試作品集   作:ひきがやもとまち

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少し遅ればせながら、今季からの続編アニメ【魔王様、リトライ!R】の二次創作です。

だいぶ前に書いて、途中から現実に寄せようとして、思うように書けなくなって遠ざかっていた著作『他称魔王様、自称凡人さん。リスタート』を一旦全部なかったことにして削除して、改めて今度は当初思ってた通りに書き直そうと決意して、少し前から書いてた作品のリメイク版。

今更とは自分でも思ったのですが……他の連載作も同時進行でいろいろ思いついて執筆中のため、その息抜き用と割り切ってもらえたら助かります。


自称・魔王様リトライ!RX-78 第1章

 

 《INFINITY GAME》

 ――それが俺の造ったゲーム、俺の好きに創った世界の名前だ。名前“だった”

 その世界の歴史も今日で幕を下ろそうとしている。

 今のユーザーは、殺伐とした殺し合いなんかネットに求めちゃいない。SNSで承認欲求と正義マンと緩い馴れ合いに夢中だ。そんな奴らにとっては終わってしまったんだ、インフィニティ・ゲームが流行った時代は。

 

 ・・・・・・あるいは緩い馴れ合いの裏で、コソコソと殺伐とした正義の殺し合いモドキを続けてるのかもしれないが、それでも最後の登録者数がいなくなって配信サービスが終わるという事実が変わるわけでもない。

 

 たとえサービス開始時から付き合い続けてきた、作中で恐れられてる魔王設定のラスボスだろうと、リアルの運営費捻出と15年の長すぎる運営機関と人気低迷によるサービス終了はどうすることもできやしない。

 

 知り合いからは、そんな俺のことを『気が進まない仕事してるのは似合わない』と言ってくるヤツもいたが――『自分の好きなように世界を造って収入得られて食っていきたい』っていう願いも、結局のところは承認欲求の一つでしかないのかもしれない。

 

 ・・・・・・そんな自虐めいたことを思ってしまう程度には、俺にとって今まで付き合い続けてきた魔王と別れの日は、意外と心に響いていたのかもしれない・・・・・・

 

「お前が大野彰か? 聞いてた以上に面倒そうな小僧だな」

「・・・?? 誰だ、アンタ・・・?」

「フン、青木っていう。【42ーOMG】の常務さ。お前が袖にしたミキモトの後釜って言やぁ分かるか?」

 

 そんな感傷を抱きながら勤めている会社を出た直後のことだった。

 馴れ馴れしい口調で話しかけてくる大柄な男がいて、そいつの語った名前には聞き覚えがあった。

 

 昔、俺が造った《INFINITY GAME》を買い取って、大規模MMOとして世界中に売り出したいと申し込んできたデカいゲーム会社があった。

 もちろん俺は断った。会社に運営権を売ってしまったら、自分の好きに造ることができなくなってしまう。

 俺の《INFINITY GAME》は俺の物だ。誰かに金で首輪なんかつけられて、言いなりになるなんて真っ平ゴメンだった。

 

「アンタも、MIKITEのところの・・・・・・」

「そういうこった。ミキの奴が手ぬるいから、俺が出張ることになったのさ」

「・・・・・・俺の《INFINITY GAME》を大規模運営したいって話だろ? 俺は誰かの手を借りるつもりなんてな――」

「そう言うところがガキだってんだよ。ゼニはあんのかよ小僧? 他人の言いなりはイヤだが、自分のやりたい通りに造ったら売れねぇ。

 “儲からなくても人の手は借りずに、自分が自由に造れればいい――”プライドだけは高い自己満連中が言いそうなこった。だーからガキだっつーのさ。少なくとも、今のところはまだ、な」

「・・・・・・ぐ」

 

 イヤな男だった。イヤなことを言ってくる野郎だった。・・・・・・人が言われたくないことを的確に突いてくる、糞味噌にムカつかされる嫌すぎる男だった。完全に間違ってはいないところは本当に嫌になるほどに・・・・・・っ

 

「ふっ、図星か? まったく社長も、こんなガキに何を期待してるんだかな。だが、造ろうとしてた世界はなかなかのもんだった。

 オメェの言う《世界》ってヤツは、うちでしか造れんよ。だから――」

 

 言いながら、胸ポケットから取り出したライターで、口に咥えたタバコに火をつける。

 フゥ――と煙を一つ吐き出して、続く言葉を俺に投げかけようとして、それで・・・・・・

 

 

 

「待てっ! 貴様らが進めている計画のすべては既に見抜かれている! もう諦めるんだ!!」

 

 

「な、なにッ!?」

「・・・・・・えっ!?」

 

 ――突然、横合いから響いてきた声に驚かされた俺と青木は、声のした方へと目を向ける!

 俺は訳の分からない事態に驚愕の表情を浮かべながら! 青木も驚きを露わにしながら――冷や汗を一滴だけ頬に流しながら

 

「お前が、それを何に使うつもりなのか。なんの目的のために、それを使おうとしているのか・・・・・・それらは既に見抜かれ、証拠もあがっている! もはや逃げ場はない、大人しくするんだ!!」

「う、ぐ・・・クソッ!」

 

 見ると、眼鏡をかけて茶色のコートで全身を包んだ長身の男が、俺たちに向かって人差し指を突きつけながら、鋭い目付きでにらみつけてきていた。

 その視線は俺たちの方を――いや、ハッキリと青木の立っている方へと向けられ、微動だにしていない。

 そして青木もまた、後ろめたいことがある者特有の狼狽えざまを示して、視線をせわしなく動かし続けては逃げ道を探していることが、近くで見ている俺にはハッキリと分かった。

 

 そして理解する。俺は何かの陰謀に巻き込まれたのだ。あるいは、巻き込まれようとしていたのだとッ。

 それが何かは分からない。だが、その陰謀に青木が絡んでいるのは奴の慌て振りから確実で、そしてそれは俺にも間接的に関わり合いのある出来事だったんだ!と、そう確信した俺は、だからこそ!!

 

 

「フハハハハハッ!! よくぞ見破った! さすがはチート転生名探偵、沖浦くん!

 だが、この私を捕まえることは人にも神にも決して出来んッ!!!」

 

 

『『・・・・・・・・・・・・はい?』』

 

 

 ・・・・・・反対側から響いてきた笑い声を聞かされた瞬間。

 青木と一緒になって、ポカンとした顔に疑問符浮かべながら振り返ることしか出来ない一般人の一人になるしか道がなかったわけで・・・・・・

 

 よく見たら、青木の立ってる場所より後ろの方に、杖突いたヨボヨボの入れ歯バアさんが腰掛けていたみたいだった。

 その婆さんが、座ってたベンチの上で仁王立ちになって、高らかに高笑いを上げていて―――ねぇ、これ何時の時代の出来事なん? ネットの時代じゃないよね? どう考えたって。

 携帯とかさえ無い時代の人たちがやる行為だよね、こういうのって。近代日本の現代帰ってこ~い。

 

 

「ふははははっ!! だが残念だったなチート転生名探偵の沖浦くん!

 私の計画は既に、準備完了しているのだよッ。このビルは後30秒後に大爆発を起こして、跡形もなく消し飛ぶことだろう! この通りも火の海と化すっ。死にたくなければ、早めに人々を連れて脱出することだな沖浦くんッ!!」

 

「え? え? ウソっ!? 俺の会社がっ!?」

 

「この会社だけではないぞ! 【42ーOMG】の本社ビルにも同じものを仕掛けさせてもらった! 今からでは幾ら君のチート推理力を以てしても、二つの爆発を共に阻止するなど絶対に不可能!! 今回は私の勝ちだ沖浦くん!!」

 

「え? え!? オレの会社もっ!?」

 

「な、なんて恐ろしい計画を・・・! 許せん! 私は絶対にお前たちを許さない! 必ずや、お前たちの計画を阻止してみせる!! 人を殺して許されるなどと思い上がるなよ!

 悪のチート転生怪盗軍団の幹部、チート怪人208面相ーっ!!」

 

「はーっはっは! さらばだ沖浦くん! そして偶然にも広場に集っていた悪の犠牲となる者たちよ!

 もしチート転生して異世界で再び敵となった時には―――また会おうッ!!! フハハハハッ!!」

 

 

 バサァァァッ!!と、マントを翻すようにして服を脱ぎ捨てると同時に、空高くバアさんが飛んでいったなぁ~とか思った瞬間に。

 

 ズバァァァァァァァッン!!!

 ―――ギャオォォォォッス!?

 

「お、俺の会社がぁ―――っ!?」

「バカ大野! 今それどころじゃねぇだろうが!? 早く逃げろ! こいつらヤバいって! マジでヤバいって! どれぐらいヤバいかっつ―と超ヤバい!!」

「い、いやでも何か今、悲鳴っぽいのも聞こえた気が!? 獣の断末魔みたいな声が!! なんかヤバそうなのの首が吹っ飛ばされて三つに飛んでってた幻覚がぁぁぁぁっ!?」

「いいから来ぉぉッい!! マジで危ねぇから! 早く逃げねぇと危ねって、熱っちぃ!?」

 

 

 巻き上がる炎! 飛び散る破片! 響き渡る絶叫!! さっきまで平和だった現代日本の町並みは一瞬にしてテロリストの攻撃によって戦場と化す一歩手前になっていく!

 

 ・・・・・・だが、そのとき俺は酷く冷静な頭で、気づくことが出来ていたことが一つだけあった。

 俺と《INFINITY GAME》の運命は、本当に今日で終わってしまったんだという事を。

 

 たとえ誰かによって、『俺が【42ーOMG】で《INFINITY GAME》を造ること』を、陰謀という名の運命で決められてしまっていたのだとしても。

 

 その運命は、先程のワケワカンナイ連中によるワケワカンナイ戦いによって巻き込まれて横取りされて、NTRされてしまった、俺と《INFINITY GAME》とを繋げる運命ではなくなってしまったのだと―――俺は、そう気づかされていた。

 何故かは分からない。分かってしまったから分かるとしか言いようが無い、不思議な感覚。

 

 そんな当事者から赤の他人のモブ通行人の一人に変わってしまったらしい俺から、強いて言うことがあるとしたら。

 そのNTRられた運命だか陰謀に巻き込まれて、さっきの爆発にも巻き込まれた奴がいたとするならば―――ご愁傷様でした、とだけ俺からは一言いっておきたい。南無。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、そこは地獄だった。

 大きな火事が起きたのだろう。

 あるいは大きな爆発だったのかもしれない。

 

 見慣れた街路は一面が火の海に変わっていて、映画で見る戦場跡のようだった。

 その中で――原形を留めているのは自分だけ。

 この周辺で、まだ生きているのは自分だけ・・・・・・。

 

 よほど運が悪かったのか、それとも不幸の星に愛されて産まれてきた結果だったのか、どちらかは分からないけれど、とにかく自分だけは生きていた。

 

 生き延びているからには―――苦しまなくちゃいけなくなる。

 地獄となってる町中なんていう状況下で、生きて脱出できる可能性は万に一つもありやしない。さっさと楽になれれば良かったのに、生き延びてしまったせいで死ぬまでの間は苦しまなくちゃいけなくなったじゃないか・・・!

 

 だが―――まわりに転がっている人たちを見ても、自分は羨ましいとは思うことだけはなかった。

 きっと・・・・・・ああはなりたくない、という気持ちよりも。

 早くああなって楽になりたい、という気持ちよりも。もっと強い気持ちで心がくくられてたからなんだろう―――

 それでも、希望なんて全く持てなくなってた僕の心でさえ思えたこと。強く感じた想い。――それは・・・・・・きっ、と・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「あァああアアぁぁぁぁぁぁ、熱いっ! 熱いッ!! 熱い水ぅぅぅぅぅぅッッ!!!

 ―――はっ!? こ、ここは一体・・・・・・?」

 

 気がつけば、大森林の中に立っていました。

 鬱蒼とした樹木に囲まれてる大森林です。景色に全く見覚えはありません。

 突然の出来事に頭の中は真っ白になり、森に囲まれた周りの景色は真っ緑です。大自然はんぱないっスね。まじパネェっす。

 

「い、いったい何が起こって、僕はこんな場所に・・・・・・いや、そもそもココどこですか? なんか声も変な気がしますし、手足と座高が低くなってるようにも感じられるのですけれども・・・・・・」

 

 猛烈に嫌な予感に襲われながら、それでも嫌な現実から少しでも遠ざかろうと涙ぐましい努力を続けながらも、気になるものは気になってしまい、もしかしたらの希望にすがって確認取りたい感情を怖いもの見たさで理論武装しつつ。

 恐る恐る自分の姿が映し出せそうなものを探して、近くに澄んだ色の湖があるのを見つけて近寄っていき、湖面に自分の姿を映し出して分かったこととして。

 

「なっ!? なッ!? これは――この姿はッ!!

 【ゴッターニ・サーガ】で私が使っていたプレイヤーキャラクター・・・っ」

 

 の。

 

「――別アカウントで作ってみたネタアバター、『ナベ次郎』・・・っ!!

 なんで、よりにもよってこっちのキャラで大森林に放逐されてきてるんですか私・・・!?」

 

 本気で謎な展開を前にして驚愕すること意外はできない私です!

 ここが仮にゲームの中か、もしくはゲームシステムが半端に通用する別時空の異世界とかだったとしても、ネタキャラで来させられる理由が全く想像できません!

 何の理由で呼ぶにせよ、普段使ってるキャラで来させればいいだけですからね! ネタで呼ぶ理由がどこにも見当たりませんよ本当に!

 

「ふざけないで頂きたい・・・っ。なんで高校生男子の私が、こんな銀髪幼女エルフのチビキャラなんかにならなきゃいけないんですかっ、本当に・・・・・・!!!」

 

 わなわなと怒りに震える私です・・・っ! っていうか、一人称までロールプレイしていた頃の「私」で、敬語使いになっちゃってますし! 適応早いですねこの身体!

 

 しかも! この姿になっている今の自分が夢や幻ではなく、本当の異世界転生とかだった場合には、意味する結論としてそれは――!!

 

「私・・・・・・死んじゃってるって事ですじゃん!? 死んで生まれ変わって別人に輪廻転生しちゃったって事ですよね転生って!!

 自分の世界に帰ったところで、死体になる事しかできなくなっちゃってんですけどー!?」

 

 そう、これは俗に言う転生。異世界への生まれ変わった異世界転生。ラノベとかでよくある展開の一つ。

 それはつまり――現実世界の僕は死んじゃったってこと確定してんじゃないですか!? 助からなかったのかよ!

 心の中でどーこー思ってはいても、本心ではやっぱり死にたくないなぁ助からないかな~って願ってた祈り、いきなり完全否定ですか!?

 異世界転生者は現世の死体! つまりゴースト!! 今の僕ゴースト!アンデットでゾンビって嫌だなオイ!? ラノベで読んでる分には気にしなかったけど、考えてみたら凄くイヤでしたわ!

 

「い、いや待て落ち着きましょうワタシ・・・・・・。まだ慌てるような時間じゃないはず、まだ間に合う・・・・・・。

 こういう時はアレです。えーと、その―――そう! 『5W1H』!!

 『When!(いつ)』いつの間に!? 『Where!(どこで)』ワタシに見えなかったところで!

 『Who!(誰が)』どんなアホが一体!? 『Hhat!(なにを)』ゲームで使っていたPCアバターの身体を!

 『Why!(なぜ)』何の役にも立たなそうな私と一体化させて! 『How!(どのようにして)』一体――」

 

 ぎゃーぎゃー騒いで森の中で一人わめき立てる変なエルフ幼女ナベ次郎――それが今の私!

 認めたくないものな現実です! アンデッド転生した絶対者様と違って、アバターの性能と課せられてる設定のせいなのか、感情抑制機能がまったく発動しないどころか逆に暴走気味になってる自覚があるほどに!

 普段の私だったらリアルはもう少し冷静に対処できるのに何故!? それはきっとゲームないでプレイしていた、久々にロールしているアバターのボディと経歴のせい!!

 

 

 ・・・・・・日本製MMORPG『ゴッターニ・サーガ』で使っていたネタ・アバター『ナベ次郎』。

 オーバーロードに出てきた美人冒険者モードの「ナーベ」と、ガンゲイル・オンラインに登場するチビキャラの「フカ次郎」

 お気に入りキャラの二人を融合させた感じで名付けてみた、完全なるネタキャラアバターで、種族は一応エルフ。

 

 ただし、魔法が得意で接近戦闘が苦手な種族設定に反して、肉弾戦オンリーな武闘家クラスを極めた拳で戦うモンク・エルフな上に、外見設定として限界まで身長低くして、胸は逆にシステムで可能な限り最大限大きくしてみた結果、めちゃくちゃアンバランスな姿形と種族とステータスを持ったヘンテコリンなキャラが出来上がったんでしたよねー、たしか。

 

 髪は基本、金髪なのがエルフですけどナベ次郎は異端だったので銀髪。

 瞳の色も青か緑がポピュラーでしたけど、敢えて紫色に変えてみて(意味はありません。単に好きな色だったんです)

 服装というか、装備の方は防御ガン無視して攻撃特化型の軽装タイプ。何も考えずに突っ込んでいって玉砕して、復活させてもらって再び突っ込むというゾンビアタック上等キャラであり、猪突猛進しかしないイノシシエルフ幼女。

 

 笑い取るために普段は絶対しないような言動を意識してロールプレイしてたため、妙に格好つけた仕草をしてみたり、渋い台詞を吐いてみたりと外見に合わないこと甚だしい特徴が知り合いには受けてくれてたみたいで、ギルドにも入ってない野良PCの癖にしょっちゅう狩りに誘われてたモノです。

 

 そして、狩り場に着いたら特攻して玉砕して復活してもらって再び特攻して玉砕する様を『www(^Д^)』とか言われながら見物されていたんでしたよねぇ~、たしか。

 いやはや懐かしや懐かしや。今思うとすべては良き思い出ですよ・・・・・・。

 

 

 ・・・・・・そうです。実は私が『ゴッターニ・サーガ』を最近までプレイしていなかった卒業組プレイヤー・・・。

 ネトゲ世界に取り込まれる系の作品主人公によくある『そのゲームにすべてを捧げてきた廃人プレイヤー』などでは全くなく。

 どっちかと言うと「楽しめればそれでいいやタイプ」のエンジョイプレイヤーだったのです・・・。

 なので、ぶっちゃけこのゲームやるの本当に久しぶりでよく思い出せませんですし、そもそも配信サービス終了するのが今日だって情報を偶然知ったから最後にもう一回だけログインしに来ただけの、本気で呼ばれる理由が存在しないはずの存在。それが私! ・・・そのはずなのですけども・・・・・・。

 

「・・・いやいや、落ち着きましょう・・・。まだ慌てる時間じゃありません、起きたばかりですからね。

 自分がプレイしていたゲームに入り込むなんて普通に考えてあり得ませ―――って、」

 

 いかん、これはフラグです。フラグ台詞です。言ったら一生帰れなくなるのが確定してしまう台詞ですから別のを口にしましょう、別の台詞を。

 例えばなんかこう・・・取り込まれてしまったゲーム世界から現実世界に帰ってこれた主人公たちが言ってたセリフとかを!!

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 ・・・・・・ゲーム世界から現実世界に帰ってきたキャラクター・・・ほとんどいねぇ――っ!?

 向こうの世界に永住してチートし続けるタイプばっかりじゃないですか最近の奴って!

 昔のだったら帰ってくる人の方が多いですけど、コレそういうタイプなの? ネトゲありませんよ、あの時代には!!

 

 て言うか貴方たち、なんで戻ってきてる数少ないんですか!? アンタたちの大部分は当初の時点だと現実世界への帰還を目的として旅立ってませんでしたっけかね確か!?

 

 数少ない例外はキリトさんとか・・・?

 いや、あれはゲーム世界に取り込まれたとは言え機械的なモノでしたし、肉体は現実世界に置きっ放しですし。アリシゼーションの方はもう何が何だか分からなくってましたけど、それでもゲームはゲームって言う前提は守られてたみたいですし参考になりません。

 

 『ログ・ホライズン』は・・・・・・いつ続巻は出てくれるのでしょう・・・? ずっと続きを待ち続けているニワカ読者の私です。

 そして現状、出たとしても読めるかどうか定かでない知識0からの異世界生活はじめたばかり・・・。

 

 

「・・・どうすりゃいいんですか、こんなの・・・。

 こんな事態に陥るなら、もっと80年代アニメのDVD-BOXをたくさん買って視聴しておくべきだったのでしょうか・・・」

 

 そんな風に独り言で愚痴を言いながら、プレイしていた当時は慣れ親しんでいた仕草である、ポケットから紙タバコを取り出して一本咥えてからライターで火をつけるオッサンっぽいモーションを無意識の内に実行しつつ、近くにあった木の幹に寄りかかりながら腕を組んで「スパ~ッ」と煙を吐き出しました。

 

 別段、不良を格好いいと思い込んで勘違いしている中学生ではないですので、この手の仕草を格好付けでやっているつもりはありません。

 『格好つけて見せてるのが逆に格好悪い』を狙ってやってたのです。おかげで結構、笑いをとれたんですよね当時から。

 日常生活で考えすぎてる自覚のあった私としては、ゲームの中でくらいバカやりたくて、こういった仕草をしていたところ、なんか教育関係の人に見られていたらしく一部で物議を醸し出したのがゲームを卒業する理由の発端になってたんでしたよねー、確か。うん、思い出せましたわ。これもそれも今となっては全部良い思い出です。・・・そういう事にしておきましょう・・・。

 黒歴史なんざ掘り起こしても碌なモノが出てこないのは、ムーン・レィスとディアナ・カウンターが身を以て証明してくれているのですからね・・・。

 

「しかし本当にどうしたもんですかね、この状況・・・。

 幸いステータスはプレイしてた当時のまま保存されてて、スキルとかも全部使えるみたいですけど、それを何にどう使えばいいのかサッパリ分かりませんし・・・」

 

 適当にいくつかの挙動を試して、ステータス欄を呼び出し確認しながら困ったように呟くしかない私。

 不幸中の幸いというか何と言いましょうか、律儀な性格だったおかげでネタで作っただけの別アカウントキャラも一応はカンスト近くまでレベル上げてましたし、装備品もコラボイベントとかで手に入れたネタ系が多いとは言え、性能自体は当時の最高水準近くのモノが揃えられています。

 そう簡単には殺されることはないでしょう、多分ですけれども。・・・さっきから多分多いなぁ私・・・。

 

 そうな風に考え込んでいたところ。

 

 

 ガサ、ガサガサ・・・。

 

「・・・ん? どなたかお客さんでもいらっしゃいましたので?」

 

 指でタバコをくわえてスパ~っとかやりながら、音の聞こえてきた方向を見やると少女が一人ボロボロの姿になって肩で息をしながら走ってきたところでした。

 

「えーとぉ・・・、どこのどちら様でしょう? そもそも私の言ってる言葉はお分かりになりま――」

「逃げて下さい!」

「・・・は?」

 

 私は平和ボケして危機意識に欠けると言われている日本人らしい反応を返して、ボケっと間抜け面をさらしてしまったところ。

 

 空から“ソレ”が落ちてきたのです。

 

 ズドォォォォォォッン!!!!

 

「うっ!? ぐぅ・・・っ」

 

 目の前に降下してきた巨大な物体。

 それによって吹き上げられた砂塵と衝撃波から視界を守るために目を手で庇ってガードしてから、改めてソレを見上げてみます。

 

 

 ――如何にもな悪魔さんでした。

 黒い身体で、毛がほとんどなく、頭に牛とか山羊とかバッファローみたいな角が付いてて、航空力学的に見て明らかに揚力不足で重量オーバーの蝙蝠っぽい羽を生やしてる悪魔っぽい生物のナニカさん。

 

 ソレがなんなのか断定はできませんけど、まずは話しかけてみましょう。話し合いは大事です。相手が悪魔だったとして敵対的とは限りません。

 兵藤イッセーに対して「悪魔だから悪とは限らない」とか、そんな感じのことを言ってた露出狂の美人悪魔さんたちもいる世の中ですからねぇ。

 

「・・・あなた方はお知り合い同士の方ですかね? でしたら私としては、お邪魔虫のようですし大人しく立ち去りたいと思っているのですが如何でしょうか?」

『矮小なる人間とエルフの小娘よ。我に血肉を捧げよ』

「・・・あん?」

 

 ウワゥゥゥゥッ!!!

 

「っ!?」

 

 ぶっとい腕を振るって、問答無用で振り下ろしてくる悪魔らしく悪だった悪魔さん!

 慌てて私は両手を交差させてガードして・・・・・・・・・弱っ!?

 

 え、何この悪魔さんの攻撃。まるで痛くもなんともないんですけど・・・遊んでたりします?

 

『ウワォォォォォッウ!!!』

 

 真っ赤な目を輝かせて、口から気炎を吐き出しながら雄叫びを放つ悪魔さん。

 ・・・うん、こりゃあ遊びじゃありませんね。ガチです。完全に本気で殺しにかかってきていて――この程度のザコなのでしょう。

 

「・・・なるほど。では警戒も遠慮も無用というわけですか。

 話し合いを求めている相手に問答無用で襲いかかってきたのは貴方の方なんですから、死ぬ間際にみっともない言い訳とかしないで下さいね?

 不快感を刺激されて、余計に殺してやりたくなって仕方がなくなってしまいますので」

『ウ、ウボォワァァ・・・・・・?』

「では・・・・・・進軍を開始します!!! 突撃―――――っ!!!!!」

『ゴバァァァァァッ!?』

 

 私はナベ次郎をプレイしていた当時のことを思い出しながら、懐かしさに胸をトキメかせながら、まるで乙女のような夢見心地の中で仲間たちとともに過ごした輝かしい黄金時代の記憶に浸り続けるのでした・・・・・・。

 

 

 

「突撃! 突撃! 突撃! 突撃! 突撃! 突撃! 突撃! 突撃! 突撃! 突撃!

 突撃! 突撃! 突撃! 突撃! 突撃! 突撃! 突撃! 突撃!

 突撃ぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

『ゴバァッ!? グベァッ!? フゴハァッ!? グベバラバァッ!? ちょ、ま、助ケ・・・』

 

「降伏は許しません! 泣くことも泣き言も不許可です!

 最後のHPが0になるまで戦って敵の攻撃に斃れるのであれば、それこそ名誉の戦死というものです!

 そうなれば英霊として貴方の魂は未来永劫、人々を見下す悪魔の王様と共にあることでしょう」

 

『フベッ!? ホゲッ!? グゲッ!? しょ、しょんな理屈が――グベハァッ!?』

 

「名誉でしょう? 感謝なさい。感動の涙と共に打ち震え、魔王様万歳と叫びながら頭を垂れなさい。

 名誉を望んで希うのです。――――そしてぇぇぇっっ!!!!!

 ヒート・エェェェェェェェェンド!! ですぅぅぅぅぅぅぅっっ!!!!!」

 

『ギャアアアアッ!? 頭蓋骨が握りつぶされる激痛でメチャクチャ痛いぃぃぃぃっ!?

 ちょ、ま、本当にこの死に方は不味・・・・・・グゲギャァァァァァァッッ!!!???』

 

 

 グシャアァァァッ!!!!!

 ブッシュゥゥゥゥゥゥッッ!!!!!

 

 

「・・・ふぅ。また無益な殺生をしてしまいましたか・・・。私もつくづく業深い愚民の一人だと実感させられるのは辛いところです・・・。

 さて、娘さん。大丈夫でしたかね? 怪我とかしてらっしゃいませんでしょうか? 動けないようでしたら手をお貸ししますよ?」

「・・・ま、ま・・・」

「マ?」

「魔王様・・・殺さないで下さい・・・滅ぼさないで下さい・・・ボクは美味しくありませんから挽肉にしないでくださいぃぃぃ・・・うわぁ~ん、エンエン・・・ぐすん」

 

 なぜに? 助けてあげましたのに魔王呼ばわりされた挙げ句この扱い。

 この素晴らしい勘違いをしてくる異世界に常識を。

 

 

*注:妥当な評価です。

 

 

 

つづく

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