし魔王の肉体の『慣らし』は必要か――

 

 

 

「・・・えっ!? 今、中にいる人が動いたような――きゃあッ!?」

 

 右手をかざして軽く魔力を外側へと流してみた魔王は、自分を覆っていた寝所代わりの水晶に亀裂を入れた途端に吹き飛ばし、その衝撃の余波を受けて正面にたっていた娘の体もあえなく飛ばされ、地面に叩きつけられた後に動かなくなる。

 死んだわけではなく、失神しただけのようではあったが・・・・・・王としては唖然とさせられずにはいられなかった。

 

「・・・え? アレ・・・・・・弱い・・・」

 

 気絶させた当人の身でありながら、加害者であるはずの魔王は困惑したように呟くしかない。

 まさか封魔壁で覆われている室内への侵入者が、この程度で吹き飛ばされて気絶してしまうほど脆弱でひ弱な力しか持たない存在である可能性など少しも真剣に考えないまま初撃を放ってしまった結果であった。

 

「え~とぉ・・・・・・どうしたものなのだ? こういう場合は本当に・・・」

 

 あまりにも予想外で、慣れなど全くない展開にどう対処してよいか分からなくなってしまい、困惑したまま一先ず気絶させた少女の生死を確認しようと歩み寄る。

 その際、

 

 ガコンッ、と。

 

 なにか重い金属の塊でも床に落ちたような音が室内に響き渡り。

 ガシャンガシャンガチャンと、最初の音に続いて色々な金属が床をこする時と同じ音が室内に響き渡っていたような気もしたが・・・・・・時の経過で建物内が経年劣化を起こしすぎてしまって、各所に飾っておいたオブジェとかが落下してでもいるのだろうか?

 昔は魔王城っぽい感じの彫刻を場内の各所に色々と配置してみたものだったが、アレらは今どうなっているのだろう? 

 

 ・・・・・・それにしても何故だか、先程より涼しく感じるような気がするのは、復活した直後故の弊害なのだろうか?

 アンデッドの身体に変わってからは、体感による五感など機能しなくなって久しいはずの肉体だが、今日に限っては妙に冷える――ような気がする。

 とくに股の辺りなどスースーしてるような気がするし、錯覚なのだろうが視界が開けて空気が美味いような誤認さえ感じてしまいそうになる。

 

 重傷だった。やはり転生の秘術は、自らの力を以てしても完全なる成功は難しかったようである。

 これは早めに対処を考えた方が良いかもしれない・・・・・・あるいは入れるはずのない風魔壁で覆われた室内に侵入者が入り込めた理由かもしれないし、その為にも今は確認を―――。

 

 そう考えて魔王は、一歩前に踏み出した。その時だった。

 

 

 ガツンッ。

 

 

「へ・・・? なにか足に当た―――ヘブシッ!?」

 

 

 バチーン!!!と。

 足下に落ちて転がってた、自分の頭から落ちてた兜に躓いて、顔面から床にダイブ。

 

 だが途中で体勢を立て直そうとして、視点が妙に低くなってて目測を誤り、手を伸ばした先が何故か掴めずに空を切って、片足を前に出したはずが床がなくて届かずにグギリとイヤな音響かせて捻るだけ。

 

 ・・・・・・一瞬の転倒から床激突までの間に、けっこうな数のハプニングを経験して、その全てで失敗し、冷たい床に叩きつけられて突っ伏すことしか出来なくなる―――復活した、この城の支配者様の現状の姿。

 

 

 

「う、う~ん・・・・・・ここは・・・私は、いったい・・・・・・って、え? お、女の子?

 なんで女の子が、こんなところに倒れてるの!? しかも裸マント姿でって・・・!!

 レギーナ! レギーナちょっと来てちょうだい! 女の子が!

 空から落ちてきたみたいに突然、裸の女の子がマント纏っただけの姿で倒れてるから早く来てレギーナーッ!?」

 

「・・・・・・・・・・・・うぎゅう・・・・・・(--;)」

 

 

 

 そうこうしている間に、今さっき眠ったばかりだった侵入者の少女が目覚めて、倒れ伏したままの魔王様の現状を発見。

 こうして二人の少女騎士たちは出会い、黒く染まった聖剣使いの物語は1000年の時を経て再び幕を開ける。

 

 あまり締まりのない始まりの仕方ではあったかもしれないが・・・・・・おとぎ話や神話で語られているシーンとシーンの間を繋ぐ場面にある現実は、常にカットされる平凡な日常があるのは今も昔の王国だろうと変わることはないものだ。

 

 

 

 

つづく

 

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