試作品集   作:ひきがやもとまち

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昨日から他の連載作を執筆中だったのですけど、帰宅途中で急に閃いたのがあり、一先ずソレを形にするのを優先して作った作品です。

【ぼっち・ざ・ろっく!】と【あっちこっち】という作者が好きなきらら作品を合体させた二次作。
ただ「ぼっち」の方はブームに乗ったニワカですので、合わなそーな方は避けるのをお勧めいたします。


ぼっちこっち

 

 

『かくれんぼ、する人こ~の指とーまれっ』

 

 

 ・・・・・・今思えば、その言葉から私のボッチ人生は始まっていた気がする。

 自分なんかが、その指にとまっていいのかどうか・・・・・・そう悩んでる内に乗り遅れて、気づいたときには遠足で先生とオカズを交換している一人ぼっちな女の子に成長していた私。

 

 それから数年、

 

 

『・・・学生の頃は、教室の隅っこで本読んでるフリしてる奴でした・・・友達いなくて。

 まぁ・・・バンドは陰キャでも輝けるんで』

 

 

 部活も入らず、放課後は即帰宅、スマホに届くのは親からのメッセージとクーポンのお知らせだけという中学生になっていた私は、テレビで耳にした言葉に飛びつき、アッサリと『バンドやれば皆からチヤホヤされるかも!』という甘い夢に乗ってしまった私がいる。

 

 改めて思う。・・・・・・な~んで、あの話の時には、自分なんかが輝けると思って飛びついて、悩む間もなく乗っかっちゃってたかな私、って・・・・・・今でもたまーに、そう思っちゃう時あるんだよね、今でもたまに・・・。

 

 

「・・・帰りたい・・・・・・私みたいなイモ娘が入って、『なんだコイツ?』って目で見られたくない・・・・・・。

 帰っていいかな? いや、行くって言っちゃったし・・・。でもやっぱり帰った方が、いやでも、帰る、帰らない、帰る・・・・・・」

 

 プチリ、プチリと、その辺に咲いてたお花を使って『帰る・帰らない』の花占いをやりながら、私は必死に後ろへ戻ろうとする足をライブハウスの前に引き留めるよう努力して―――あ、『帰らない』で終わっちゃった・・・・・・次の花を探さないと。止まり続けるためにも、お花も、お花を・・・。

 

「はぁ・・・家族以外から初めてもらったLINに浮かれてやってきちゃったけど・・・・・・一人で入るのは、やっぱり難易度高すぎるんだよなぁ、こういうオシャレすぎる店って・・・。

 前は虹香ちゃんと一緒だったから入れたけど、私一人だと・・・・・・ハァァァ~あぁ・・・」

 

 オシャレタウン下北川にあるライブハウスの入り口前にあった階段に座り込んで、今日何度目かのため息をつく不審者気な言動してる女の子。

 それが私、『後藤ひとり』高校一年生。友達はない。

 

 少し前に、友達できないままでブルーな気持ちになって町で落ち込んでたところを、たまたま出会った『伊地知虹香ちゃん』から「臨時のギター代わりを探している」って言われて、なんやかややってる内に私も入る事になったらしい彼女たちで結成された《結束バンド》

 

 いや、イヤだったわけじゃない。それ自体はイヤじゃなかったし、むしろ嬉しかったんだけども―――ずっと一人きりだったボッチには他人と一緒のバンド活動はハードル上がってるのも自明の理なわけで・・・。

 

 ・・・・・・今思えば、最初に影響受けてギター始めた切っ掛けになったテレビの人の言葉だって、人気出すために言ってただけの可能性だってあったんだし、『昔はボッチだった僕も今輝いてます(きらん☆)』ってアピールしたかっただけかもしれないし・・・。

 私みたいな本当のボッチと、あの人みたいな『ボッチだった過去を持つ人気者スター』とでは最初から住む世界違うんだから、混同しちゃいけなかったんだよなぁー・・・・・・。

 

 あー・・・やっぱり帰りたい、胃が痛い・・・お腹も痛いし頭痛も感じてきた気がするし、なんか段々と胸の辺りがジクジク圧迫されてるような脈拍と動悸が・・・・・・で、でも誘ってくれた虹香ちゃんに悪いし、勝手に帰っちゃうのはちょっと・・・・・・。

 

「う、うぅぅ・・・い、胃がぁぁ・・・・・・ああ、せめて・・・、せめて帰るための口実か、入れる口実のどっちかさえあればなぁ~・・・」

 

 せめて誰か、お客さんか店員さんが私の前に入ってくれたら、便乗して紛れ込んで、ソッチに挨拶している隙に店の奥まで退避する事ができるんだけど・・・。一緒にはいる人に注目集まってるのを盾にして、影になって目立たない日陰者としての入店が可能になるのだけれど!

 ・・・・・・でも今、開店時間よりずっと前なんだよなぁー・・・。

 ああ、誰か来てほしい、入ってほしい・・・・・・もしくは帰ってこうとする店員さんに出くわしたい。

 店員さんが帰ってるの見たから今日は休みだと思っちゃった理由のために、店から帰る店員さんが出てきてほしい・・・。

 

「あぁ~・・・・・・誰か一緒に入ってくれそうな人、現れてくれないかなぁ・・・・・・ん?」

 

 そう思いながら溜息をついた私の前に、一つの人影が入ってきた気がして顔を上げる。

 眼前には確かに二足歩行する人影が立っていて、扉を開けてお店の中へと入っていく――

 

 

 

 一頭の、【クマ】の姿が見えました。

 

 

「って!? え!? クマ! え? 猛禽類!? なんでッ!?」

 

 慌てて混乱する私! だってクマだし! 猛禽類だし!

 そんな生き物が、なんで人里の町の中に! しかもライブハウス『スターリー』の中に! なんで!?

 

 い、いや落ち着け私! まだ慌てるような時間じゃないはず・・・・・・だってクマだし!

 クマは猛禽類! つまりボッチ! 違ったかもしれないけど、孤高の生き物だから、きっと猛禽類!

 ボッチだからクマさんは、ボッチの私が入った結束バンドがライブするお店に入っていって、ボッチの熊さんが入った店ならボッチの私だって入る資格があ――って違う!

 落ち着け! 落ち着くのよ私! 話せば分かるわ! 私だって人から話されたらメチャクチャなこと考えてるって理解できるはず!

 だってクマなんだから! 猛禽類のクマは交尾だってするんだから! 奥さんと子供がいるリア充クマさんと私では並び立つのも烏滸がましい絶対的な差が存在するに違いない!!

 

 ・・・・・・あ~、そう考えたら落ち着いてきたわ。頭冷めて冷静さが戻ってきましたよ・・・。

 うん、やっぱり私はクマ以下のボッチなんだね。クマよりリア充じゃない私には、クマさんが入っていった店に入る資格なんてあるはずないし、クマさんに失礼のないよう帰るしかないよね、うん。

 いや~、良かった良かった。帰ろ帰ろ、ク~マさんが来たから帰~えろ、っと――

 

 

「あれ? 後藤さん、こんな店の前でどうかした?」

「ふべっはぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

 そして振り向いた先で、いきなりイケメンの顔がァァァァァァッ!?

 しかも眼鏡が! 爽やか雰囲気が! 黒髪が! ちょっと悪い角度の目つきが! 頭頂部でミョンミョン揺れてる特徴的な髪型がぁぁぁぁぁッ!!!♪♪♪

 

 

「あ~・・・、ひょっとして音無くん、ボッチちゃんと知り合いだったりした? なんか声かけにくい間に先越されちゃって、どーしようか悩んでたところなんだけど・・・お邪魔だったりとか?」

「伊地知さんに、山田さん。って言うことは、昨日言ってたバンドの新メンバーって後藤さんのことだったのか?」

「・・・ん。相変わらず見事な、隙間からナチュラルに入り込む能力に茫然自失していたせいで、何かする余裕が微塵もなかった。決して面白かったから放置して見物してた訳ではない」

「オース。言われたとおり伊御と一緒に、ライブ準備の手伝いしに来たぜ~。

 だってのに、なんだなんだ? 伊地知に山田に後藤まで集まって修羅場でもやってんのか? 後藤は見た感じからして奥手だから、男からエスコートしてデートには誘ってやらなきゃダメだぜ伊御」

「で、ででで、デートぉぉぉぉぉぉッ!?」

 

 あっと言う間に、モノすっごいリア充用語を連発する、リア充の皆様方が勢揃いしまくる場所に早変わりしちゃってるー!? メッチャ私だけ場違いすぎるんですけど~!?

 ごめんなさいごめんなさい! 皆さんみたいな顔もスペックも何もかも優れまくった尊き方々が集まられる場所に、神殿に! 私みたいなイモ娘でボッチの部外者が入ろうとして穢しちゃいそうになってました!

 二度と聖域には近づくことなく、ボッチに相応しい暗くてジメジメした静かなる地下空間か物置に閉じこもって、一生涯ここには1ミリたりとも接近しないことを誓約いたしますので、どうかお許しを! ――って、言いたいのにリア充たちと喋るの初めて過ぎて声が出ない!?

 喋るだけでも先日の虹香ちゃんが久しぶり過ぎてたレベルなのに、リア充男子たちがいる空間で会話なんて無理! こんなオッサレ過ぎるリア充スペースに紛れ込んでしまった異分子たる私にできることはもう・・・・・・コレしか、無いっ!!

 

「す、すすすす、すみませぇ~~~~~~ッんでしたーーーーーッ!!!」

「あ、ちょっと待って後藤さんッ」

 

 ダーッ!と全速力で駆け出して、この場から一秒でも早く! 光の速さで逃げ出すしか分相応な対応は私には他にないと確信して脇目も振らずに駆け出す自分!

 なんか後ろからリア充からのリア充な呼びかけセリフで引き留めてる気もしたけど・・・・・・錯覚よ! いえ、幻聴に違いない! そう思って明日からも生きていこう!

 なぜなら私はボッチ! 彼らとは住む世界が違う! 違いすぎる! あんなオッサレでキラキラしてる人たちと一緒の空間にいて私が私で居続けられる可能性なんて万に一つもあるわけなーし!!

 

 だから失礼しました! さよーならぁぁぁぁ!! お元気にお達者でぇぇぇぇぇぇぇッ!!

 

「待ってくれ後藤さん! 頼むから待って!!」

 

 ガシッ!!

 

「・・・・・・あ」

 

 今・・・音無くんの手が、私の左手をソッと掴んで優しく包み込むように触れてくれて・・・

 それだけで私は・・・・・・これ以上、走り出すのが不可能になるぐらいに胸が温かくなって、心臓の鼓動が激しく高鳴って、胸の奥がキュ~っと絞まってくるような感じがして、それで・・・・・・

 

 

「・・・・・・キュ~~~・・・・・・(バタン)」

「ちょっ!? なんでボッチちゃんがいきなり倒れるの!? なんかよく分かんないけど救急車ー! 救急車ー!?」

「うおぉい!? 少しヤバい顔色になってないか!? しっかりしろ! 傷は浅いぞ後藤ー! 衛生兵! 衛生兵ーッ!!」

「う~む、見事なラブコメの運命が始まる最初の出会いシーン。やはりやる奴だな君は、グッジョブだぞ音無くん」

「・・・・・いや、そこは心配してあげて、せめて店の人を呼んできてあげようよ山田さん。俺が運ぶと体に触れなくちゃいけなくて、後藤さんに失礼かもしれないんだから・・・」

「はにゃ~? 呼んだかにゃ? 呼ばれて飛び出て店内からドロン♪ わたし特製『パワード熊スーツアーマー』を装着したフルアーマーまよいさんがって、何じゃコリャー!?」

 

 

 ・・・・・・こうして、ボッチだった私がバンドに入って、メンバーと過ごす二度目のイベントは始まった途端に微妙に終わりを告げなくもなかった・・・。

 この後に私たちは、私なんかとは住む世界が違いすぎる人たちのとの差を、精神的にも人間関係的にも、物理的に物理法則を突破するレベルで思い切り思い知らされまくる高校生活の始まりにもなっていくのだけれど・・・・・・それは今の私には知りようもない、想像を絶する人間を超えたパワーを持った高校生たちの日常生活ワールドの未来。

 

 とりあえず、今の私に言えることは一つだけ。

 ボッチだった私が、偶然にも誘われて入ることになったバンドのメンバーたちは

 

 

 ・・・・・・私が高校入学直後に親切にされて一目惚れした男の子の友達だったみたいです・・・。

 それを認識した上で改めて思う。

 

 

 ・・・・・・恥ずか死にたい、と・・・。

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