試作品集   作:ひきがやもとまち

214 / 246
最近、考える力が落ちてるのか、考えまくっても碌なの思いつかずこんな時間に…。しかもまた試作品集の更新…。
どうにもオリジナリティー衰えてるせいで迷惑かけて申し訳ありません。努力しますので今少しお待ちください。


悪役令嬢レベル99~になっても魔王に勝てるだけで大魔王に歯が立ちません~3話

 入学式が開けて授業初日、登校中の生徒がモンスターに襲われて謎の襲撃を受けるという異常事態が発生した日の午後のこと。

 普通の学校だったら安全第一で休校しそうな事件起きた直後でしたが・・・・・・起きた原因は謎で、襲われた生徒が3人だけで、結果的に犠牲者は1人も出なかったという状況では学校側も判断つかずに通常通りのスケジュールを実行しやすいのが、平和な時代に国を支える官僚育成学校というもの。

 

 王立学園はもともと、魔王復活に備える人材育成のため設立された教育機関なのだから――とかの建前を口実として、何事もなく平穏無事なスケジュール通りの授業をおこなう方針を選んでいた。・・・・・・そんな日の午後。

 

 他の生徒たちと一緒にグラウンドへ集まっていたユミエラ・ドルクネスは、訓練用の木剣を掲げながら、動かない無表情な美貌の下で感動に打ち震えていた。

 

 

(フフフ・・・・・・流石です。流石ですね、勇者アリシア。

 まさか、腕も取れず、足も食い千切られることなく、五体満足のまま魔物の群れを倒して、無事にモンスターを倒して教室まで辿り着くとは・・・!

 私は彼女の力を見くびっていたのかもしれませんね)

 

 という様な、自分自身が黒幕として今朝から発動させた、『勇者アリシア育成計画』の好調なスタートぶりに感動して、表面的には変わらないまま内心で打ち震えていたのである。

 しかも、ガチで相手を殺しにかかること前提での強化スケジュールが、当初の予定だったようだ。

 

 自分が近くに隠れ潜んで、命が危うくなった“時だけ”回復してあげる準備はできてる中での訓練だから問題はなく。

 死ぬ寸前まで追い詰められてから勝った方が、ステータスも上がりやすく効率もいい。

 

(仮に身体の一部を失っても、回復魔法でまた生やせばいいと思ってましたけど、これなら予想より早く次の成長スケジュールに移行できそうです♪)

 

 やはりヴァンパイア眷属式の教育法は過酷だった。過酷すぎた。

 がんばれ、勇者アリシア・エンライト。頑張って成果を上げても余計にキツさが増すだけなところが一番過酷な部分かもしれないのが微妙だけれども。

 

 ま、それは心の中の出来事として一端置いとくとして。

 

 

 

「え~、今日はまず皆の実力を確認するために、順番で模擬戦をおこなってもらう事になる。全員に訓練用の剣は行き渡っているな?」

 

 グラウンドに集まって整列していた生徒達に向かって、男性教師の1人が授業の趣旨と方針を説明している声が響いている。

 今日の午後は、新入生たちにとって入学最初の『剣術の授業』を受講することになっていた。

 

 ただ正直なところレベル1の段階では、生徒の適正や向き不向きを判断するのは難しいので、王立学園では一先ず生徒たちを大雑把に班分けして、然る後に適性を見定めてから育てるという教育方針を採用しているようだった。

 

 ユミエラ的には、将来に大きく関わる部分であり、取り返しがつかなくなることも少なくないのが将来を意識しての育成というものだと考えているタイプのため、どちらにするかはよく考えてから決めた方がいいのではと思っていたが・・・・・・他人事な上に身分詐称して催眠術で居候している外国ヴァンパイアがどーこー口出す問題ではなさ過ぎるので、黙って従っておくことにする。

 

「ではまず最初の1番手はそうだな・・・・・・レベル99のキミ――」

「違います」

「・・・・・・え?」

「私は決してレベル99などではありません。アレは何かの間違いです。あんな数字はあり得ません。私はまだまだ成長するのです。変な言いがかりは辞めてくださいませんでしょうか?」

「いやあの、顔が近―――わかった! わかったから! レベル99じゃないドルクネスが一番目でいいから! 顔が怖い!顔が怖い! ドアップで意味不明な主張しながら接近してくるんじゃなーい!?」

 

 そして一日目の授業で、いきなり先生を困らせるというより、怖がらせる反応を反射的に返してしまうご主人様への復讐を望む吸血鬼眷属ユミエラさん。

 レベル99で勝ててなかったご主人様に復讐するため修行し続けてる身として、現時点でレベル99で今以上強くなれる余地ないなんて、ユミエラは決して認めませんし、認められません。

 そんな主張は全部間違いで却下却下却下しか可能性は絶無しかありえないので、絶対ないものはNO。

 

「フンッ、では俺が相手をしてやるとしようか。

 この俺が最初の相手として立候補しますよ、センセ」

「・・・・・・?? あなたは確か・・・・・・今朝の騒ぎのときにアリシアさんと一緒に登校してきていた方でしたよね? えっと、名前は―――」

「『ウィリアム・アレス』だ。

 一応は親父が将軍やってるお偉いさんの倅ってことになるんだろうが、別に学園で地位を振りかざす気なんかねぇから遠慮なくかかってきてくれてかまわねぇぜ? 黒髪のレベル99女さんよ」

 

 挑発的な口調で名乗ってくる、長身で筋肉質な男子生徒。

 確かに、そういう名前だったと名乗られた側も記憶していた。

 アリシアを襲わせたとき、近くにいて巻き込む結果になった男子達3人の1人が彼だったのだ。

 

 あの時は、アリシアに経験値を貯めさせて育成を目指していたため、周囲にいた彼らは余計な手出しをされぬよう、足止めだけを目的に襲わせていた生徒の1人に過ぎなかったのだが、意外や意外。

 なんとアリシアと同様に魔物の群れを倒して、怪我だけして障害は一つも負わずに生きて教室まで辿り着くことに、足止めさせた全員が成功するという驚異的な結果を見せつけてユミエラを内心ビックリさせていた・・・そんなメンバー達の1人こそが彼だったのである。 

 

 って言うか、朝モンスターに襲われて生き残って、昼にはクラスメイト女子と剣術の模擬戦に立候補するとか、元気な上にタフ過ぎるだろうと正直思う。

 

「フフン、さぁどうしたイカサマ女。やめるんなら今の内だぞ?」

「・・・・・・イカサマ・・・? えっと・・・・・・ひょっとしてレベル測定の話ですか?」

「当たり前だろうが! あんな場面であんな下らねぇ真似しやがって! 目立ちたかったのかもしれんが、貴族としての誇りってものがないのかテメェには!? アァッ!?」

 

 そんな相手からの問いかけに対して、最初は疑問符を浮かべてから訪ね返した返答に激しく反発してくる相手の少年ウィリアム・アレス。

 彼としては、将軍の息子として生まれて幼い頃から剣の修行に明け暮れ続け、この歳で王立学園に入学した時にはレベル10にまで達していた自分の努力量にそれなりの自信と誇りを抱くようになっていたのである。

 

 ――そんな自分の誇りと信ずるものを、ただ目立ちたいだけという目的のため、イカサマで利用されたのでは堪ったものではない――。

 

 怒髪天を衝く勢いで、相手が女であっても容赦したくなくなるほど怒っていたのも、彼的には無理からぬことでありはしたのだ。元から髪型逆立ってる部分あるとかの話は別として。

 ただまぁ、彼の怒りは尤もとしても。

 彼の言い分には、別の問題があるにはあるのも事実ではあり。

 

「そう言われましても・・・・・・私をレベル99だなどと嘘八百を騙ったのは、あの玉コロであって、私は一言も自分から言った覚えはないのですが?

 その点で文句がある場合には、新入生ごときド素人の細工でバカな数字を表示するようなエラーを起こす欠陥品を造った、開発者側をこそ告訴すべき問題なのでは?」

「うぐっ!? そ、そーいう理屈臭ぇ言い方するところも気にくわねぇっつってんだ!」

 

 小首をかしげながら、至極まっとうな反論を返されて再度の反撃に詰まる、バルシャイン王国軍に属する将軍の息子ウィリアム・アレス君。

 王立学園でも採用している国内でも有数の魔道具メーカーの開発総責任者に、国の重鎮の息子が『お前の発明、欠陥品~』とか悪口を大声で叫んで非難するのはヤバそうな立場になる少年です。

 

 本人的には、学園内で父親の地位や権力使って特別扱いさせる気はないみたいですけど、こういう時に無縁でもいられないのが悲しい現実というもの。

 ムカついた時、言ったらリスクと問題ある主犯に言わない。言ってもリスクない実行犯だけに言う。――それがヒトとヒトとの繋がり合い。

 

「と、とにかくだ! 俺はお前みたいに汚い手を使うヤツは大嫌いなんだよ! お前が俺より強いなんてことが、あるわけがねぇだろうが!

 レベル測定のときは、俺が手袋を持ってなかったことを感謝すべきだった事実を教えてやるぜ!」

「はぁ。なるほど」

「・・・・・・試合前の語り合いは、もういいかね? ――では、両者かまえてッ!」

 

 授業担当の教師によって、程よいところで無益な言い合いには「待った」がかけられ、試合が始める流れとなる。

 今の今まで放置していたところから見て、教師自身も基本的にはユミエラは『嘘つき説』を信じてる側に属するようではあるが、立場の公正さまで放棄する気まではないようで結構なことである。

 

「さぁ、どうした!? 早く構えろ! それとも戦わずに降参かァ!?」

「すいません。剣“は”使って戦ったことがないものですから、正規の構えというものを知らないのです。ですので他の武器での構え方をした状態がコレですから、別にいつでも打ちかかってくれて構いませんよ?

 大丈夫です、怪我させずに勝つのは苦手ですが、努力しますので」

「~~ッ!! テメェ! どこまでバカにする気だ!? 女だからって手加減しないからな! 骨の一本や二本は覚悟しやバッふぁァァァァッ!?」

 

「・・・・・・え~い」

 

 

 ぱこ――――ッん!!!と。

 

 やる気なさそーな声と態度と無表情のまま、下段に切っ先を下ろして構えていた姿勢から勢いよく振り上げて、剣の腹でブッ叩いて景気よく音を立てさせながら。

 ウィリアム君を、どっか遠くまで吹っ飛ばして、殺すことなく攻撃そのものでは怪我させる事もなく倒して試合終了。

 

 

 ・・・・・・本来は、油で熱したフライパンを使って、『朝ご飯を作ってア・ゲ・ル♡』と言って油断させたところを撲殺する暗殺技として編み出したものだったが・・・・・・通じなかったのでムカついて封印。

 その後に、ザコを殺さず吹っ飛ばして退かしたい時には使える可能性もあるとリサイクルして復活させた、ユミエラ流の攻撃技。

 

 

《掬い上げるように打ち上げるべし打法》

 

 

 ご主人様への復讐用に編み出して使ってみて、効かなかった技だけど・・・・・・今朝のモンスター襲撃から無事に学校まで到着できるタフさがあれば耐えられる威力だから大丈夫。

 

 

「・・・先生、これで終わりだと思うのですがよろしいでしょうか? それとも追撃するため飛んでいった彼を追っていかなければダメですか?」

「え? あ、いや・・・そうだな。ウィリアム・アレスは退場と見なすしかなさそうなので、勝者、ユミエラ・ドルクネ―――」

 

「まだだぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~ッ!!!!」

 

 

 どどどどどどどどどどどどどど――――ッッ!!!

 

 あまりの光景に唖然とさせられている生徒たちと教師に向かって、試合結果のジャッジ判定を求めてたら、途中で物凄い勢いと物凄い形相で、物凄い格好になった葉っぱとか草とか土とか犬のウンコとか頭に乗っけたウィリアムが、猛スピードで木剣振りかぶりながら走って戻ってくる姿が遠くに見えた。

 

 本当にタフで元気な少年だった。

 きっと多分、朝に倒したモンスター分の経験値で強くなってたんだろう。やっぱり自分の育成には効果があった。

 

 

「まだだ! まだ俺は負けていない! いや、たとえ負けてても負けてねぇ! 試合に負けて勝負に勝つ!!

 ガキの頃から人一倍努力してきた俺が、こんなイカサマ女より弱いわけがないッ!!

 素人のフリをするとは卑怯なヤツめ! 今度こそ俺の本気を見せてやるぜぇぇぇぇッ!!」

 

「・・・・・・え~~い」

 

「食らえ! 必殺!!

 【骨の一本や二本は覚悟しやがれブレー――うおわぁぁぁぁぁ~~~~~ッ!?!?」」

 

 

 

 かこ―――――ッん!!!と。

 《掬い上げるように打ち上げるべし打法パート2》によって、先程より高く遠くへ吹っ飛ばされ直していった将軍の息子ウィリアム・アレス。

 

 どこからともなく、『キラーン☆』という音がグラウンドに響き渡った。・・・・・・ような気がする。

 

 

「う、ウィリアム!? ウィリアム・アレスぅぅぅぅぅっ!?」

『きゃぁぁぁぁぁッ!? ウィリアム様がお吹っ飛びあそばされたわァァァァァッ!?』

 

 そして、天高く吹っ飛ばされていって星になった幻覚が見えた気がする教え子のピンチに、遅まきながら担当教師が叫び声を上げて、女子生徒たちの悲鳴が木霊する。

 それら全てに背を向けられて、飛んでいった相手とは逆方向にいる吹き飛ばした側の張本人ユミエラは―――たった一人だけ他の者達とは違う評価と感想を、敗者であるはずのウィリアムに与えていたことを、他の者達はまだ知らない。

 

 

「・・・・・・思ったより、ずっと頑丈な人だったんですね。見直しました。

 これなら勇者アリシアが魔王を倒すまでの間に、攻撃を一手に引き受ける壁として使えるかもしれません。

 今朝は巻き込んでしまっただけでしたが、将来の勇者パーティーの一員として、明日からの訓練スケジュールを見直す必要がありそうですね・・・・・・フフフフ」

 

 

 盾役の人間バリヤーとして育てるため、ウィリアムの育成方針がユミエラの中で決定されてた瞬間でした。

 でも誰も彼女の心の中に気付いてないので分かりません。ウィリアムの受難は、こうして始まる羽目になる・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして次の授業は、『魔法の実技』

 班分けによって別々の離れた場所で授業を受けていた勇者アリシアとも合流して、最初の授業と相成った訳ではあるのだが。

 

「ではまず、皆さんの魔法の実力を見せてもらいましょう。最初ですから、的に当てられたら十分です」

「――だ、そうだよ? 君の魔法の実力を見せてもらえる時がきたみたいだね、レベル99くん」

 

 あと今朝一緒に登校していた青髪で眼鏡をかけた、サポートぐらいはできそうな魔術師っぽい支援役候補の少年も、アリシアの班だったので一緒に合流して一緒の授業を受けることになってしまっていた。

 

「まったく、レベル99なんて現実的ではないことぐらい、ちょっと考えれば分かるだろうに・・・・・・もっとまともな嘘を吐いていれば、恥をかくこともなかったのだろうけど自業自得だ。

 正直に自分の実力を示して、一からしっかり学び直す切っ掛けにするといいと僕は思うよ」

 

 やれやれと肩をすくめながら眼鏡のフレームを持ち上げる、演出臭い仕草を見せつけつつ。

 それでもまぁ、一応は親切心のつもりで言ってるらしく悪意までは感じない口調で嫌味だけ告げて、それ以上してくる素振りを見せない天才魔術師少年のオズワルド・グリムザード。

 

 親元から派遣された世話役のメイドから聞いた話では、彼は先の授業でのウィリアムや第二王子のエドウィンと、幼い頃からの友人同士だった一人らしいけれど・・・・・・その割にはずいぶんと礼儀正しく節度をわきまえた少年のようだった。

 

 ウィリアムなんか入学最初の授業でいきなり、「骨の一本や二本はへし折ってやるぜ」と宣言して木剣で殴りかかってくる、ルールも常識も無く力だけが全ての蛮族じみて野蛮なチンピラ少年だったというのに。

 

 それと比べて、言葉だけで終わらせて、後は授業のルールと判定基準に従うなんて・・・・・・オズワルド・グリムザード―――なんて恐ろしいほど魔術師らしくない騎士道みたいな子ッ!?

 

 ・・・・・・まぁ尤も、だからといって欠点がないという程ではなく。

 

「いえ、そう言われましても。

 ウィリアム様にも申し上げたことですが、私がレベル99だと言っているのは、あの測定用の玉コロを信じた人たちだけであって、私自身は一言も『自分はレベル99だ』なんて言った覚えはないのですが?」

「う!? ぐ・・・そ、それは・・・・・・」

「その件について文句があるのでしたら、新入生ごときの細工でレベル99なんていう現実的じゃないバカな数字を出されてしまうような欠陥品の納品元か。

 あるいは新入生の子供の噓さえ防止できなかった、ガラクタ玉をレベル測定に採用決定してしまった、入学式の運営責任者を糾弾するか説明求めるのが、筋というものだと思われます」

「うぐ・・・むむぅぅ・・・・・・っ」

 

 ウィリアムと同じ正論での追求に対しては、責任者に糾弾しにいって揉める度胸ないから安全に叩ける相手だけに言いにくる姿勢は変われんようだったけれども。

 

「そ、そういう屁理屈を言ってもボクは誤魔化されないからな! 魔法は剣ほど甘くはない、実力だけではなく技術も重視される分野、君の本当の力はどのみち今わかってしまうこと! 理屈と詭弁だけで現実は通じるものではないことを思い知るがいいさ! フンッ!!」

 

 と、尤もらしいこと言って背を向けて、ズカズカ歩いて行って距離を取るオズワルド。

 まぁ要するに、詭弁と誤魔化しで逃げたわけだが。

 

 

 ・・・・・・ちなみに剣術の授業の後、

 

「い、いかん! 私はウィリアムを急ぎ探しに行くので、残った者達は素振りだけしているように! 間違っても模擬戦をやるんじゃないぞ!? 分かったな!? では行ってくる!

 おおーい! ウィリアム・アレスぅー! どこだー!? 今行くから待っていなさーいッ!」

 

 担当していた男の先生が、吹っ飛んでいったウィリアムを回収するため大急ぎで駆けていったので、授業内容についてはオズワルドたち別の場所で授業していた者達には伝わっていません。

 伝える暇もなかったですし急いでましたし。むしろ立派な先生でしたね。

 これで慌てず騒がず落ち着いて、ゆっくり探しに行くような先生だったら、その後の展開も変わってたかもしれませんが、先生はクズだと思う展開だったと正直思われます。

 

 

 

 ま、それはそれとして置いといて。

 

「・・・先生、念のため確認したいのですが、あの的の鎧は、壊してしまっても大丈夫なんですか? 後で弁償とかの話になったりとかは・・・?」

「え? いえいえ、あの鎧は生徒たちの試験用に、特殊な加工をしたものを使ってますので、壊すには宮廷魔道師ぐらいの力がなければ無理ですので大丈夫です」

「それに、四つの属性をすべて使いこなせるが故に、魔法の天才と言われるボクでさえ壊せなかった物だ。

 驕り高ぶるつもりはないが、それでも事実上、新入生の力で壊せることはないという証明だと断言できる結果だった。君の力で壊せる程度の物では絶対にないさ」

 

 先生への確認質問だったが、何故だかオズワルドからも教師以上に自信を持って確約を得てしまうという謎な現象が起きてしまった訳なのだが・・・・・・そういうことを聞きたかったわけではなかったのでユミエラとしては言い直して再度の質問をせざるを得ず。

 

「あくまで、万が一にの話です。もし端の方だけでも少し削れて治せなくなった後。

 『オウオウ、うちの学校の備品を傷物にしやがってどう落とし前つけてくれるんじゃコラ。穏便に事を治めるため誠意を示して相応の礼っつーモンを払う気あんだろうなアァン?』

 ・・・・・・とか実家に言いつけられても困りますので、最初の時点で念のためにと」

「い、いえ・・・そういう対応はさすがにちょっと王立学園では・・・・・・って言うか、完全にボッタクリの犯罪行為ですよねソレって? そんなことする教師が王立学園にいた時点で大問題だと先生的には思います・・・」

「・・・・・・・・・と言うか君は、王立学園をいったい何の施設だと思ってるんだ・・・? 山賊たちのアジトか? この学校は・・・」

「念のための確認です。問題ないのでしたら問題ありません、失礼しました」

 

 ペコリと一礼して授業に戻るユミエラと、呆れ顔もしくは不審者を見る目つきでユミエラを見つめてくる魔女風ファッションの女教師と眼鏡少年のオズワルド。

 一般社会で生きてる普通の人間として、至極まっとうな反応をした二人だった訳だけども。ユミエラさんにはユミエラさんの事情もあるにはあり。

 

 

 ――なにしろ彼女は、自分を見初めたヴァンパイアに力づくで襲われて浚われて、止めようとした家族を半殺しにされて大魔界に誘拐され、言うこと聞かないからと50年間も『城の地下牢』に閉じ込められ続けてきた過去を持ってる、怨みと復讐心で闇に染まった女の子ヴァンパイア眷属。

 

 お城とか王立とか、そーいう単語の場所にメッチャ嫌すぎる思い出しか持ってない女の子ですので、念には念を入れないと怖いのです。

 二度と地下牢はイヤ、地下牢はイヤ、地下牢だけはイヤ・・・・・・暗い、狭い、怖い、誰かタスケ、て――――

 

 

「まぁでも、訓練のため学校側が的に用意したものですからね。壊せるなら壊してしまっても構わないということになってはいますけど――」

「・・・わかりました、ありがとうございます。

 ヤル気出てきたので、やってみます」

 

 

 そうしてユミエラさんは、過去の怨みと苦しみの日々を思い出し、【殺る気】を出してしまったため―――後は考えるまでもないでしょう。

 

 

 

「ユミエラ・ドルクネス、退学の書類が完成したぞ。

 貴様は王立学園に相応しくないと、学園長先生もお認めになった公式文書だ。これでは貴様の噓ハッタリは通じな――ヒィッ!?」

 

「自分のレベルを偽るような者は、この学園に――いや、バルシャイン王国の貴族に相応しくない。

 学園を退学になったとなれば、この国で生きることも難しくなるだろうが自業自得と思って心を入れ替え、これからは誠実に生きるよう努力し―――ブヒャッい!?」

 

 

「・・・・・・うふふ、フフフ・・・あははははハハハハハハハハ・・・・・・。

 イケナイんだぁ、ご主人様ったら・・・・・・ご主人様が悪いんですからね・・・?

 私をこんな目に遭わせたご主人様が、私を苦しめたご主人様が、私から全てを奪ったご主人様が、全て! すべて!

 全部全部全部ぜんぶゼンブなにもかも一つ残らずアハハハ! あはははッ!! あははははHAHAHAHAアーははははaaaaaaaaaっッ♪♪♥♥♥!!!!」

 

 

 

 この翌日、ユミエラ・ドルクネス伯爵令嬢に王宮への出頭要請が届いたのは言うまでもありません。届かなかったら、届かない方が大問題ですこんな人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、闇と憎しみと狂乱の一日が終わった、翌日の朝。

 

「はぁ・・・・・・」

 

 私は今日何度目になるか分からない溜息を吐きながら、重い足取りで学校へと続く道のりをトボトボと歩き続けてました・・・。

 平民の子でありながら、希少な光属性を使えるからという理由で入学を許された王立学園ではじまった新たな生活。

 最初は不安だったところに、ウィリアム殿下たちが声をかけてくれて大丈夫そうだと思ってたけど・・・・・・昨日の一件で再び心が不安に覆われていくのを私は強く感じていました。

 

 あまりに強く、そして強烈なまでの・・・・・・【闇の意思】とでも呼んでいい“彼女”の力。

 

「・・・やっぱりユミエラさんは、私たち人間とは違うナニカ邪悪な存在だってことなのかな・・・。

 それがナニカは分からないけど、ウィリアム殿下ならなにか知ってるかもしれないし・・・」

 

 黒々とした闇が集まってヒトの形を取っている中心に、赤い光が二つ眼のように怪しく輝いている姿に見えてしまう、私の目から見たユミエラさんという貴族令嬢の女の子・・・。

 

 凄まじい力を見せつけながら、空を仰いで笑い声を響かせていた彼女の恐ろしい姿と表情は、今でも私の心と記憶に鮮明に焼き付いたまま消えてくれなくて、多分ずっと後まで思い出し続けるほどの恐怖心を私たち見た者全員に植え付けたんじゃないかと思えるほど・・・・・・悍ましすぎるナニカを持った人。

 

 けれど・・・・・・何故だろう。どうしてなんだろう。

 あれだけ恐ろしい力を持った人なのに・・・・・・昨日の彼女は、どこか・・・・・・捨てられて泣いている、悲しい眼をした子犬のように―――私には見えてしまった。そんな気がして――。

 

 ううぅ、ユミエラさん今日はお城へ呼ばれてるから会えないみたいだし、確認したくても出来なくてモヤモヤしそう・・・

 

「はぁ・・・どうしちゃったんだろうなぁ、私・・・。

 で、でも昨日の魔術実技の授業では、私も少しだけ成果を出せてたみたいだし! きっと朝に襲われたモンスターを撃退できたおかげで、ちょっとは成長できてたってことだよねッ。

 ・・・・・・理由は分からないけど、でも結果的に良い方へつながってたんだから、ユミエラさんが原因だったとしても彼女が悪い人って決まったことにはならないはずで、だから―――」

 

 

 

【いきなり、モンスターの群れが現れた!】

 

【モンスターの攻撃! 魔術師オークライダーは呪文を唱えた!】

 

《ファイアー》

 

 

「って、今日もまたモンスターが現れましたー!? しかも昨日のよりなんか強い! 魔法使ってきちゃってるって、誰か助けてくださーいッ!?」

 

 

 

 

「・・・・・・その意気です、勇者アリシア! 自分が強くなれば、その分だけ敵も強くなって襲いかかってくるのを倒し続けてこそ、人は無限に成長し続けることが可能になるもの・・・!

 流れ作業はダレて飽きて慢心するようになりやすいもの、王宮に行く前に急いできた甲斐がありました。

 強くなる度に、強くなり続ける敵たちとのパワーシーソーゲームを乗り越え続け、世界最強の勇者を目指して下さいッ。魔王を倒すために、そして――あ。

 リタが呼んでるってことは、もう登城する時間か・・・・・・はーい、今行くから待っててちょうだい」

 

 

 こうして勇者アリシアの育成苦難に満ちた、学校までの登校は今日も続く。

 ヴァンパイア眷属式の教育法は、ガチで過酷方式であった(平日は基本毎日で土日、休日祝日は休み。長期休暇中は応相談予定)

 

 

 

つづく




*注:書き忘れてたので追記。
言うまでもないかもですが、今作版ユミエラさんのキャラ育成法は【ロマ・サガ方式】を採用しております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。