試作品集   作:ひきがやもとまち

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出来れば他のを更新してから出したかったのですが、手早く完成できるヤツの候補がなかったので更新です。
『モブセカ』二次作の最新話。……しょうじき終り頃が雑になったのが無念な回です…。


この乙女ゲー世界は、女子でも引きます 9章

 

 悪役令嬢のアンジェリカさんから、攻略対象のムカつくイケメン共に投げつけられた決闘申し込みに便乗して、俺たちバルトファルト兄妹も代理人として決闘に参加することに自主志願してから数日ほどが経過していた。

 

 とはいえ、ブラッドとかグレッグとかは伯爵家の跡取り程度だから大丈夫そうだとしても、王太子の乳兄弟とかいうジルクやら国の王子なユリウスなんかだと、流石に身分が高すぎちまって学生同士の決闘だろうと、勝ってしまったらコッチが命が危なくなるのは避けられないだろうし、その分の保証だけは早めに公爵令嬢のアンジェリカさんに頼んでツテを用意しておく必要あるんだろうけれども。

 

 それでも流石に、学園からは追い出されるだろうし、婚活地獄から解放されたくてやったって理由が大部分を占めてもいた行動でもあった訳なんだから当然の処置っちゃ当然の結果でもあるわけで。・・・・・・俺たちが学園にいられる時間も残りわずかになったって訳だ。

 どーせ追い出されるなら、最後にムカつく奴らをぶっ飛ばして口実に利用して出て行ってやるつもりだったんだから、そのこと自体に思うところはなんもない。

 

 まぁ、しいて心残りと言えば、師匠からお茶を学べなくなることと、ダニエルとレイモンドとは卒業しても会わない方がいい立場になっちまうこと。

 それに、学生食堂のデザートを全制覇してなかったことも残念な理由の一つではあるよな。

 

 ・・・・・・そんな事を思いながら、自分がけっこう学園生活を楽しんでいたことに気づかされる・・・。

 本当に大切なものっていうヤツは、失ってみて始めて価値が分かるっていうのはホントだったんだなー・・・・・・今さら言っても遅すぎるから別にいいんだけどさ・・・。

 

 そんな風に黄昏れながら、廊下を一人で歩くようになっていた頃だ。

 

 

 

「バルトファルト。それにお前の妹も・・・・・・お前たちは決闘を辞退しろ」

 

 アンジェリカさんから呼び出しを受けて、俺たち兄妹はそんなことを今さら提案されちまってたのは。

 

「はぁ? 今更そんなこと言われたって、俺たち男子にもメンツがありますから立場なくなっちゃいますよ」

「そうは言うがな・・・・・・部屋をメチャクチャにされていたのだろう? 私は実家が公爵家ということで直接被害を与えられることはないが、お前たちは違う・・・。

 私の早まった行動のせいで、お前たちまでヒドい目に遭う必要はない」

「はぁ・・・そう言われましてもねぇ・・・」

「実家からも決闘を申し込んだのは短慮だったと叱責されている。よくて軟禁か辺境送りだ、私にはもう・・・・・・力がな―――」

 

 

『いらっしゃいませ! こちらのお席が空いておりますので、どうぞお進み下さいませ』

『マスター、子爵令嬢様と男爵令嬢様が、プリンアラモードを二つご所望で御座いまーす』

 

 

 ・・・・・・学生食堂で、デザート食い放題の時間にテーブル座って、周囲に色んな学生いまくるようになってる時間帯を、言うべき場所に選ばれてのことだったけどね・・・・・・。

 いやもう、ホントこれ俺でさえ調子出づらい場所で、さっきから歯切れ悪い反応しか返せてない理由の一つになっちまってんだけども。

 ・・・何故こんな場所を、呼び出し受けて応じる場所に選んだんだ、我が愚かなる愚昧レインよ・・・。

 

「――バルトファルト。私が勘違いしてしまってた場合は悪いので、念のための確認に聞くのだが・・・・・・何故、このような話の場に学生食堂を選んだんだ・・・? ひょっとしなくてもバカなのか? お前は・・・」

「いや、俺じゃないですって!? コイツですコイツ! 場所を指定したのはコッチの妹が決めただけで、俺は関わってませんって!

 って言うか、ホントなんでお前は、食堂を場所指定したんだよレインッ!! バカじゃないのか!?」

「失礼だな、兄君くん。

 “せめて学生食堂のデザートを制覇してから退学になりたかった・・・!”という心からなる嘆きを愚痴っていたのは、兄君くんの方じゃないかね」

「いや、言ったけども! いや、言ってないけど!冗談交じりにグチっただけだけども!」

「それに一応ではあるが、変に重苦しい気分にならず、気楽に話せる場所としては最適かとも考えてのチョイスだったのだが」

「・・・・・・たしかに、重苦しい気分にはならずに済んでいるのだがな・・・・・・重苦しい気分にだけは・・・」

 

 はぁ~と、眉間に片手を当てながら溜息をついて、チラッと哀れみの視線で見られちまう俺たち転生者兄妹。

 破滅しか待ってない悪役令嬢からさえ哀れまれちまった、俺の立場っていったい・・・。

 

 とはいえ流石に場が場ではあったし、話題が話題でもあった上に、もともとの原因が自分なのも理解してはいるらしいアンジェリカさんだったようでもあり。

 

「・・・・・・コホン。どこまで話したんだったかな、そう。

 ――決闘の勝敗に関係なく私への処遇は、よくて軟禁か辺境送りだろう。

 私にはもう、お前たちからの貢献に相応しい恩賞で応えられる力はない・・・・・・だから――」

「あ~、その、アンジェリカさんは何か勘違いされちゃってません? 俺たちが公爵家に取り入りたくて、今回の件に自分から関わってきたとでも?

 ・・・・・・って言うか、そんな計算できるヤツだったら、こんな場所で話聞かないでしょ? 普通に考えて・・・・・・」

「う・・・、そ、それは・・・・・・だが、違うのなら何故あのとき名乗り出てくれたのだ? お前たちにとっては、ほとんど面識すらない私の決闘代理でユリウス殿下たちと戦う危うい役などに何故っ」

「ハッ、もう婚活に疲れただけですよ・・・だからいっそ、嫌いなヤツらをブン殴―――」

 

 

『ちょっと、そこの使用人! コレはどういうことですの!? ケーキの中に髪の毛が入っていましてよ! この食堂は貴族に対して、こんな料理を出していらっしゃいますの!?』

 

『も、申し訳ございません伯爵令嬢さまッ! ですが、そのお櫛は長さから察しますと、伯爵令嬢様ご自身のストレートで綺麗な髪が入ってしまったのではと・・・・・・』

 

『まぁ!? わたくしが悪いと言いますの? この名誉ある伯爵家令嬢である、この私が!

 あなたでは話になりませんわね! 誰か、シェフを呼んできなさいませ! この食堂のお菓子作りを担当しているシェフと、パティシエ~ルをッ!!』

 

 

 ・・・・・・だ・か・ら!

 なんで、こんな場所を話し合いの場所に選んじゃってんだよ!? こ・の・愚・昧・は!!

 おかげで途中途中で他人様の注文とか応答とか入っちゃって、上手く聞こえてないじゃん! さっきからず~~~っと!!

 

「ふぅ・・・・・・何となくだが、お前たちが私の決闘代理人を引き受けてくれた理由が分かったような気がしてきてしまったよ・・・」

「いや、しないで!? 今の流れで納得されちゃうと逆に俺の方が取り消しを求めたくなっちゃうからホント辞めてくださいお願いですから!

 そ、そんなことより責任感じてくれるんでしたら、別のことお願いしたいので、ソッチさえ了解してくれたら俺たち兄妹に悔いはありません! 全力で戦わせてもらいますよ!」

「願い・・・? なんのことだ? 私にできることなら彼の運限り配慮するつもりだが―――」

 

 

『メガ貴族デラックスジャンボパフェお待ち! どこのテーブルのお嬢様からの注文でございましょうか~!?』

 

「ああ、吾輩の注文ができたようだな。マスター、チーップを一つ」

「って、最後の注文はお前かー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・混沌とした、そんな会話を交わし合ってから数日の時が流れ。

 ついに私たちは、その日を迎えることになる。

 

 

 ――ワァァァァァァァッ!!!

 

『殿下~♡ 素敵なお姿です殿下~~~ッ♡♡』

『キャーッ☆ 殿下ー、頑張ってくださ~~~ッい♡♡』

 

 

 訓練用の円形闘技場を貸し切っての決闘に、満席になるまで観客として集まった生徒たち。

 その声援が主に少女たちのものが多いのは、ただ女性優遇という国の伝統的制度だけが理由というわけではない。

 

 ・・・・・・正直言って、婚約者である私レッドクレイブ公爵家の娘『アンジェリカ』にとっては、立場的に甚だ遺憾な部分ではあるのだが・・・・・・。

 彼女たち、直接的に決闘の勝敗が影響しない女生徒たちにとって、殿下を目当てとして集まった者たちが大半なのだろう。その気持ちは、バルトファルトには悪いとは思いながらも分からないわけではない。

 

 所詮は彼女たちのとってこの決闘は他人事でしかなく、自分たちが好意を寄せている相手を恋愛感情を理由に贔屓して応援するとしても、それを責める謂われは不本意ながらない。

 

 だからまだ彼女たちからの応援は分かる。理解できる。

 ただ私から見ても不快感を刺激され、許容しがたいものを感じさせられているのは女子生徒たち以外から殿下に送られる声援の存在だった。

 

 

『くたばれー! 成り上がり男爵ーっ!!』

『引っ込めー! バルトファルトー!!』

 

『『『負ーけーろッ! 負ーけーろッッ!!!』』』

 

 

 女生徒たちの声援に負けぬほどの声量と勢いで叫ばれている、男子生徒たちからのバルトファルト兄妹へのヤジ。・・・そちらの方が腹立たしい。

 

 立場で考えても、殿下の勝利は彼らにとって何らの得をもたらすものではないはずだった。むしろ同じ低い身分の男子生徒同士としてバルトファルトの兄を応援する者が一定数はいてもおかしくはない・・・・・・そう思っていたのだが、決闘当日になって会場を訪れた私の予測は完全に裏切られることになる。

 

 この批判の嵐は、あの二人の言動が『被害者』のイメージには合わなかったという事情も関係しているのだろうが、それ以外の理由がブーイングの嵐を起こさせる理由になっているという事実を、私は既に取り巻きになってくれている少女たちを使って把握している。

 

 彼らが着ている制服の左胸ポケットから覗いている、青と赤の紙切れ・・・・・・。

 殿下を現す青色と、バルトファルトを現す赤色。生徒たちの間で、この決闘の勝敗を巡る賭けが非公然におこなわれているのだ。

 

 ただでさえ私にとって、殿下との婚約破棄がかかった決闘を金儲けのダシに利用されることは不快なものだったが、仮にも王家の一員による神聖な決闘を賭けに利用して、なんら思うところを感じていないらしい生徒たちの不敬ぶりを見せつけられ、呆れるより先に微かながら恐怖を感じさせられる程だった。

 

 ・・・・・・あまりにも国家への忠誠心と、貴族としての倫理観が薄れすぎている・・・。

 自分たちさえ個人的に得ができれば、王家や公爵家だろうと他人事ならどうでもよいという発想が蔓延りすぎているのだ・・・・・・。

 

 この貴族子弟たちによる精神的腐敗が、いつか国を亡国へと陥らせる理由になるのではないか・・・・・・? そんな可能性上の恐怖心を私が思わず感じてしまい、唖然としていた時のことだった・・・・・・

 

 

「おおぉ~、流石は王子様たち専用機ってとこかな。派手なカラーリングだ」

「・・・あ」

 

 背後から声が聞こえてきたので振り返ると、そこにはヨロイ搭乗時にまとうスーツ姿になったバルトファルトと妹の二人が、反対側の位置に整列している殿下たちの機体を見上げながら楽しそうな声を上げていた。

 その声を聞かされて私もハッとなり、自分が気にすべきことは別にあったことを思い出し、一時でも失念していた自分を恥じて赤面する想いに駆られざるを得ない。

 

 そうなのだ・・・今の私が気にすべきなのは未来に起こりえる危機に対してではなく、自分が感情に駆られて始めてしまった行動に巻き込んでしまった二人の少年少女たちの勝敗と安全こそ懸念すべき問題だったはずではなかったか。

 彼らは自分たちに何らの得もない、実家からもキツく叱責された私などの為に決闘代理人を引き受けてくれた者たちなのだから、彼らの貢献に報いる責任と義務があったはず。

 それを一時だけでも忘れてしまうとは・・・・・・なんたる不覚! それとも、そこまで私は精神的に切迫していたという事なのか・・・。

 

「ふむふむ。赤、白、緑に水色、そして紫・・・・・・とりあえず定番どころは揃っている配色だね。

 あと残っているのは、黒と黄色あたりが途中から加入する感じかな?」

「そうなんじゃね? あとまぁ、あんまソッチ系のは詳しくねぇけど、最近のはゴールドとかシルバーとかプラチナなんかも偶にいるらしいけど、ジャンル違う世界観だからなぁ」

「女子メンバーが増えた場合は、お色気担当ピンクが期待できたわけだが・・・・・・今のところ最有力候補がアレだからな。仮にピンクになったときには規制がかかりそうな見た目だし、一部の人たち用の同人向けになりかねん。この辺りで妥協しておくべき問題か・・・・・・無念」

 

 ・・・・・・そして何やら意味不明な、それでいて怪しげな感じのする会話を兄妹二人だけで進め始めるバルトファルド兄妹だったが・・・何故なんだろうな。

 聞いたことのない単語ばかりで私には全く何を言っているのか分からなかったにも関わらず―――凄まじく汚らわしくて近寄りたくない感情を衝動的にスゴく感じてしまっている自分がいる・・・。

 

 彼らは恩人なのだから、こんな事を思ってはいけないと分かってはいるのだが・・・分かってはいるのだが何故か! 何故こんな気持ちをいだしてしまうのだ私は!?

 これではいけない! 名誉あるレッドグレイブ家の名にかけて! こんなことでは・・・こんな事では~~~~・・・・・・ッッ

 

「そ、そうだバルトファルド兄妹! ヨロイ! ヨロイがどこにも無いじゃないかッ!」

 

 思わず誤魔化しもあって叫ぶような言い方になってしまった私だが、言った内容そのものには現実に恐怖を感じているものだった。

 彼ら用のヨロイが、試合会場のどこにも見当たらないままであることが、その理由だった。

 てっきり本人たちが乗って登場してくるから、今は無いだけだと思っていたのだが、本人たち自身が手ぶらで入場してきたからには、その可能性は潰えたことになる・・・・・・じゃあヨロイはどこにあって、どうやって彼らは殿下たちと戦うつもりだと言うんだ!?

 

「大丈夫ですって。ちょっと前に別の作業で使ってたんで、移動させる必要あっただけですから。今ちょうど着いたみたいですし」

「え・・・・・・?」

 

 相手の言葉に私は意味が分からず首をかしげる。

 移動させる必要・・・・・・ということは、機体だけを別の場所から会場内へ運び込ませる手はずが整っていたと言うことになるのか?

 そういう機能もヨロイにはあるものもあると聞いたことはあるが、そんなもの一男爵の資産で賄えるものとは到底思えない。使用人に乗って運んできてもらったということなのだろう。

 

 だが一体どこから――――そう思ったときのことだった。

 空から「キィィン・・・」という耳鳴りのような音が響いてきたように感じて上を見上げると――

 

「な、なんだ・・・? アレは一体・・・・・・」

 

 

 空高くから舞い降りてくる巨大な四角い塊を発見したのは、その時だった。

 いや・・・四角い塊に見えたのは距離があったからで、高度が下がってきて近寄ってくると、それが巨大な人型をした物体であることが分かってくる。

 

 エアバイク用のヘルメットに似た形状の頭部と、ズングリとした鈍重そうで無骨な胴体。

 漆黒と言うより鉄色とでも表現した方が適切そうなカラーリングで全身が覆われている、巨大すぎるバックパックと太すぎる四肢を持った、一見しただけでも機敏さとは無縁としか思えないデザインの・・・・・・そんな―――『時代錯誤な骨董品もどきのヨロイ』

 

 それが空から降りてきた物体の正体だった。

 

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぷっ』

 

『『『アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!!!!』』』

 

 

 そして当然の反応として、爆笑に包まれる会場内の観客席・・・。私としても、これはフォロー仕切れそうにないな・・・。

 まさか、よりにもよって《ロスト・アイテム》と思しきヨロイを使うつもりでいたとは・・・・・・まるで戦争博物館のような代物で、殿下たちの使う最新型と戦うつもりでいたなんて!

 

「お、お前たち・・・本当に、コレで戦うつもりなのか? あの殿下たちが使っている機体は最新鋭機なんだぞ!? それなのに――っ」

「まっ、見ていてくださいよ。見てりゃすぐに分かりますって」

「その通り。大丈夫です、何の問題もありません」

「・・・・・・いや、そのセリフは負けるときの言葉だから。死亡フラグじゃねぇか。わざと言ってんじゃねぇよ愚昧」

「テヘペロ☆」

「セリフと仕草だけ可愛く言っても可愛くねぇよ! 中身真っ黒だと分かりきってる見た目だけ女の表面だけ可愛い仕草なんて恐怖しかないだろうが!! 何するつもりだテメェはーッ!」

 

 そして更に試合開始直前の状態で、兄妹たちがまさかの仲違いとは・・・・・・この決闘の勝敗、一体どうなってしまうのだ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなことを懸念されてしまっていたことを、試合終了後にアンジェリカ女史から聞かされることになる吾輩たちバルトファルト転生兄妹による、原作主人公率いる愉快な攻略対象チームによるロボットバトル決闘戦。

 

 この世界でのロボット戦――ヨロイを使った戦いでは、『スピード重視の高機動型』が主流となっているという設定で、『重々しい機体は流行遅れ』として蔑まれている傾向にある。

 先ほど兄君くんの愛機《アロガンツ(ルクシオン氏が命名。きっと良くない名前だろう)》が登場してきたときに会場内が爆笑で包まれたのは、そういう政治的背景があっての笑い。

 

 まぁ所謂、『当たらなければどうという事はない!』と語った、赤いエースの格言が広く信じられて浸透するようになったのが、この世界におけるヨロイバトル。と言ったところなのだろう。

 

 ただまぁ実際には、言われた方は当たって一撃で撃墜されてたし、赤い人は当たらなかったけど赤い人だけが平気だった理論だし。

 新しい環境に適応して、キュピーン☆と光って敵の攻撃を感知できるようになった新たな人類のタイプ能力を持ってる人達だったら正論になれる名言だったとは思っているのだが・・・・・・この世界の人達的には『一般兵でも通じる正しい理論』として罷り通ってるみたいっぽい。

 

 

『やあ、逃げずに出てきたみたいだね。褒めてあげよう。

 だが、その旧式の機体でボクに勝てるとでも?』

 

 

 案の定、プリンス戦隊パープルもとい、《ブラッド・フォウ・フィールド》からかさにかかったような言葉、もしくは最初の敵ボスの悪役が言いそうな定番セリフを語りかけてこられる兄君くん。

 なんかもう、このセリフ言ってる時点でブラッドの負けが自ら確定されたような気もするが・・・・・・何事も油断は禁物というもの。不覚を取って負ける可能性も少しぐらいはあるはず。

 

 何事も、中盤の小悪党っぽい性格最悪な中ボスが、なぜか一番強い敵キャラになりやすいのはバトルの常識。

 意外にブラッドがそれかもしれない。決して侮る事なく戦って、勝利をもぎ取って欲しいもの。

 

 

 だが―――しかし!!

 

 

 

『見たまえ、名工オルトエンテに造らせた機体を。スピアには《テトリウム》をふんだんに使って魔力伝導率を高めている。

 一撃で仕留めてあげようっ! 死へぶぅぅっし!?』

 

 

『次は俺が行こう。ブラッドは所詮、軟弱ヤロウ。

 バルトフェルト、お前は自分の力で勝ったんじゃない。ヨロイの力だ!

 ぶっ潰グッハァ~~ッ!?』

 

 

『バルトファルトっ。騎士道の欠片もない、こんな戦い方で満足か? 

 私は前の二人のように油断はしない! 最初から全力で飛び道具とは卑怯だぞォォォッ!?』

 

 

 

 アッサリと三連勝できてしまっただけで終わる戦いだったな・・・・・・ヤラレ役感満載過ぎる攻略対象イケメンたちだった・・・。

 油断してる余裕もなく、赤い人に初戦で沈められた船の人達のごとく本当にアッサリと良いところもなく見せ場もないままに・・・・・・何しに来たんだコイツらは感満載過ぎるヤラレっぷりだけは立派な戦闘員だった。

 

 あの緩い乙女ゲーをプレイする女子の3分の1ぐらいが愛したかもしれない『ブラッド・フォウ・フィールド』と『グレッグ・フォウ・セバーグ』と『クリス・フィア・アークライト』は死んだ。

 いや正確には死んでないけど、現実世界だったら社会的に死ぬぐらいに無様な負け方を晒した。何故だ!?

 

 

 ・・・・・・まぁ、兄君くんの方が現時点では強すぎたというのが一番の勝因だった訳なのだがな。

 とはいえ、負けた側にも責任がないわけではない。と言うか非常に多い。あり過ぎだ。

 

 

 ブラッドは魔術師タイプで、遠隔射撃ドローン攻撃使いながら何故か自分も突撃してくるし。

 グレッグは敵だけじゃなく、敵に敗れた味方もザコだから負けただけと舐めプしまりだし。

 クリスは、それ一番最初に敗れた恋のライバルに言ったら怒られる発言して、味方同士の不和晒すし。

 

 

 

 ・・・・・・あまり完璧すぎるとプレイする側がいたたまれなくなるから、欠点とか弱点ある方が安心して攻略できる前提なのが乙女ゲーの攻略イケメン対象たちとはいえ、これは酷い。酷すぎる結末だった。

 

 挙げ句の果てにグレッグに至っては、戦いに負けた後にも往生際悪く。

 

 

 

「テメェ、いたぶって楽しいか!? ヨロイのおかげで勝ってるくせにー!!」

『・・・・・・いや、女の子一人からの決闘に男5人がかりで寄って集って虐めてたアンタに言われたくないんだけど・・・・・・』

「ぐはぁっ!?」

 

 とか言い出して、自ら自爆発言かまして自主的にトドメ差される始末。

 兄君くんの方も、特に言うつもりがあって言った言葉だった訳ではなく、思わず言ってしまっただけのツッコミ発言だったようで、『あ、やべ。つい思ったことが』と、コクピット内での会話を私も共有できるよう耳元につけたヘッドセットからだけ、そんな呟きが聞こえてくる。

 

「はぁ・・・はぁ・・・、ま、まだだ・・・・・・まだオレは負けてないッ。いや負けない!

 たとえ生身でも死ぬまで戦ってやるッ!! さっさと掛かってこーい!!」

 

 そして、まだ諦めずに鉄骨もって白兵戦挑んでくる自称武人。

 ジオンの人達でさえ真っ青なほどの諦め悪さだった。・・・武人の誇りはホントどこ行ったのだろう本当に・・・。

 

「・・・・・・いや、負けてるでしょ普通に。ヨロイのおかげで勝ったも何も、戦う前には逆のこと言ってたのが、負けた途端に手の平返しで屁理屈とか、口喧嘩でも負けまくってるし。

 少しは潔く、自分の発言に責任をもつ武人の生き方はできないのか? ――このクズ」

「ぐ、へッ!?」

「大体なんですか? その機体の修復箇所は。歴戦の勇士感を出してアピールですか? わざと顔に頬傷つけたままにして、戦う前にオレは強いぞ怖いぞと脅すための小道具に? 

 ハッ!―――チンピラが・・・・・・」

「ぐへほぐぅっ!?」

 

 そして兄君くんの戦いを後方支援するために、細やかながら小さな言葉の投石をするぐらいしか出来ないながらも、精一杯頑張る兄思いで健気な妹の私。

 だが敵は敵でしぶとい。そう簡単には負けを認めず、敗れた後も抵抗運動し続ける辺りは流石にレッド。

 古来より赤いヒーローは、何度負けても決して敗北を認めることなく、生きてる限り何度でもパワーアップして蘇り、自分を倒した敵を必ず倒しに戻ってくる存在。

 

 もはやゾンビなのが、ヒーローでありレッドというモノ。

 ヒーローものやバトルものという奴は、よく考えてみると主人公視点ではホラーになりやすいのが昔から続くヒーローの伝統。

 

 

「く、クソ・・・ぉ・・・ま、まだだ・・・・・・まだオレは、負けて・・・ない・・・ッ。

 たとえ試合に負け、ても・・・・・・勝負に・・・・・・勝つッ!!」

 

『いや、負けてるだろ勝負にも。って言うかお茶会でもないのに、女の子相手に口で勝負しといて勝ち負け言ってる時点でダメだろ、お前。ザコ過ぎるにも程がある』

 

「ぐっはぁぁぁぁぁ―――――――――!!??」

 

 

 そして兄君くんからの妹の支援に応えての追加攻撃。

 まさに兄妹の絆による勝利だった・・・・・・自分一人の力のみを信じた弱肉強食の赤き騎士は、親の血より深くて強い兄妹の血の繋がりパワーに敗れ去ったのである。

 しょせん人は一人では生きられない・・・・・・そして荒野を走る死に神の列は黒く歪んで真っ赤に燃えるのだ。自分でも訳わからんけど、きっとそうだ。

 

 

「お、オレは・・・・・・踏み台だったの、か・・・・・・・・・・・・ガクリ」

 

 

 ・・・・・・ふむ。

 

 

『うわ~、酷い勝ち方するなぁお前って。俺でも流石に、そこまではやらんかったわぁー。やろうとか考えたこともなかったわー。俺でも流石にグレッグに同情するレベルだったわー。酷いわ~、残酷だわ~、男には優しく同情して接してやるもんだぞ妹よ?』

 

 

 そして勝った後に裏切られるのも、また私系キャラの宿命。

 しょせん血の繋がりパワーなんて、こんなものだと分かってるから良いのだがな。面白いし。

 

 

つづく

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