試作品集   作:ひきがやもとまち

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最近の迷走気味と、体調関連で集中しづらい頭の出来から相性良さそうだったので、昨日の夜に書いたのを投稿。
深夜テンションで書いたせいで大丈夫か迷いました。

【モブセカ】二次の最新話です。
尚、この作品主人公の意見は極論です。一般の乙女ゲーマーの方々には一切関係ありませんので、ご承知おきください。


この乙女ゲー世界は、女子でも引きます 8章

 

「はいは~い、みなさーん。俺が代理人に立候補しま~ス」

 

 ――ザワワッ!?

 

 空気読まない声と口調と態度で片手上げながら、アンジェリカさんとマリエの決闘イベントに変わってしまった原作イベントに俺が介入することを意思表明した瞬間。

 案の定というか、予想通りと言うべきなのか、それとも単なるパターンな奴らってことなのか、周囲で見物していたヤジウマたちがざわめきだして、俺に向かって悪意的なつぶやきを聞こえよがしに連発するのが聞こえてくる。

 

『え? 誰アイツ・・・知らないヤツなんだけど』

『どーせ、どっかの目立ちたがりな田舎貴族でしょう?』

『せっかく公爵令嬢が、どんな無様を晒すのか愉しみにしてたのに余計なことを・・・』

 

 とか、そんな愚痴を小声で聞こえるように、わざわざ声量コントロールして言ってきてるけど――ハッ! うるせぇんだよ、この愚民共がっ!!

 ちょくせつ言う度胸もねぇから陰口叩くだけのモブザコ悪役令嬢1、2、3に用はねぇ! 戦闘員はひっこんでなザコ共が!

 

 大体お前ら悪口が平凡すぎてパターンなんだよ!

 お約束違反の常習犯な転生妹と10年以上つき合ってきた俺を見習えパンピー共がッ! ――クソゥッ! 微妙に涙が出ちまいそうだな!男の子の兄だから!(泣)

 

「お前は・・・? たしか、入学前に冒険者として成功した奴がいたとは聞いていたが・・・」

「ん? ああ、そう言えば聞いた事があったな。それがコイツのことだったのか、知らなかったぜ」

 

 そして姿を現した俺に向かって、ありがたーい低評価を与えてくださる、上から目線の攻略対象な王子様の皆様方。

 うるせぇし、要らねぇし。

 遠回しに、『ちょっと実績あるだけのザコが付け上がるな格下』とか言いたいだけのアピールうざいだけだから。どーでもいいし、チンピラ臭いし、ザコっぽいし。

 

 まぁ俺は? アンタらと違って大人ですから? すぐ言い返すなんてガキっぽい真似はしませんけどね?

 ――それより先に、今の俺にはやらなきゃいけない事があるから、ソッチを先に済ましとくに限る。コイツらが売ってきた喧嘩を買ってやってボコるのは、その後でいい。

 

「・・・・・・アンジェリカさん」

「えっ!? な、なに・・・」

「いや、“え”じゃなくて。俺を代理人に指名しないと。せっかく立候補したんですから、放置しとかないでくださいよ」

「え? い、いや、だがお前はカンケ――」

「ほ~ら早く、認めるって言えばいいだけですから。

 何しろ俺って、まだ立候補しただけで許可されてないから関係ない部外者なんですよね。

 当事者にもなれてない、冒険者としての実績で学生なのに男爵の地位を与えてもらっただけの下級貴族の俺じゃあ、生まれながらの王子様たちやお坊ちゃん方のお言葉に返事するなんて恐れ多くって、とてもとても」

 

『『『『『・・・・・・むかッ』』』』』」

 

 遠回しな嫌味の言い返しが効いたらしく、「恵まれた楽な身分のお坊ちゃん扱い」された王子たちがムッとした表情を浮かべて睨み付けてくるのが感じられる。

 それを感じて、ヨッシャと狙い通りの展開に俺は心の中でガッツポーズ。

 

 ・・・なにせ俺って今のところ、アンジェリカさんとは碌に話したことすら記憶にないレベルの完全な赤の他人だからな。

 当事者たちの問題に口出すな呼ばわりされると超反論しづれぇ、関係ない他人事過ぎる立ち位置だし。婚約解消と浮気問題とかの痴情のもつれ話にとっては、本気で口出しする権利がなさ過ぎる薄っぺらい関係性なのが俺とアンジェリカさんの実情。

 

 だが、運がいいと言っていいのかは分からんが、ゲームと違ってアンジェリカさんとの距離が原作以上に疎遠になってて、マリエにべったりだった攻略対象王子たちは、俺と彼女に面識ないのかあるのかさえ把握できてやしないだろう。

 

 だったらここは、相手の感情あおって強引に当事者の地位に割り込むのを受け入れさせちまうのが手っ取り早い。

 ゲームでは外部から助っ人を雇ってた悪役令嬢のアンジェリカさんだから、別に決闘代理人が赤の他人でも制度上では問題ないとはいえ、恋愛がらみの問題に他人から割り込んでくるのを容認するのは抵抗あるかもしれないからな。

 

「わ、分かった・・・認める。お前を、私の決闘代理人として・・・」

「りょ~かい。―――フゥ」

 

 そして、勢いとノリのまま言質を取って一息吐く。

 よし、これで既成事実化できたところで、次の段階へと移るとしましょうかね――

 

「―――・・・・・・」

「くっ・・・、う・・・・・・」

 

 俺は無言のまま、冷や汗を垂らしつつユリウスの右腕に、コアラの様にしがみついてるマリエを見ながら、努めて冷静に状況を分析している自分を自覚していた。

 前々から疑ってた事で、ルクシオンに調べさせて確実になった事だがコイツは――マリエは間違いなく、俺たち兄妹と同じ『この世界にとっての異物』だ。

 転生者、もしくはソレに近い転生者に準ずるナニカ。原作知識を持ってるコイツに、今の段階で俺たちの正体まで知られちまうのは出来れば避けたい。

 

 俺はあくまでモブキャラでしかないし、本来は王子たちの傍らにいるのもマリエじゃなくオリヴィアさんであるべきポジションなんだろう。

 俺もマリエなんていう、自分と同じ部外者が割り込んでこなければ出張ることなかったんだろうし、原作ストーリーへの回帰ってわけじゃないが、少なくとも俺の方から原作崩壊を引き起こす原因になりたがる意思はない。

 そういうスタンスで俺は今日まで生きてきたんだ、これからも帰るつもりはない。今回のはたまたまだ、たまたま。次はないんで調整調整、と。

 

「と、言うわけで~。このリオン・フォー・バルトファルドが代理人を引き受けましたので、よろしくお願いしますね~。

 そちらの代理人は、殿下たち5人で間違いな――」

 

 

「待ってください! 私も立候補致します! 兄さんを守るために!!」

 

 

 ――ザワワワッ!?

 

 

 ・・・・・・と思ってたところで、いきなり割り込んできやがる声が響き渡って会場内ざわめかせやがってくれた訳で・・・。

 しかも、ヒロイン様みたいなセリフ使って、空気読まない台無し行動で兄の意図を妨害したがりに来る妹なんて、俺は一人しか持った覚えねぇし、一人いれば充分すぎるし、一人だって正直要らねぇとき多いし。

 

「兄を守る、だと・・・? ――たしかに、入学前に冒険者として成功した奴の話を聞いたときに、妹とコンビの冒険者グループだったという噂も聞かされていたが・・・」

「ああ、それも聞いた事がある話だったな。その妹ってのが、お前のことなのか?」

「はい・・・・・・レインシー・フォー・バルトファルドが、兄さんと共にアンジェリカ様の決闘代理人として立候補させていただきたいと思います・・・・・・兄さんだけを死地へと赴かせないためにッ!!」

 

『『・・・・・・・・・・・・え?』』

 

 

 そして妹のヒロインっぽい叫びでの返事を聞かされて、ポカンとした表情浮かべ合ってフリーズしたらしい二人の攻略対象、ユリウスとグレッグ。

 

「はい、そうです・・・・・・。

 こんな・・・・・・王子さま方に男爵ごときの下級貴族が楯突いてきたからと、勝負の勝敗に関係なく無礼討ちして殺してしまって、生首を校門に晒して見せしめとし、『俺たちに逆らうものは皆こうなるのだ愚民共めワハハハ~☆』と、その後の恋路を邪魔する者が現れぬよう利用する・・・・・・。

 そんな低い身分に生まれた故の悲劇的結末に、兄だけを逝かせるわけには参りません! ですから私も!!」

 

『『待て待て待てぇぇぇぇぇ~~~~ッい!?』』

 

 

 そして更に、悲劇シリアス顔の妹による、兄が殺される前提の王子たちの陰謀(推測。妄想とも言う)を公衆の面前で大声で語って、攻略対象たち二人から大声でツッコミもらうという貴重なシーンを拝見することが出来ましたとさ。・・・・・・こいつは兄をなんだと思ってんだ本当に・・・。

 

「するかそんなもん!? 俺は実戦経験のない口先だけの貴族は嫌いだとは思ってるが、勝負で勝った相手にそこまでしたいと思うクズになった覚えはねぇ!!」

「その通りだ! これは神聖な決闘だ! その勝敗にも、勝った後の敗者に対してムチ打つがごとき蛮行をさせるなど、私に出来るわけがあるまい!!」

「嘘ですッ!!」

 

 そして叫ぶ妹。

 夏の夕暮れ空に、ヒグラシが鳴く幻聴が響いた気が一瞬だけした。一学期が終わって夏休みが始まる時期だからねぇ~・・・。

 

「そう仰りながら、人が見ていないところで兄の部屋や私の部屋を襲わせて破壊させ、嫌がらせの落書きを悪口雑言書き殴って、精神的に追い詰めて自殺に追い込み、自分では手を汚すことなく邪魔者を排除するつもりなのでしょう!?

 同じクラスの子爵令嬢みたいに! 隣のクラスの伯爵令嬢みたいにッ!! 左隣のクラスの侯爵令嬢が男子生徒のYくんにやったみたいにーッ!!」

 

『『やらんわー!? って言うか、お前はどんだけ学校内の女子生徒たちにイヤな印象を持っているんだ本当に!?』』

 

 

 妹に叫び返す王子たちだったけど・・・・・・しょーじきコレは俺もレインに賛成せざるを得ない部分だったからな。反論する気になれないんで、大人しく素直に黙ってることで節度を守っとくとするか。

 王子たちはプライドあるから自分で仕返しはやらないだろうけど、忖度した連中のヤラカシを力ずくでも止めさせようとか、マリエとの恋路を邪魔したヤツへの裁きに罰則を与えようとかの治安維持活動までやってくれるとは全く思えない。

 そこら辺は、期待するだけ無駄なヤツらだろうし、大人しくなるまで今しばらくはレインの好きにさせてやるか。

 

「ハァ・・・ハァ・・・まったく・・・ここまで被害妄想が強いヤツが妹とはな・・・。これなら兄の性格と口の悪さも理解できるというものだ・・・」

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ま、まったくだぜ。こんだけ口先だけの貴族は山ほど見てきたが、ここまでのヤツはあんまりいねぇ・・・・・・」

「そんな・・・・・・ヒドイ! 私はただ、妹として兄さんの身を本気で心配してるだけなのに・・・・・・王族の方々や上級貴族の方々にとって、私たち下級貴族が家族の安全を願う気持ちは病気扱いされる程度のものだと仰るんですか!? 権力者に媚びを売るため弱者を踏みにじる人は山ほどいるのが世の中なのに!! ヒドイヒドイ! 酷すぎるッ!!」

「う゛・・・・・・わ、分かった。そこまで言うなら私も、少しは善処してやらないこともない」

「――え!? 本当なのですか王子さまッ!!」

 

 そして結果的に、女の子の涙(嘘泣き)に騙されて、幾つかの要求を自主的に受け入れちまって、試合の勝敗に関係なく俺ら兄妹と家族の安全だけは保証してもらえる運びになったらしい。

 

「・・・私としても、家族の身に危険が及ぶ恐れがあるからという理由で、全力が出せずに敗れたと言い訳され、マリエとの愛を貫くための決闘を穢されるのは迷惑だからな。

 君たちの部屋への襲撃やら落書きだのといった嫌がらせ行為も、まぁ被害妄想にしか過ぎんとは思うが念のため、早まった真似をせぬよう皆には申しつけておく。

 これは私たち5人と、バルトファルド兄妹との神聖なる愛を賭けた決闘なのだ。無粋な横やりで穢していいものではない」

「あ、ありがとうございます殿下! これで心置きなく全力で戦うことが出来ます! ご配慮に感謝で返すためにも、持てる微力の限りを尽くしてお相手することを約束致します!」

 

 そう言って頭下げて――後顧の憂いなく全力でブッ潰してやるぜ宣言を、相手に気づかせることなく礼儀正しく、ヒロインっぽい台詞で断言しちまった妹の詭弁で契約完了。

 流れ的に、レインも決闘代理人2番目として認められちまった形になったっぽい。

 

 いやまぁ、ありがたいっちゃ有り難い措置ではあったんだけれども・・・・・・今生の妹にも前世妹っぽい血が流れてることを見せつけられて、やっぱ妹という種族はダメなんだと改めて思い知った俺でしたとさ。

 

 ま、いいや。安全保障は確約もらったみたいだし、次いくか次。

 さっき妹の乱入で途切れたままになってた次に。

 

「あー・・・話が止まっちゃいましたが。とりあえず、こっちは俺とレインの二人で、そちらは殿下たち5人ってことでいいんですよね?

 婚約者のアンジェリカさん1人からの決闘に、殿下たち5人がかりで応じるつもりでいたところに、俺と妹の2人加わっただけってことで間違いないんですよね?」

『む・・・っ、ぐ・・・・・・嫌味な言い方だが、まぁメンバーの合計総数だけを問題視するなら、その通りだ』

「はい、それで了承と。じゃあ次に決めることとして、決闘方法と何を賭けるか確認したいのですが~―――ちなみに、アンジェリカさんから相手への要求は?」

 

 わざと挑発的で露悪的な言い方を使って仕切りながら、それでもまぁ間違ったことは言ってないので良しとしてもらうとして。

 決闘方法はともかく、勝ったときの要求は決めておかないと流石に賭けとしての決闘が成立しようがないので、声に出しての要求確認。

 アンジェリカさんは、彼女の立場でこの状況を前にしたら誰だってそうなるだろうけど、少し気まずそうに俯きながら小さい声で、だが相手にもハッキリと聞こえる言葉で、自身の要求を口にする。

 

 

「・・・・・・私の望みは一つだけだ。『殿下に近づくな』それ以外は、何も望まな――」

 

「そんな!? アンジェリカ様! これほどの危険を背負われながら、それは無欲すぎますッ!!!」

 

 

 ・・・・・・そして、ま~たしても途中で止めに入ってくる我が愛しき愚か者の妹よ・・・。

 コイツは何か? 何事もスムーズに進みそうなときには横入りしないと死んじゃう病かなにかなのか? 誇り高くも鼻も高くない性格悪いだけの妹って存在は、ほんとうに面倒だとつくづく思う。

 

 それでいて―――俺的にも同じことをアンジェリカさんの要求に思ってるわけだから、性質悪いよなぁ本当に。

 

「アンジェリカ様はユリウス殿下の婚約者だったのですよ!? それを殿下の方から『お前以外に好きな女が出来たから』と別れ話を持ち出され、婚約破棄を独断で決められてしまったお立場なのです! それなのにッ」

「い、いやしかし、殿下にもご事情はあるだろうし、私はただ殿下が幸せになってくださるなら、それでもい――」

「仮にアンジェリカ様の側が決闘に勝ったとしても、『殿下に近づくな』だけでは、『俺から近づくのは良いのだろう? 王族特権だ、許すが良い』の一言で全部なかったことにするのが可能なお立場なのがユリウス殿下と、マリエ嬢なのですよ!?

 全ては殿下の胸先三寸だけで決めることが可能なお立場なのです! 王族ですから! 王家の跡取りですから! 次に国の支配者として君臨されるのはユリウス王子殿下さまなのです!!

 そんな相手に挑むという危険極まる行為の報酬が、ただ『近づくなだけ』など・・・・・・無欲です! あまりにも無欲ですわアンジェリカ様! まさに聖女も斯くやと言わんばかりに神々しいほどの!!」

「そ、それは大袈裟すぎると思うが・・・・・・わ、分かった。もう少しだけ、考えてみよう・・・」

 

「・・・殿下、落ち着いてください。どうかご冷静に。今このタイミングで怒りにまかせて挑まれては、流石に殿下といえど立場が危なくなりかねませんので何卒・・・」

「―――ああ、分かっている・・・。分かっているんだ、ジルク。怒りをぶつけるべきは今ではないことぐらい、よく分かって・・・ッ!!」

 

 そんな妹によるアンジェリカさんへの説得交渉という名の、ユリウスに対する間接的な挑発罵倒は効果てきめんなようだった。

 本人に向かって直接言ってなくて、デカい声で聞こえるように他人に向かって話すフリする悪口ってホント性質悪いよねぇ~。俺も今度、機会あったときにやってみよっと。

 

「・・・ふん。そんなにまでして俺たちを引き裂きたいとはな・・・・・・どっちが悪女か分かったものでは――」

「あー、そういう面倒くさいのいいんで。さっさとソッチの条件も出してくださいよ、は~や~く~」

「確かに、ですね兄さん。

 なにしろアンジェリカ様は今のところ、“まだ婚約者”なわけですし。

 引き裂こうにも、本人たち同士の口約束だけで、別に一緒に居続ける縛りのない間柄の段階では、殿下のお心次第な関係な愛人関係みたいなものな訳ですし。

 婚約者との関係は婚約解消という形で引き裂けても、精神と言葉だけで交わされた繋がりは、引き裂けるモノがないですし。これでは先の発言は意味がありません」

「――ムッ」

 

 俺たち兄妹からの絶妙なコンビネーション・ツッコミ反撃ハリケーンをまともに食らったユリウスが不愉快そうな顔して呻き声を上げ、そして黙り込む。

 王子としちゃ無礼者に対して寛大すぎる反応だったが、当然といえば当然の反応でもあった。

 なにしろユリウスは本来、俺たち兄妹と同じく『決闘代理人』という立場で『マリエとアンジェリカさんんの決闘』に参加しているポジションにある。

 こと決闘に勝ったら得られる報酬要求に、ユリウスからどーこー言える権利はなにもない。

 

 それこそレインみたいに、相手が言うのを待ってから反応するなら別だったが、まずはマリエから自分の要求を口に出させなければ話の進めさせようがないのが、今のユリウスが立ってる場所の立ち位置なんだから。

 

「わ、私が勝ったら、酷いことは止めてください! 実家の権力で、えっと・・・・・・無理やりやるのは良くないと思います!」

 

 パクリ切れてない、パクリ切れてない。原作セリフを真似ようとして半端に覚えてないから、却って意味不明な発言になっちまっている。

 どうやらマリエは、文系の教科や暗記科目とかは得意なヤツじゃないっぽいな。せめてそーいうのは忘れない内にノートに残しておけよ、俺みたいに。

 

 いちいち一言一句覚えていて、前世ではゲームの攻略本を“自作した”とかいう過去話をホントか嘘かしてくれた妹でもない限りは、普通のヤツじゃ出来ないことだぜ? 俺の妹は普通じゃない変人だから可能なだけで。

 

「まぁつまり、とりあえずコッチが勝ったら殿下とマリエは別れて、負けた時にはアンジェリカさんは殿下たちに二度と関わらないし婚約も正式に解消する。

 それが基本的な互いの要求で、それ以外の要求は無理ない範囲のプラスα程度を、決まってから追加ってことでいいんじゃないかな?

 なにしろ婚約解消の方は家の問題なわけだし、ソッチの分を後から追加するぐらいは許してもらっても?」

「もちろんだ。もとより俺たちが欲するのは純粋なる愛情のみ。世俗的な金銭だの報酬だの些細なことだ」

「――えッ!?」

 

 締めにかかった俺からの総括に、ユリウスの方は快諾してくれたが、マリエの方は一瞬だけ小さく声を上げて、物欲しそうに俺とユリウスの顔を交互に見比べ、そして何も言わずに唇を引き結ぶ。

 

 ・・・・・・コッチの方は、金が欲しかったらしい。

 愛に生きる夢見がちな王子様と、貧乏子爵家の令嬢様のカップルでは、恋人同士でも格差社会があるっぽい。

 

「次に決闘方法だけど、闘技場を借りたヨロイでの決闘はどうだ?」

「なんだと? 私たちに勝つつもりなのか? お前では勝負にならず、決闘が成立しなくなるのではないか」

 

 そこまで言った時点で、それまで黙って観戦していた眼鏡イケメンで、若き剣豪の攻略対象クリスが、思わずといった風に声を上げてくるのが聞こえた。

 その声にはグレッグのような見下した雰囲気がなくて、本当に思ったことを言ってしまったってだけの、悪意ない発言だったって言うのが分かりやすく伝わっては来るんだが・・・・・・悪意がない方がイラつくってこともある。

 なにしろ、『本気でそう思ってる』ってことを現してるわけだしな。だったら本心から見下して悪口言ってただけになる。

 全然変わんねぇじゃねぇか、要らねぇよ。その上から目線のクソ誠意。

 

「お前、さっき女子に声かけてあしらわれてたろ? 目立ちたいだけなら引っ込んでろザコがッ!!」

 

 一方で、『冷静だが感情を表に出すのが苦手設定』のクリスと違って、『実績持ちで実戦経験ない貴族を見下す設定』のグレッグの方は、分かりやすく見下して罵倒してきやがる。

 嫌なヤツだった。嫌なヤツらだった。

 この世界に来る前までの俺だったなら、おちょくって馬鹿にして挑発してやるぐらいで済ませてやるぐらいしか出来ないぐらいには、口論で勝つのは得意じゃない分野だったが・・・・・・生憎と今の俺は、前世までの俺とは一味違うぜ。相棒もいる。

 

 俺は・・・俺たちは、一人だけで性格悪いヤツらの相手をしているわけじゃない!!

 

 

「フッ! 冒険者として大した実績もない見習いの分際で、兄様に向かって偉そうな口を叩いてくれますね。貴方程度のザコが私たちに勝てるとでも? 思い上がってると怪我しますよ? ボ・ウ・ヤ♪」

 

 性格悪くて口も悪くて性根も腐ってる妹のレインがいる!

 王子相手には敬語で接しても、王子より格下の伯爵子弟やら子爵子弟程度には、学園内では身分持ち込まない前提を盾にとってタメ口で挑発して愉しむのに利用する、最低最悪シスターが!

 こんなのと兄妹になって10年以上を過ごした俺が、こんなザコたち相手にヨロイの勝負だけじゃなく口論でも圧勝できないなんて絶対にありえねぇ!!!!

 

「・・・・・・アァン・・・?」

「おいおい、レイン。あんまり事実を言って新人くんをビビらせたら怖がらせたらダメじゃないか?

 彼はただ、ろくな実戦経験もなく、自分は強いと思い込んでるだけの典型的な貴族のお坊ちゃんに過ぎないだだから。熟練者として優しくしてあげようじゃないか、アッハッハ!」

「・・・・・・・・・お前ら・・・あんまり舐めてると本気で――」

「ああ、ただし~~」

 

 ずずいっと、タイミングを計って顔を近づけてドアップに迫って、思わず口を閉ざさせた後。

 

「気になる女の子の前でいいとこ見せて、気を引きたいだけだったら、引っ込んでた方がいいですよ~? 舐めた口きいてたせいでブッ潰しちゃったら危ないからねー。

 俺ってホラ、弱い者いじめとか超苦手なタイプだから嫌なのよ。お分かり? ド素人のザ・コくん☆」

「て、テメェ・・・!!! テメェ!テメェ!! 上等だ! 今すぐブッ殺s――!!」

「ま、まぁまぁ」

 

 見た目通り沸点が低そうで、自分が見下して挑発するのは良くても、自分が見下されて挑発されるのは我慢できないらしいグレッグが限界超える寸前で、見るに見かねてジルクが仲裁に入ってくる。

 

 いい判断だった。流石にこの場では、場所が悪いし他の生徒たちを巻き込むのも、相手にとって良くはないだろう。

 それに、だ。

 

「決闘方法はそちらの条件を飲みましょう。それがグレッグにとっても一番良いはずです」

「・・・・・・そうだけどよ。しかし――」

「第一、先に相手を挑発したのはグレッグです。彼らは貴方からの挑発に、挑発で返しただけのこと。それを自分の思い通りにいかなかったからと怒るのでは本末転倒というもの。違いますか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・チッ」

 

 ジルクの仲裁と指摘に、多少なりと武人のプライドでも刺激されたのか、グレッグは不愉快そうな表情で舌打ちすると、そっぽを向いて、それ以上は何も言わなくなった。

 一応は自分から仕掛けた舌戦だったことを自覚してはいたようである。

 

「納得してくれたようですね。では、その条件で。

 公平を期すため、そちらも五人までの参加を認めましょう」

「こっちは俺とレインの2人だけでいいよ。むしろ俺1人だけで充分すぎると思うよ?

 一対一を五回やって、何かの時のため補欠にレインって訳だ」

「・・・本気ですか? 決闘は命を落とすこともあるのですよ」

 

 知っているし、当たり前のことだ。冒険者やってれば、ヨロイでの決闘かどうとか関係なしに、基本的にいつでもどこでも命を落とす危険あるのが日常風景だし。

 ・・・ルクシオン手に入れたときのダンジョンとかさ。あの時はマ~ジで死ぬかと思ったわ・・・・・・それと比べて、コイツらいくら何でも現時点じゃ緩すぎる。

 

「実績のある方だと聞いていましたが・・・相手の実力も測れないようでは――」

「と言うより、王子様たちを相手にして、死ぬ危険のある決闘を挑みたがる物好きが、私たち2人以外にいるとでも?

 むしろ最初は、“一人もいないに決まってる前提”で語ってたように見えたのだが?」

「むっ!? ・・・・・・ま、まぁ、そういう基準での的確で冷静な評価も正しくはあるのでしょうが――」

「そこまでにしておけ、ジルク」

 

 いつものようにいつもの如く、レインからの冷静ツッコミ指摘を受けさせられ、ジルクが自分の発言を取り繕うための説明する言葉を探し始めるが(無茶振りして公平さアピールしてただけになるし)

 そこに本命も本命、ユリウス殿下ご自身から掛かる制止の声。

 

「バルトファルド兄妹。俺たちの前で、それだけの大言を言い切って見せたのだ。

 ――覚悟は出来ている、そう解釈してよいのだろうな?」

「ハッ――もちろん」

 

 俺はユリウスからの問いかけに、白い歯を「キラリ☆」と光らせて爽やかに笑って返しながら(後にレイモンド達から聞いたところ『悪役の笑いそのものだった』らしいが・・・)アンジェリカさんから投げつけられて、うやむやの内に拾われないままになっていた手袋を拾い直し。

 

 バッ!と、ユリウスの方に―――“ではなく”。

 マリエの方へと、“返してやる”。

 

 

 

『王子様を決闘で戦って圧勝したせいで、退学にさせられる覚悟は出来ている。

 掛かってくるがいい、愉快な王子様と仲間達。

 恋人と別れる最後の日が、自分の実力不足で決まる覚悟が、お前たちにあるのなら―――決闘してやるぜッ!!(あげようッ!!)』

 

 

 

 

 こうして、悪役令嬢アンジェリカさんから、合法ロリ子爵令嬢(貧乏)マリエとの決闘が確定し、その代理人として俺たちバルトフォー兄妹VS愉快なユリウス王子と愉快な仲間達パーティーとの戦いが幕を開ける準備が整ったというわけだ!

 

 さぁ、諸君。決闘を始めよう。

 俺は、俺たちは、決闘(での圧勝)が大好きだッ!!!

 

 

 しかし――正論で言い負かしに来たヤツらを、逆に正論で言い負かし返してやるのって、やっぱサイコ~な気分だねぇ~♪

 

(この発言が兄妹どちらのものであるか歴史は黙して、未だ語られることはない)

 

 

 

 

 

 

 ――とまぁ、そんな流れがあった末に攻略対象の王子さま方との決闘することになった結果として。

 

 

「――うわぁ~、見事に荒らされまくってんのなぁ俺の部屋」

「だね。まぁ所詮、相手に見えない死角は幾らでもあり、バレなければいいし、バレても罰を受けなきゃそれでいいは万国共通の常識でもある。

 王子様やら上の方が止めた程度でイジメがなくなるなら、苦労はないさ」

 

 部屋の壁一面に書かれまくったラクガキの文字と下手な絵を眺めながら、我が輩と兄君くんは授業から戻ってきた直後に見つけた光景を前に、二人そろって苦笑い。

 いやはや、最初から期待していなかったとはいえ、王子様の約束がこーも軽んじられてるようでは、国の貴族やら未来やらが我が輩達のような人間でさえ心配になってきそうなレベルだねぇ、本当に。

 

《マスターの留守中に生徒たちが荒らしていきました。実行犯は記録してありますので、ご覧に入れましょう》

 

 と、頼んでもいなければ許可も求めることもないままに、ルクシオンくんが部屋襲撃当時の光景を生々しく記録した映像を再生して、壁に映し出してくれる。

 まぁ、彼(?)はもともと現在この世界で人類となった新人類――魔法を使えるようになった者たちの事らしい――と敵対して滅ぼされた、旧人類とやらいうゲームでは語られていなかったオリジナル設定の存在だからね。

 

 人類は基本的に全部キライらしいっぽいので、嫌いな連中のロクデモナイ行動やら、友情は偽善で嘘偽りお前ら所詮クソだ~、みたいな真実を暴くのは愉しくて好きなのだろうと思う。愉悦が好きな殺人神父みたいな感じで。

 ちなみに私も基本、大好物であるが、人に言うと噂されて恥ずかしいので言えない、乙女のヒ・ミ・ツ♡という設定にしておいてある。一応は。

 

「ああ・・・ダニエルとレイモンドもやらされてたのか・・・。俺と今まで親しくしてたのアイツらぐらいだったからなぁ」

《新人類同士の絆など所詮、この程度のもの。儚い友情ですね》

「おいおい。自分の将来を優先しただけで、人聞きの悪いこと言ってやるなよ? むしろ踏み絵代わりにやらなかったら共犯扱いされてアイツら自身がヤバくなる立場なんだからな。

 お前は本当に心が狭いヤツだなぁ~。俺のような寛大さを持てなきゃダメだぜ」

「まさしく兄君くんの言う通り。それどころか、この状況下で彼らが何のリスクも負わされずに親身になって接してきてたら、寝返っている可能性を疑わざるを得ないところだった。

 明らかに、突き上げられて脅されながら書かされている立場なら、恨み辛みで裏切られる危険性が下がるというもの。

 一時だけの過ちには寛大さで以て接するべきなのだよルクシオンくん、次から裏切りづらい証拠を得た形になるから」

《・・・・・・そのようですね、訂正します。

 友情が儚いのではなく、旧人類と違って新人類にとっての“友情”という単語は、ゲスな感情のことだと学習しました》

 

 ルクシオンくんからの、心が狭い嫌味な反応。フッ・・・所詮は滅び去った下級民族の戯れ言など我々は気にしない寛大さを持つ新人類だがね? と惑星ヤサイの王子様や陰の支配者帝王っぽいこと考えつつ。

 兄君くんからの指示のもと、映像を切り替えて表示してくれたグラフの方へと話題は移り。

 

《既に学園内では、マスターたちの決闘の賭けが始まっています。

 赤がマスターで、青い方が相手に賭けた生徒たち。比率的では、マスターたちが勝つが0.03。相手の王子たちが勝つが残り全部です》

「圧倒的アウェーな雰囲気!? イケメンお坊ちゃま共と下級貴族の決闘なのに!!」

《まさか自分たちに人気があるとでも思っていたのですか?》

「・・・・・・い~や~? まっさか~」

 

 賭けが行われて、倍率などを表すグラフで表示されたのを見せつけられたことで、却って兄君くんは良い笑顔になって嬉しそうに、満面の笑顔を浮かべ直しているのが横目で見える。

 

「むしろ思ったより人気あって、期待してる奴が多かったらどーしようかと思ってたところさ。賭け金ってのは、負けるに決まってると思ってるヤツが多ければ多いほど、勝ったときの見返りがデカくなるんだからな」

「まさしくまさしく。一点狙いの大穴勝ちで、掛け金は全て独り占め――いや、二人占めかな。久々に大儲けできそうだね、兄君くん。

 敵のことも禄に調べず勝てると思って掛かってくる愚かな獲物たちに、現実の戦いの恐ろしさを教えてあげようホトトギス。白金貨1000枚もってこーいッ!!」

 

『『くっくっくっく・・・・・・ハーッハッハッハッハ!!!』』

 

《・・・・・・・・・》

 

 

 家族水入らずで兄妹仲良く絆を深め合いながら笑い合う、我が輩たちバルトフェルド家の一族たち!

 ・・・・・・最近ちょっと、その後ろ姿に見つめてくるルクシオンくんからの視線が痛いと感じなくもなってはいたものの・・・・・・必要な犠牲である。勝利と栄光には犠牲がつきものなので致し方なし。

 

「・・・ああ、そういやだけどレイン。お前って一応だが、このゲーム好きで買ってプレイしてた女子ゲーマーではあったんだろ?

 今更だが、いいのか? 王子たち攻略対象ぶちのめす側に回っちまって。女子的には、そーいうの避けそうな印象あるんだが・・・」

「ふむ・・・そうだね。まぁ、乙女ゲーマーにはまま問われることがある質問だから、折角なので答えておくとだ」

 

 居住まいを正して、真剣な顔に表情を作り直すと我が輩は、兄君くんを真っ直ぐに見つめ直し、言葉を選びながらゆっくりと、自分の抱えてきた想いを誠実に、今生における兄として共に生きてきた少年に向かって語りかけていく―――

 

 

 

「兄君くんは、こう思ったことはないかね?――『振る』って選択肢ないかな、って」

 

「・・・・・・・・・」

 

「いや、嫌いな訳ではない。むしろ好きな方なのだが・・・・・・好きだからこそ逆にムカつかされる時があると言うか。

 こんだけ尽くしてやってんのに、ンダその態度はとか。攻略対象の分際で他の女と結ばれるENDとかふざけるなとか。生涯独身貫けないなら攻略対象を名乗る資格はねぇんだよー!とか」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「何より乙女ゲーは・・・・・・金がかかっているのだよ!! タダではないのだゲームは! たかが遊びで済まないんだよ!! 学生ゲーマーにとって5000円以上は安くない!!

 ゲームであっても遊びではないのだ、乙女ゲームというものはァァァァァァッ!!!!

 これだけ貢いでやった身として、一発か二発か五発ぐらいボコりまくる権利が我が輩にはあると信じるのは間違ってないのではなかろうか――――ッッ!!!!」

 

「落ち着け! 乙女ゲー世界の学校で、生々しい欲望を叫ぶんじゃねぇ! なんとなく分かるけど分かりたくないんだよ、お前の正直すぎる女ゲーマーの本音欲望はーッ!?」

 

 

 

つづく

 

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